2009/07/23

涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)

何の悪い冗談かと思った。仕事中、同僚からの電話が鳴り、別の同僚が出る。切った後に、電話を受けた同僚が言う。「アベフトシが亡くなった」と。

アベフトシ、急性硬膜外血腫のため43歳で逝去

清志郎さんが亡くなっても、マイケルが亡くなっても、ショックは受けつつもどこか冷静さを保っていた自分。マイケルのときには、その事実を知った後に「早くニュース記事を書かなきゃ」との使命感に追われて、手が勝手に動いていたっけ。

でも、今回は違った。しばらくの間、呆然として、結局数時間は仕事にならなかった。恐らく仕事しながらも涙ぐんでたと思う。とにかく、頭が働かなかったんだ。

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ミッシェルもROSSOも好きだったけど、The Birthdayだけは苦手だった。最初からずっと。でもここ1年くらい、ここ1〜2作の曲の中には「お、いいな」と思える楽曲もいくつか存在した。だけど、CDを購入してまで聴こうとは思えなかった。

そんな自分だけど、「涙がこぼれそう」という曲が一番好きだ。理由はわからないけど、何となく自分が知ってるチバに一番近い気がして。

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アベの訃報を聞いてから、ずっと頭の中で「涙がこぼれそう」がグルグル回ってた。思わずYouTubeでPVを観てみたんだけど……ダメだ。最後まで聴けなかった。アベがもうこの世にいないという事実。チバの隣にアベが立つことがもう二度とないという事実。そして、訃報を耳にしたチバ、ウエノ、キュウの気持ちを考えたら、どうしようもない気持ちになった。亡くなってしまったという事実より、遺された人たちの気持ちを考えたら、本当に悲しくなった。

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過去に何度かDIAMOND☆YUKAIにインタビューしたことがある。最近もRED WARRIORSとしてのYUKAIとSHAKEにインタビューした。そのときにも出た話題だし、過去にも何度か聞いた話だ。RED WARRIORSの再結成/再始動に積極的なことについて問うと、かならず言われるのが「だって、死んじゃったら再結成したくてもできないでしょ。やりたくてもやれないバンドもいるんだよ」ということ。

もちろん、すべての再結成が肯定的なものばかりじゃない。RED WARRIORSだって解散した1989年の時点では、絶対に再結成はないと思ってたし、最近ではユニコーンやDEAD ENDみたいにそれこそ再結成がありえないようなバンドが、全盛期のメンバーで復活してくれた。

すべての再結成が受け入れられるわけではない。でも、それが最高のものだったら、うれしいに決まってる。「いつかは……」なんて勝手に夢見て、長生きするのもいいじゃないか。生きる楽しみがひとつでも多いほうがいいじゃないか。

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これでもう、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが再びあの4人でステージに立つことはなくなった。「これで本当に伝説になった」って言う奴もいるだろうけど、そんなのクソだ。クソ食らえ。

自分の中で、ずっとミッシェルを聴き続けるかぎり、伝説なんかにならない。ずっと終わらないんだよ。ずっと生きてる。伝説とか安っぽい言葉使うなよ。

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何が言いたかったんだろう。酔った状態でこんな文章、書くもんじゃないね。でも、どうしても形として残しておきたかった。きっと朝起きて、この文章を読んで凹むんだろうね。でもいいや。今日ばかりは、どうしても吐き出しておきたかったから。

「さよなら」とか「ご冥福をお祈りします」とか、そんな言葉は書くつもりはない。ただ「ありがとう」って伝えたいだけ。しばらくは曲を聴くのもつらいだろうけど、また爆音であなたのカミソリギターを何度も何度も聴くつもり。だから、そのときまで。またね。



▼The Birthday「NIGHT ON FOOL」(amazon:日本盤

投稿: 2009 07 23 03:43 午前 [THEE MICHELLE GUN ELEPHANT, 「R.I.P.」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2006/05/25

Midnight Bankrobbers『冬のピノキオ』(2006)

 多分、誰もが今のROSSOの状況に対して妙な違和感みたいなものを感じてるんじゃないかな‥‥少なくとも、俺はどうにもしっくりこないものがあるんだわ。昨年夏にいきなり登場した、このMidnight Bankrobbersというチバとイマイによる弾き語りユニット。単なるライブでのお楽しみ企画だと思ってたら、いきなりアルバムまで作っちまう。その後に発表された、ROSSOニューアルバム「Emissions」リリースの情報と、第2期ROSSOが今作でファイナルという事実。そして本日、照井がベンジー(浅井健一)のソロ作に参加していることが発表されて‥‥

 本人達からのオフィシャルコメントがないので、何をどう信じていいか判らないし、本当にどうなっているのか全く見えてこない。これが今のROSSOを取り巻く現状。まぁとにかく、あと2週間もしたらリリースされるアルバムを待つしかないか。

 その前に、この作品についてちょっと触れておきましょう。実は昨年末、このMidnight Bankrobbersをイベントで観るチャンスがあったんだけど‥‥遅刻して観れなかったんだわ。噂で「2人してエレキで弾き語りしてる」なんて話が伝わってきてたんだけど、実際に出来上がったアルバムは、まぁ確かにその言葉通りではあるんだけど、もっと自由度の高い、とても実験的なロックアルバムだったなぁと。多分ミッシェルやROSSOでのストレートなロックンロールを期待したファンには辛い内容かもしれないけど、こういう要素はミッシェル時代からあったはずだし、要するに見せ方・聴かせ方なんだと思うのね。これが現在の、2006年のチバの表現方法なんだろうな、と。

 全17曲中10曲がインストナンバーという暴挙ぶりに、このユニットに対する自由度が伺えるし、歌モノにしてもポエトリーリーディング的なものが多い。中にはドラムが入ってる曲もあって、それを叩いてるのが元thee michelle gun elephantのクハラカズユキだというんだから、笑える。ま、だからといってこれがミッシェルというわけではないんだけど。

 でも、同時にミッシェルでもROSSOでもあるんだよね、矛盾してるけど。要するにそれらのバンドの中にあるセンチメンタルな要素だったり、実験的な要素だったりを抜き出して、それを2006年に追求したらこうなった。そういうシンプルな作品なんじゃないかな。決してこれがやりたいからROSSO第2期が終わるとは思えないのね。最初聴いたときは、次につなげるためのアク抜き程度にしか思ってなかったし。けどこうなっちゃうと、このアルバムの存在が重要な意味を持つのかもしれないなぁ‥‥実際にはないんだろうけど。

 評価は人によって分かれる内容だと思うけど、俺は好き。チバのこういう面が好きだったからさ。



▼Midnight Bankrobbers「冬のピノキオ」(amazon:日本盤

投稿: 2006 05 25 09:24 午後 [2006年の作品, Midnight Bankrobbers, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/10/12

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT Last Heaven tour 2003@幕張メッセ(2003年10月11日)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのラストライヴってことで、多くのファンにとっては非常に感慨深い、歴史に残る涙モノのライヴだったんでしょうね。確かにロックバンドとしては理想的な、本当に素晴らしいステージだったと思います。けど、正直なところ俺はそこまでの思い入れもないし、やっぱり悲しくないのに「悲しかった」とか「泣いた」とか嘘は書けないので、フラットな気持ちで書きたいと思います。

  そう、そのライヴ自体も非常にフラットな気持ちで接することが出来たんですね。幕張メッセまでの道中、ずっとミッシェルのアルバムや今日リリースになった "エレクトリック・サーカス" のシングルを聴いていたんですが、これまで同様、普通にライヴに行く感覚だったんですよね。そりゃ当たり前か。実際ライヴに行くわけだし。けど、そこには前夜まで感じていたセンチなものは一切なかったわけで。単純に「あーミッシェルのライヴ楽しみだな~」って感覚。それが逆に良かったのかもしれないね。

  当初の予定と大幅に会場内のレイアウトが変わり、追加券も発売され、結局1万人近い人数(実際何人入ったのか判りませんが、多分これくらいは確実に入ってますね)が幕張メッセに集結。今回は事前にチケットとリストバンドを交換してからの入場ってことで、非常にスムーズに入場することができたんじゃないでしょうか。少なくともあれだけの人数がいる中で、ものの十数分程度で入場出来たのは奇跡的(ま、中に入ってからまた並ぶわけですが)。そういう意味ではイライラ指数は低いままでしたね。

