カテゴリー「Trivium」の18件の記事

2023年1月 4日 (水)

2022年総括

仕事始めのタイミングになりましたので、例年より数日遅いですが2022年のまとめ記事をアップしておきます。

昨年は「アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、20作品に縛る」形でまとめ、別途「HR/HM、ラウド編」で別エントリーを作っていましたが、今年はもうそういう枠を全部取っ払って(ジャンル分け面倒くさい)ひとつのエントリーに包括し、「ジャンル/アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、30作品に縛る」という形にさせていただきました。これなら一般総括の20作品の中からあえてメタル系を外したり入れたりと悩まなくて済むしね。

というわけで特に順位付けをせずアルファベット→50音順で30作品、掲載していきます。

 

Afterglow『独創収差』(楽曲)

 

ARCHITECTS『the classic symptoms of a broken spirit』(アルバム/レビュー

 

asmi「PAKU」(楽曲)

 

DEF LEPPARD『DIAMOND STAR HALOS』(アルバム/レビュー

 

Foi『HER』(アルバム)

 

GREYHAVEN『THE BRIGHT AND BEAUTIFUL WORLD』(アルバム/レビュー

 

THE HELLACOPTERS『EYES OF OBLIVION』(アルバム/レビュー

 

Ho99o9『SKIN』(アルバム/レビュー

 

IBARAKI『RASHOMON』(アルバム/レビュー

 

ITHACA『THEY FEAR US』(アルバム/レビュー

 

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2022年5月11日 (水)

IBARAKI『RASHOMON』(2022)

2022年5月6日にリリースされたIBARAKIの1stアルバム。

IBARAKIはTRIVIUMのフロントマン、マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)によるブラックメタル主体のソロプロジェクト。このブラックメタルプロジェクト自体は10年ほど前から構想があったそうで、当時はMRITYUというプロジェクト名でノルウェースタイルのブラックメタルを表現しようとしていたんだとか。ところが、ノルウェーブラックメタルの当事者であったイーサーンEMPEROR)に助言を求めたところ、「ノルウェー人でない君が、ノルウェーのスタイルをやる必要はない」というアドバイスを受けたことで、マシュー自身のルーツでもある日本にスポットを当てた形での創作活動に着手することを決意したんだそうです。

プロジェクト名のIBARAKIは「茨城」や「茨木」ではなく、「茨鬼」を表します。これは平安時代に京都を荒らし回ったとされる鬼の中にいた茨木童子(いばらきどうじ)を指し示し、アルバムタイトルの『RASHOMON』はそのものズバリ「羅生門」を意味するワード。全10曲におよぶ収録曲は、インストの1曲目を除くすべてが英詞で歌われていますが、タイトル自体は「儚き必然」「迦具土」「茨木童子」「地獄太夫」「魂の崩壊」「悪夢」「木漏れ日」「浪人」「須佐之男命」「海賊」とすべて日本語。かつてTRIVIUMとして『SHOGUN(将軍)』(2008年)というアルバムを発表し、その中に「Kirisute Gomen(斬り捨て御免)」という楽曲も含まれていましたが、今回は奇を衒った日本語詞も含まれていないようです。

プロデュースを手がけたのは、先に登場したイーサーン。彼は「Tamashii No Houkai」「Akumu」でコライトを務めたほか、「Tamashii No Houkai」「Rōnin」でリードギター、「Susanoo No Mikoto」ではボーカルも披露しています。また、レコーディングにはコリィ・ビューリュー(G)、パオロ・グレゴリート(B)、アレックス・ベント(Dr)といったTRIVIUMの面々のほか、「Akumu」にはネルガル(Vo/BEHEMOTH)、「Rōnin」にはジェラルド・ウェイ(Vo/MY CHEMICHAL ROMANCE)といった豪華ゲストも参加しています。

