TERRORVISION『HOW TO MAKE FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE』(1994)
イギリス出身の4人組バンドTERRORVISIONが1994年春に発表した2ndアルバム。PIXIESやTHROWING MUSESなどを手がけ、のちにFOO FIGHTERSやHONEYCRACK、FEEDERなどにも携わるギル・ノートンをプロデューサーに迎え制作された本作からは「Oblivion」(全英21位)を筆頭に、「Middleman」(同25位)、「Pretend Best Friend」(同25位)、「Alice What's The Matter?」(同24位)、「Some People Say」(同22位)と5曲ものヒットシングルが生まれ、アルバム自体も最高18位と好セールスを記録。知名度を一気に上げる起爆剤となりました。
彼らのサウンドは非常にカテゴライズが難しく、ハードロックと言ってしまえば確かにそう聴こえるし、RED HOT CHILI PEPPERSあたりのヘヴィなファンクロックと言われればそうとも受け取れる。ブリットロックの中に入ってしまえばそれっぽいと思えるし、グランジと言われれば確かにそれっぽい。要するに、1曲1曲が独立して際立った個性を持っているため、いざアルバムで接するとバンド本来の顔が見えてこなかったりするのです。そこが良い点でもあると同時に、ここ日本のようなシーンでは弱点にもなる。ある意味、評価の難しい存在かもしれません。
事実、僕自身もリアルタムで最初に彼らの楽曲に触れたのは、ちょっとグランジがかったミディアムナンバー「Middleman」から。次にオールディーズテイストのポップロック「Oblivion」を聴いたら頭に「?」の文字が浮かび上がり、さらに風変わりなハードロック「Alice What's The Matter?」やミクスチャーロック風の「Pretend Best Friend」を聴いてさらに疑問は大きくなるばかり。
アルバムを聴くと、ファンクロック的な「Stab In The Back」があったりヘヴィなギターリフがカッコイイ「Descotheque Wreck」があったり、リフだけ聴いたら完全にメタルなファストチューン「What The Doctor Ordered」、アコースティックギターやストリングスをフィーチャーしたもの悲しげなヘヴィバラード「Some People Say」と、とにかく一貫性が感じられない。
でも、視点を変えれば、この一貫性のなさこそがTERRORVISION最大の武器であるわけで。何度も聴き込むとこのアルバム、かなり芯の通ったアルバムだと気づかされるわけです。要するにミクスチャーロックバンドなんですよね。ブリティッシュロックバンドがミクスチャーに挑戦するとこうなる、という好例なのではないでしょうか。そう考えると、このひねくれっぷりこそがイギリス人そのものなんだなと改めて実感させられるはず。こんなアルバム、アメリカ人にはなかなか作れませんよ。
▼TERRORVISION『HOW TO MAKE FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE』
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