  入場して、俺は結構後ろの方で観ることにしました。今回、会場内が広いってこともあってステージ左右にスクリーンが用意されてまして。ま、メンバーを目視で認識することは不可能でしょうから、もうスクリーンで観れればいいか、どうせ曲に合わせて歌って踊って、そっちに夢中になるだろうから‥‥って最初から緩い感じ。

  開演時間(18:30)間近に、急にS.E.がROLLING STONESの "Sympathy For The Devil(悪魔を哀れむ歌)" に変わった途端、会場から大きな歓声が‥‥ま、この曲が終わってもライヴは始まらなかったわけですが。その後もイギー・ポップが流れたり、THE DOORSの "The End" が流れたりで‥‥って、めっちゃベタじゃんか。しかも "The End" が流れ始めたの、19時ちょい前ですよ。そこからあの10分前後ある曲が始まっちゃって‥‥30分待ってる間、一緒にいた友人と話していたから退屈することはなかったんですが、それにしても‥‥

  と思ってたら、急に会場が暗転して、お約束の "ゴッド・ファーザー愛のテーマ" が。会場に響く歓声と奇声。そして現れたメンバー4人。特に気構えた様子は感じられる、いつもと同じ感じだったように見えました。そしてテンションがドンドン高まるオーディエンスをなだめるかのようにスタートしたのが、意外や意外 "ドロップ" だったという。開演前に「ミディアムヘヴィの緩めの曲からスタートするんじゃないの?」とか言ってたら、本当にそういう展開になってちょっと驚き。そう、ミッシェルにとっては「最後の~」というよりも、ツアーの最終日といった感覚が強いのかな‥‥いや、そんなことないか。今日でお終いってみんな自覚してるはずだし。そんな深読みを勝手にしてると、"ゲット・アップ・ルーシー" や "バードメン"、"デッド・スター・エンド" という怒濤のアッパー攻撃。既にこの時点で汗ダクダク状態。歌えや踊れやでひとり大はしゃぎ。

  途中 "ストロベリー・ガーデン" なんて懐かしい曲も挟みつつ、"アッシュ" や "フリー・デビル・ジャム" といった「GEAR BLUES」の曲、そして最新作「SABRINA NO HEAVEN」から "デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ" で更に攻め続ける。一瞬でもこちらに休む隙を与えないつもりか、こいつら‥‥かと思ったら今度はファーストから "I was walkin' & Sleepin'" と "ブラック・タンバリン" を持ってくるし。うわー共に懐かしい曲だなぁ。最後だからというよりも、今回のツアーはこういった懐かしい曲も日によっていろいろやってるのがファンじゃない俺にも嬉しいし、有り難い。更にこの後 "深く潜れ" だもんなぁ。ここで思いっきり鳥肌立ったよ。凄く好きなんだよね、この曲。前にもライヴで聴いたことあったけど、最後にもう一回聴けて嬉しいです。そしてフジロックでもやってくれた "カルチャー" で飛ばして、同じく「chicken zombies」から名曲 "ブギー" が。ここでやっとゆっくり出来るというか、じっくり観れる状態になったんだよね。歌に聴き入って、アベのギターに聴き入って。もうずっと鳥肌立ちっぱなし。

  そんな強烈なインパクトをもった曲の後だからなのか、続く "赤毛のケリー"、"ゴッド・ジャズ・タイム" は何故かピンとこなかったんだよね‥‥個人的に一番思い入れがないアルバム「Rodeo Tandem Beat Specter」の曲だったからなのか、単に疲れてきたのか‥‥判らないけど、何故か急に醒めて冷静に観ちゃったんだよね。それは "エレクトリック・サーカス" が終わるまでずっと続いたのね‥‥この曲の時だけ両脇のスクリーンが消えて、ステージ後方のカーテンが開いて、後方一面がデカいスクリーンになっているという仕掛けがあったんだけど、それすら醒めた目で観ちゃってた。「ああ、劇的に盛り上げようとしちゃって‥‥」とか皮肉混じりに。何故なんだろう‥‥

  けど、そんなのも続く "ミッドナイト・クラクション・ベイビー" で吹っ飛び、名曲 "ベイビー・スターダスト" ではっちゃけ、"スモーキン・ビリー" で大合唱し、"リリィ" で踊り狂い。一瞬「このまま "G.W.D" に突入か!?」とか思ったら、何故が唐突に本編終了。会場中のみんなが「‥‥へっ!?」ってなったみたいで、あまりに唐突すぎて最初は理解出来なかったみたい。アンコールを求める拍手や歓声もイマイチまとまりがなかったしね。

  けど、4人は戻ってきた。やっぱり嬉しいよね、素直に。チバの「どっか行こうぜ」の呼びかけと共にスタートしたのが、"GT400"。ライヴではテンポが早くなってて、非常に心地よいビートなんだよね。歌も合唱しやすいし。とにかく気持ちいい1曲。そしてレゲエのリズムに合わせてチバが「Bye bye baby!」とかいろいろ叫んでから "リボルバー・ジャンキーズ" のレゲエアレンジがスタート。サビの部分だけ歌った後、テンポが速くなってアルバムバージョンに。この曲も合唱向きというか、コール&レスポンスに打って付けなんだよね。いい具合に再びエンジンがかかり始めたところで、終わりが近づいていることを我々に示す "ジェニー" が。周りのみんなが、ここぞとばかりに踊りまくる。余力を残さずにここで力尽きるかの如く。そして笑顔のメンバー。再びステージを去っていき、再びアンコールを求める拍手。今度は素晴らしい一体感。もう1曲、みんな「あの曲」を最後に待ってるんだろうね‥‥

  アンコールに応え、三度ステージに現れたミッシェル。恐らくこれが本当に最後の曲だろう‥‥そう確信していたら、あの強烈なコードストロークが。やはり彼等が最後の最後に選んだのは "世界の終わり" でした。「デビュー曲でバンドの歴史に幕を閉じる」とか「解散=正しく世界の終わり」とか、みんないろいろ推測したがるだろうけど、ここは純粋に「最後にこの曲をやりたかったから」でいいんじゃないかな。みんなも聴きたかったし、そしてバンドもやりたかった。だからこそ、あの曲のイントロが会場に響いた瞬間の歓声はそれまでで一番大きかったものになったんだろうし。本当にいい曲だもんね。途中、アベのギター弦が切れるというアクシデントがあったものの、そのまま鬼気迫るプレイで最後まで乗り切りました。そしてエンディング。チバが最初にステージを去り、残された3人がアドリブでいろいろ弾いて、ギターのフィードバック音を残したまま、約2時間に及ぶライヴは終了。珍しくアベが「ありがとう。」と一言喋り、客も大感激。もの凄いリアクションだったよ。そしてウエノが去り、クハラが去って行き‥‥両脇のスクリーンに

   Thank You Rockers I Love You

の文字が。ライヴが終わっても会場内に響くミッシェルの曲(客出しS.E.にミッシェルのインストナンバーを使うという憎い演出が)。名残惜しんでなかなか退場しない者、CDを流してるだけなのにダイブを始める者、「ミッシェルありがとー!」と泣きながら叫ぶ者、ただ笑顔で「いいライヴだったね」と会場を後にする者‥‥1万人もいれば1万通りの「人それぞれ」があるでしょう。俺はというと‥‥もう「果てた」といった感じでしょうか。笑顔というよりも‥‥いいライヴだったなぁと反芻する感じ? ライヴ終了から数時間経った今でもその気持ちに変わりはなく、とにかくただ「いいライヴを観たなぁ」という気持ち。

  この手のバンドが数百人程度のライヴハウスには掃いて捨てる程いるわけですが、そんな中で幸運にも大成功を手にした彼等。それはただラッキーだったからではなくて、それに伴う実力といい曲が沢山あったから。そのスタイルや佇まいがカッコイイからといった理由もあるでしょうけど、その殆どの人が彼等の曲やライヴに惹き付けられた。勿論俺も。気づけばロックフェスでトリを務めたり、今回みたいにオールスタンディングで1万人以上もの人を集めてしまったり(ま、今回に関しては「解散」という要因が大きく関係してるんですが)。ひとつのロックバンドとして非常に理想的な形で成長・成功していき、そして惜しまれて解散していく。多分今日のライヴはファンにもファンじゃない人にもずっと心に残るライヴになったんじゃないでしょうか。

