THUNDER『DOPAMINE』(2022)
2022年4月29日にリリースされたTHUNDERの13thアルバム。
前々作『RIP IT UP』(2017年)から引き続き全英3位という高記録を残した前作『ALL THE RIGHT NOISES』(2021年)から、わずか1年1ヶ月という過去最短スパンで届けられた新作は、バンドにとって初の2枚組アルバム。全18曲/71分という長尺かつボリューミーな内容ですが、なにげに前作のデラックス盤もCD2枚組で、ライブテイクを除くスタジオ音源だけで15曲もあったので、実は2作続けて盛りだくさんな内容なんですよね。ただ、公式上は今作が初の2枚組。CDだと1枚でも収まる内容ですが、そこは気にしない。
実は前作も2020年1月には完成していたものの、コロナ禍の影響でリリースが1年後になってしまったんですよね。で、2021年春にこの『ALL THE RIGHT NOISES』をリリースしたものの、依然コロナが猛威をふるい続け、バンドは再びレコーディングに突入。何度かのセッションを経て20曲前後の楽曲が完成したこと、そして2022年5月から延期になっていたツアーを再開させることが決まり、急遽次のアルバムのリリース日程を設定。そこに向けて正式なレコーディングを重ねた結果、最終的に16曲が完成して2枚組として届けられることになったわけです。
内容に関しては、特に目新しいことに挑戦するでもなく、いつもどおりのTHUNDER節全開。ただ、前作がクラシックロック/ルーツロックに忠実な楽曲が複数含まれていた(=元ネタがわかりやすい曲が多かった)のに対し、今作収録曲はルーツをにじませつつも元ネタがわからない程度にブラッシュアップされた楽曲ばかり。前作での経験が見事な形で昇華され、かつ従来のTHUNDERらしさにも磨きがかかった、文句なしの“良質なブリティッシュハードロックアルバム”に仕上がっています。と同時に、年齢的なこともあってか、溌剌としたロックチューン以外にも芳醇さに満ちたディープな楽曲も見受けられ、自然な形で“深化”していることも伺えます。
リードトラックとして先行配信された「The Western Sky」や「Dancing In The Sunshine」のような心地よいロックンロールあり、前作で試みたグラマラスな路線の延長線上にある「Black」、ルーク・モーリー(G, Vo)とダニー・ボウズ(Vo)の異なる声質のボーカルが見事に活かされた「Last Ordes」、デビュー30周年を経てもなお変わらない魅力に満ちた「All The Way」や「Across The Nation」、メロディラインは実にTHUNDERらしいのにアレンジがジャジーなスウィング感に満ちた「Big Pink Supermoon」、フィドルをフィーチャーしたトラッド色の強い「Just A Grifter」、ゴスペルタッチのドラマチックなピアノバラード「Is Anybody Out There?」、クライマックスにふさわしいミドルヘヴィの「No Smoke Without Fire」など、バラエティ豊かさは前作以上。無理に新しいことに挑戦しなくても、これまでの持ち札に磨きをかけ続け、どんどんソリッドにしていけばそれで充分だということが伝わる、実に王道のロックアルバムではないでしょうか。
僕自身の現在のモード的にはど真ん中な音ではないものの、久しぶりに戻ってくると心地よく響く。常にリピートするというよりは、たまに聴くとホッとする実家のような存在。それがこのアルバムかな。とにかくよく出来た良作です。
▼THUNDER『DOPAMINE』
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