TOKYO ZAWINUL BACH『VOGUE AFRICA』(2003)
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENでも活動を共にする菊地成孔と坪口昌恭のふたりによる「人工ファンク・ジャズ」ユニット、TOKYO ZAWINUL BACH。その彼等の4枚目のアルバムとなるのがこの「VOGUE AFRICA」。サブタイトル(b/w Horacio "El Negro" Hernandez)にもあるように、このアルバムは通常のふたりによる音源集ではなく、オラシオ・エルナンデスをドラムに迎えたセッションを元に、いつも通り再構築していった「いかにも」なファンク・ジャズ・アルバムになっています。
この時のセッションは約2時間程度の即興演奏だったそうで、そのセッションをいつも通り坪口がスタジオで「リミックス」したものが、この40分程度の作品集になっているわけですが‥‥俺、ジャズとか詳しいわけでもないし、まぁ有名な作品なんかはたまに手に取ったりすることもあるんですが、基本的にはロックやテクノ、ポップスといった周辺の音楽をメインに聴いてるわけですよ。ところが、先の菊地氏との出会い‥‥同郷で実家が近所というのもありますが‥‥これが以後の俺の趣味の幅を更に広げてくれたことは今更書くまでもないでしょう。DCPRGとの出会いがあったからこのユニットにもたどり着き、前作「Cool Cluster」を愛聴するようになった。これが切っ掛けでジャズに片足を突っ込んだなんて言う気は全然ないですよ。けど、少なくともこのユニットがやっていることには興味があったし、普通に楽しめた、と。
で、今回のアルバム。ライヴ感を重視しつつも「如何にも」な編集・リミックス的側面がバンバン出てくる辺りは非常にクラブミュージック的でもあるし、菊地氏のサックスプレイや坪口氏のキーボードなんかを聴いてると普通にジャズっぽくてカッコイイって感じるし、一本筋の通ったようなノリは正しくファンク‥‥ダンスミュージックのそれだし。そういう意味ではDCPRGにも通ずる要素は十分に感じられる。ま、言い方はちょっと違うかもしれませんが、「DCPRGのミニマル版」がTZBなのかなぁ、と。「通ずる要素」が多々感じられるだけで、DCPRGと同系統と言ってるわけではありませんよ。基本的な姿勢や編成がまず全然違うわけですから。同じプレイヤー/ミュージシャンが両方に参加してるから共通要素が感じられるのかも‥‥ってその程度の感覚ですから。
アルバムは最初、ダンスとはかけ離れた‥‥ジャズっぽいと言えば確かにそれっぽい、非常に難解なノリからスタートするんですが、この辺は「人力エレクトロニカ」とか表現しようと思えば出来るわけで。効果的に挿入されるエフェクト(CDJとか使ってるのね、DCPRG同様)が更にそういう雰囲気を増長させてるわけで。で、曲が進むにつれてノリはドンドン激しくなっていき、非常にプリミティヴなリズムを堪能できたり、またテクニカルでハッと息を呑むプレイが続出したり‥‥緩いようでいて実は終始緊張感でいっぱいいっぱいな雰囲気。ジャズとしてリスニングするも良し、クラブでプレイして踊りまくるも良し。そういう意味ではDCPRG同様、クラブミュージック的側面が強いのかなぁ。普段クラブに行き慣れてる、また普段そういったクラブミュージックばかり聴いてる人からすると、菊地氏が関わるユニットの数々ってどう評価されてるんでしょうね。ちょっと気になるところです。
個人的には普段クラブミュージックとか聴く機会が全くなく(あるいは興味がなく)、ジャズに興味があるって人に聴いて欲しいかな。こういうサウンド、巷には結構溢れてますよね? これを切っ掛けに「ジャズのもうひとつのあるべき姿」にも目を向けて欲しいなぁ‥‥なんてね。勿論うちを常に観てくれている「ジャズにはあんまり興味ないよ」って人にもオススメ。クラブものが好きなら結構イケると思うよ。入門編にしてはちょっと変化球過ぎるけど、間違いなくいいアルバムなんで。ここからDCPRGに進むも良し、また逆も良し。ジャンルの垣根なんて飛び越えて、もっと広い世界に目を向けてみましょうよ、ねっ?
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