2018年10月12日 (金)

THERAPY?『CLEAVE』(2018)

2018年9月リリースの、THERAPY?通算13枚目のオリジナルフルアルバム。前作『DISQUIET』(2015年)でAmazing Recordsに移籍した彼らでしたが、今作では新たにMarshall Records(あのアンプメーカーのMarshallによる新興レーベル)と契約。ここ数作、リリースのたびにレーベルを変えている彼らですが、やはりTHERAPY?クラスでも複数枚契約って難しいんですね。

本作最大の注目ポイントは、2作目のアルバムにして最大のヒット作『TROUBLEGUM』(1994年)やポップに振り切れた4thアルバム『SEMI-DETACHED』(1998年)以来となるクリス・シェルドン(PIXIESFEEDERFOO FIGHTERSなど)がプロデュースを手がけたということ(2003年の7thアルバム『HIGH ANXIETY』ではミックスを担当していたので、実質15年ぶりのタッグとなります)。今春以降「Callow」や「Wreck It Like Beckett」といった楽曲がデジタルシングルとして発表されてきましたが、それを聴く限りでは前作の延長線上にある、90年代半ばの黄金期を思わせるスタイルに回帰した作風ではないかと期待させてくれました。

で、完成したアルバム。全10曲でトータル33分と非常にコンパクトな内容ですが、期待を裏切らないかなりの力作に仕上げられています。

HELMETを思わせる硬質な「Wreck It Like Beckett」や、親しみやすいメロディを持つキャッチーな「Callow」、ヘヴィながらもとっつきやすい「Success? Success Is Survival」、THERAPY?らしいグルーヴ感を持つ「Crutch」、あの“カンカン”したスネアの音色とハーモニクスを効かせたギターのカッティング音が「そうそう、これこれ!」と懐かしさを思い出させてくれる「Dumbdown」など、とにかく“ファンが望むTHERAPY?像”をとことん追求してくれていることろに共感を覚えます。やればできるじゃん、と。

もちろん、2000年代以降の作品も決して悪かったわけではありません。ですが、以前よりも高音が出なくなったアンディ・ケアンズ(Vo, G)のメロディライン&センスに首を傾げたくなることが多かったのもまた事実。ところが、本作ではここ数作での努力が実ったのか、過去の“らしさ”と今できることの折衷案がベストな形で具現化されているのです。これは決してマイナスの遺産ではなく、すべてをポジティブに捉えた結果ではないでしょうか。

とにかくどの曲も、聴けばそれが「うん、THERAPY?ってこうだよね!」と納得いくものばかり。ラストの「No Sunshine」で聴かせるダークでドラマチックな世界観含め、すべてにおいて“痒いところに手が届く”作品なのです。

以前のような成功を収めることはもはや難しいでしょうし、日本盤もリリースされることはないでしょう。来日にしても……いや、観たいなあ。このアルバムの楽曲はぜひ生で聴きたいです。そう強く思わせてくれる力作、ぜひ触れてみてください。



▼THERAPY?『CLEAVE』
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2018年9月27日 (木)

THERAPY?『INFERNAL LOVE』(1995)

1995年6月にリリースされた、THERAPY?のメジャー3rdアルバム(日本では同年7月、アメリカでは翌1996年1月発売)。チャート/セールス的に大成功を収めた前作『TROUBLEGUM』(1994年)から1年半という短いスパンで制作された本作では、プロデューサーにアル・クレイ(THE WiLDHEARTSREEFフランク・ブラックなど)を迎え、さらに曲と曲をつなぐサウンドエフェクトをクラブ系アーティストのデヴィッド・ホルムスが担当。ポスト・グランジ的なザクザク感と疾走感が印象的だった前作とは異なる、ムーディで閉塞感の強いダークな作品を作り上げることに成功しています。