  そう、解散云々は関係なく、今日のライヴは「いちロックバンドとして理想的なライヴ」だったと思いますよ。万単位の人間を相手にあそこまで満足のいくライヴを繰り広げたんですから。そりゃね、あれも聴きたい、これも聴きたいっていう願望はいくらでもありますよ。けど最大公約数の人間を満足させるに十分なセットリスト・内容だったのでは?と思うわけで。各アルバムから満遍なくプレイされていたし(結局今回は「SABRINA HEAVEN」から1曲もやりませんでしたが)、曲数や演奏時間も満足のいくものだったし。「最後だから、やれるだけやれ!」ってわけでもなく、ただ単にツアーファイナルとしてやったかのような構成。何も知らずにこれ観たら、「ああ、今回のツアーもよかったから、また次のツアーにも行こう!」とか絶対に思ったはずだもん。現に俺、そういう気持ちになったし。そしてそう考えた時に初めて「‥‥そうか、もう『次』はないんだっけ‥‥」と気づいたわけで。

  今はまだ残念ですとか惜しいバンドをなくしたとかそういった気持ちはないんだけど‥‥時間が経てばそういった「喪失感」を痛いほど感じるようになるのかなぁ‥‥。


[SETLIST]
01. ドロップ
02. ゲット・アップ・ルーシー
03. バードメン
04. デッド・スター・エンド
05. ストロベリー・ガーデン
06. アッシュ
07. フリー・デビル・ジャム
08. デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ
09. I was walkin' & Sleepin'
10. ブラック・タンバリン
11. 深く潜れ
12. カルチャー
13. ブギー
14. 赤毛のケリー
15. ゴッド・ジャズ・タイム
16. エレクトリック・サーカス
17. ミッドナイト・クラクション・ベイビー
18. ベイビー・スターダスト
19. スモーキン・ビリー
20. リリィ
-Encore-
21. GT400
22. リボルバー・ジャンキーズ
23. ジェニー
-Encore2-
24. 世界の終わり



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『エレクトリック・サーカス』
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投稿: 2003 10 12 12:00 午後 [2003年のライブ, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/10/11

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『エレクトリック・サーカス』(2003)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはこの曲のリリースと同時に本日10月11日、幕張メッセでのライヴを最後に解散します。そういうことを踏まえてこの曲を評価しようとすると、どうしても違った見方・違った解釈をしてしまいそうなので、敢えて解散という現実から目を逸らしてこのシングルについて語ってみたいと思います。難しいとは思うけど‥‥

  ミッシェルのシングル曲でここまでメロウな曲は多分初めてなんじゃないかな。いや、当然これまでの楽曲全てが冴えたメロディを持ったロックナンバーばかりだったけど、これはちょっと異色作かな、と。勿論これまでと比べればの話だけど。ただね、これは今年に入ってからリリースされた2枚のアルバム、「SABRINA HEAVEN」と「SABRINA NO HEAVEN」、そしてそこから派生したシングル「Girl Friend」の流れから誕生した、いわば延長線上にある楽曲ですよね。特にタイトル曲、"エレクトリック・サーカス" なんて正にそれだし。ズッシリとしたリズムに乗る歪みまくったギターのストローク、そこに重なる枯れたアルペジオ、そしてチバユウスケの絶叫。何も変わってない。何も変わっていないんだけど、何かが違う。質の違い? いや、もっと本質的なものが変化した? ただ、ライヴを観る限りでは、俺が最後に観た'97年頃と今年のフジロックとではその違いは判らなかったんだよね。バンドとしてのオーラはモンスター級になっていたけど、何も変わっていないような。けど何かが違う。

  例えばこれが、カップリングの "デビル・スキン・ディーバ"みたいなタイプだったら判りやすいのね。これはもう完全にアルバムの流れにある、ある意味プログレッシヴな1曲。コード自体は4つしか使っていなくて、所謂『強弱法』(Aメロで静か/弱く演奏・歌い、サビで一気に爆発する表現方法。THE POLICEの "Every Breath You Take" が始まりと言われ、その後NIRVANAの "Smells Like Teen Spirit" やRADIOHEADの "Creep" といった楽曲で更に広まった。グランジ以降に多い表現手段)を用いたアレンジなんだけど‥‥ミッシェル流グランジといえば聞こえはいいけど、もっとこうプログレッシヴというか。ジャンルとしてのプログレじゃなくてさ‥‥単調なようでかなり起承転結がしっかりしてるし、6分以上って単調なコード進行なのに全然飽きさせない。もうそれってミッシェルの完全勝利じゃない? そういう意味では完全にアルバムと同方向の流れなんだよね。

  しかし、タイトル曲は同じ方向を向きながらも、ちょっと『質』の違いを感じさせる。それは何故だろう‥‥チバの歌い方? サウンドのミキシング? 各楽器のタッチの違い? いや、判らない。本当に判らない。ミッシェルらしさを十分に感じさせながらも、歌詞やメロディから‥‥閉鎖感みたいなものをちょっと感じたり。

  ってここまで書いて、結局「解散」という事実からは逃れられないのかな‥‥と改めて思ったり。ああ、ダメだ。これ何回か書いては消して、また書き直しては消してということを、かれこれ2時間もやってるんだよね。解散に触れずに曲について書こうと思ったけど‥‥どうしてもそこに行き着いてしまう。

  単純に、いいメロディを持った、男らしいロックナンバーと言いたいだけなのにね。

  よりによって、何で最後の最後にこんな泣きのメロディを持ったミディアムテンポの曲をシングルで出すかなぁ。確かに "デビル・スキン・ディーバ" はシングル向きじゃないよ。人によっては疾走感に溢れるアンセムナンバーを期待してたはずなのに。そういう意味では「本当にこれがファンが望んでいた『世界の終わり』なのか?」と思うわけで。ま、思い悩んだところで彼等の解散に変わりはないわけで。

  でも、この曲に出会えたこと、それは素直に嬉しいよ。やっぱり昨年以降のミッシェルはバンドとして本当にいろんなことにトライしようとしていた、そしてそれを実践してきたんだなぁ、と。改めて思いますよ、ホントにすげーバンドだとね。

  さぁ。泣いても笑っても今日が最後の日。決して俺にとって「世界の終わり」でも何でもないわけだけど‥‥やっぱり気持ち的に晴れやかじゃないよね。いつも思うけど‥‥こうやって偉大なバンドの最後の日って、何だか「ロックのお葬式」を執り行うみたいで凄く嫌な感じなんだよね‥‥。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『エレクトリック・サーカス』
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投稿: 2003 10 11 12:00 午前 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/10/10

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『GEAR BLUES』(1998)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが1998年11月にリリースした、通算4作目のフルアルバム「GEAR BLUES」。リリース当時、このサイトを始める直線だったんだけど、もうね、このアルバムの話題ばかりだったよ。ミッシェルがとんでもないアルバムを作っちまった、って。本当にギリギリのところまで到達しちゃった感が強い、速さやフットワークの軽さよりも重心の低さ、縦ノリよりも横ノリ、そういった要素を重視した14曲、55分の快楽。なんて言い方はカッコつけ過ぎか。

  前作「chicken zombies」のところでも書いたように、あのアルバムが出た頃、そしてそれから暫くは「このアルバムを越えるのは正直難しいだろうなぁ‥‥」とずっと思ってたのね。ところがさ、それから1年近く経ってリリースされた2枚のシングル、"G.W.G" と "アウト・ブルース"。これが「chicken zombies」の楽曲群よりも遙か先に行っちゃってたのね。特に "G.W.G"‥‥ワザとそんなにいい録音状態じゃなくして、いかにもなガレージ臭をプンプンさせる全体像。正直あれを初めて聴いた時は「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」って思ったもんね。そして "アウト・ブルース" に至っては、初のオリコン・トップ10入りを果たしてしまうんだから。とうとう時代がミッシェルに追いついた‥‥そんな気さえした程、この頃の彼等は上へ上へと昇りっぱなし。そして豊洲でのフジロック‥‥もはや伝説でしょ。マジに時代が追いつく瞬間ですよ、この辺の事象は。

  そういう環境の中で制作され、完成したのがこの「GEAR BLUES」。悪いわけがない‥‥っていうか、言葉にならない程に素晴らし過ぎるのさ。理想的なロックアルバムとか、日本のロックの宝とか、そんな豪勢な比喩はどうでもいいよ。頭からケツまで、ただひたすらカッコイイ。ブッチギリの1枚。

  このアルバムの凄さはズバリ上に書いたように「スピードよりも重さやグルーヴ感」を前面に打ち出したヘヴィサウンドでしょう。ヘヴィといっても昨今のラウドロックのそれではなくて(当たり前でしょ!)、もう全て‥‥彼等が持つ空気感から世界観、表現される一音一音、それによって構成される演奏・楽曲‥‥全てがヘヴィなわけ。「chicken zombies」がどんなものでも簡単に、スパッと綺麗に切れるナイフだとすると、この「GEAR BLUES」は何百キロもありそうなデカい斧。そんな気がしない?

