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カテゴリー「Testament」の15件の記事

2021年8月24日 (火)

EXODUS『BLOOD IN, BLOOD OUT』(2014)

2014年10月14日(欧州では10月10日)にリリースされたEXODUSの10thアルバム(リメイクアルバム『LET THERE BE BLOOD』を含めると11枚目のスタジオアルバム)。日本盤は同年10月22日発売。

連作となった前作『EXHIBIT B: THE HUMAN CONDITION』(2010年)から4年5ヶ月ぶりの新作。今作発売半年前に約10年在籍した前任ボーカルのロブ・デュークスが脱退(事実上のクビ)。その後任として加わったのが、80年代後半から90年代前半、そして2000年代初頭にバンドで活躍したスティーヴ・“ゼトロ”・スーザでした。ゼトロがEXODUSのアルバムに参加するのは6thアルバム『TEMPO OF THE DAMNED』(2004年)以来以来のこと。これでゼトロ、ゲイリー・ホルト(G)、リー・アルタス(G)、ジャック・ギブソン(B)、トム・ハンティング(Dr)という現編成が完成することとなります。

バンドのセルフプロデュース、レコーディングエンジニア&ミックスにアンディ・スニープという布陣で制作された本作。実は前任のロブがボーカリストとしても、そしてステージ上のフロントマンとしても非常に存在感の強い人間だっただけに、彼を放出してまで三度ゼトロをバンドに呼び戻す理由がわかりませんでした。しかし、本作を聴けば「やっぱりEXODUSにはゼトロが必要であり、ゼトロがいてこそEXODUS」という事実が理解できるはず。楽曲もゼトロ在籍時の路線に寄せたのか、王道のベイエリアクランチを存分に堪能することがで、“あの頃”をリアルタイムで通過した自分のような人間には心の底から楽しむことができました。

全11曲中大半がスラッシーなアップチューンというのも良いですし、ゼトロ復帰に華を添えるように元メンバーのカーク・ハメット(G/METALLICA)が「Salt The Wound」でギターソロを、盟友チャック・ビリー(Vo/TESTAMENT)は「BTK」で豪快なボーカルを聴かせてくれます。さらに、異色ともいえるダン・ジ・オートメーターとの共演(「Black 13」のオープニングパート)も見逃せません(まあ、こちらは本当に味付け程度ですが)。

メインソングライターのゲイリー・ホルトは2011年からSLAYERとの活動兼任もあり、多少なりともそのアグレッシヴ加減や初志貫徹なスタイルに影響を受けたはず。そこに原点回帰ともいえるゼトロの復帰とあれば、こういうスタイルに戻るのも納得の一言です。ロブ時代の作品ももちろん大好きですし、あの歌声も非常に好みでしたが、これを聴かされたらぐうの音も出ませんよね。恐れ入りました。

なお、本作の海外限定盤およびデジタル版にはボーナストラックとして、ANGEL WITCHのカバー「Angel Of Death」を収録。こちらでボーカルを務めているのはトム・ハンティングというのも見逃せません。お遊びとはいえ、こういうのもアリっちゃあアリですね。

全米38位という過去最高記録を打ち出した本作以降、ゲイリーのSLAYERでの活動が忙しくなり新作の予定がなかなか見えなかったEXODUS。しか、2019年のSLAYER活動終了を経て、ついに2021年11月19日に7年ぶりの新作『PERSONA NON GRATA』をリリース予定。現在公開されている新曲もなかなか良さげなので、今作を超える内容にも期待できそうです。

 


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2021年8月13日 (金)

SEPULTURA『SEPULQUARTA』(2021)

2021年8月13日にリリースされたSEPULTURAの企画アルバム。

2020年2月発売のアルバム『QUADRA』に続く今作は、2020年4月からスタートしたストリーミング・ライブセッション“SepulQuarta”からのベストセレクション。これまでに発表された多数の名曲群を、毎回著名なゲストミュージシャンを迎えてセッションするという企画で、その選曲および参加アーティストの豪華さはベストアルバムを超えた1枚と言えるかもしれません。