イギリス国内ではブリットポップ・ムーブメントが勃発し、猫も杓子も“第二のOASIS”、“新たなBLUR”を求め続けた1995年。そんな中、THERAPY?はもうひとつの新たなムーブメント……UNDERWORLDTHE PRODIGYが築き上げようとしていたエレクトロミュージックの世界へと接近……というほどでもないですが、旬なDJ(デヴィッド・ホルムス)を迎えることで、彼らの根底にあるダークでゴシックな世界観をより強化させました。もともと、彼らのメロディにはそういった影の部分が備わっていましたし、そこに特化したアルバムを作ろうと考えることは、ごく自然な流れだったのでしょう。

前作で得た手応えから、バンドはストリングスやホーンセクションを導入することにもまったく躊躇しません。リードシングル「Stories」のブラスなんて、最初に聴いたときはひっくり返りましたけど(笑)、今では「これがないと物足りない」と感じるくらいには馴染みましたし、「Bowels Of Love」や「Diane」のストリングスも絶対に必要な要素だと断言できるくらい重要ですしライブでの再現よりも、アルバムとしての完成度を考えた結果の選択肢。僕は全面支持したいな。

楽曲面でも、前作にあった陽の要素は完全に消え失せ、全編マイナーコードの切ないメロディばかり(メジャーコードの「Bad Mother」ですら物悲しく聴こえてくるし)。そういった楽曲を盛り上げる曲間のサウンドエフェクトは、確かに賛否あると思います。実はこれ、日本盤ではすべてカットされているんですよね。普通に1曲終わったらすぐ次の曲という具合に。リリース当時、僕は日本盤を購入して、ずっとそれを聴いてきたものですから、数年前にデラックスエディションが発売された際にリマスター盤の『INFERNAL LOVE』で初めてサウンドエフェクト入り(オリジナルのイギリス盤)を聴いたときには「……えっ?」と驚いたものです。

もちろん、日本盤のような聞かせ方も悪いわけではなく、最初に聴いたのがこっちだったらこれが当たり前になるわけですし。でも、作者の意図を考えたら、正解はイギリス盤のエフェクトありのほうなんですよね。最近はもっぱらオリジナル盤のほうばかりを聴いているので、完全にそっちに馴染みましたが(ストリーミングに置かれているのは、オリジナル盤のほう)。

ちなみに、本作でチェロを弾いていたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)はそのまま本作のツアーに参加し、のちにギター&チェロ担当でバンドに加入。THERAPY?は次作『SEMI-DETACHED』(1998年)から4人編成バンドとして活動していくことになります。



▼THERAPY?『INFERNAL LOVE』
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2018年1月19日 (金)

THERAPY?『TROUBLEGUM』(1994)

北アイルランド出身のトリオバンドTHERAPY?が1994年初頭にリリースした、メジャー2ndアルバム(インディーズ盤含めると通算4作目)。『NURSE』(1992年)でメジャーデビューを果たした彼らでしたが、同作は全英38位止まり。が、本作『TROUBLEGUM』にも収録された「Screamager」がリード曲のEP『SHORTSHARPSHOCK E.P.』(1993年)が全英9位、続く『FACE THE STRANGE E.P.』(同年 / 「Turn」収録)が全英18位、『OPAL MANTRA』(同年 / アルバム未収録)が全英14位、さらにシングル「Nowhere」が全英18位と好状況を経てこのアルバムをドロップ。結果、全英5位という現在までの最高順位を獲得することとなりました。以降も「Trigger Inside」(全英22位)、「Die Laughing」(全英29位)とヒットシングルが生まれています。

本作では反復されるダンサブルなインダストリアルビートが魅力だった『NURSE』までの路線から一歩踏み出し、より直線的でエモーショナルな楽曲が増えた印象。オープニングのショートチューン「The Knives」や「Screamager」、「Nowhere」はまさにその代表例で、そういった新境地ナンバーが受け入れられた結果、ヒットにつながったのだから面白いものです。

かと思えば、前作までのダークな色合いを兼ね備えた「Unbeliever」「Lunacy Booth」、グランジやオルタナからの影響が強い「Femtex」「Unrequited」があったり、JOY DIVISIONのカバー「Isolation」もある。確かにリフの反復などには前作までの色合いが見え隠れしますが、全体的にはロックバンドとしての躍動感が強烈に強まった意欲作という気がします。