  1曲1曲の素晴らしさについては敢えてここでは書きません。それは聴けば簡単に判ることだから。つうかさ、俺にとってはこのアルバムって "ウエスト・キャバレー・ドライブ" から "ダニー・ゴー" までの14曲が並んだ構成で1曲といった感じなんだよね。「GEAR BLUES」っていう、人間の狂気を切り取ったかのようなサウンドトラック。今でもムシャクシャした時や仕事で疲れて頭空っぽにしたい時は、このアルバムを大音量でかけて車飛ばすもんな。

  このアルバムの頃からつい最近まで、俺は彼等のライヴに足を運ぶことがなかったわけだけど‥‥後悔? そりゃね、観たかったよ。けどチャンスがなかっただけ。そして明日、俺はもう1回だけこの目に焼き付けてくるわけだ‥‥

  これより上はないってくらいの高みまで達し、臨界点を突破するかしないかの状態だったミッシェル。それより上に行ってしまうと、どうなるんだろう‥‥これよりも「良い」アルバムは作れるかもしれないけど、本当にこれより「凄い」アルバムが生まれることがもう一度あるのか。俺にとっての、この長い旅は結局その後4年以上もかかるわけです‥‥。



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投稿: 2003 10 10 12:00 午前 [1998年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/10/09

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『chicken zombies』(1997)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが1997年11月にリリースした、通算3作目のフルアルバム「chicken zombies」。リリース当時、これ程衝撃を受けたロックアルバムはあの時代にはなかったよね。いや、俺だけか。あの頃、ギターロックに対して見切りをつけそうになってた俺を再び振り向かせてくれたのが、このアルバムでした。

  ミッシェルはデビュー後間もなくに、深夜番組でよく "世界の終わり" や "ブラック・タンバリン" のPVが流れてたので、それを切っ掛けにファーストアルバム「cult grass star」に手を出したんですが、そんなにハマらなかったんですよね。上記の曲は勿論気に入っていたんですが、そこまでのめり込む程じゃねぇじゃん、と。続くセカンド「high time」に関しても、印象は前よりもかなりいいんですが、本気で気に入る程じゃないな、と。この頃、初めて彼等のライヴに行ったんですが、もう音源よりもライヴの方が数万倍いいのね。何でこの勢いがCDで再現できないのかなぁ‥‥ってずっと思ってて。

  そんな思いでちょっと離れたところから彼等の動向を伺っていた俺ですが、シングル "カルチャー" や "ゲット・アップ・ルーシー" でガツーンとやられて。「ああ、段々『あの感じ』に近づいてるじゃんか」って。そして決定打となった "バードメン" と、このアルバム。もうね、最初から瞳孔開きっぱなし、アクセルは全開で踏みっぱなし、みたいなそんな世界を両肩掴まれて身動き取れない状態にされて無理矢理見せられてる、そんなアルバム。

  ホント、1曲目の "ロシアン・ハスキー" から最後の "アイブ・ネバー・ビーン・ユー (King Time)" までのトータル45分がアッという間。例えばファーストアルバムはいい曲が多かったけど、デビューアルバムとしては大人しすぎたし、セカンドは前半までそういった空気を引きずり、後半になってドンドン盛り上がっていくという、ちょっと勿体ない作風だったのに対し、このサードアルバムではとにかく走りまくり。勿論全曲アッパーな曲ばかりじゃないんだけど、全体の空気としてそういう殺伐さがあるのね。そう、だからこそ中盤最大のハイライトである "ブギー" が映えるわけさ。

  とにかく前半の畳み掛けは圧巻。 "ロシアン・ハスキー" で飛ばして、"ハイ!チャイナ!" で一体感を得て、"マングース" に身を委ねて、"ゲット・アップ・ルーシー" の再録音バージョンで身体中の血液が逆流し出して、"バードメン" で最初のピークを迎える。そしてその先に "ブギー" があるから余計に泣けるんだよね。ここでやっとミッシェルがただのロックンロールバンドじゃないことに気づくわけ。いや、気づくの遅すぎ!とか言わないそこ。

  リリースから6年経った今聴くと、そんな前半よりも後半部はちょっとテンションが落ちるような気がしないでもないけど、多分それは前半の流れがカッチリし過ぎてるからでしょう。雰囲気モノのインスト "COW 5" といい、アルバム用に勢いが良くなった "カルチャー" といい、意外とシングル曲よりも好きな "サニー・サイド・リバー" といい、リフが好みな "ブロンズ・マスター" といい、これまた6分以上もあるミディアムヘヴィ~後半の盛り上がりが凄まじい "ロマンチック" といい‥‥そうそう、ふたつの "アイブ・ネバー・ビーン・ユー" もね。全てのクオリティは前作以上。今聴いても全然色褪せてないしね。

  音楽的にも過去2作の集大成的な作品でありつつ、新しい領域にも踏み込みつつあるホントにいいアルバム。多分「1990年代を代表するロックアルバム100選」とかいう企画があったら、洋楽/邦楽関係なしにみんなが選ぶアルバムなんじゃないでしょうか。そんな気がします。

  当時は興奮しつつも「ああ、音楽的に完成されちゃったかな。この手のバンドって後は結局これの焼き直しになっちゃうしなぁ‥‥」なんて醒めてみたりもしたんですが‥‥まさかその1年後に、これをも軽く上回ってしまうモンスターアルバムを完成させてしまうとはね‥‥当時誰も考えなかったでしょうね。

  解散しても、音楽はずっと残る。5年後、10年後、20年後。彼等の音楽が風化しないためにも、我々は語り継いでいかなくちゃならない。その為にも、誰に何と言われようと俺は書き続けますよ。「chicken zombies」はすっげーアルバムだ、って。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『chicken zombies』
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投稿: 2003 10 09 12:00 午前 [1997年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/09/05

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『Girl Friend』(2003)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが今年リリースした2枚のアルバム、「SABRINA HEAVEN」と「SABRINA NO HEAVEN」は共にアルバム最後を同じ曲の別バージョンが飾っています。「SABRINA HEAVEN」では "NIGHT IS OVER"、「SABRINA NO HEAVEN」では "夜が終わる" といったタイトルで。彼等にしては珍しい、ピアノを導入したスローバラード風のインストナンバーなのですが、実はこの曲、同時に歌の入ったバージョンもレコーディングされていて、そちらは単独シングルとしてリリースされることになったのでした。それが今回紹介する"Girl Friend"という曲。

  確かにこれ、ミッシェルにしては異色作ですよね。ガツガツしたイメージの楽曲ばかりがシングルとしてリリースされてきたわけですが、特にここ2枚‥‥"太陽をつかんでしまった"といい、この"Girl Friend"といい、それまでの彼等からするとかなりイメージの違うシングルナンバーなんですよね。特に"Girl Friend"はその楽曲スタイルだけでなく、歌詞の面においても異色作と呼ぶに相応しい内容になってるんですから。

  最初この曲を聴いた時‥‥絶対にそういう人が多かったと思うんですが‥‥BLANKEY JET CITYの "悪いひとたち" を思い出しちゃったんですよね。いや、比べること自体が間違ってること、ちゃんと判ってますよ。ただね、ブランキーにとってあの曲がいろんな意味でターニングポイントになったのと同様、ミッシェルにとってもこの"Girl Friend"ってもしかしたら‥‥って思ってたんですよね。それまでの彼等と比べるとかなり実験色が強い「SABRINA HEAVEN」と同時にレコーディングされたものですし、このままいったらこのバンド、どんどん変化し続けていくのかなぁ、けどそれって似合ってないよなぁ、とか何とか考えたりしてね。よくミッシェルってTHE ROOSTERSと比べられることが多いと思うんですが、このシングル曲を聴いてしまうと否が応でもTHE ROOSTERSの中期以降を思い浮かべちゃいますよね。ま、結局は要らぬ心配だったわけですが。

  歌詞については、つい最近(というは、たった今放送を観終えたばかりなのですが)放送された「トップランナー」という番組内でチバユウスケが話していたので、それを観てもらえば判ると思うんですが‥‥いや、俺の口から今更説明するまでもないよな。あれが全てだし。

