THIRTEEN SENSES『THE INVITATION』(2005)
このCD、何時買ったんだっけ‥‥っていう未開封のCDの山が、結構あるんですね。最近特に身辺が慌ただしくて(で、夏場はそこに毎週フェスという過酷なのか幸せなのかよく判らない状況が加わるし)とりあえず買ったけど‥‥ってCDが沢山あって。それら全部を消化する時間が足りないんですよ。だから‥‥買っても真っ先に聴くアルバムやシングルもあるけど、「話題になってるし、とりあえず買っておこう」とか「ジャケやアーティスト名が気になるので、買ってみようか」っていうのになると‥‥封を切るのはかなり後になってから‥‥ってことが多いんですね。贅沢な悩みだとは思いますけど、ええ。
今回紹介するTHIRTEEN SENSESというバンドに対しても、何となくジャケットが気に入ったのと、店頭でバーゲン品として1,200円くらいだったから買った‥‥っていう程度の理由だったと記憶してます。7月頭頃かな? 全然どんなバンドかも知らなかったし、そもそもこれがバンドなのかどうかすら怪しかったわけですから。写真ではなくて、ちょっと印象深いイラストだったことで目を惹いたのかな‥‥いやゴメン、正直ホントの理由は全然覚えてないや。
で、数日前にやっとこのCDの封を切って、トレイからCDを取り出して再生してみたんです‥‥嗚呼、もっと早くに聴いておけばよかった‥‥と思わせるに十分な、正に俺好みのメランコリックなUKロックだったわけですよ、これ。
まぁ音楽雑誌をこまめにチェックしてる人や新しいバンドに詳しい人なら既にご存知のバンドかと思いますが、このアルバムは英国では今年1月にリリースされた、デビュー盤でして。日本でも3月に、アメリカでは7月にそれぞれリリースされたようで、サウンドのタイプ的にも『COLDPLAYやKEANEに次ぐ、イギリスからの新たな刺客』といった感じでして。ピアノを取り入れた、メランコリックで繊細で叙情的なサウンドのバンド‥‥まぁ早い話が、RADIOHEAD以降に多く見られ、TRAVISを経てCOLDPLAYで完成型へと辿り着いた、あのタイプと言えばお判りいただけるでしょうか‥‥そういうサウンドです。要するに、デビュー盤なのにいきなりメソメソしてたり、妙に落ち着いちゃってる、イギリス特有のジメジメサウンドです。
近年、COLDPLAYの大ヒットを経てKEANEの中ヒットがあり、この手の英国産バンドの幾つかがアメリカで健闘してるわけですが、彼等もそのひとつになり得るかどうか‥‥はさておき、個人的な印象としては‥‥上のふたつとはちょっと違うかなぁと。COLDPLAYはあの型をひとつのエンターテイメントとして昇華しつつあるし(例えばRADIOHEADやR.E.M.のようにね)、KEANEにはもっと力強さを感じるし。ボーカルなんてライヴで観るとハードロック系シンガーみたいだしね。だけどこのTHIRTEEN SENSESには‥‥なんていうか、もっと澄んだ繊細さを感じるんですよね。バンドのタイプは違うけど、SOUTH辺りにも通ずるものを感じたり‥‥って書いてみたけど、やっぱり全然違うなぁ。何ていうか‥‥こう、目の前で鳴ってる音っていう感じじゃなくて、もっと‥‥遠くから鳴らされる音っていう‥‥夢の中で鳴ってる感じ? 非現実的とかそういう意味ではなくて、本当に独特な叙情性を持ったバンドだと思うんですね。熱すぎず、それでいて冷たすぎず。人肌に近いようで、もうちょっと体温が低いような‥‥それで「夢の中で鳴ってる感じ」って例えたんですが‥‥どうでしょう?
上手いこと来日のタイミングを逃しちゃった気がしますが、今年の夏フェス辺りで来日すればもっと大きくフィーチャーされてたはずなんですが‥‥11月にちょっとお安くなった限定盤が出るってことは、もうちょっと売ろうよ!っていう意思が日本のレコード会社にも多少はあるってことでよろしいんですよね? じゃなきゃ勿体なさすぎる。ニューウェーブ・リバイバル系ばかりをプッシュして「売るものがなさ過ぎる!」とか言うくらいなら、もっとこういう普遍的な魅力を持ったバンドを大々的にプッシュしてあげてください。売り方さえ間違わなければ、絶対に安定した人気を得られるはずですから。