だからこそ、「Nowhere」や「Die Laughing」のようなメジャーキーのポップな楽曲が入っていても違和感なく楽しめるし、むしろそういった異色の楽曲が強い個性を放っているのだから不思議ですよね。ダークだけどエモーショナル、そしてキャッチーでポップ。このスタイルは次作『INFERNAL LOVE』(1995年)でさらに極まることになるわけです。

なお、本作は数年前にCD3枚組のデラックス盤も発売。シングルのカップリングやリミックス、ライブ音源などがまとめられています。このリミックスバージョンに、過去のインダストリアルテイストが生かされているので、この使い分けはさすがだな、わかってるなと思ったのは僕だけではないはずです。



▼THERAPY?『TROUBLEGUM』
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投稿: 2018 01 19 12:00 午前 [1994年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2017年12月19日 (火)

V.A.『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』(1993)

1993年公開のアメリカのアクション映画『ジャッジメント・ナイト』のサウンドトラックとして、同年秋にリリースされたのが本作。映画自体は未見ですが(ずいぶん前に地上波で深夜に放送されていたようですが、完全に忘れてました)、ここではその内容はどうでもよく。いや、ぶっちゃけ音楽ファン的には映画以上にサントラのほうが重要視されている作品ではないでしょうか。

本作は、曲ごとにヘヴィ/オルタナティヴロックバンドがヒップホップアーティストとコラボレートするという、およそ映画の内容とは関係のない構成。ロックファン的には参加バンドが気になるところですが、このセレクトがかなり謎でして。

以下にコラボレーションの詳細を記します(前者がロック系、後者がヒップホップ系アーティスト)


HELMET / HOUSE OF PAIN
TEENAGE FANCLUB / DE LA SOUL
LIVING COLOUR / RUN DMC
・BIOHAZARD / ONYX
SLAYER / ICE-T
FAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.
・SONIC YOUTH / CYPRESS HILL
MUDHONEY / SIR MIX-A-LOT
DINOSAUR JR. / DEL THE FUNKY HOMOSAPIEN
THERAPY? / FATAL
PEARL JAM / CYPRESS HILL


SLAYERのような大御所メタルバンドやHELMET、FAITH NO MOREといったヘヴィなオルタナティヴバンド、LIVING COLOURみたいな黒人ハードロックバンドもいれば、MUDHONEYやPEARL JAMといったグランジ勢もいる。かと思うと、まだアメリカでは無名に等しいアイルランドのTHERAPY?まで参加しているんだから、本当に謎です。

実際に収録されている楽曲も、それぞれの個性が出た面白いものが多数。1曲目のHELMET / HOUSE OF PAINによる「Just Another Victim」からしてカッコ良いし、続く脱力系なTEENAGE FANCLUB / DE LA SOULの「Fallin'」も意外と悪くない。LIVING COLOUR / RUN DMCの「Me, Myself & My Microphone」なんてそもそも両者黒人なんだから相性が悪いわけがない(しまもRUN DMCはAEROSMITHとの“前科”もあるしね)。

本作の山場となるのが4曲目のBIOHAZARD / ONYX「Judgement Night」と、5曲目 のSLAYER / ICE-T「Disorder」、そして6曲目のFAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.「Another Body Murdered」かな。「Judgement Night」は完全にヒップホップに寄せていて、そこにハードなギターが乗るという。こちらの組合せも非常に自然なものですし、そりゃあこうなるわなと。

で、SLAYER / ICE-Tという組み合わせですよ。ICE-T自身もBODY COUNTというハードコアバンドをやってますし、この組み合わせだったらそりゃあロック寄りになるでしょうね……っていうか、完全にSLAYERの土俵にICE-Tが踏み込んでるし。曲自体はEXPLOITEDのカバー(「War」「UK '82」「Disorder」のメドレー)で、このへんの試みがパンク/ハードコアのカバーアルバム『UNDISPUTED ATTITUDE』(1996年)につながったのかもしれませんね。

FAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.という組み合わせも、実際に曲を聴いてしまうと何ら違和感がなく、むしろマイク・パットン先生の土俵ですね、これ。FAITH NO MOREのアルバムにそのまま入っていたとしても、別に不思議じゃない仕上がり。いやあ、面白い。