  そういうスタイルの楽曲でも、「歌う」のではなくて「がなる」チバ。正直なところ、その一点が安心要素なんですよね。もっと落ち着いた歌い方も出来るはずだし、むしろこういう静かな曲にはそっちの方が似合ってるんじゃ!?なんてこっちが余計な心配をしてしまったり。けど、チバはそうしなかった。「僕はあの娘と二人でぶっとんでいたいのさ」と歌い、でも「この子達は守りたい/I LOVE YOU.」と何度も繰り返す。歌の表現スタイルはいつもと同じようでも、内容はいつも以上に愛や優しさに溢れてる。どちらかというと排他的な歌詞が多かったチバにしてみれば、単純に気まぐれなのかもしれないけど‥‥こういうミッシェルを、もっと観てみたかったなぁ、聴いてみたかったなぁ‥‥

  正直なところ、この曲がラストシングルにならないでよかったなぁって思ってます。最後の最後、「けじめ」としてリリースするシングルは恐らく王道スタイルの疾走チューンなんでしょうね。ま、そんな散り際も彼等らしいんですけどね。

  これ‥‥ライヴで聴いたら俺‥‥絶対に泣くわ。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『Girl Friend』
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投稿: 2003 09 05 12:00 午前 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/08/31

ROSSO『BIRD』(2002)

  '02年、いきなり登場したROSSOというトリオバンド。ボーカル&ギターにチバユウスケ(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)、ベースに照井利幸(元BLANKEY JET CITY)、ドラムにMASATO(ASSFORT)という一部納得、一部異種格闘技的な組み合わせによるこのバンド、しっかりアルバムまで作りライヴ三昧。ブランキー解散後、照井にとって一番大きなアクションであり、そしてチバの参加によってミッシェルが今後どう転がるのか、等々とにかくいろんな意味で注目に値するバンドだったのは確かで、恐らく多くの人がライヴで目にする前にこのバンドの音を「ブランキー+ミッシェル」と安直に想像したことでしょう。勿論この俺もそんな中のひとりであって、そこまで大きな注目というのはしてなかったんですね。ま、ブランキー自体そこまで熱中する程好きというわけでもなかったし、ミッシェルに対しても以前程興味が持てなかったし。

  けどね、実際に聴いた音‥‥最初に接したのは、アルバムリリース前に行われた「FACTORY」出演時のテレビ放送でした‥‥いや、最初に聴いた1曲、"シャロン"のインパクトが強烈で。買うつもりのなかったアルバムを速攻でネット注文したのは言うまでもありません。

  チバが歌詞を書いて歌ってしまえば、それはミッシェルと比較されても仕方のないことでしょう。曲自体は「ROSSO名義」で書かれているのでどの曲のどのパートを誰が作ったというのは正直判りませんが、確かにブランキーやミッシェルにも通ずる要素はそこら中から感じることができます。しかし、明らかにそれらふたつのバンドとの違い・違和感が大きいのも事実。

  ファーストアルバムってことでバンドとしての「初期衝動性」を強く求めたようなサウンドは非常に素晴らしいと思うし、恐らく二度とこういう「空気感」は作り出せないかもしれない。例えば初期数枚のブランキーやミッシェルのアルバムに感じられたモノと同様に‥‥けど、それでいいんだと思います。そういった「空気感」を求めて、彼等(特にチバ)はこのバンドに参加したのでょうし‥‥いや、あくまで想像ですが‥‥勿論、初期衝動を強く求めたからといって、若手バンドのような蒼いサウンドになるわけでもなく、MASATOが参加したからといってハードコアなパンクサウンドになるわけでもなく、そこはあくまで「照井+チバ」から生まれ得る楽曲なわけで。けど、ただの「ブランキーやミッシェルの亜流」には終わらない「ROSSOらしさ」も十分に感じられるわけで。むしろこれだけアクの強い表現者が別の場所で違ったことをやろうとしても、古巣と比べられてしまうのは宿命であり、そして全く違ったものなんて作れないわけであり、そして我々もそういった類のモノは求めていないわけで。そういった意味ではこのアルバム、多くのファンも納得がいく作品だったんじゃないでしょうか。

  このアルバム最大のポイント、個人的には「リズム感」だと思ってます。中村達也でもなくクハラカズユキでもない、新しいリズム感を得たことによる、それまでのバンド(ブランキーやミッシェル)とは異なった個性。"シャロン"や"星のメロディー"なんていう名曲達はそれこそそのふたつのバンドでやったとしても全然違和感がないし、むしろそうすることで新たなキラーチューン誕生ということになったのかもしれません。が、これをROSSOというバンドで、MASATOというドラマーによって演奏することによって(あるいはチバがメインでギターを弾くことによって)全く別物の、新しい世界が生まれたわけですから‥‥ミッシェルファンからすれば「これをミッシェルでやれよ!」と当時お怒りだったかもしれませんが、そこまで思い入れの強くないロックファンからすれば「普通にカッコいい、新しいロックバンドが、すっげーカッコイイ曲を沢山ドロップしてくれた」っていう新しい出会いがあったわけで。特に俺なんかはその後者に比較的近い思いでしたしね、リリース当時。

  その後、ミッシェルの活動が活発になっていき、ROSSOの活動は小休止といった感じになっているのか、あるいは「1回こっきりのユニット」だったのかは判りませんが‥‥今後(10/11以降)チバは再びROSSOに向かって行くのか、あるいは全く別の新しいプロジェクト(バンド)に着手するのか‥‥個人的にはこのバンドの「先にあるもの」を見て(聴いて)みたいと思ってるんですけどね‥‥



▼ROSSO『BIRD』
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投稿: 2003 08 31 12:00 午前 [2002年の作品, ROSSO, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/08/30

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA NO HEAVEN』(2003)

  結果論でしかないけど、確かにここ数年のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを見ていて「‥‥そろそろ(解散)かなぁ?」なんて思ってた人、いたんじゃないでしょうか? 少なくとも、自分はそうでした。アルバム「CASANOVA SNAKE」以降は特に、ね(実際、その類のことを掲示板等にも書いてきたしね)。でもこのバンドの場合、そういった噂と対峙していきながら、どんどんデカクなっていくんだろうなぁ‥‥そういう期待感も同時にあったのも確か。だから嫌いになれなかったんだよね、どんなに醒めた目で見つめていようと。

  この3月にリリースされたアルバム「SABRINA HEAVEN」は久々の傑作と呼ぶに相応しい内容でした。その気持ちは今でも変わりありません。このアルバム制作におけるレコーディングでは、アルバムに収まりきらない程沢山の楽曲を制作・録音したと聞いていたし、実際アルバムリリースと同時に「初夏にミニアルバム「SABRINA NO HEAVEN」リリース決定!」と発表する程でしたしね。そして約4ヶ月後、ツアー終了前後にリリースとなったのがこのアルバム。全6曲、31分というランニングタイムは決して長くはないし、曲数的にもミニアルバムと呼べるものでしょうけど、内容的にはフルアルバム以上に濃いものになってるのではないでしょうか?

  「SABRINA HEAVEN」がどちらかというと(それまでの彼等からすれば)実験性の強い内容だったように思えるのですが、この「SABRINA NO HEAVEN」はよりプリミティヴで我々がよく知るミッシェルが顔を覗かせます。が、ただの「過去の焼き直し」に終わっていないのは聴いた人ならお判りいただけるでしょう。だって同時期に制作された楽曲だもん、ここの6曲だけが違ったものになるはずはないでしょう。単純に「あっちにはあの10曲が相応しかった、あっちの10曲を先に出したかった」からああいう選曲になっただけ。元々あるもの(録音した楽曲)全部を出すつもりだったみたいだし、でも2枚組にはしたくなかったからこういう形になっただけ‥‥ホントそれだけの理由なんでしょうね、こういう形にまとまったのは。

  ここには昨年秋のツアーでもいち早く演奏されていた楽曲も入っているし、アルバムリリース後に出演した「ミュージックステーション」で生演奏したことで話題となった2曲も入ってるし、チバユウスケが昨年やったバンド・ROSSOを彷彿させる楽曲も入ってる(当たり前だって、両方のバンドで曲作りに参加し、歌ってるのはそのチバ本人なんだから)。6~7分ある曲もあれば、いつも通りの疾走チューンもある。そう、逆に発表する順番は間違ってなかった。「SABRINA HEAVEN」という意欲作を先に発表することで我々の度肝を抜き、実はその延長線上にある作風ながらも何故か「従来通りの安定路線」的安心感を与えてくれる「SABRINA NO HEAVEN」を続けざまにリリースする。2枚組じゃなくてホントよかったな、と。これ2枚組だったら、衝撃強過ぎるのと同時にボリュームもあり過ぎて、1曲1曲とちゃんと向き合おうとしなかったかもね、俺ならさ。

