2019年2月26日 (火)

TNT『INTUITION』(1989)

1989年初頭にリリースされた、TNTの4thアルバム。前作『TELL NO TALES』(1987年)が“北欧メタル”の流れに乗り、ここ日本でも高く評価されたことを受け発表された今作。前作で見せたポップでキャッチーな路線を押し進めた、非常に耳障りの良い1枚に仕上がっています。

オープニングのインタールード「A Nation Free (Intro)」でのドラマチックな展開は、往年のQUEENを思わせるものがあり、これから始まる煌びやかな世界への期待を高めるに十分な役割を果たしてくれます。で、そこからどんな曲に続くのかと思えば、それまでのTNTからしたら異色の「Caught Between The Tigers」。跳ね気味のリズムが印象的な、世が世ならファンクメタルと呼びたくなるような1曲で聴き手を驚かせます。

そんな予想外な流れから、リードシングル「Tonight I'm Falling」へと続くのですが、この王道ポップメタルを初めて聴いたときの感動といったら……キラキラしたメロディはもちろんのこと、それを華麗に演出するバンドアンサンブルをはじめ、トニー・ハーネル(Vo)のハイトーンボーカルやロニー・ル・テクロ(G)のテクニカルなギターソロなど、とにかくすべての要素が完璧な形で合致した、傑作中の傑作と言えるでしょう。

さらにそこから、分厚いコーラスとドラマチックなアレンジが素晴らしいバラード「End Of The Line」、先の「Tonight I'm Falling」をよりポップかつキャッチーに昇華させたタイトルトラック「Intuition」と続き、アルバム前半はあっという間に終了。後半はヘヴィなリフとグルーヴィーなリズム、パワフルなポーカルの相性も抜群な「Forever Shine On」から始まり、ポップ路線の「Learn To Love」、ロニーが歌うおふざけ調の短尺曲「Ordinary Lover」、「Tonight I'm Falling」や「Intuition」と並ぶポップチューン「Take Me Down (Fallen Angel)」、北欧のバンドらしい陰りと感動的なメロディ&アンサンブルが絶妙なハーモニーを生み出すバラード「Wisdom」で幕を下ろします。

全10曲で37分と標準よりも短めの作品で、インタールード的な楽曲が2曲含まれているので歌モノは実質8曲となりますが、前作も全11曲で30分強という短さだったので、それと比べたら……とは思いつつも、もう2曲くらい欲しかった印象も。ですが、この10曲で完璧な構成を構築してしまっているので、ほかにどんな曲が加えればいいのか悩ましいところ。これはこれで正解だったんでしょうね。

ちなみに本作、当時としてはかなり音質の素晴らしいアルバムだった印象があります。ギターの音色やドラムの質感など、当時としてはかなり異色でしたよね。確かドラムに関しては、ケネス・オディイン(Dr)がバスドラ、スネア、タム、シンバルなど曲に合った最良の音をサンプリングし、それをトリガーだったかエレドラだったかを使って叩くという、緻密な作業が繰り広げられていたそうなんです(と、当時の音楽誌で読んだ記憶があります)。今でこそそういった手法は珍しくないですが、30年前の、しかもハードロックバンドでここまで徹底して作り込んでいたのって、おそらくDEF LEPPARDぐらいじゃないかって気がします。あとは『OUT OF THIS WORLD』(1988年)期のEUROPEとか。そう考えると、本作の方向性って“北欧版『HYSTERIA』”と言えるんじゃないかな……言い過ぎですか?

前作にあったメタリックなファストチューンは皆無ですが、ここまでに名前が挙がったようなバンドに興味がある方なら絶対に興味を示す1枚だと思います。日本ではなぜか本作のデジタル配信およびストリーミングは行われていませんが、ぜひ盤で聴いてみることをオススメします。



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投稿: 2019 02 26 12:00 午前 [1989年の作品, TNT] | 固定リンク

2017年3月17日 (金)

TNT『TELL NO TALES』(1987)

TNTといえば、日本では1989年の4作目『INTUITION』がスタンダードかもしれませんが、僕としてはその前作『TELL NO TALES』のほうがこのバンドらしくていいな、と勝手に思っています。事実、最初に聴いた彼らのアルバムもこの『TELL NO TALES』でしたし。

2ndアルバム『KNIGHTS OF THE NEW THUNDER』(1984年)レコーディング直前に加入したトニー・ハーネル(Vo)が、楽曲制作でも本格的に参加したのが1987年リリースの3rdアルバム『TELL NO TALES』。すでに本国ノルウェーではそれなりに人気のあったTNTですが、このアルバムは初にして唯一の本国1位を獲得しています。シングルカットされた「10,000 Lovers (In One)」もノルウェーチャート2位を記録。また、アルバムはアメリカでも初めてBillboardにチャートイン(100位)するなど、世界規模でも少しずつ成功を収めつつありました。

「Everyone's Star」からスタートする本作は、トニー・ハーネルのハイトーンボーカルとロニー・ル・テクロ(G)の圧倒的にテクニカルなギタープレイに魅了される作品集。同曲、そして続く「10,000 Lovers (In One)」はともにシングルカットされるだけあって、非常にポップで親しみやすいメロディを持つ楽曲たちです。そこからライブの定番アップチューン「As Far As The Eye Can See」へと流れる冒頭3曲の構成は、TNTの全作品の中でも出色の出来だと思います。

テクニカルなギタープレイが耳に残る1分少々のインスト「Sapphire」が次曲の序章的な盛り上がりを作ると、続く「Child's Play」ではトニーの圧倒的な歌とQUEEN的なオーケストレーションが楽しめる。そこから再びクラシックギターによる短尺インスト「Smooth Syncopation」へと流れていき、「Listen!」のハーモニーが静寂を切り裂くかのように「Listen To Your Heart」へと突入。さらにヘヴィなミドルナンバー「Desperate Night」、泣きの名バラード「Northern Lights」とクライマックスに向けて盛り上がっていきます。そして、終焉を告げるドラマチックなインスト「Incipits」から高速メタルチューン「Tell No Tales」で幕を下ろす。ここまで約30分、本当にあっという間です。

次の曲の序章的インストが3曲も入っているので、全11曲とはいえ歌モノナンバーは計8曲。しかもトータルランニング30分というのは1987年当時としても非常に短い作品です。特に時代はアナログからCDへと移行しつつあった時期ですから。でも、長ければいいってもんじゃない。ここまでバラエティに富んでいて完璧な内容を30分に凝縮できているんだから、当時のTNTは只者じゃなかったんだと思います。ここでの成功が、続く『INTUITION』へとつながるわけですからね。

北欧メタルとか呼び方がいろいろあって何が正解かわからないけど、この『TELL NO TALES』に関しては純粋に“ヨーロッパ出身のHR/HMバンドの作品として優れた1枚”、それで十分だと思います。



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投稿: 2017 03 17 12:00 午前 [1987年の作品, TNT] | 固定リンク