アルバム自体は完全なるブラックメタルというよりは、マシューなりにブラックメタルを解釈したダークサイド強調のヘヴィメタルといった印象。随所にブラックメタル的アプローチやブルータルなテイストを楽しむことができますが、それと同じくらいメランコリックなクリーンパートも用意されており、そのバランス感含めさすがTRIVIUMのフロントマンといったところでしょうか。ぶっちゃけ、ブラックメタル度の高さを求めて触れると面食らうかもしれませんが、TRIVIUMのリスナーや幅広くヘヴィメタルを愛聴する方なら安心して楽しめる1枚だと思います。

壮大かつドラマチックなオーケストレーションやプログロック的な曲構成は間違いなくイーサーンによる功績が大きいでしょうし、そこにスリリングな王道メタルの要素と日本的情緒に満ちたメロディが備わっているのは確実にマシューならでは。つまり、どちらか一方だけではダメな、奇跡的なバランスのもとに生まれた1枚と言えるでしょう。そこにネルガルやジェラルド・ウェイといったバラエティ豊かなフィーチャリングゲストが加わることで、ブラックメタル中心に活動しているアーティストには真似できないカラーが生まれている。まさにオリジナティに満ちた傑作メタルアルバムではないでしょうか。

個人的にはこれをブラックメタルと呼ぶのはちょっと違う気もしますし、むしろブラックメタルを下地に新たなエクストリームメタルを完成させたと言ったほうが正しいと思うのですが、いかがでしょう。まあ最終的には、聴いた人が判断すればいいだけの話ですよね。内容自体は完璧すぎるくらいによく出来た1枚なので、メタルやラウドな音楽を愛聴する方々には真っ先に触れていただきたいです。

 


▼IBARAKI『RASHOMON』
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2022年3月 4日 (金)

ANNIHILATOR『METAL II』(2022)

2022年2月18日にリリースされたANNIHILATORのリレコーディングアルバム。日本盤は同年2月23日発売。

本作は2007年に発表された12thアルバム『METAL』収録曲を、ゲスト参加パートはそのままに、それ以外のパートを新たにレコーディングし直した企画アルバム。2020年に亡くなった2人のアックスマン……エディ・ヴァン・ヘイレン(VAN HALEN)とアレキシ・ライホ(BODOM AFTER MIDNIGHT、ex. CHILDREN OF BODOM)への追悼の意味も込められており、15年前の『METAL』には収録されていなかったVAN HALENのカバー「Romeo Delight」が新たに追加されています。

収録曲は『METAL』とまったく一緒というわけではなく、オリジナル盤でジェフ・ウォーターズ(G, Vo)が唯一ボーカルを担当した「Operation Annihilation」のみ外され、代わりに先のVAN HALENカバーとオリジナル盤の日本盤ボーナストラックだったEXCITERのカバー「Heavy Metal Maniac」が正規収録されることに。さらに、曲順も新たなものとなり、オリジナル盤で本編ラストを飾った「Chasing The Hig」が今回のリテイク盤のオープナーに差し替えられています。

リレコーディングに参加したのはジェフのほか、元SLAYERで現在はSUICIDAL TENDENCIESなどで活躍するデイヴ・ロンバード(Dr)と元INTO ETERNITYのステュー・ブロック(Vo)の2名。オリジナル盤には当時のシンガーだったデイヴ・パデン(Vo, G)と現DREAM THEATERのマイク・マンジーニ(Dr)が参加しているので、そのタッチの違いを楽しむのもありではないでしょうか。特に、ドラムに関してはマンジーニらしさ/ロンバードらしさがともに感じられるので(特に再録バージョンでのロンバードらしさは随所ににじみ出ており、聴きながら愛興奮でした)、両バージョンを比較しながら「この曲ならどちらのバージョンが好き」とセレクトするのも楽しいかもしれません。

そもそも本作、各曲に豪華ゲストが最低1名は参加していることでおなじみの1枚。先に触れたアレキシ以外にもウィリー・アドラー(G/LAMB OB GOD)、リップス(G/ANVIL)、ダンコ・ジョーンズ(Vo)、アンジェラ・ゴソウ(Vo/ex. ARCH ENEMY)、イェスパー・ストロムブラード(G/THE HALO EFFECT、ex. IN FLAMES)、ジェフ・ルーミス(G/ARCH ENEMY、ex. NEVERMORE)、アンダース・ビョーラー(G/ex. AT THE GATES、ex. THE HAUNTED)、コリィ・ビューリュー(G/TRIVIUM)など錚々たる面々がバラエティ豊かな楽曲群に華を添えておりましたが、これらは今回のリテイク盤でもそのまま耳にすることができます。アンジェラは15年前はまだARCH ENEMYに在籍していたんだなとか、イェスパーもIN FLAMESから離れる前だったんだとか、いろいろ月日の流れを感じずにはいられませんね。

もともとソリッドな楽曲/作品集ではあったものの、より鋭角的にスキルアップしたジェフ・ウォーターズのギターと、ここ数作はリズムマシンを使った正確無比なリズムワークにこだわっていたところをロンバードの躍動感溢れるドラムに交代したことで、音から受ける印象も多少なりとも変化。15年前からのバージョンアップという点と、近作の質感からの変化という2点を存分に味わえるのではないでしょうか。

本作で初登場となる「Romeo Delight」は比較的原曲に忠実なカバーとなっておりますが、原曲がラフなぶんカッチリ作り込まれた音のANNIHILATORバージョンはちょっと別モノ感を感じずにはいられません。ただ、ジェフ自身のギタープレイ/サウンドメイクはエディのそれを踏襲したもので、その一点に関しては強い愛を感じずにはいられません。本当に好きなんだね、微笑ましいよ。

あくまで企画盤ということで、今後もステュー・ブロックとデイヴ・ロンバードが制作やツアーに参加するわけではないと思いますが、これはこれで良いのではないでしょうかオリジナルアルバムとしては最新作『BALLISTIC, SADISTIC』(2020年)の完成度が非常に高かっただけに、これに続く完全新作にも期待したいところです。

 


▼ANNIHILATOR『METAL II』
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2021年12月31日 (金)

2021年総括:HR/HM、ラウド編

2017年から2020年まで、「リアルサウンド」にて掲載してきたメタル/ラウド系年間ベストアルバム企画。2021年は同サイトにて同企画を実施されないので、場所をこちらに移して行うことにしました。ただ、無理な順位付けはせず、印象的なアルバム/EP 20枚をアルファベット順に紹介していくことにします。

 

ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(Apple Music)(レビュー

 

THE ARMED『ULTRAPOP』(Apple Music)(レビュー

 

CARCASS『TORN ARTERIES』(Apple Music)(レビュー

 

CONVERGE『BLOODMOON: I』(Apple Music)(レビュー

 

DEAFHEAVEN『INFINITE GRANITE』(Apple Music)(レビュー

 

DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(Apple Music)(レビュー

 

EVERY TIME I DIE『RADICAL』(Apple Music)(レビュー

 

EXODUS『PERSONA NON GRATA』(Apple Music)(レビュー

 

GATECREEPER『AN UNEXPECTED REALITY』(Apple Music)(レビュー

 

GOJIRA『FORTITUDE』(Apple Music)(レビュー

 

JINJER『WALLFLOWERS』(Apple Music)(レビュー

 

KHEMMIS『DECEIVER』(Apple Music)(レビュー

 

LEPROUS『APHELION』(Apple Music)(レビュー

 

MASTODON『HUSHED AND GRIM』(Apple Music)(レビュー

 

NEMOPHILA『REVIVE』(Apple Music)(レビュー

 

SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(Apple Music)(レビュー

 

SPIRITBOX『ETERNAL BLUE』(Apple Music)(レビュー

 

TO KILL ACHILLES『SOMETHING TO REMEMBER ME BY』(Apple Music)(レビュー

 

TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』(Apple Music)(レビュー

 

TURNSTILE『GLOW ON』(Apple Music)(レビュー

 

