カテゴリー「Tool」の13件の記事

2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、今年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

2019年12月31日 (火)

2019年総括:①洋楽アルバム編

2019年もあと半日で終わり。いわゆる「テン年代」が終わるわけですね。さて、毎年恒例となった1年の総括を今年もじっくり書いていこうと思います。

今年からちょっと趣向を変えてみました。まず、①洋楽アルバム編(ジャンルレスでその年リリースのお気に入りアルバム10枚+次点10枚)、②邦楽アルバム編(同アルバム10枚+次点10枚)までは一緒、ここ数年続けてきた「その年の気になったアイドルソング10曲(+次点5曲)」をやめ、昨年から番外編として公開した③HR/HM、ラウドロック編(その年リリースのお気に入りアルバム10枚+次点10枚)と、④楽曲編(洋楽邦楽/ジャンル/リリース年関係なく、その年よく聴いた楽曲20曲)を新たに公開することにしました。

①、②および④に関してはアルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けて、③には意図的に順位をつけております(③は別媒体で準備を発表しているので、それを転載します)。特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは①洋楽アルバム編です。

 

■洋楽10枚(アルファベット順)

上位10枚を紹介する前に、次点となった10枚をご紹介。

<次点>
・CHELSEA WOLFE『BIRTH OF VIOLENCE』(レビュー
・THE CHEMICAL BROTHERS『NO GEOGRAPHY』
・CIRCA WAVES『WHAT'S IT LIKE OVER THERE?』
・FAYE WEBSTER『ATLANTA MILLIONAIRES CLUB』
・RIDE『THIS IS NOT A SAFE PLACE』(レビュー
・RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』(レビュー
・SHARON VAN ETTEN『REMIND ME TOMORROW』
・TEMPLES『HOT MOTION』
・TORO Y MOI『OUTER PEACE』
・TWO DOOR CHINEMA CLUB『FALSE ALARM』

昨年の年間企画にも書きましたが、自宅で音楽を聴くときってメタル/ラウド系以外はほぼ女性ボーカルのまったりした音楽が中心だったんですね。単に老いただけかもしれませんが(笑)、そういった類の音楽に心地よさ、気持ち良さを求めるようになったのは事実です。が、単にアコースティックでまったりしたものよりは、どこか尖っているほうが惹きつけられるし、何度も聴きたくなるのもまた事実。ここに挙げた次点10枚にはそういった作品が多く含まれている気がしてなりません。

さて、ここからが本編。僕が選んだ2019年洋楽アルバムTOP10です。

 

・BILLIE EILISH『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』(Spotify

・BON IVER『i,i』(Spotify

・BRING ME THE HORIZON『amo』(Spotify)(レビュー

●BRING ME THE HORIZON『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(Spotify)(レビュー

・EX: RE『EX: RE』(Spotify

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2019年総括:③HR/HM、ラウドロック編

一昨年秋から『リアルサウンド』でスタートした、HR/HMやラウドロックなどエクストリーム・ミュージックの新譜キュレーション記事を連載しているのですが、2019年のまとめ記事となる年間ベスト10紹介エントリー「西廣智一が選ぶ、2019年ラウドロック年間ベスト10 BMTH、Russian Circles、Slipknotなど意欲作が気になる1年に」が12月26日に公開されております。

年明け発売の雑誌『ヘドバン』最新号でも同様の企画にアルバム10選をお送りしているのですが、こちらでは『リアルサウンド』の記事で紹介した10枚に加えて、次点となった10枚とあわせて紹介できたらと思います。

まずは、すでに公開済みの上位10作品について。こちらはあえて記事執筆時と同じままで進めたいと思います。

01. BRING ME THE HORIZON『amo』(レビュー
02. TOOL『FEAR INOCULUM』(レビュー
03. RUSSIAN CIRCLES『BLOOD YEAR』(レビュー
04. LEPROUS『PITFALLS』(レビュー
05. KILLSWITCH ENGAGE『ATONEMENT』(レビュー
06. SLIPKNOT『WE ARE NOT YOUR KIND』(レビュー
07. BARONESS『GOLD & GREY』(レビュー
08. GATECREEPER『DESERTED』(レビュー
09. MAMIFFER『THE BRILLIANT TABERNACLE』(レビュー
10. ALCEST『SPIRITUAL INSTINCT』(レビュー