確かに全部が全部、成功しているとは言い切れないコラボアルバムではありますが、ここでの実験が翌年以降のメタル/ラウドシーンに大きな影響を与えた……というのは言い過ぎでしょうか? でも、それくらい意味のある実験でしたし、重要な作品だと思うんですよね。

ちなみに、数年後に映画『スポーン』のサウンドトラックで、今度はロックバンドとダンス/エレクトロ系アーティストのコラボレーションが実践されましたが、こちらは成功とは言い難い仕上がりでした。柳の下に二匹目のドジョウはいなかったわけですね。わかります。



▼V.A.『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』
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投稿: 2017 12 19 12:00 午前 [1993年の作品, Compilation Album, Dinosaur Jr., Faith No More, Helmet, Living Colour, Mudhoney, Pearl Jam, Run D.M.C., Slayer, Therapy?] | 固定リンク

2017年9月17日 (日)

THERAPY?『NURSE』(1992)

北アイルランド・ベルファスト出身のトリオバンドTHERAPY?による、1992年秋発売のメジャー1stアルバム。1991年後半と1992年前半にそれぞれミニアルバム『BABYTEETH』『PLEASURE DEATH』をインディーズから発表し、のちにメジャーのA&Mと契約し、リリースされたのがこの『NURSE』というフルアルバムになります(『BABYTEETH』『PLEASURE DEATH』の2作品に収録された全楽曲は、のちに北米地区で『CAUCASIAN PSYCHOSIS』と題したコンピレーションアルバムとしてリリース)。

『BABYTEETH』や『PLEASURE DEATH』で展開された「オルタナインディロックとインダストリアルメタルをミックスしたサウンド」「カンカン鳴るメロタムの音と反復するパーカッシブなリズム、それに合わせてシークエンスされるギターリフ」「無機質だけど、どこかエモーショナルなメロディ」といった要素が、本作ではより強まっており、それが早くもこのバンドの個性として確立されつつあることが伺えます。オープニングを飾る「Nausea」はもちろんのこと、続くシングルヒット曲「Teethgrinder」はまさにそのもっともたる1曲と言えるでしょう。

かと思えば、次作『TROUBLEGUM』(1994年)以降その色合いがより強まっていく、ダークでひんやりとしたミディアム/スローのエモーショナルな要素が「Gone」あたりから感じられ、メジャーデビュー作の時点で“今後の大変貌の予兆”が散りばめられています。特にチェロを導入した叙情的な「Gone」、ダブのテイストを取り入れつつもどこかダークな「Deep Sleep」あたりはJOY DIVISIONに通ずるカラーがあり、このバンドがどこから生まれ、どこに向かっていこうとしているかが何となく理解できるのではないでしょうか。

ヘヴィなギターリフなメタリックな曲調が一部混在していることから、どうしてもHR/HMの流れを組むバンドと認識されそうですが、どちらかと言えば同時代にアメリカで勃発したグランジムーブメントに対するヨーロッパからの返答だったのでは……なんて言ってしまっては大袈裟でしょうか。残念ながら、彼らに続くような個性的なバンドがそこまでおらず、時代はもっと肉感的なダンスミュージック(マッドチェスターなど)へと接近。続くブリットポップにもかすらなかったものの(だからMANIC STREET PREACHERSTHE WiLDHEARTSといったバンドと共闘したのも頷ける話)、次作『TROUBLEGUM』を機にチャート的にも成功を収めるので、まぁよかったのかなと。



▼THERAPY?『NURSE』
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投稿: 2017 09 17 12:00 午前 [1992年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2017年4月20日 (木)

THERAPY?『DISQUIET』(2015)

北アイルランド出身の3人組バンド、THERAPY?が2015年に発表した通算12枚目(インディーズからのミニアルバム2枚を含めたら14枚目)のオリジナルアルバム。オリジナル作品としては2012年の『A BRIEF CRACK OF LIGHT』から3年ぶりで、今作から新たにAmazing Recordsというレーベルに移籍しています。とはいえ、2003年の『HIGH ANXIETY』からは日本盤も発表されていないので、ここ日本で生活するリスナーにとってはそういった小さな話題はどうでもいい話かもしれませんが。

