TESSERACT『SONDER』(2018)
イギリス・ミルトンキーンズ出身の5人組バンド、TESSERACTが今年4月に発表した4thアルバム。スティーヴン・ウィルソンなどで知られるプログレッシヴロック専門レーベルKscopeからのリリースで、同レーベルからの2作目にあたります。本作は全英62位、全米198位という成績を残したようで、この手のバンドの中でもそこそこ成功しているほうに分類されるのではないでしょうか。
その所属レーベルの特性からも、また実際に音を聴いてもらえばわかるように、彼らのスタイルはプログレッシヴメタルやジェントに属するといっていいでしょう。プログレメタルというと、どうしてもDREAM THEATERのような長尺の楽曲をイメージしがちですが、このアルバムに関して言えば2〜3分台の楽曲も存在するし、最長のものでも7分に満たないという比較的コンパクトな楽曲が中心。全8曲で36分程度というトータルランニングだけを目にすると、意外とスルッと聴けてしまうような印象がありますが、いやいや、その中身は実際の尺の数倍も濃いんですよ。
短いながらも複雑なアレンジが施されたバンドアンサンブル、基本的にはクリーントーンで歌い上げながらも、ところどころにスクリームを取り入れることでヘヴィさを表現するダニエル・トンプキンスのボーカル、そして低音を強調したギターサウンドなど、確かに我々がイメージするプログレメタルやジェントそのものです。
ですが、“そのもの”であると同時に、やはりどこか違う感触も受ける。それが、静と動を巧みに操る緻密なアレンジ力によるものであることを、アルバムを何度か聴くうちに気づかされるわけです。どこか環境音楽的な側面もありつつ(「Orbital」がまさにそれ。このへんは旧来のプログレ的ですね)、突如訪れる激低音とヘヴィかつグルーヴィーなリズム(しかも、ところどころで変拍子まで飛び込んでくる)。曲によってはダンスミュージック的ですらあり(「Juno」あたりがこれ)、その変幻自在ぶりにはただ驚かされるばかりです。
PERIPHERYあたりと比べたら相当ポップに聴こえるかもしれませんが、やってることの変態度や音の密度は彼らとなんら変わらないのではないでしょうか。等に中盤〜後半の「Beneath My Skin」や「Smile」などを聴くと、その思いはより強まるばかり。
そうそう、本作の初回限定盤には今作からボーカルトラックのみを抜き取ったインストゥルメンタル盤が付くので、そちらを聴き込めばよりその変態度が理解できるかと思います。最近この手のバンドは食傷気味でしたが、これはなかなか良いのでは……と思い、久しぶりに引っ張り出して聴いて、これを書くに到ました。これも年末ならでは、かな。
▼TESSERACT『SONDER』
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