  確かに普通のアルバムとして考えると6曲って短いし、ひとつのストーリーとしてのトータル・コンセプトみたいなのは皆無かもしれないけど‥‥だからこそ、純粋に楽曲の1曲1曲と向き合おうという気にさせてくれるし、そして改めてその1曲1曲の濃度に驚愕するという、ね‥‥ホントにスゲェバンドだわ、ミッシェルは。

  今後、バンドとして発表される新曲は10/11リリースの「エレクトリック・サーカス」というシングルに収録される2曲のみ。それ以降にリリースされる楽曲って、多分バンドの意思に反してリリースされる未発表曲だったりするのかもしれないけど‥‥バンドのイメージを著しく落とすようなモノなら正直この世に出さないで欲しい。それだけこのバンドに対しては「常にフルテン状態」というイメージがあったし、そして最後の最後までそうであって欲しいから。最後のシングルがどういった作風になるのかは現時点では判らないけど、真面目な話どういう曲を持ってくるのかが興味深いなぁと。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA NO HEAVEN』
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投稿: 2003 08 30 12:00 午前 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/03/04

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA HEAVEN』(2003)

  唐突ですが、まずは土下座します。ホントごめんなさい、ミッシェルファンの皆さん。

  正直、ここまですげーアルバムをミッシェルがまた作れるなんて、思ってもみなかったよ。俺の中ではやはり「GEAR BLUES」がピークなんだと判断下してたし。「CASANOVA SNAKE」も良いアルバムだったけど、決して100点をあげれるような作品だとは思わなかったし、「RODEO TANDEM BEAT SPECTER」なんてちゃんと通して聴いてもないしね。そんな感じだったので、完全に自分の中で盛り下がってたし、そこにきて2001年春から2002年末までバンドとしての新曲リリースが一切なし。更にチバはROSSOなんて始める始末。嗚呼、バンドってこうやって終わっていくのね‥‥と自分の中で決着がつきそうだったのに、レコード会社移籍しました、ツアー始めました、でアルバム作りました‥‥これがそれ、と。

  シングル「太陽をつかんでしまった」レビューで、俺は「これ1曲で今度のアルバムは名盤だ!と盲目的に決めつけたくない」と書きました。それはまだ、自分の中でミッシェルに対して何か燻ったものがあったからで、どうしても完全にスッキリしてなかったんだよね。きっと、このアルバム聴く前にライヴを観ちゃえば考え方も180度変わったんだろうけど、そうもいかず、結局今日この日までアルバムの視聴とか一切してきませんでした。いきなりアルバムを通して聴いて、そこで最終的な判断を下そう、自分の中で決着をつけよう、そう思ったのです。

  仕事が終わり、会社から一番近いCD屋に飛び込んでこのアルバムを購入しました。いつも使う近所のお店ではなく、会社周辺から自宅までの距離を爆音で、このアルバムを車内で聴きたかったからなんですね。

  もうね、1曲目"ブラック・ラブ・ホール"の、最初の一音で十分だった‥‥あの音が鳴らされた瞬間、空気が変わったもん。それに続くスキャット、そしてリフ‥‥ミッシェル以外の何者でもないのに、これまでの彼等とは違う何かも感じる。いや、四の五の言わず、とにかく最後まで聴けって‥‥かっけー‥‥それで十分。つうかそれ以外の言葉が浮かんでこないし。

  シングルのレビューでも書いたように、やはり全体的にジャムセッションから組み立てていったかのような楽曲が大半を占めていて、6分を越えるような長尺なナンバーが半数近くあるのね。けど、全然長さを感じさせないし、むしろシングルとして聴いた時は長さが気になった"太陽をつかんでしまった"ですら、全然8分超という事実を感じさせない。そんな長尺なナンバーの合間に"ヴェルヴェット"や"メタリック"のような、アッパーで短いナンバーが飛び込んでくる(短い、とはいっても全部4分超なんだけど)。"ブラック・ラブ・ホール"のギターソロに突入する前のアレンジとか"ヴェルヴェット"のメタルパーカッション辺りにKING CRIMSON的アプローチすら感じる今回のミッシェル。そう、ジャムの延長というよりも、そういうプログレッシヴな要素(ジャンルとしてのプログレではなく、文字通りの意味で)を所々で感じ取ることが出来ます。"ブラッディー・パンキー・ビキニ"の後半なんて、正にそれだしね。

  前半の、ヤケクソとも違う、テンションが異常に高いのにも関わらずヒンヤリとした冷たささえ感じる演奏に続いて、後半はジャジーな"マリアと犬の夜"で少々クールダウン‥‥すると見せかけ、途中から凄まじいテンションで音の塊を我々にぶつけてくる。"ジプシー・サンディー"なんてギターのストロークがレゲエ的なのでそれっぽい曲調なのかと思うと、また違った色を発してるし。決して派手な曲ではないんだけど、ユラユラと徐々に、徐々にと盛り上がっていく感じにゾクッとしたり。若干トーンダウンした空気を切り裂くようにスタートする"マリオン"は、ミッシェルの王道のように聞こえるけど、いやいや今までにないタイプじゃないか?とも思える、不思議な雰囲気の疾走ナンバー。叫びながらも、しっかり聴かせる要素を維持してるのはさすが。つうかホントかっけーの何のって。そしてハイライトとなる"サンダー・バード・ヒルズ"は、既に2001年のツアーから演奏されていたナンバー(だそう。俺はこの頃のライヴ観てないので、アレンジがどう変わったとか、その辺は全然判りませんが)。そうか、この曲から「今のミッシェル」はスタートしたのか‥‥いや、判らないけどさ。何だか判らないんだけど、とにかくもの凄い威圧感だったり刹那だったり高熱だったり絶対零度に近い冷たさだったり‥‥そういった「得体の知れないものの塊」がこの1曲の中でうごめいてる感覚‥‥カオスなんて一言では済ませられない「何か」を感じるわけですよ。決して「アルバムを大いに盛り上げて大団円」というタイプの楽曲じゃないんだけど‥‥何だかこのアルバムのラストにピッタリな気がする。そういう1曲。そして最後の最後に、エピローグともいえるインスト曲"NIGHT IS OVER"で静かに暗闇から抜ける、という‥‥"ブラック・ラブ・ホール"という「夜」に突入して、最後に"NIGHT IS OVER"‥‥計算されてるんだろうね、これ。

  まさかね‥‥まさか自分がまた、ミッシェルの新作でこういう気持ちになるとは思ってもみなかったのね。「GEAR BLUES」で感じた気持ちとはまた別のものなんだけど、何ていうか‥‥「ああ、こいつら、またやらかしやがったよ‥‥」という驚愕。恐怖すら感じるよね。で、こんなアルバム作っておいて、当のメンバーは「まだまだ行ける」とか言ってるし‥‥完成した時点で、既に「過去の通過点」として終了してしまってるのか!? 何だよ、このバンドは!?

  ‥‥とまぁ、グダグダと書いてはみたものの、まずはこれを読んだあなたがアルバムを聴かなきゃ何も始まらないよ。こんなの読んでる暇あったら、さっさとCDショップまで走りなって! へっ、買う金がないって!? 働け!そして稼いだ金でさっさと買って、可能な限りの爆音で聴けっ!!