90年代半ばに若干ポップな作風でメジャーヒットを記録した彼らですが、1999年の5thアルバム『SUICIDE PACT – YOU FIRST』以降は初期のハードコア路線に回帰しつつも、独自のスタイルを築き上げてきたTHERAPY?。そんな彼らもすでに20年選手になり、大ヒット作となった2nd『TROUBLEGUM』(1994年)、3rd『INFERNAL LOVE』(1995年)がリリースから20年経ったことで古巣から2作のデラックスエディションも発売されました。当時のシングルカップリング曲や未発表テイクなどを含む2枚組(『TROUBLEGUM』のみ3枚組)は当時のファンには懐かしく、初めて彼らに触れるという若いリスナーには新鮮に映ったかもしれません。

そういった原点回帰的なリリースを経て発表された今作『DISQUIET』。1曲目の「Still Hurts」を聴いて驚いたファンは多かったのではないでしょうか。ここ最近の彼らにしては非常にストレートな、それでいてキャッチーなメロディと適度なヘヴィさを伴ったコンパクトな楽曲……つまり『TROUBLEGUM』『INFERNAL LOVE』で聴けた“おなじみの”路線だったのです。もちろん単なる焼き直しでは終わっておらず、そこには現在のTHERAPY?ならではの乾いたサウンドや重苦しさ・息苦しさもしっかり表現されています。

そのまま、こちらも初期ファンには嬉しい「Tides」へと続いていく構成。その後も『TROUBLEGUM』でのキャッチーさ、『INFERNAL LOVE』での若干宗教がかった暗くて冷たい感触がいたるところに感じられるのですから。とにかく本作はメロディが非常にわかりやすく、耳に残る楽曲が多い。もちろんそれ以前の(特にここ10年くらいの)作品も独自のスタイルが築き上げられており、あれはあれで嫌いではありませんでしたが、自分がTHERAPY?のどこに惹かれていたかを考えると、この原点回帰は大歓迎と言いたくなるわけです。

アンディ・ケアンズ(Vo, G)の声質やキーの低さに若干の寂しさを感じるものの、それ以外は否定のしようがないくらいにカッコいい楽曲ばかり。最初から最後まで、ここまですんなりと聴けてしまったTHERAPY?のアルバムは本当に久しぶりじゃないでしょうか。それを「引っ掛かりがなさすぎる」「ヤワくなった」と否定するリスナーもいるかもしれませんが、そういう方々が「Vulgar Display Of Powder」(タイトルはもちろん、PANTERAの名作アルバムタイトルをもじったもの)のような楽曲を聴いてどう思うのか、ぜひ聞いてみたいものです。

特にここ日本では黄金期と比べたら知名度がないに等しいTHERAPY?。リリースから2年も経ちましたが、いまだに飽きずに楽しめる本作は一聴の価値ありです。



▼THERAPY?『DISQUIET』
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投稿: 2017 04 20 12:00 午前 [2015年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2004年5月 9日 (日)

THERAPY?『CAUCASIAN PSYCHOSIS』(1992)

アイルランド出身のトリオバンド(現在は4人組)、THERAPY?が'91年にイギリスでリリースした1stミニアルバム「BABYTEETH」(7曲入り)と、'92年初頭に同じくイギリスでリリースされた2ndミニアルバム「PLEASURE DEATH」(6曲入り)を1枚にまとめて北米地区でリリースしたのが、今回紹介する「CAUCASIAN PSYCHOSIS」というアルバム。ミニアルバムにしろこの編集盤にしろ、インディーズからのリリースで、このリリースを経て'92年後半にメジャーの「A&M」から正式なファースト・フルアルバム「NURSE」でメジャーデビューするわけですが、まぁこれらの初期音源はそのファーストへの習作というか、インディーバンドならではの「これから何かが始まる感」が強い、面白い音源集になってるわけですよ。

