2004/05/09

THERAPY?『CAUCASIAN PSYCHOSIS』(1992)

アイルランド出身のトリオバンド(現在は4人組)、THERAPY?が'91年にイギリスでリリースした1stミニアルバム「BABYTEETH」(7曲入り)と、'92年初頭に同じくイギリスでリリースされた2ndミニアルバム「PLEASURE DEATH」(6曲入り)を1枚にまとめて北米地区でリリースしたのが、今回紹介する「CAUCASIAN PSYCHOSIS」というアルバム。ミニアルバムにしろこの編集盤にしろ、インディーズからのリリースで、このリリースを経て'92年後半にメジャーの「A&M」から正式なファースト・フルアルバム「NURSE」でメジャーデビューするわけですが、まぁこれらの初期音源はそのファーストへの習作というか、インディーバンドならではの「これから何かが始まる感」が強い、面白い音源集になってるわけですよ。

THERAPY?というと、時期によって音楽的にもちょっとずつ変化があるので一概に「こういうバンド!」と断言し辛い面もあるんですが、まぁ基本的には「ヘヴィなギター、ヘヴィーに反復されるギターリフ、哀愁味漂うメロディー」ってことになるんでしょうか? ただ、このアルバムの前半部(1stミニアルバム「BABYTEETH」)の頃はまだメロディー面は弱いんですよね。どちらかというと「ノリ」を重視した作風で、例えば1曲目の "Meat Abstract" なんて反復されるギターリフがまるでテクノのそれみたいだし、リズムもダンス系のそれに近いし、かなりその辺を意識したアレンジになってたりします。で、無機質なサンプリングが被さることで、更にインダストリアル系の色合いも強いし。また "Loser Cop" のイントロ部ではジャジーのサックスが被さっていて、かなりフリーキーな印象を受けます。というように、特に「これがTHERAPY?サウンドだ!」という限定がし辛い、ちょっと散漫な印象を受ける7曲なんですよね。勿論悪くないと思うし、これだけ聴いたら「何だか面白そうな存在だな~」と思うでしょうし。実際、俺もそのひとりだったしね。

で、アルバム後半部(「PLEASURE DEATH」)になると、メジャー盤「NURSE」移行の作風にかなり近づきます。いや、既にここで「THERAPY?サウンド」が一度完成したと言ってもいいかもしれません。その後を感じさせる "Dancin' With Manson" とか名曲と名高い "Potato Junkie" 辺りはそのままメジャー盤に入っていてもおかしくないですしね(特に後者は後にリリースされるベスト盤にも選出されてますし)。

実は俺が最初に聴いたTHERAPY?の音源集もこの2ndミニアルバムでした。この音源がリリースされた当時('92年初頭)、俺はイギリスに短期留学中でして、現地での音楽情報収集に「Metal Hammer」や「Kerrang!」といった音楽誌を読んでいたんですね。その両方でこの「PLEASURE DEATH」というミニアルバムが取り上げられていて、しかも「Kerrang!」においては5つ星が付いてたと記憶してます。それで買ったんだよな、これ。で、ハマるまではいかなかったんだけど、何だか良さげなバンドだなーってことで気に入って。

帰国して暫くしてから、友達が「THERAPY?ってバンド、知ってるかー?」って俺に聞いてきて。で、「あー知ってる知ってる。向こう(イギリス)でも話題みたいだよー」って話になって。そこでその友人は俺に「アルバムいいよなー」って言うんですよ。「アルバム!? ミニアルバムじゃなくて??」って話になって‥‥そこで初めて「CAUCASIAN PSYCHOSIS」の存在を知ってね。ちょっとブートっぽい作りが怪しいかなぁと思ったんですが、収録曲を見ると後半に先のミニアルバム収録曲が全部入ってるんで「あー、別に海賊盤でもなさそうだなー」と。調べるとアメリカ向けに2つのミニアルバムを1枚にまとめたものだった、と。しかもこの編集盤をリリースしてるのが、インディーレーベルとしても老舗的存在な「Touch And Go」だったりしたもんだから(最初気づかなかったんだよね、それに)‥‥一体何事だ、と。しかもその頃には既に「A&M」との契約も決まっていたし‥‥アメリカではグランジで盛り上がっている中、イギリス(正確にはアイルランド)からはそれとは違った波が訪れようとしてるなぁ‥‥MANIC STREET PREACHERSといい、そのすぐ後に登場するTHE WiLDHEARTSといい‥‥そんな予感めいたことを感じさせてくれたのが、このTHERAPY?でした。ま、上にも書いたように、俺がこのバンドにハマっていくのは、更に1年以上経ってからの話なんですけどね。それはまた別の機会にってことで。

THERAPY?をこれから聴こうって人には絶対にオススメしない1枚ですし、オリジナルアルバムを全部聴いてから最後に手を出しても遅くない作品集だと思いますよ。実際、ベスト盤にもここから数曲入ってますし、そこで初期の作風が気に入ったら手を出すもよし、といった感じかな。



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投稿: 2004 05 09 05:14 午後 [1992年の作品, Therapy?] | 固定リンク