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA HEAVEN』
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投稿: 2003 03 04 11:30 午後 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/01/09

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『太陽をつかんでしまった』(2002)

  まず最初に、自分が不真面目なミッシェルのリスナーだということを断っておきます。「CASANOVA SNAKE」の後あたりまではちゃんと聴いていたのですが、前作「RODEO TANDEM BEAT SPECTER」はシングル曲やラジオ/クラブで数曲聴いたのみで『自分の求める音じゃない』と判断して、未だに買ってないし通して聴いてもいない。ライヴに関しては「CHICKEN ZOMBIES」での千葉ルック公演を最後に5年以上観てないし、観たいとも思わない。そんな人間が書くレビューだということを最初に言っておきますね。

  というわけで、ミッシェルのCDを買うこと自体が2000年暮れのベスト盤とライヴ盤以来なもんで、ホント2年振りなんですよ。で、その2年の間に俺の彼等に対する興味も薄れていって、当初やる予定だった初期のアルバムレビューもそのままお蔵入りにしてしまう程だったんですね。何故そんな急激に彼等に対して興味を失っていったのか、今となってはその理由すら忘れてしまいましたし、もしかしたら理由なんて最初からなかったのかもしれません。

  ただ、これだけは言えます‥‥明らかにミッシェルというバンドは、前作辺りから音の触感が変わってきた、と。「GEAR BLUES」というアルバムである種奇跡的な瞬間をそのままアルバムに詰め込んでしまい、そのままのテンションで突っ走って「CASANOVA SNAKE」というアルバムを作ってしまった。そういう意味でベスト盤とライヴ盤を間に挟んで、一旦バンドとしての区切りを付けた(あるいはそんな意味なんてないのかもしれないけど)。そういえばこの頃、バンド解散なんて噂が頻繁に流れたもんね(で、それを逆手に取ったアルバム告知とかもあったし)。

  で、前作。変わったようで変わってない部分、変わってないようで変わった部分。俺が聴いた数曲から判断しただけで実際にはそうじゃないのかもしれないけど、既にその頃興味が薄らいでいたこともあって、そういう感想しか持てなかったのね。で、現在に到る‥‥前に、ROSSOがあったわ。そう、あれで俺自身の中ではかなり持ち返したのね。全然期待してなかっただけに、いきなり耳に飛び込んできた "シャロン" にノックアウトされて。アルバムもそこまで期待してなかっただけに、満足度もかなり高かったし。

  けどね‥‥それでもミッシェルというバンドには依然と興味を持てなくて。レコード会社移籍したとかツアー始めたとか、そういった話題が耳に入りつつも、新しい音源を聴くまでは何とも言えないなぁ、と思ってたわけ。

  12月に入って、某CS曲で流れた"太陽をつかんでしまった"のPVを観て、すっげー嫌な予感がしたんですわ。曲はジャムセッションの延長みたいな間延びしたヘヴィブルーズといった感じで、どことなくサイケな印象を受けるPV‥‥ベスト盤レビューの最後の方に書いた「正直、彼らが中~後期ルースターズのような実験的音楽に目覚めるとは思えないし」っていう言葉を思い出してしまって、ちょっと鬱な気分になっちゃうし。ああ、やっぱそっちに流れていくのかなぁ、とか勝手に思い込んじゃって。だからカップリング曲に期待してたこのシングルを聴いた時も、全てにおいて全然いいとは思えなかったわけ。掲示板にもそれらしいこと、書いたしね。ミッシェルファンには申し訳なかったけど。

  このシングルには初回限定盤があるのはファンならご存じでしょうけど、俺が買ったのもこの初回盤なんですね。で、一緒に付いてくるライヴDVD("水色の水"(ここでしか聴けない現時点では未発表曲)と"ベガス・ヒップ・グライダー"の2曲)を観て‥‥ちょっと印象が変わったんですよ。"水色の水"も、どっちかっていうと"太陽をつかんでしまった"の流れにある楽曲だと思うんですが‥‥ああ、なるほど、と。何か上手く言葉では言い表せないんだけど、感覚的に納得してしまったのね。この曲のバックでもサイケな映像(と呼んでいいかどうか‥‥)が使われているんだけど、"太陽をつかんでしまった"のPVよりも全然印象が良くて。多分ライヴだってのが良かったんだろうけど‥‥それにしても全然カッコ良さが違う。続く"ベガス・ヒップ・グライダー"も素直にカッコイイと思えたし、そこから本当なら "G.W.D" に続いていくんだけど、イントロだけでフェードアウトして終わってしまうという、正しく寸止め状態。これ、身体に悪いよマジ。

  ライヴDVDの2曲だけで俺の中の印象がガラリと変わったってのも、ファンからすれば何だか胡散臭い話かもしれないけど、DVD観た後に改めてシングル聴くと以前とは聞こえ方が変わってることに気づいて。あれっ、何これっ!?みたいな。

  全然シングルのレビューにならないと思うんだけど、あえて書きます‥‥この曲、絶対にライヴで聴いた方が印象がいいと思うわ。スタジオの中でジャムって作った曲っていうよりも、ライヴで演奏されていく過程で完成していった曲ってイメージが強いのね。だからいきなりスタジオ音源とかPV観てしまって違和感を感じたのかなぁ。あるいは俺の中のミッシェルに対する黒い部分がそう思わせたのか。とにかく、ライヴで聴く"太陽をつかんでしまった"は絶対にシングル音源の数十倍はカッコイイはず。カップリングの"ヴァレンタイン"は、まぁありがちなブギーかなぁ、ちょっと小さくまとまりすぎてないか?といった程度の印象。ま、アルバムには入らないだろうから、特には気にしないけど。そしてDVDと同じライヴ音源と思われるもうひとつのカップリング曲"blue nylon shirts"も良い。良いけど、やっぱり映像付きで聴きたいなぁ。エンディングがフェードアウトしてるけど、あのドラムの入り方からすると、きっとライヴではそのまま"太陽をつかんでしまった"に続いていくんだろうね。ああ、ますます俺の中でこの曲に対する興味が増してるよ。

  人間の感覚なんていい加減なもんで、こういう風にちょっとした切っ掛けで印象が全然変わっちゃう。あれだけ「ミッシェル、マジで終わった方がいいんじゃ‥‥」とか思ってた人間が、たった1曲に振り回されてるし。しかも、あのDVDを観たのが、買ってから1週間以上経った、年明けだっていうね‥‥もうね、アホかと。バカかと。

  けどね‥‥これ1曲で「絶対にアルバムは名盤に違いない!」と盲目的に決めつけたりはしないよ。まだまだ懐疑的な部分は残ってて、果たしてアルバムはどういったテンションの下で作られ、どういった内容になってるのかは全然判らないわけで。既に秋のツアーでは何曲か披露したらしいけど、概ね好評なようですね。あとはそれを俺が気に入るか否かですね‥‥ま、今回のシングルみたいに気に入れば当然取り上げますよ。

  でも‥‥アルバムよりもライヴ! 今年は是非久し振りにミッシェルのライヴが観たいな。そう素直に思わせてくれただけでも、このシングルを買ったことは大きな収穫になったわけで。野外で"太陽をつかんでしまった"を爆音で聴いてみたいですね。フジとかエゾみたいなフェスで、寒空の下で。狭いライヴハウスじゃなくてさ‥‥そういう方向に向かってるのかもしれないね、今の彼等は(って、前のアルバム聴いてない分際で何をほざくか俺)。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『太陽をつかんでしまった』
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投稿: 2003 01 09 12:00 午前 [2002年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2000/12/20

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『LIVE IN TOKYO : CASANOVA SAID "LIVE OR DIE"』(2000)

  デビューの数年前に1度、ライヴアルバム(というか、スタジオ録音よりライヴ録音の方がらしさが出るんでそうしたんだろうけど)をリリースしているTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTだが、メジャーデビュー後としては初の、しかも完全実況中継としてのライヴアルバム。アルバム1枚にライヴ本編を丸ごと80分収めた内容になっていて、更に初回限定盤には当日のアンコール分の4曲を収録したボーナスディスクがおまけとして付いている。しかもアルバムにはこれまでの彼らの歴史(全ライヴ日程とリリース日程)の記録が封入されていて、先のベスト盤と両方買うと「COMPLETE BEST OF THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」になるわけだ。しかもこのアルバム、2,100円とお買い得(但し歌詞カードは封入されていないので、初心者は注意!)

