THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)
CDショップで久しぶりにジャケ買いした1枚。そのアートワークのセンスと「THUNDERPUSSY」という思い切ったバンド名から、てっきり70年代のB級C級ガレージバンドのリイシューかと思ったら、今年の5月下旬に発売されたばかりの新作。しかも、メジャーレーベルのRepublic(Universal Records傘下)配給だと知り、迷わずレジまで走ったわけです(ウソ走ってはいないです)。
日本盤すらリリースされていないこのバンドですが、2013年に結成されたシアトル出身の4人組ガールズバンド。同郷のマイク・マクレディ(PEARL JAM)に見出され、彼のプライベートレーベルからシングル「Velvet Noose」を発表しています。このシングルはマイクがプロデュースを手がけたほか、ギターでも参加(本アルバムにも彼が参加した「Velvet Noose」「The Cloud」を収録)。これが話題となり、現在のメジャーレーベルと契約し、TOOL、RED HOT CHILI PEPPERS、SYSTEM OF A DOWN、ジョニー・キャッシュなどのプロデュース、ミックスを手がけてきた女性エンジニア、シルヴィア・マシーをプロデューサーに迎えて完成させたのがこのアルバムです。
聴く前のイメージとしてはガレージロック的な側面が強いのかなと思っていました。実際、そういったカラーも存在するのですが、それ以上に全体を多くのは70年代のハードロック的なテイスト。曲によってはLED ZEPPELINを彷彿とさせるものもありますが、それ以上にもっとカラッとしているというか。ジャニス・ジョプリン以降、ジョーン・ジェット以前というイメージ(伝わるでしょうか?)のボーカルと、音の隙間を効果的に聴かせるアンサンブルが、古臭くもあり、どこか新鮮でもあるのが不思議です。
……で、冷静になって考え直してみると、ああそうか、これってPEARL JAM以降のアメリカンロックなのかなと。グランジの中でもBLACK SABBATHに影響を受けていない側のバンド、そちらに近い存在なのかもしれないなと。マイクがこのバンドに引っかかったのも、そういったところにあるのかもしれないな、なんて思ったわけです。
それでいて、このヴィジュアルの華やかさ。ジャケットのエログロチックな世界観とはちょっと違うものもあるんだけど、このキラキラ感もどこか70年代のそれに近いものがあるんじゃないかなと。決して80年代的煌びやかさではない、そこの小さな違いがすごく大きいと思うのですが、いかがでしょう?
アメリカではすでにGRETA VAN FLEETと共演しているようです。それもすごく納得。グランジすら後追いの世代が、気づいたら70年代的な音楽を“今の音”として作り上げてしまった。その結果が、このTHUNDERPUSSYやGRETA VAN FLEETなのかなと。もっと言えば、イギリスのTHE STRUTSあたりもそこに含まれますよね。ロックの歴史が何サイクルも経て、またここにたどり着いた。我々おっさん世代にはウェルカムですが、今を生きる若い世代にはどう響くのか。これからが見ものです。