TREEBERRYS『TREEBERRYS』(2002)
俺ごときが今更声を大にして「チョーオススメ!」とか叫ばなくても、知ってる人は知ってるであろう日本のパワーポップバンド、TREEBERRYS。その彼等が2002年末にリリースしたサードアルバムがこれ。10曲入りで約20分というトータルランニングが示す通り、1曲1曲がコンパクトで、その上ハイパーテンションでの怒濤の攻め。勿論聴かせる曲ではちゃんと聴かせてくれるし、何より各曲が2分前後の短い曲にも関わらず、ちゃんとメロディが耳に/心に残るモノを持ってるという。この人達、すっげー判ってやってるよね。もしかしたら、気にしないで普通に作ったらどれもが名曲だったという天才級なのかもしれないけど、計算して作ってるにしてもここまで整理された、それでいて全然嫌味を感じさせない曲作りが出来るってのはホント凄いと思う。そして、こういうバンドがまだ日本のインディーシーンには山ほどいるという事実を、普段その手のバンドに触れる機会のない方々にもっと知って欲しいですね。
1曲目"(Ah-Ah) Just Can't Wait"から怒濤の攻め。1分40秒という短さの中に、ロックの持つ躍動感、胸キュンなメロディ、心に響くコーラス&ハーモニー、ガッツのある演奏‥‥全部が凝縮されてるのね。これ聴いて何も感じないロックファンは、その「ロックファン」という肩書きを返上すべきだねマジで。そのくらい素晴らしい1曲。続く"Silly Girl"もアップテンポのロックンロール。後半の展開にドキッとさせられること間違いなし。嗚呼、ロック好きで良かったと本気で思わされますよ、このバンドには。そしてそのまま3曲目"My Girl"でちょっとゆったり聴かせるモードに。もうね、名曲。ここまで全部名曲。で、この後に続く7曲も全部名曲。言い過ぎかもしれないけど、文句の付けようがない出来。ホントいいアルバムなんだってば!
掲示板の方で、とある方が「往年の(ELVIS COSTELLO &) THE ATTRACTIONSがドーピングしたかのようなハイパーモード」みたいな表現をしてたかと思いますが、正にその通りの音でして、もっと言っちゃえば‥‥'60年代のブリティッシュビートのバンド達が'70年代末のパンクに遭遇したかのような衝動性を覚えてしまったかのような音とでもいいましょうか‥‥う~ん、我ながらイマイチな表現だな、こりゃ。
実は俺、TREEBERRYSの音に触れるのはこれが初めてでして。このアルバムを聴いた後にファースト&セカンドからの曲を抜粋したMDを貰って聴いたのですが、確かに'60年代のブリティッシュビートに影響を受けた優れたバンドという印象は変わらないんですが、まだこの時点では'70年代末の衝動にまで到達してないかなぁ?てな感じを受けました(いや、悪い意味じゃないですよ? 俺はどっちも好きですから。メンバーの方々、読んで怒らないでくださいね?)。そう考えると、この劇的変化、というか成長はかなりバンドにとって大きなポイントになるんじゃないですかね。また、これによってより多くのファンを獲得すると思うんですよ。そしてそれには、もっと多くのロックファンにTREEBERRYSの存在を知って貰わなければならないという‥‥だからこうやって、俺がこの文を書いてるんですけどね。
3曲目までで解説めいたことがストップしてますが‥‥そんな必要がないくらい、ホントにどの曲も優れモノで名曲ばかり。歌詞も英語ですし、普段洋楽しか聴いてないって人にも聴いて欲しいし、あるいはメジャーバンドにしか興味がなかった人にも触れて欲しい音だし、何より一番に「とみぃの宮殿」をいつもご覧になってるあなたにこそ聴いて欲しいんですけどね!
ちなみにこのバンドのシンガーであるInagakiさんはもうひとつ、ROCKBOTTOMというバンドもやっておられて(こちらは昨年5月に一度観たことがあります)、こっちはかなりハードロック色の強いカッコイイバンドです。まだ音源らしい音源はCD-Rのみですが、TREEBERRYSに興味を持った人はROCKBOTTOMも是非チェックしてみてください。共に優れたメロディを持つ、最高にかっけーロックバンドですからね!
2002年を代表する10枚に、俺はこのアルバムを選ばなかったんですよねぇ。勿論いいアルバムだって感じてたんですが、とにかくこのアルバム、聴く頻度が未だに高いんですよ。短いからすんなり聴けるってのもあるんですが、やっぱり聴いてて気持ちいいってのが大きいかな。そういう意味で、今更ながらこれを2002年の10枚に選出しなかったことを後悔する毎日です。
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