選出した理由は『リアルサウンド』のエントリーにてご確認を。ちなみに、『ヘドバン』のほうではあるアルバムの代わりにOPETH『IN CAUDA VENENUM』を選出しております(順位は若干の変動あり)。

続いて、選に漏れた次点10作品もご紹介。

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2019年9月13日 (金)

TOOL『FEAR INOCULUM』(2019)

2019年8月30日。前作『10,000 DAYS』(2006年)から約13年4ヶ月を経て、TOOLのニューアルバムがついに届けられました。

フルアルバムとしては通算5作目のオリジナル作品となる本作は、同日リリースの(TOOLの1週間前リリースでしたね。前週1位を獲っておりました。大変失礼いたしました)テイラー・スウィフトのニューアルバム『LOVER』と接戦を繰り広げ、大半が10分超の長尺トラックだというのにTOOLに軍配が。『LATERALUS』(2001年)から3作連続の全米1位を獲得しています。アメリカではCDに4-inchサイズのHDスクリーン付き動画プレイヤーが同梱された特殊仕様にも関わらず、フィジカルだけで25万枚近くも売り上げたとのこと。残念ながら日本盤のリリース予定は立っておらず、この特殊仕様もAmazonなどで入荷情報が流れ次第、すぐに完売という状態が続いています。

さて、本作ですがフィジカル版とデジタル版で収録内容が異なるのをご存知でしょうか。筆者の手元にあるサンプル盤、実は7曲入りでトータル79分10数秒という内容のもの。ところが、SpotifyやApple Music、あるいはiTunesなどのストリーミング/デジタルリリース版は単尺のインスト3曲(「Litanie contre la Peur」「Legion Inoculant」「Mockingbeat」)が追加された全10曲/約87分というボリューミーな内容なのです。

もっとも、フィジカル版のほうにはMP3ダウンロードカードが付属しており、この追加3曲を別途ダウンロードできるので、最終的にはすべての新曲を聴くことができるんですけどね。要するに、CDの収録内容ギリギリまで詰め込もうとした結果がフィジカル版の7曲ということなんでしょう。

で、僕自身はこの7曲バージョンで慣れてしまっていたので、あとでストリーミングサービスで10曲入りという事実に「えっ?」と驚き、10曲バージョンを改めて聴いて「なるほど、これはこれでありかも……」となったわけです。

まあ、とにかく内容ですよね。前作『10,000 DAYS』がやたらと宗教色が強く、難解さが高まっていた印象を受けたのですが、今作はそれ以前の『LATERALUS』あたりにまで戻ったような空気感で、若干ですが聴きやすくなっているんじゃないでしょうか。もっとも、本編に収められた「Chocolate Chip Trip」含めインスト曲が2〜4分台なところを、歌モノ楽曲はすべて10分台というエクストリームな構成ですし、それに対して「聴きやすい」と言ってしまうのもどうかと思うんですが、本当なんだから仕方ない。いや、スルスル聴き進められるんですよ、本作。

また、メタリックな色合いは過去数作の中ではもっとも薄いと言えるでしょう。そういった点が本作の聴きやすさに影響を及ぼしているのは、少なからずあると思います。それによって、今までTOOLを聴いたことがなかったリスナーにまで届いている事実がまた面白いなと。これもストリーミングサービスへの音源解禁の功績によるものかな。

で、上で「歌モノ」なんて表現しましたけど、実はメイナード・キーナン(Vo)の歌う比率は過去イチで低い1枚でもあるんです。インストパートが大半と言ってもいいくらいの内容で、しかも各曲とも印象的なフレーズやリフが反復され続け、その上にアダム・ジョーンズ(G)のギターソロが乗っかる。特に事実上の本編ラスト曲「7empest」(本作で最長の16分!)でのギタープレイは圧巻の一言。どこか「Tubular Bells」(マイク・オールドフィールドの代表曲。映画『エクソシスト』にも用いられたアレね)のメインフレーズにも似たアルペジオが含まれていたり、緩急巧みなアレンジといい、歌パートは少ないもののしっかり存在感を発揮するメイナードといい、とにかくグレートとしか言いようがない。

個人的には追加インスト3曲がない7曲バージョンのほうがタイトで完成度も高いという印象を受けますが、どうでしょう。ストリーミングでの10曲バージョンに慣れてしまっている人は、ぜひM-3、M-5、M-10をカットしたプレイリストを作って再生してみてください。シリアスさが増して、全体的にもギュッと締まった内容になるはずですから。

まあとにかく、すごいアルバムです。さすがTOOL。これ、ライブはどうなっちゃうんだろうね。来年の春あたり、あのフェスで来てくれないかな?(あるいは来年8月のあちらでもいいんですが)

 


▼TOOL『FEAR INOCULUM』
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2019年8月 3日 (土)

TOOL『10,000 DAYS』(2006)

2006年5月にリリースされた、TOOL通算4作目のオリジナルフルアルバム。

3rdアルバム『LATERALUS』(2001年)から5年ぶりの新作で、前作から引き続き全米1位を獲得。アメリカ国内だけでも100万枚以上ものセールスを記録しており、同作発表後には『SUMMER SONIC 2006』で三度目の来日公演も実現。翌2007年2月には自身二度目の単独来日ツアーも敢行しております。

プログレッシヴさに拍車がかかった前作を経て制作された今作は、方向性的には『LATERALUS』の延長線上にあるかと思います。が、今作のほうが若干地味目で取っ付きにくさが強いイメージを受けます。言い方は悪いけど、TOOL上級者向けアルバムみたいな。

アルバムを重ねるごとに、確かに個々のプレイやアンサンブルの難易度が上がっているのは間違いありません。事実、もっとも大ヒットした2ndアルバム『ÆNIMA』(1996年)が持っていた“難解だけどわかりやすい”という絶妙なバランス感は続く『LATERALUS』で一旦崩壊。それにより、現在に至るまで彼らが維持している“ヘヴィメタル/ラウドロック版プログレッシヴサウンド”というスタイルが確立されたことも間違いないと思います。

あと、過去2作に漂っていた宗教的な雰囲気が本作ではより強まっているのかな?という印象も。これもあくまでイメージでしかありませんが、アメリカという国や文化を理解する上でやはり欠かせないのが宗教感。ここ日本ではそのへんの解釈や個々の信仰がまちまちだったりするので、なかなか深い部分まで理解するのは難しいのかもしれません。ただ、TOOL然り、同じくメイナード・キーナン(Vo)が所属するA PERFECT CIRCLE然り、そこは切っても切り離せない要素なのかな。

さらに、そういった要素を強めているのが、ボーカルのメロディラインであったり短尺のインタールドであったり、シタールやタブラなど楽器を効果的に用いたサウンドエフェクトにもあると思うのですが……いかがでしょう。

そのへんも含め、僕はこのアルバムを非常に“2000年代のアメリカらしい”1枚だと認識しています。あの時代ならではの光景が浮かんでくるといいますか。だからこそ、本当はその後の混沌としたアメリカを随時に表現してほしかったのですが……次作が届くのが2019年8月30日、13年以上もかかってしまったというのも、また彼ららしいといいますか。

本作を含むTOOLの過去作が8月2日からストリーミングサービスでの配信スタート、というニュースも飛び込んできております。日本でも同日の日中から聴けるようになっていますが、おそらく新作もリリースと同時にストリーミング開始されると思います。はたしてどんな内容になるのか、今からワクワクですね。

あと、今回もCDは特殊パッケージなのかも気になるところ。『ÆNIMA』のホログラム風ジャケット、『LATERALUS』の特殊ケース、さらには『10,000 DAYS』のメガネ風デジパック(笑)など、毎回凝ったパッケージで(主に収納面で)困らせてきた彼らが、次は何に手を出すのか。ガクブルしながら待ちたいと思います。

 


▼TOOL『10,000 DAYS』
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2018年3月 7日 (水)

A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』(2003)

2003年9月に発表された、A PERFECT CIRCLEの2ndアルバム。ご存知のとおり、このバンドはTOOLのメイナード・キーナン(Vo)が、バンドのギターテクを勤めていたビリー・ハワーデル(G)という才能と出会ったことで誕生し、TOOLが所属レーベルとの裁判で思うように活動的なかった2000年に1stアルバム『Mer de Noms』を発表しています。その経緯などについては、2003年10月に執筆した同作のレビューに詳しいので、そちらに譲ります。

さて、前作レビューを執筆したあと、この2ndアルバムについて書くことができなかったので、14年ぶりの新作が今年4月に発売されるこのタイミングに改めて書いてみたいと思います。

前作のときにも書いたように、A PERFECT CIRCLEはメイナードの“ソロプロジェクト”ではないし、TOOLとは完全に別モノ。むしろ、ビリーという才能の塊と遭遇したことで、メイナードの創作意欲がTOOLとは別の形で爆発した、新しいバンドと受け取るほうが正しい解釈だと思っています。

なので、そのサウンドもTOOLのようにプログレッシヴな展開をするものとは別次元で展開されており、特に本作はヘヴィな印象が強かったデビュー作『Mer de Noms』とは若干異なるカラーを打ち出し始めています。

ちなみに、当時のバンドメンバーはメイナード、ビリーのほか、ジョシュ・フリース(Dr)、当時MARILYN MANSONを脱退した“トゥイギー・ラミレズ”ことジョーディー・ホワイト(B)、元THE SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハ(G)。イハはレコーディング後にバンドに合流しており、レコーディングにはNINE INCH NAILSなどで知られるダニー・ローナー(G)が参加しています。

このメンツから想像できる音……ではないかもしれません。特に本作は美しさや優しさの側面が強まっているため、ダイナミックかつヘヴィなアンサンブルを得意とするこのメンバーの特徴を抑えめに、あくまで曲の持つ世界観を再現することに徹したのではないかと思われます。

だからといって、ヘヴィなサウンドが皆無かというとそんなことはありません。8分近くにおよぶオープニングトラック「The Package」は序盤こそ穏やかですが、曲が進むにつれて影に隠れていたヘヴィさが顔を見せ始めますし、不穏なギターリフが印象的な「Pet」のような曲も含まれていますしね。それ以外にも、各曲の至るところにそういった要素は散りばめられているので、前作から激変したというわけではありません。

でも、本作の軸になる部分は“そこ”ではない、と。浮遊感の強いサウンドメイキングやアレンジ、TOOLでは聴くことができないメイナードの異なる表情(声)、そして鬼才ビリー・ハワーデルのソングライティング。これらが三位一体となってリスナーの前に姿を現す。油断してると魂を持っていかれそうになるけど、信用して心を預けてみたら予想外の気持ち良さが味わえる、そんなアルバムではないでしょうか。非常に抽象的な表現が多い気がしますが、そういう抽象的なものこそがA PERFECT CIRCLEというバンドには合っているような気がします。

 


▼A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』
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2018年2月 1日 (木)

V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』(1994)

1994年6月にリリースされた、KISSのトリビュートアルバム。ちょうどKISS結成20周年を記念して、当時のメンバーも制作に携わった1枚で、レニー・クラヴィッツガース・ブルックスANTHRAXGIN BLOSSOMSTOAD THE WET SPROCKETDINOSAUR JR.EXTREMETHE LEMONHEADSTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESといったメタル/オルタナ/カントリーなどKISSに影響を受けた幅広いジャンルのアーティストに加え、ここ日本からもYOSHIKI(X JAPAN)が参加。さらに、メイナード・キーナン(TOOL)、トム・モレロ&ブラッド・ウィルク(RAGE AGAINST THE MACHINE)、ビリー・グールド(FAITH NO MORE)からなるスペシャルユニットSHANDI'S ADDICTION(JANE'S ADDICITONをKISSの楽曲「Shandi」にひっかけてもじったもの)まで参加しております。

まあKISS愛に溢れた……というよりは、各アーティストが平常運転でKISSの楽曲をカバーしたといったほうが正しいのかもしれませんね。だって、1曲目の「Deuce」からレニー・クラヴィッツ、直球勝負でカバーしつつも彼らしく味付けしてますから。ちなみにこの曲、ハーモニカでスティーヴィー・ワンダーもゲスト参加してます。

かと思えば、KISSご本家が演奏で加わったガース・ブルックス「Hard Luck Woman」は、カバーというよりもコピー。本家がいつもどおりに演奏して、ポール・スタンレーがハーモニーで加わっているんだから、そりゃあ“まんま”になっても仕方ないですよね(笑)。ANTHRAXの「She」も平常運転、というか途中まで“まんま”すぎて、後半に彼らならではのこだわりのアレンジが加わるという。この時期の彼らは、ボーカルがジョン・ブッシュ時代なので、こういったジーン・シモンズ色の強い曲はピッタリですね。

そういえば、1994年というとグランジブーム末期というタイミングで、KISSから影響を受けたと公言するグランジバンドも少なくありませんでした。そういうこともあって、GIN BLOSSOMS、TOAD THE WET SPROCKET、DINOSAUR JR.あたりのグランジ/オルタナロックバンドのKISSカバーは良い味を醸し出しています。GIN BLOSSOMS「Christine Sixteen」こそストレートなカバーですが、TOAD THE WET SPROCKET「Rock And Roll All Nite」のアコースティックスローカバー、DINOSAUR JR.「Goin' Blind」のヘヴィで泣きまくり、かつ脱力系なカバーは完璧すぎるほどの素晴らしい仕上がり。1994年という時代感を見事に反映した、本作の中でもベストテイクと言えるでしょう。

そして、本作中もっとも異色のカバーがSHANDI'S ADDICTION「Calling Dr. Love」。トム・モレロの変態ギターを存分に活かしたテイクで、参加メンバーの各バンドの個性が見事に反映されたアレンジは、最高の一言。のちのヘヴィロック/ラウドロック一大革命を先取った1曲と言えるかもしれません。

その他にも、EXTREMEらしくファンクロック的“ハネた”ミディアムナンバーへと昇華させた「Strutter」、あの有名なツインリードギターをブラスで再現した爆笑モノのTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES「Detroit Rock City」、いかにもYOSHIKI、というかまんまX JAPANな「Black Diamond」のオーケストラバージョン、ボーナストラックとして追加されたドイツのバンドDIE ÄRZTEの「Unholy」ドイツ語カバー(途中でディスコな“あの曲”も飛び出したり)など、聴きどころ満載。トリビュートアルバムとしては、かなり力の入った1枚ではないでしょうか。そりゃまあ、アーティスト本人が尽力してるんだもんね。

ちなみに本作、今のようにKISSがメイク時代に戻る前の作品ながらも、全米19位まで上昇。50万枚を超えるヒット作となりました。今思えば、このへんの成功が数年後のオリメン&メイク復活の布石になったんでしょうね。

なお、本作はストリーミング配信はおろか、デジタル配信自体が行われておりません。勿体ないったらありゃしない。



▼V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』
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2017年1月 9日 (月)

祝ご成人(1996年4月〜1997年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて実施したこの企画、今回で3回目を迎えます。今年も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1996年4月〜1997年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちらです)


ATARI TEENAGE RIOT『THE FUTURE OF WAR』(Amazon

BECK『ODELAY』(Amazon

BLUR『BLUR』(Amazon)(レビュー

DEF LEPPARD『SLANG』(Amazon)(レビュー

THE HELLACOPTERS『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(Amazon)(レビュー

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2004年7月 7日 (水)

TOOL『ÆNIMA』(1996)

全米アルバムチャート初登場2位を記録した、TOOLの2ndフルアルバムにして出世作である『ÆNIMA』。多くの方々と同じように、俺もこのアルバムで彼らに注目するようになり、そしてこのアルバムで彼らの音に初めて触れました。聴く前から「ちょっとKING CRIMSONっぽいかも」とか「暗くて宗教的な色合いが強い」なんていう話を友人から聞かされ、「じゃあ俺のストライクゾーンじゃんか!」と嬉々としてCDショップの試聴コーナーへ走ったことを、今でもよく覚えています。

そしてそんな軽はずみは行動が後々命取りになったことも、よく覚えていますよ。

このアルバムリリース当時(1996年頃)、まだTOOLは日本での知名度が極端に低く、音楽雑誌等でも殆どインタビューが載ることもなく、せいぜいアルバムレビューコーナーで彼らの名前を見かけるくらいでした。そんななので、一部のコアなファンのみ知っているカルト的存在と思われていたのもまた事実。当時はまだ「ラウドロック」なんて呼称はそれ程使われておらず、KORNNINE INCH NAILSMARILYN MANSONあたりと一括りで「オルタナ」とシンプルに呼ばれていたように記憶してます。もっとも、SONIC YOUTHもオルタナならTOOLもオルタナ、非常に幅が広く、それでいて実態が存在しないのがこの「オルタナ」という呼称でした。というよりも、TOOLのようなバンドの音を指して、どう既存のジャンルの中から例えを見つければいいのか……多分レコード会社も雑誌メディアも困ってたんじゃないでしょうか?(そういえば90年代初頭、ALICE IN CHAINSNIRVANAのようなバンドが登場した時も、日本のレコード会社はプロモーションの仕方に困ったようですね)

ごくシンプルに言ってしまえば、ハードロックですよね。ムーディー且つドゥーミー、そしてプログレッシヴ。『BURRN!』あたりが率先して彼らを取り上げていれば、きっとそちら方面で認識されていたのかもしれません。が、そちら側の人からすればTOOLの音楽は彼らが知る「HM/HR」とは異なるジャンルのようで、積極的に取り上げられることはありませんでした(好反応を示したのはせいぜい伊藤政則くらいでしたしね)。

では、『rockin'on』あたりはどうだったかというと……一部の記者からは好意的に受け入れられていたようですが、雑誌全体として彼らをプッシュする空気は全く感じられず、結局は「早過ぎたバンド/サウンド」として数年後に改めて取り上げられることになるのでした‥‥見る目がないっつうか、なんと言うか……。

結局、ここ日本では明確なジャンル分けによってプロモーション方法がハッキリしていくわけで、曖昧なサウンドだったり多方面にアピールするような唯一無二な存在が登場すると、てんでダメなんですよね‥‥アメリカやヨーロッパでは爆発的にヒットしてるってぇのに、これで損したバンド、腐る程いますよね?

とまぁ、そんなこともありつつ‥‥やっぱり今聴いても素晴らしい内容なわけですよ。何故彼らがあの当時、このアルバムをちゃんと聴いて、そして内容で判断しなかったのかが不思議に思える程、完成された音楽性じゃないですか、これ。今でこそこの手のサウンドや方法論を取るバンドは山程いますが、間違いなくTOOLは先駆者であり、そして今現在においても数歩抜きん出た存在であり、唯一無二のバンドなわけですよ。

「Stinkfist」のポピュラリティ、「Hooker With A Penis」のヘヴィさ、「Pushit」の叙情性、そして「Ænima」のトライバルなグルーヴ。まるで短編オムニバス映画を何本も続けて観ているかのような、それでいて1本1本がひとつの同じ方向に向かっているような共通点を持っていて、聴き終えた後にそれらが全て地続きだったことに気づかされる。それがTOOLサウンドの素晴らしさであり、このアルバムの魅力ではないでしょうかね。ホント、ライヴでもそうだったけど、サウンドを聴いてると絵が自然と頭に浮かんでくる、そんなバンドなんだよね、TOOLって。

彼らのサウンドに最初に触れるなら、個人的にはこのアルバムから入るのがいいのでは?と思います。勿論3rdアルバム『LATERALUS』も『ÆNIMA』と引けを取らない名作ですけどね。単純に好みの問題ですよ。ま、手っ取り早く両方買っちゃうのが一番かと思いますが。

『LATERALUS』のリリース、そして衝撃的だったフジロックでの初来日から数えても早3年。バンドはそろそろ新作のためのレコーディング準備に入るようです。リリースは来年2005年以降になりそうですが……ま、レコード会社とのイザコザも終わったことですし、今度はすんなりと聴けます……よね?

 


▼TOOL『AENIMA』
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2003年10月13日 (月)

A PERFECT CIRCLE『Mer de Noms』(2000)

TOOLのシンガーであるメイナード・キーナンが、そのTOOLのギターテクだったビリー・ハワーデルと結成したバンド、それがこのA PERFECT CIRCLE。メイナードの知名度からどうしても「メイナードのサイドプロジェクト」と見られがちだけど、元々はビリーが作っていたデモテープを聴いたメイナードが「これを一緒にやりたい」と便乗したことからスタートしています。このアルバム『Mer de Noms』に収録されている全楽曲、メイナードとビリーの共作ですしね。そこからスタートしていろんな人間を巻き込んで、最終的にトロイ・ヴァン・リーウェン(Gt)、パズ・レンチャンチン(Ba & Violin)、ジョシュ・フリース(Dr / VANDALS)の3人を迎えバンドとして活動開始。親交の深いNINE INCHE NAILSの1999年のツアーに同行する等、まずライヴにてその正体を露わにするわけですが、ここ日本ではやはりアルバムリリース後のフジロック('00年7月)でのライヴでしょうね。残念ながら俺はこの年の苗場には行けなかったんですが、もの凄い衝撃的なライヴだったようですね。