収録曲および参加ゲストは下記のとおり([ ]内は参加ゲスト名)。

01. Territory [David Ellefson (B/ex. MEGADETH)]
02. Cut-Throat [Scott Ian (G/ANTHRAX)]
03. Sepulnation [Danko Jones (Vo)]
04. Inner Self [Phil Rind (B/SACRED REICH)]
05. Hatred Aside [Angélica Burns (Vo/HATEFULLMURDER)、Mayara Puertas (Vo/TORTURE SQUAD)、Fernanda Lira (Vo/CRYPTA)]
06. Mask [Devin Townsend (Vo, G)]
07. Fear, Pain, Chaos, Suffering [Emmily Barreto (Vo/FAR FROM ALASKA)]
08. Vandals Nest [Alex Skolnick (G/TESTAMENT)]
09. Slave New World [Matthew K. Heafy (Vo, G/TRIVIUM)]
10. Ratamahatta [Joao Barone (Dr)、Charles Gavin (Dr)]
11. Apes Of God [Rob Cavestany (G/DEATH ANGEL)]
12. Phantom Self [Mark Holcomb (G/PERIPHERY)]
13. Slaves Of Pain [Frédéric Leclercq (G/KREATOR、AMAHIRU)、Marcello Pompeu (Vo)]
14. Kaiowas [Rafael Bittencourt (G/ANGRA)]
15. Orgasmatron [Phil Campbell (G/ex. MOTÖRHEAD)]

M-4, 13 : from 3rd AL『BENEATH THE REMAINS』(1989年)
M-14 : from 4th AL『ARISE』(1991年) Japanese Bonus Track
M-1, 9, 14 : from 5th AL『CHAOS A.D.』(1993年)
M-2, 10 : from 6th AL『ROOTS』(1996年)
M-5 : from 7th AL『AGAINST』(1998年)
M-3 : from 8th AL『NATION』(2001年)
M-11 : from 9th AL『ROORBACK』(2003年)
M-6 : from 12th AL『KAIROS』(2011年)
M-8, 12 : from 14th AL『MACHINE MESSIAH』(2017年)
M-7 : from 15th AL『QUADRA』(2020年)

知名度の高いアーティストばかりが参加しており、これも長きにわたりブラジルを代表するエクストリームメタルバンドとして活躍し続けるSEPULTURAならではと言えるでしょう。選曲的には「Arise」や「Dead Embryonic Cells」「Under Siege (Regnum Irae)」といった『ARISE』収録曲や「Roots」のような代表曲を外しているのが気になりますが(実際の“SepulQuarta”セッションでは、「Arise」などはゲスト抜きで演奏されています)、それでもベストアルバムとしても見劣りしない内容なのはさすがといったところでしょうか。

基本的にはリモートスタジオセッションアルバムなので、生々しさはスタジオ音源以上/ライブアルバム以下といった質感。しかし、これくらいの生々しさは彼らのようなバンドにはちょうどいいような気がします。そして、マックス・カヴァレラの跡を継いで加入したデリック・グリーンはすでに20年選手。マックス時代の楽曲でも原曲に負けない凄みが伝わる歌唱で、非常に好意的に受け取ることができます。

各ゲストに関してですが、この人ならでは!という音源はそう多くはないです。女性Vo3人が参加した「Hatred Aside」はかなり色が出ていて面白いし、デヴィン・タウンゼンド参加の「Mask」もそれとわかる仕上がり。マーク・ホルコムらしいエフェクティブなギターサウンドで原曲に彩りを加えた「Phantom Self」も非常にらしい完成度ですね。同じブラジル出身のラファエル・ビッテンコートとコラボした「Kaiowas」は、現在シングルギター編成のSEPULTURAには実現できないアンサンブルなので、これも聴きどころかもしれません。あとは、本家MOTÖRHEADのフィル・キャンベルをフィーチャーした「Orgasmatron」もかな。特別新鮮さはないですが、感慨深さという点で記しておこうかと思います。

この手の企画盤は「あの曲がない、この曲がない」と言い出したらキリがないので、深いこと考えず、素直に(かつ無心で)楽しむのが一番。特にSEPULTURAはオールタイムベストアルバムが1枚も存在しないので、(選曲が多少偏ってはいるものの)これを『ARISE』『CHAOS A.D.』『ROOTS』に次ぐ入門盤として捉えるのもアリかもしれませんね。

 


▼SEPULTURA『SEPULQUARTA』
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2021年5月16日 (日)

CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』(2021)