THERAPY?というと、時期によって音楽的にもちょっとずつ変化があるので一概に「こういうバンド!」と断言し辛い面もあるんですが、まぁ基本的には「ヘヴィなギター、ヘヴィーに反復されるギターリフ、哀愁味漂うメロディー」ってことになるんでしょうか? ただ、このアルバムの前半部(1stミニアルバム「BABYTEETH」)の頃はまだメロディー面は弱いんですよね。どちらかというと「ノリ」を重視した作風で、例えば1曲目の "Meat Abstract" なんて反復されるギターリフがまるでテクノのそれみたいだし、リズムもダンス系のそれに近いし、かなりその辺を意識したアレンジになってたりします。で、無機質なサンプリングが被さることで、更にインダストリアル系の色合いも強いし。また "Loser Cop" のイントロ部ではジャジーのサックスが被さっていて、かなりフリーキーな印象を受けます。というように、特に「これがTHERAPY?サウンドだ!」という限定がし辛い、ちょっと散漫な印象を受ける7曲なんですよね。勿論悪くないと思うし、これだけ聴いたら「何だか面白そうな存在だな~」と思うでしょうし。実際、俺もそのひとりだったしね。

で、アルバム後半部(「PLEASURE DEATH」)になると、メジャー盤「NURSE」移行の作風にかなり近づきます。いや、既にここで「THERAPY?サウンド」が一度完成したと言ってもいいかもしれません。その後を感じさせる "Dancin' With Manson" とか名曲と名高い "Potato Junkie" 辺りはそのままメジャー盤に入っていてもおかしくないですしね(特に後者は後にリリースされるベスト盤にも選出されてますし)。

実は俺が最初に聴いたTHERAPY?の音源集もこの2ndミニアルバムでした。この音源がリリースされた当時('92年初頭)、俺はイギリスに短期留学中でして、現地での音楽情報収集に「Metal Hammer」や「Kerrang!」といった音楽誌を読んでいたんですね。その両方でこの「PLEASURE DEATH」というミニアルバムが取り上げられていて、しかも「Kerrang!」においては5つ星が付いてたと記憶してます。それで買ったんだよな、これ。で、ハマるまではいかなかったんだけど、何だか良さげなバンドだなーってことで気に入って。

帰国して暫くしてから、友達が「THERAPY?ってバンド、知ってるかー?」って俺に聞いてきて。で、「あー知ってる知ってる。向こう(イギリス)でも話題みたいだよー」って話になって。そこでその友人は俺に「アルバムいいよなー」って言うんですよ。「アルバム!? ミニアルバムじゃなくて??」って話になって‥‥そこで初めて「CAUCASIAN PSYCHOSIS」の存在を知ってね。ちょっとブートっぽい作りが怪しいかなぁと思ったんですが、収録曲を見ると後半に先のミニアルバム収録曲が全部入ってるんで「あー、別に海賊盤でもなさそうだなー」と。調べるとアメリカ向けに2つのミニアルバムを1枚にまとめたものだった、と。しかもこの編集盤をリリースしてるのが、インディーレーベルとしても老舗的存在な「Touch And Go」だったりしたもんだから(最初気づかなかったんだよね、それに)‥‥一体何事だ、と。しかもその頃には既に「A&M」との契約も決まっていたし‥‥アメリカではグランジで盛り上がっている中、イギリス(正確にはアイルランド)からはそれとは違った波が訪れようとしてるなぁ‥‥MANIC STREET PREACHERSといい、そのすぐ後に登場するTHE WiLDHEARTSといい‥‥そんな予感めいたことを感じさせてくれたのが、このTHERAPY?でした。ま、上にも書いたように、俺がこのバンドにハマっていくのは、更に1年以上経ってからの話なんですけどね。それはまた別の機会にってことで。

THERAPY?をこれから聴こうって人には絶対にオススメしない1枚ですし、オリジナルアルバムを全部聴いてから最後に手を出しても遅くない作品集だと思いますよ。実際、ベスト盤にもここから数曲入ってますし、そこで初期の作風が気に入ったら手を出すもよし、といった感じかな。



▼THERAPY?『CAUCASIAN PSYCHOSIS』
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投稿: 2004 05 09 05:14 午後 [1992年の作品, Therapy?] | 固定リンク