TMG『TMG I』(2004)
B'zのギタリスト/コンポーザーである松本孝弘のソロ・プロジェクト、「TMG(TAK MATSUMOTO GROUP)」のファーストアルバム。参加メンバーはギター/作曲が松本、ボーカルに元MR.BIGのエリック・マーティン、ベース&ボーカルにNIGHT RANGERのジャック・ブレイズ、ドラムにザック・ワイルドやスラッシュとの共演等セッション活動がメインとなるブライアン・ティッシーという、一部の属性の方々にとっては非常に豪華な面々(一部の曲で、レニー・クラヴッツのツアーメンバーとしても有名な女性ドラマー、シンディ・ブラックマンも参加)。特にエリックとジャックという「'80年代のMTVハードロック世代」にとっては懐かしいメンツの参加は、ある意味親しみやすいんじゃないかな。
基本的には'80年代~'90年代前半によく聴けた「アメリカン・ハードロック」。そこに松本らしいアイディア(B'z的なリズムやリフを導入等)を散りばめつつ、普通に「洋楽ハードロック」として楽しめるクオリティを保っています。これは松本云々というよりも、エリックが歌っているからってのが大きいように思います。
けど、これをMR.BIGやNIGHT RANGERといったバンドと比べた場合、やはり若干見劣り(聴き劣り)するのは否めないかな、という気も。またメロディに関していえば、本家であるB'zよりも‥‥って書いたらファンに怒られるんでしょうか? 正直なところ、そこが一番気になりましたね。シングルとなった "OH JAPAN ~OUR TIME IS NOW~" は聴き慣れたこともあって結構キャッチーに感じられるんですが、他のアルバム曲は‥‥正直、似たり寄ったりなイメージが強いですね。曲調やテンポ的なもの、そしてキーなんかが似通った楽曲が並んでいる、しかも14曲という曲数もそれに影響してるのかな、と。10曲くらいでもっとメリハリある選曲/曲順だったら、ファーストインパクトももっと強烈なものだったんじゃないかな‥‥って気がするんですが。そういうわけで、1~2回聴いた感じでは非常に散漫な印象を受けました。
勿論、聴き込んでいくうちに「らしさ」が見えてきて、ドンドン気に入っていくんだろうとは思うけど‥‥そこまで熱心なファンでもないしなぁ、俺。
ただ、演奏に関してはさすがと言わざるを得ないかな、と。意外と過小評価されているジャックのベースプレイも、一時期のNIGHT RANGER以上に活かされているし。松本のプレイもソロ・プロジェクトの割にB'zの時みたいな派手な弾きまくり感があまり感じられず、どちらかというとバランスを重視したプレイになってるような気がしますね。最近のB'zのアルバムとか聴いたことがないから比較のしようがないですが‥‥最近は隙間を埋めるようなプレイよりも、ワザと隙を作るようなプレイに目覚めたんですか、松本は? いや、よく判らないけど‥‥少なくともこのアルバムでの彼のプレイからは、そういう雰囲気を感じました。
個人的に気に入っているのは5曲目辺りから‥‥"I wish you were here" みたいな王道アメリカンロック路線、そして如何にもB'zチックなアレンジを持つ "THE GREATEST SHOW ON EARTH" が特に気に入ったかな。後者のアレンジなんて、普通の欧米ハードロックでは考えられない味付け(アレンジ)ですからね。日本人的というか、フュージョン的というか、ホント独特ですよね。こういう曲を聴いちゃうと‥‥どうせなら、B'zの代表曲を英語詞でセルフカバーしたアルバムでも作ればいいのに、とか思っちゃうんですが。それは稲葉の手前できないのかな、なんて。実はB'zの楽曲をセルフカバーした方がよりポピュラーなハードロックアルバムになったんじゃないかな‥‥って思うんですが。如何でしょう?
思ってた程派でではなく、どちらかといえば地味な部類のアルバムですよね。MR.BIGでいったら4作目の「HEY MAN」、NIGHT RANGERでいったら同じく4作目の「BIG LIFE」とか(って両方共ファンからは駄作扱いされることの多い1枚じゃないか! いや、俺は気に入ってるんですけどね)。あ、そうか。その分ツアーでは派手な曲‥‥NIGHT RANGERの "(You Can Still) Rock In America" とかMR.BIGの曲をカバーすればいいのか!(って実際やるみたいな発言をエリックはインビューでしてますよね。さて、どうなることやら‥‥)
最後に‥‥このアルバムをここ日本でのみリリースすることによって、一番「得」をする人って誰なんでしょうね? いや、金銭面での話じゃないですよ。松本がこのアルバムをリリースすることで、B'zを小馬鹿にするようなハードロック・ファンから受け入れられるとも思えないし、逆にB'zしか眼中にないようなファンにエリックやジャックがどう受け入れられるのか‥‥結局その答えって、2作目を作って初めて見えてくるものなのかも。というわけで、何年先になるか判らないけど、セカンドアルバムを熱望します。勿論、今回のメンバーでね!