ANTHRAXのドラマー、チャーリー・ベナンテが2021年5月14日に発表した初のソロアルバム。日本盤未発売。

このアルバムはCOVID-19パンデミックにより世の中のさまざまなことがストップした中でスタートさせた、「Quarantine Video Series」の総決算的作品。ANTHRAXのバンドメイトや気心知れた他バンドの仲間たちと、新旧のお気に入りナンバーをリモートセッションしていき、その中から選りすぐりの14曲がこのアルバムに収録されています。

カバー曲の内訳は以下のとおり。

M-1. City Of Blinding Lights [U2]
M-2. Chloe Dance / Crown Of Horns [MOTHER LOVE BONE]
M-3. Teardrop [MASSIVE ATTACK]
M-4. Run DMC [RUN DMC]
M-5. Rhiannon [FLEETWOOD MAC]
M-6. Yer So Bad [トム・ペティ]
M-7. Transylvannia [IRON MAIDEN]
M-8. Presto Vivace [U.K.]
M-9. Bad Guy [ビリー・アイリッシュ]
M-10. Jimmy James Jam [BEASTIE BOYS]
M-11. All The Way [KISS]
M-12. Mr. Speed [KISS]
M-13. Public Image [PUBLIC IMAGE]
M-14. Funny Vibe [LIVING COLOUR]

参加メンバーも実に多彩で、スコット・イアンやフランク・ベロといった盟友たちのほか、マーク・オセグエダ(Vo/DEATH ANGEL)、カーラ・ハーヴェイ(Vo/BUTCHER BABIES)、コリィ・テイラー(Vo/SLIPKNOTSTONE SOUR)、DMC(MC/RUN DMC)、ロブ・カジアーノ(G/VOLBEAT、ex. ANTHRAX)、デイヴ・セイボ(G/SKID ROW)、アレックス・スコルニック(G/TESTAMENT)、ジョン・5(G/ROB ZOMBIE)、ラ・ディアス(B/SUICIDAL TENDENCIES)、マーク・メンギー(B/METAL ALLEGIANCE)、ジョーダン・ルーデス(Key/DREAM THEATER)など。参加アーティストはHR/HM界隈中心ですが、選曲はチャーリーらしいセレクトで、メタルらしいメタルはIRON MAIDENくらい。もはやお約束となったKISSは2曲用意され、新しいところだとビリー・アイリッシュ「Bad Guy」もカバーされています。

いきなりU2の比較的最近の楽曲からスタートする本作は、そのサウンド的にはメタルからは少し離れたもので、チャーリー・ベナンテという鬼才の一端が表されているといったところでしょうか。もっとも、チャーリー自身は本作をソロアルバムとは捉えておらず、「非常に暗い時期に、友人の何人かと一緒に作ったお気に入りの楽曲集」程度なんだとか。なので、受け手側も「あのANTHRAXのチャーリーのソロプロジェクト」なんて構えずに、幅広い年代/幅広いジャンルの名曲セッション集くらい気軽に楽しめばいいのではないでしょうか。少なくとも僕自身、そういうふうに捉えてリピートしています。

どの曲のアレンジも組み合わせの妙が存分に楽しめるし、遊び心に満ち溢れていると思います。個人的にはメタルアレンジな「Bad Guy」がお気に入り。バンドアレンジにしてもカッコいい曲はカッコいいんだと気付かせてくれます。あとは、MASSIVE ATTACK「Teardrop」やFLEETWOOD MAC「Rhiannon」、トム・ペティ「Yer So Bad」も。女性ボーカル曲は総じて良いですね。プラス、KISSは録音状態まで含めてオリジナルに敬意を払っているのも好印象。遊ぶならここまでしないと。

なお、本作から生じた収益の一部は、音楽教育とメンタルヘルスを提唱するニール・カザル音楽財団に寄付されるとのことです。

 


▼CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』
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2020年6月30日 (火)

LAMB OF GOD『LAMB OF GOD』(2020)

2020年6月中旬にリリースされた、LAMB OF GODの8thアルバム。

全米3位を記録した前作『VII: STURM UND DRANG』(2015年)から5年ぶりと、過去最長のスパンとなりましたが、その間には亡くなったファンへ向けたEP『THE DUKE』(2016年)やBURN THE PRIEST名義でのカバーアルバム『LEGION: XX』(2018年)マーク・モートン(G)のソロアルバム『ANESTHETIC』(2019年)およびアコースティックEP『ETHER』(2020年)と、関連作品が目白押しでした。なので、いざ5年と言われると「そんなに経ったの?」と驚く自分もいるわけです。