  録音されたのは2000年7月26日、赤坂ブリッツ。「WORLD CASANOVA SNAKE TOUR」の43本目、最終日に当たるこの日の模様は、WOWOWでも当日の内に編集・放送された。更にこの3日後にはフジロックの2日目トリとして大役を務めるという、正にピークともいえる時期の音源だ。聴いてもらえば判る通り、頭から最後まで、間髪入れずに次の曲へとなだれ込む。観客に、そして自らに休む暇を与えないライヴ。下手なハードコア系のライヴよりも集中力・体力が必要なのが、ミッシェルのライヴなのだ。残念ながら俺はここ数年(というか、ブレイク後)の彼らのライヴを体験した事がないので、音のみで比較するしかないのだが‥‥少なくとも自分が最後に体験した「WORLD CHICKEN ZOMBIES TOUR」の初日@千葉ルックでの印象よりも、更に激しさが増している。というよりも、より凄みが加わったとでも言うべきだろうか。荒々しい録音のせいもあるだろうが(一聴してブートレッグのオーディエンス録音的な印象を与える音像だが、実は計算されたものではないだろうか? ライン録音にマイクから拾った音も大きめに被せているような印象を受ける)、とにかく臨場感のある雰囲気を与える。2,000人以上収容するブリッツというよりも、もっと小さい‥‥それこそ千葉ルックで観てるかのような錯覚に陥るアルバムだ。なのに決して音は軽くなく、リズムは地を這うような重さを持ってるし、カオティックなシャウトに背筋がゾッとするし。ビデオではなくCDでリリースした意味が、何となく理解できたような気がした。

  当日の演奏曲は、アルバム「CASANOVA SNAKE」をフォローするツアーという事もあって、アルバムのほぼ全曲(15曲中14曲)を披露し、残りは前作「GEAR BLUES」のナンバーとシングルのC/W曲という、かなり拘った選曲。だって大ヒットした「GEAR BLUES」からは"G.W.D"や"スモーキン・ビリー"といった代表曲さえもカットされているのだから。もっともそれらがなくてもこれだけ盛り上げてしまうというのは‥‥半ばヤケクソなのか、それとも底力なのか。そうそう、既に"Baby Stardust"といった(この時点では)新曲もバンバンプレイされているのね。

  一番印象に残ったのは、"アウト・ブルーズ"中盤でのチバのシャウトする「Break on through to the other side」というフレーズ。これは勿論、かのDOORSの代表曲 "Break On Through"の一節だ。DOORSのテーマでもあった『向こう側に突き抜けろ(=イっちまえ)』というフレーズを多様する辺りに、最近のミッシェルの姿勢のよなものさえ感じる。『突き抜けるんだ』というメッセージはオーディエンスへ向けたものでもあり、そして自らに向けたものでもあるわけだ。そして彼らはこのツアーで本当に『突き抜けて』しまうわけだ。

  2000年12月現在、ミッシェルは幾つかのイベントを除いてツアーらしいツアーを行っていない。特に短期ツアーをするという話も聞かない。先週は大貫憲章氏主催の「LONDON NITE 20th ANIVERSERY」イベントに出演したところだ。ツアー終了後にリリースされたシングル"Baby Stardust"はツアー中には既に演奏されていたので、この曲から次作を占う事は出来ないだろう。だからこそ、次に発表される新曲によって彼らの今後が左右されるような気がしてならない。

‥‥とは言っても、特に大きく変化するとも思えないし、活動のスタンスもそうは変わらないだろう。ただ、このアルバムに収められた『瞬間』が、ひとつのピークであったのは紛れもない事実だ。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『LIVE IN TOKYO : CASANOVA SAID "LIVE OR DIE"』
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投稿: 2000 12 20 12:30 午前 [2000年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『TMGE 106』(2000)

  THE MICHELLE GUN ELEPHANT初のベストアルバム。タイトルの「106」、最初は意味が判らなかったが、いざ購入して紙ジャケの内側を見て納得。先日('00年9月)リリースされたシングル"Baby Stardust"までの、ミッシェルとして発表された楽曲が106曲という意味なのだ。しかしこの場合は別バージョンも含むらしい。例えばここにも収録されている"G.W.D"はシングルとアルバムとでは別録音だ。で、このリストを見ていてふと気付いた。「あれ、ルースターズ・トリビュートでの"Do The Boogie"が入ってない‥‥」更に「インディーズでリリースされたライヴ盤の楽曲も無視なのか‥‥」とまぁ、いろいろ不透明な部分も気になるものの(笑)それでもこの約6年間にこれだけハイテンション且つイカすロックンロールアンセムを作ってきたという意味では、尊敬に値する。

  サブタイトルに「THE BEST OF~」と銘打っている以上、これまでのシングルヒットは勿論、ライヴでも定番のアルバムチューン、アルバム未収録のシングルC/Wナンバーや別バージョン等、これまで彼らに接した事のなかった人にとってはとても取っ付きやすい内容となっている。ただ、昨年夏にマキシシングル・コレクションアルバム「RUMBLE」に"Candy House", "Culture", "Get Up Lucy"を収録している為、今回この3曲はオミットされているので、完全な意味での「シングルコレクション」にはならなかった。まぁ彼らの場合はシングル曲以上に人気のあるアルバム収録曲が多いので、そういうのは全く気にならない。寧ろその「RUMBLE」収録の"Cisco"(本来はマキシシングル"Culture"のC/W曲)なんて、そういうシングル曲以上の人気を得ている定番曲だし。
  選曲の基準となっているのは、シングルナンバーを軸として、アルバム未収録曲‥‥これまでアナログでしか聴けなかった曲やシングルのC/W曲、更にブレイクの切っ掛けとなったアルバム「CHICKEN ZOMBIES」以降の3枚のアルバムからライヴ定番曲を各1~2曲ずつという、正に「初心者の為のミッシェル」といえる作りになっている。全て既発曲だが、アナログ盤にまで手が出ない(或いは限定盤だった為に入手出来ない曲がある)という中級ファンにもアピールする作りとなっている。このベスト盤と同時リリースされたライヴ盤がマニア心をくすぐる内容(録音を含む)になっているのも、これで何となく理解できる。

  さて、ミッシェルというロックンロールバンドを語る時、やはりシングルは切っても切り離せない存在だろう。他のガレージバンド同様、彼らはその初期の頃からマキシシングル形式で4曲収録してきた(先の「RUMBLE」収録の3タイトルがそれだ)。その後、マキシ形式は採用するものの、何故か中身は8cmシングルだったりとか、2曲しか入ってなかったりとかいろいろあるものの、そこは彼らのこと、カップリング曲は常にアルバム未収録曲/別バージョンだったり、CDシングルとアナログ盤とではミックスやバージョンを変えたりと、自身が影響を受けた先人達同様、遊び心だけは忘れなかった。この手のアーティストはアルバムを大事にする余り、シングルにまで気を遣わなかったり、アルバムの前振りとしてのシングルカットという感じで蔑ろにする傾向が強いのだが、先日のマキシシングル"Baby Stardust"でもお判りの通り、手を抜くという事を知らない。アルバムもシングルも同じ、テンパった状態を維持しているのだ。こんなバンド、他に知らないってば。

  初期の楽曲(「WONDER STYLE」~「HIGH TIME」)と「GEAR BLUES」以降の楽曲とでは多少色が異なると思っていた(初期はガレージ色の強いパブロック的イメージ、ここ数年は爆走ロケンロー以上にパワフル且つテンパってるイメージ)が、こうやって1枚にまとめられて通して聴いてみても、それ程違和感がなかったのには正直驚いた。"リボルバー・ジャンキーズ"の後に"世界の終わり"が来ても、そしてそれに"GT400"が続いてもすんなり聴けて、気持ちいいのだ。これはちょっと嬉しい誤算だった。先日、掲示板で初期と最近とではちょっと違和感があるのでは?みたいな話題になったばかりだったので‥‥つまり、ミッシェルはデビューしてから一貫としたスタイルを維持しているという事になる。たまたまここ数年、爆走ロケンローが盛り上がり、このミッシェルもその括りに入れても違和感ない存在と認識されるようになったが、別に急にスタイルが変わった訳ではないのだ。変化というよりは成長、または深化といったところだろうか。

  ベスト盤、ライヴ盤でこれまでの活動に区切りをつけたミッシェル。先日、CMJサイトにてニューヨークでのショーケースギグが大好評・大絶賛だった事が伝えられた。今後の活動の拠点を海外に移すのでは?なんて危惧する声も聞こえるが、そんな心配は無用だろう。彼らが日本語で唄う以上、彼らの勝負の場はここ日本に間違いない。アルバムを出して、小さなライヴハウスを隈無く回る。夏にはフェスティバルやイベントに出演し、海外のバンドと肩を並べる。気が向いたらロンドンやニューヨークでショートツアーを行う。きっと彼らは今後もこのスタイルで、このペースで活動を続けていくに違いない。正直、彼らが中~後期ルースターズのような実験的音楽に目覚めるとは思えないし(笑)。ただ、前作「CASANOVA SNAKE」を聴く限りでは「出尽くしたかな?」なんて気もする。だからこそ、来年以降に出す『次の1手』に期待して止まない。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『TMGE 106』
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投稿: 2000 12 20 12:00 午前 [2000年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク