THIRTY SECONDS TO MARS『AMERICA』(2018)
前作『LOVE, LUST, FAITH AND DREAMS』(2013年)から5年ぶりに発表された、THIRTY SECONDS TO MARSの通算5作目のスタジオアルバム。初の全米TOP10入り(6位)を記録した前作を上回る、初登場2位という高ランキングを記録した最新作ですが、その内容に驚いたリスナーも多かったのではないでしょうか。
いわゆるオルタナティヴロックの延長線上にある親しみやすいサウンドに、スタジアムロックの壮大さやその時代にフィットしたモダンなポップテイストを散りばめたスタイルで、作品を重ねるごとにそのモダンさが強まっている彼らですが、本作はその極みと言えるような内容に仕上げられています。
オープニングを飾るのは、昨年夏に先行公開されていた「Walk On Water」。昨今のヒットチャートを賑わせているエレクトロテイストのポップロックは前作の延長線上にある楽曲ですが、その振り切れ方はそれ以上。続く「Dangerous Night」に至ってはプロデューサーにかのZEDDを迎えた意欲作で、ポップさの冴えっぷりは言うまでもなく、音数を抑えたアレンジなどかなりモダンさが際立つ仕上がりです。
さらにはエイサップ・ロッキー(A$AP ROCKY)をフィーチャーした「One Track Mind」やホールジー(HALSEY)とのデュエット曲「Love Is Madness」などは、もはやロックバンドの枠を超えた作風。では「ロックではない」からダメかというと、まったくそんなことはなく、非常によく作り込まれた良曲なのです。
かと思えば、ゴスペルを彷彿とさせる壮大なロックバラード「Great Wide Open」やアコギ弾き語りによる「Remedy」なども存在している。確かに全体を覆う世界観はロックバンドのそれとは異なるものかもしれません。しかし、今や世界的に「(いわゆるヒットチャート上で)ロックは死んだ」なんて言われている状況下で、ロックバンドがその時代と対峙して今のメインストリームで戦おうとしている姿を、僕は全面的に支持したいと思っています。
昨年のLINKIN PARKの新作『ONE MORE LIGHT』を聴いたあとと同じ気持ちになった、THIRTY SECONDS TO MARSの新作。『AMERICA』というシンプルなタイトルに込めた思いと、そのアメリカをイメージさせるキーワードがいくつか並ぶだけのシンプルなアルバムジャケット(海外盤はそのキーワードと色が異なる10種類のジャケットが用意されています)。日本のリスナーにはぜひその歌詞の意味を理解しつつこのサウンドを楽しんでほしいので、5月23日リリースの国内盤を手にとってもらえたらと思います(日本盤のみ、エイサップ・ロッキー抜きの「One Track Mind」も収録されているので)。
▼THIRTY SECONDS TO MARS『AMERICA』
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