しかし、この5年は順風満帆というわけではありませんでした。バンドを牽引してきた名ドラマー、クリス・アドラー(Dr)が本作制作を前にバンドを脱退。代わりにアート・クルーズ(Dr / ex. PRONG)が加入し、おなじみのジョシュ・ウィルバーをプロデューサーに迎えて完成させたのが、バンド名を銘打った原点回帰の本作となります。

冒頭2曲は、既発のリードトラック「Memento Mori」「Checkmate」からスタート。耳馴染みの強い王道ナンバー2曲で弾みをつけると、そのまま「Gears」「Reality Bath」とアグレッシヴかつグルーヴィーな楽曲が続くのですが、気のせいかどの曲からもいつも以上のキャッチーさが感じられます。これまでの作品では良くも悪くも、聴き手を突き放すような唯我独尊の強いアグレッシヴさが全体を覆っていたのですが、とにかく本作は聴きやすいのです。その印象はラストナンバー「On The Hook」(ボーナストラック除く)まで薄れることはありませんでした。

全10曲で約45分という構成もさることながら、焦点がブレることなく1曲1曲をコンパクトな形でまとめ上げた作風も影響しているのでしょうか。特に大きな変化があるわけではないのですが、不思議とスルスル聴き進められるんですよ。いわゆるポップさは皆無なアルバムなのに、不思議とキャッチーという。そういうフックが随所に用意されたアルバムということでもあるんでしょうね。

また、本作にはゲスト・ボーカリストも複数参加。「Poison Dream」にはHATEBREEDのジェイミー・ジャスタ(Vo)が、「Routes」ではTESTAMENTのチャック・ビリー(Vo)がそれぞれ“いかにも”なスクリームを響かせています。前作ではチノ・モレノ(DEFTONES)やグレッグ・プシアート(当時THE DELLINGER ESCAPE PLAN)がゲスト参加していたので、今作も相変わらずな人選で我々を楽しませてくれます。

ドラムに関しては、確かにクリスの派手なプレイはここにはありません。むしろ、曲の良さを引き出すことに徹した職人技的かつ冷徹なプレイを堪能できるのではないでしょうか。多少好みは分かれるかもしれませんが、らしさはまったく失われていませんし、そもそも楽曲の完成度が高いのでそこまで大きなマイナスにはなっていないような気も。そもそもこのバンド、ドラムだけを聴いてきたわけではないし、ランディ・ブライ(Vo)のボーカルとマークの書く曲、マーク&ウィリー・アドラー(G)のツインギターの妙も含めてLAMB OF GODだったわけですから、クリスの不在だけを理由に否定するのはナンセンスかと。

もしかしたら本作は、METALLICAでいうところのブラックアルバム(1991年)的な1枚になり得る可能性が高い気がします。偶然にも、セルフタイトルを冠したアルバムという共通点もありますしね。なんにせよ、LAMB OF GODにとって集大成的な内容であり、初心者の入門にふさわしい決定的な1枚です。

 


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2020年5月21日 (木)

AZUSA『LOOP OF YESTERDAYS』(2020)

2020年4月10日リリースの、AZUSA通算2作目のオリジナルアルバム。日本盤未発売。

THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームバンドのメンバーに、ベルギーの実験的ポップ・デュオSEA + AIRのフロントウーマン、エレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成のAZUSA。2018年11月リリースのデビューアルバム『HEAVY YORK』に続く本作では、前作で見せた独創的なスタイルをより推し進めたサウンドを楽しむことができます。

楽器隊が関わってきたバンドにも通ずる複雑怪奇なエクスペリメンタル・ロック/メタルに、クリーントーンとグロウルが交互に飛び出すエレーニの浮遊感が強いボーカルが乗ることで、ほかの何者にも似ていない唯一無二のエクストリーム・ミュージックを構築。デビュー作の時点では良い意味での不自然さやぎこちなさが、聴き手にも居心地の悪さを与えてくれて、逆にそれが中毒性を増す結果につながっていたと思います。しかし、本作ではその不自然さが薄れ、ナチュラルな不協和音(笑)や異物感が当たり前のように感じられます。これは筆者含め聴き手側に耐性がついたということなんでしょうかね。