さてさて、そんなこのアルバム。TOOLのレコード会社との訴訟問題、それに伴う活動停止の副産物と言われていますが、ハッキリ言ってTOOLとは別物と考えた方が正解です。勿論、歌っているのはメイナード本人ですし曲作りにも携わっていますが、表現しようとしてるものやその方法等が違っているわけですし。TOOLではひとつひとつの楽器と声、個々が独自の主張をし、それがぶつかり合うことで共鳴し、独特な世界観を生みだしていると考えているんですが、APCの場合は全く逆‥‥ぶつかり合うというよりは「退きの美学」みたいなものを強く感じるんですね。例えばボーカルやギターが力強く鳴っている時は、他の楽器はそれをバックアップするような役目を果たしているし、バイオリンみたいな繊細な楽器がリードを取っている時は、歌でさえもそれを邪魔しないように盛り立てている。TOOLが結果論の音楽(完成するまでどういったものになるのか見えない)なのに対し、APCは先に提示されているものに対して全員で取り組み再現する‥‥それくらいの違いを感じるわけです。

1曲1曲がコンパクト且つポップなのもAPCの特徴でしょう。特にこのアルバムの楽曲は大半が3~4分台で、5分を超える曲はひとつもないし、逆に2分ちょっとの曲が2~3曲あるのもTOOLと比べると大きな違いですよね。TOOLの場合もそういう短い曲はありますが、あくまで続く次の曲へのインタールード的インストだったりするので、ちょっと意味合いが違ってきますしね。それとメイナードのメロディもヘヴィロックのそれとは違う、むしろゴシック調のイメージが強いものが多く、例えばジャンルは違いますがDEPECHE MODEといったタイプのバンドに近い色合いを見出すことができます。最近ではこういったゴシック調のヘヴィロックも幾つか登場していますが(EVANESCENCE等)、やはりそういったバンド達とは根本的に違う何かを持っているんですよね、APCって。それがビリー・ハワーデルというギタリスト/ソングライターの才能なのか、はたまたメイナードの才能なのか、あるいは参加しているミュージシャン達によるものなのか。恐らくその全部でしょうね。それぞれがそれぞれの仕事を的確にこなした結果、それがこのアルバムを高水準なものにした要因でしょう。

TOOLよりも聴きやすいし、どうしてもTOOLには取っつき難さを持ってる人が多いと思うんですね。やれ「プログレチック」だの「変態系オルタナ」だの。確かにそういった先入観が邪魔して手を出すまでに至らないのは理解できます。だから尚更、そういった人にはこのアルバムをまず聴いて欲しいと思うわけです。ヘヴィ過ぎず、それでいてポップ過ぎず(過剰なまでにポップさは皆無ですね。あくまでTOOLと比べて‥‥って意味)、独自のハーモニーと世界観を持つバンド。これはサイドプロジェクトなんかじゃなくて、今後もずっと続いていくバンドでしょうね。現にTOOLの活動が一段落した2002年当たりから、再びメイナードとビリーはこのバンドのセカンドアルバムに着手し始めたわけですから。

残念ながらこのアルバムとそのツアーに参加していたトロイとパズが脱退(トロイはQUEENS OF STONE AGEに、パズはZWANに加入するも、それぞれ現在は脱退済)、一時期レコーディングにはNINE INCH NAILSのダニー・ローナーが参加していたようですが、最終的には元MARILYN MANSONのトゥイギー・ラミレズと元SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハが加入。2003年夏からツアーを開始し、9月にはセカンドアルバムもリリースしたばかり。いよいよ単独来日も控えています。

最近ではこういったタイプの音の人気はどんどん衰退しているのかもしれませんが、リリースから3年経った今聴いても全然色褪せていないし、むしろ時間が経ってみて改めて「素晴らしいアルバムだったなぁ」と再認識した程です(いや、リリース当時も良いと思ってましたけど、まさかこんなに素晴らしかったとは‥‥ってことで)。ゴスや「グランジ以降」に興味を持つ人、各メンバーが参加していたバンドが好きだった人、そのどれにも当てはまらないけど独特な世界観を持ったロックバンドが好きな人、まだ聴いたことがないのならこれを機に是非。

 


▼A PERFECT CIRCLE『Mer de Noms』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

 

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