また、全体的にストレートなメタル(特にスラッシュメタル)度が高まっている印象を受けたのも、本作の特徴かな。特にM-3「Detach」で聴くことができる演奏やメロディアスなギターソロは、我々が知るヘヴィメタルそのもの。って、それもそのはず。この曲でギターソロをプレイしているのはTESTAMENTのアレックス・スコルニック(G)なのですから。アレックスもジャズなどを専攻する、メタル界では異端側のソロイストですが、なるほどこういうバンドに入ってプレイすると意外にもオーソドックスに聴こえてくるから不思議です。

個人的には、その「Detach」のあとに「Seven Demons Mary」や「Monument」のような楽曲が続くところに、このバンドの強みや独創性を感じずにはいられません。演奏はともかく、結局はエレーニという逸材を見つけた時点でこのバンドは勝ちだったんだなと。前作は年間ベストに入れるほどのお気に入りでしたが、今作も長期にわたり何度もリピートする1枚になりそうです。

ただ、この形に関しては2作目にしてすでにやり尽くした感もあり、本作で早くもひとつの完成形を見せたと言っていいかもしれません。なので、ここからどういう進化を見せていくのかですよね。実験的なスタイルが求められる(バンド側もそこを強く意識している)存在だけに、どんどん新しい形を提示していかないと継続はキツいのかなと。そういう意味でも、バンドとしての次の一手が早くも気になるところです。

 


▼AZUSA『LOOP OF YESTERDAYS』
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2020年4月24日 (金)

TESTAMENT『DEMONIC』(1997)

1997年6月にリリースされたTESTAMENTの7thアルバム。日本盤は1ヶ月遅れで発売されています。

音楽性を初期のスラッシュメタル路線から時代に合わせたグルーヴメタル/モダンヘヴィネスへと接近させた前作『LOW』(1994年)リリース後にメジャーのAtlantic Recordsからドロップ。また、ジェイムズ・マーフィー(G)やグレック・クリスチャン(B)、ジョン・テンペスタ(Dr)といった主要メンバーも相次いで脱退してしまいます。チャック・ビリー(Vo)と唯一のオリメンであるエリック・ピーターソン(G)の2人のみが残されたバンドは、事実上の活動休止状態に。これを受け、TESTAMENTとは異なる名義で時代に寄り添ったヘヴィなアルバムを制作するのですが、結果としてそれはTESTAMENT名義で世に放たれることとなったのでした。

チャック、エリックにデリック・ラミレズ(B)、ジーン・ホグラン(Dr)、グレン・アルヴェライス(G/1曲のみ参加)という新たな布陣でレコーディングに臨んだそのアルバムこそが、リリース当時賛否両論を巻き起こした『DEMONIC』というアルバム。『LOW』で接近したモダンなスタイルをより激化させたサウンドからは、もはや80年代の面影は一切感じられません。それを象徴するのが、チャックの歌唱スタイルの変化。前作の時点ですでに見え隠れしていましたが、本作ではほぼデス声で叫んでおり、当時何も知らずに本作を聴いてこれがTESTAMENTの新作だと気づく人はほとんどいなかったはずです。

だからといって、本作が駄作かと問われるとまったくそんなことはなく、ミドルテンポを軸にしつつも重戦車のように突き進むジョン・テンペスタのドラミングの素晴らしさと、そこにTESTAMENT“らしい”不穏なギターフレーズの数々が乗ることで不思議な高揚感を覚えるはず。確かに時代的にも“後追い”感は否めませ。曲によってはやれどのバンドに似ている、あのバンドの二番煎じという声も聞こえてきそうですが、それでも1曲1曲のクオリティは平均以上で、「Demonic Refusal」や「The Burning Times」「John Doe」「Murky Waters」「Hatred's Rise」など今でも十分に通用する良曲豊富な1枚。TESTAMENTの歴史上真っ先に聴くべき1枚ではないものの、2000年代以降の彼らを語る上では欠かせない重要な作品だと思います。

日本盤は当時バンダイ・ミュージックエンタテインメントからリリースされましたが、のちに同レーベルが閉鎖されたことにより国内盤は廃盤が続いています。また、海外でもしばらくコンピなどで数曲聴ける程度だったところ、2018年に新たなアートワークで再発。残念ながら国内ストリーミングサービスでは聴くことはできない1枚ですが(というか90年代後半から2010年代前半の諸作品が聴けないのは残念すぎる)、機会があったらぜひ手に取ってほしいな。

 


▼TESTAMENT『DEMONIC』
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TESTAMENT『THE RITUAL』(1992)

1992年5月に発表された、TESTAMENTの5thアルバム。

表題曲MVがMTV「Headbangers Ball」でヘビロテされたことで、アルバム自体も初の全米トップ100入り(77位)を果たした3作目『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(1989年)、続く4thアルバム『SOULS OF BLACK』(1990年)も全米73位とまずまずの成績を残したTESTAMENT。1987年のメジャーデビュー以降、アルバムを年に1枚とコンスタントにリリースを続けてきましたが、初めて1年7ヶ月という(彼らにしては)長いスパンをかけて完成させた5作目は、バンドにとって新たな挑戦がぎっしり詰め込まれた1枚となっています。

まず、本作の興味深いところはスラシュメタルから距離を取り、正統派HR/HMへと接近したことでしょう。直近の2作でその予兆はあったとはいえ、ここまで潔く舵を切るか……と当時は驚いたものです。

初期3作を手がけたアレックス・ペアリアスから初めてマイケル・ローゼン(FORBIDDEN、LAAZ ROCKIT、MORDREDなど)へとプロデューサーを変更した前作『SOULS OF BLACK』を経て、今作では新たにトニー・プラット(CHEAP TRICKDIO、VOW WOWなど)、ミックス・エンジニアにはナイジェル・グリーン(IRON MAIDENDEF LEPPARDAC/DCなど)というメジャー感の強い人選で制作に臨んでいます。

それもあってか、確かにサウンドの密度が過去4作とはまったく異なるものに。音圧の高さ、音数の多かったスラッシュ路線を排除したことにより、全体的にクリーンな音質で1音1音をより明確にさせるような音像/ミックスが施されており、それによりチャック・ビリー(Vo)のボーカルやアレックス・スコルニック(G)のギターソロがより際立つようになっています。

また、チャックの歌うメロディラインも明確にわかりやすいものへと昇華されており、単調さが目立ちマンネリ感が否めなかった前作からかなりの進歩が見られます。それらのメロディをより有効活用するために、テンポもグッと落とし、リードトラック「Electric Crown」のノリの良さ、「So Many Lies」や「Deadline」で展開されるグルーヴィーさ、「The Ritual」「Return To Serenity」といったバラード調の楽曲で強調されるエモさなど、ミドルテンポの中でもさまざまな工夫が用意されています。

正直、TESTAMENTの諸作品中もっとも刺激の少ないアルバムなのは否めませんが、「Electric Crown」や「Return To Serenity」のような楽曲を聴くと当時の彼らは“新世代のJUDAS PRIEST”になりたかったのかな……と。当の本家は逆に『PAINKILLER』(1990年)を経てよりスラッシュ/エクストリーム化が進んでいたわけですが。

アルバム自体は全米55位と、グランジ全盛の中大健闘。しかし、本作を最後にアレックス、ルイ・クレメンテ(Dr)が相次いで脱退し、いわゆる全盛期ラインナップは崩壊してしまいます。変化の代償はかなり大きかったようですね。

 


▼TESTAMENT『THE RITUAL』
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2020年4月 9日 (木)

TESTAMENT『SOULS OF BLACK』(1990)

1990年10月にリリースされた、TESTAMENTの4thアルバム。

3rdアルバム『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(1989年)が全米77位まで上昇し、まずまずの成功を収めることができたTESTAMENTは、その成功を維持しようと、前作の成功を踏襲した作品作りに短期間で臨みます。しかし、単に前作を模倣するのではなく、プロデューサーをアレックス・ペリアラス(S.O.D.、NUCLEAR ASSAULT、OVERKILLなど)からマイケル・ローゼン(FORBIDDEN、LAAZ ROCKIT、MORDREDなど)へと変更。マイケルはミックスまで含め手がけていますが、サウンド的には前作をより抜けの良いものへと進化(いや、退化か?)させたものになっています。

進化という点では、ギターのザクザク感に呼応するようなドラムの抜けの良さが軽やかさを強調しているところ。退化と書いたのは、その軽いドラムサウンドのせいでメタルバンドらしい重厚感が減退していることでしょうか。ちょうど同時期にMEGADETH『RUST IN PEACE』を、SLAYER『SEASONS IN THE ABYSS』を、ANTHRAX『PERSISTENCE OF TIME』を発表しており、それらの傑作たちと比較するとチープさは否めず。いわゆる“ベイエリア・クランチ”を意識した結果、どことなく中途半端な音作りで終わってしまったところは残念でなりません。

また、楽曲に関してもいわゆるスラッシュメタル的なスピードチューンよりも王道メタル的なアップチューン中心で、要所要所でミディアム/スロウナンバーも用意するという前作をなぞった作風。ですが、突出した楽曲は正直少なく、個人的にはタイトルトラック「Souls Of Black」とバラード「The Legacy」くらいかな。「Practice What You Preach」の二番煎じみたいな「Absence Of Light」も悪くはないけど、メロディがピンとこない。だからこそ、「Love To Hate」のようなどストレートなスラッシュナンバーが逆に活きてしまうという逆効果を生んでします。どこまでいってもちぐはぐさが拭えない、中途半端な1枚です。

早くも訪れた過渡期を経て、バンドは制作により時間をかけて次作『THE RITUAL』(1992年)を完成されるのですが、そこでは我々が思いもしなかった変化を遂げることになります。

……なんてネガティブなことばかり書いたけど、個人的にはこの時期のTESTAMENTは意外と印象に残っていて。なにせ、初めて観た彼らのライブがこのアルバムを携えたツアーでしたからね。生でいろいろ聴いたこともあって、実は嫌いになれないアルバムでもあるのでした。

 


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2020年4月 8日 (水)

TESTAMENT『TITANS OF CREATION』(2020)

TESTAMENTが2020年4月初頭にリリースした、通算12作目のオリジナルアルバム。セルフカバーアルバム『FIRST STRIKE STILL DEADLY』(2001年)を含めると、通算13枚目のスタジオ作品となります。

『THE FORMATION OF DAMNATION』(2008年)以降、『DARK ROOTS OF EARTH』(2012年)、『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』(2016年)とほぼ4年間隔で新作を発表し続けているTESTAMENT。今作も前作『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』から3年半というスパンを経て届けられています。特に直近の2作は全米12位(『DARK ROOTS OF EARTH』)、20位(『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』)と80〜90年代にも成し遂げることのできなかったチャートアクションを得られていること、またSLAYERの事実上解散、デイヴ・ムステイン(MEGADETH)のガンなどオールドスクール・スラッシュメタル・シーンにネガティブな話題が続いていたこともあり、TESTAMENTに対するリスナーの期待は少なからず大きなものがあったと思います。

そんな中、我々の手元に届けられた新作はチャック・ビリー(Vo)、エリック・ピーターソン(G)、アレックス・スコルニック(G)という全盛期メンバーにスティーヴ・ディジョルジオ(B)、ジーン・ホグラン(Dr)の元DEATHリズム隊が加わった、前作と同じメンバーで制作。ひたすらヘヴィで攻撃的という“ハードコアなTESTAMENT”を表現した前作から一転、今作ではいわゆる“オールドスクールなスラッシュメタル”が現代的なサウンドで展開されています。

例えば、前作は4分前後とコンパクトにまとめられた楽曲中心で、全10曲/45分という比較的スルスルと聴き進められる内容でしたが(ゴリゴリのヘヴィサウンドでしたので、これくらいの長さがちょうどよかったわけですが)、今回は全12曲で約60分。4〜5分台の楽曲中心という作風は一緒なのですが、80年代の彼らが持っていた“キャッチーさと怪しさが混在するメロディ”が復調しているのです。キャッチーさはチャックの歌メロにわかりやすく現れていますが、後者の怪しさはアレックスのギターフレーズによるものが非常に大きく、随所で大々的に用意された長尺のギターソロは「これぞTESTAMENT!」と膝を叩きたくなるくらいに往年の彼らをイメージさせるものばかりなのです。

楽曲自体もひたすら直線的に突き進むハードコア路線とは異なり、複雑な展開を要する80年代的なスラッシュメタルの王道パターンが復活。ミドルからファストへ、ファストからミドルへという構成や、その合間に挿入される不穏なギターソロや印象的なツインリード。中には6分超えの大作も用意されているのですが、それらに対して「長い!」と感じることなく、むしろすべてに対して「そうそう、これこれ!」と声高に叫びたくなるものなのです。

ドラマチックさすら感じられる「Children Of The Next Level」から始まり、いかにもTESTAMENTらしい怪しげな「Code Of Hammurabi」、激烈スラッシュチューン「Curse Of Osiris」でクライマックスを迎え、2分程度のインスト「Catacombs」で不穏さを残したまま幕を降ろす構成、まったく長いと感じませんでした。これ、TESTAMENTの集大成であると同時に彼らの最高傑作じゃないでしょうか。オールドスクール・スラッシュメタル、まだまだ捨てたもんじゃないよね。

最後に。日本盤のみ2017年2月の来日公演@TSUTAYA O-EASTをまるまる収録したライブアルバム同梱の初回限定盤も用意。これ聴いたら、また早く彼らのライブを観たくなるはず……。

ところが3月下旬、TESTAMENTとDEATH ANGELEXODUSのベイエリア・スラッシュバンド3組でヨーロッパツアーを行ったあと、チャックが新型コロナウイルス感染を発表。幸い現在は回復しているようですが、その余波は同じメンバーのスティーヴやDEATH ANGELのウィル・キャロル(Dr)、EXODUSのゲイリー・ホルト(G)にも広がっています。みんな、早く回復してまた元気な姿を見せてください……。

 


▼TESTAMENT『TITANS OF CREATION』
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2019年10月21日 (月)

TESTAMENT『LOW』(1994)

1994年9月末に発売された、TESTAMENTの6thアルバム。日本では1ヶ月遅れの、同年10月末にリリースされました。

もともとその素養はあったとはいえ、前作『THE RITUAL』(1992年)にてスラッシュ路線からJUDAS PRIESTにも通ずる正統派ヘヴィメタル路線へと舵を切ったTESTAMENT。チャート的には全米55位と過去最高の数字を残すものの、同作のツアー中に凄腕ギタリストのアレックス・スコルニックが脱退してしまいます。さらに、ドラマーのレイ・クレメンテも相次いで脱退。バンドは窮地に立たされてしまいます。

そんなTESTAMENTを救ったのが、ex. DEATH〜ex. OBITUARYのジェームズ・マーフィ(G)とex. EXODUSのジョン・テンペスタ(Dr)という新メンバー。才能、技術ともに申し分のない面々が加入したことで、バンドは前作から一転、時流に乗ってか非常にヘヴィな方向へと舵を切り直します。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINERED HOT CHILI PEPPERSSICK OF IT ALLなど)を迎えて制作された本作は、アレックス・スコルニックに負けず劣らずの変態さが備わった(笑)ジェームズ・マーフィのクールなギタープレイと、リズムがヨレることで定評のある(苦笑)レイ・クレメンテとは相反して芯の通った重々しさが魅力のジョン・テンペスタのドラミングが1994年というあの時代を反映させたサウンドを作り上げています。

つまり、今作で聴けるヘヴィさは初期のスラッシュ路線とは異なる、グルーヴメタルやモダンヘヴィネス寄りのヘヴィさなのです。この音に合わせて、チャック・ビリー(Vo)の歌唱法にも変化が生じ、本作から初めて“デス声”を導入します。普通に歌い、がなっても十分に個性的なチャックでしたが、デス声導入によって没個性期に突入……といっては言い過ぎでしょうか。

まあとにかく、TESTAMENTとしての個性は若干薄らぎつつあるものの、この時代を象徴するヘヴィメタルという点においては非常によくできた1枚だと思います。「Low」といい「Dog Faced Gods」といい、爽快すぎるほどのヘヴィさが随所から感じられるし、彼らならではのメロウなバラード「Trail Of Tears」もある。日本の成人コミック『超神伝説うろつき童子』を題材にした「Urotsukidōji」なんていうテクニカルなインストナンバーも含まれており、実は聴き応えという点に関しては非常に充実度の高い1枚だと思います。

チャート的には全米122位と前作を大きく下回ってしまい、本作をもってメジャーのAtlantic Recordsとの契約も終了してしまいますが、その結果彼らの“激化”は続く『DEMONIC』(1997年)で最初のピークを迎えることになります。

 


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