年明け発売の某雑誌には、この20枚の中から10枚をセレクトして順位を付けて掲載予定です。

2020年初頭から流行拡大しだした新型コロナウイルスは、2021年も引き続き大きな影響を及ぼし続け、ロックダウンによるフィジカル(CD、アナログなど)製造遅延およびそれに伴うリリース順延、さらにはツアーやフェスの翌年以降への順延などが重なります。当然、ここ日本への海外メタル/ラウド勢の来日公演も2年近く実現しておらず(一部、小規模のライブハウス公演は行われたようですが、大規模なジャパンツアーやメジャーアーティストの来日公演に関しては皆無)。この年末にKING CRIMSONのジャパンツアーが行われたのは、奇跡に近いものがありました。

しかし、コロナが及ぼした影響は決して悪いことだけではありません。インターネットを使ったリモート作業が以前よりもやりやすい環境になったこともあり、バンドメンバーがバラバラな場所に住んでいても制作自体は行えるようになり、結果として思いがけずに新作が届けられるなんていうサプライズも多々ありました。今回挙げた20枚の中にも、TRIVIUMのように前作から2年経たずしてニューアルバムが到着するというケースも少なくありません。

日本では夏頃と比べて、若干の落ち着きを見せている昨今ですが、海外ではまだまだ予断を許さない状況。イギリスなどの様子に恐怖を覚える一方で、アメリカでは大規模なライブ/ツアーも再開されている。国によって対策や対応は異なるものの、2020年から続くこの生活はもう少し続くことになりそうです。おそらく2022年も国内での大規模野外フェス開催(特に海外アーティストを多数招聘して実施するケース)は現実的ではないのかもしれません。

僕自身、すべてが元通りに戻るとは思っておらず、むしろ少しずつ元の生活に近づけつつ、新たなスタンダードを確立・浸透させなければ、この文化はどんどん先細りしていくんじゃないかと感じています。送り手も受け手も、この新たなスタンダードを前向きに受け取りつつ、過去の日常生活と並列させていくことでこの文化を維持し、さらに成長・進化させていくはず……僕自身はそう信じています。

さて、明日はジャンル分け隔てなく総括した1年のまとめ記事を公開する予定です。この記事と併せてお楽しみいただけると幸いです。

 

2021年10月 9日 (土)

TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』(2021)

2021年10月8日にリリースされたTRIVIUMの10thアルバム。日本盤はボーナストラック2曲(ライブ音源)を追加し、同年10月20日発売予定。

昨年4月に2年半ぶりの新作『WHAT THE DEAD MEN SAY』(2020年)を発売したばかりのTRIVIUMですが、新型コロナウイルスの影響でライブ活動がままならず、気づけば同年6月から次作の楽曲制作に突入していたとのこと。そのまま秋にはレコーディングに入り、過去2作を担当したジョシュ・ウィルバー(GOJIRALAMB OF GODSONS OF TEXASなど)をプロデューサーに迎え、締め切りを気にすることなくじっくり作り上げたとのことです。

今回のアルバムはアートワークや曲名から、なんとなくファンタジックな神話性を感じさせますが、実のところは架空の神話を昨年世界中に起こった大きな出来事=コロナ禍に照らし合わせて制作していったんだとか。ただし、「In The Court Of The Dragon」というタイトル自体は、アメリカの作家ロバート・W.チャンバースのショートストーリーから名付けられたそう。そのストーリー自体、恐怖や不確実性に満ちたもので、まさに我々が昨年から直面している出来事とリンクすることから、それを直接的に描くのではなく別のルートで表現したそうです。

そういったテーマやメッセージ性の強さに比例するように、サウンド自体も非常にアグレッシヴさに満ちたものに仕上がっています。前作『WHAT THE DEAD MEN SAY』でさまざまな経験を得た上での原点回帰を試み、見事な形で作品化させたTRIVIUMでしたが、本作ではその経験をさらにブラッシュアップさせることで、よりブルータルさを増し、よりドラマチックにスケールアップした楽曲群を制作。アルバム冒頭を飾るインスト「X」では、7thアルバム『SILENCE IN THE SNOW』(2015年)のオープニングトラック「Snøfall」を制作したイーサーンEMPEROR)が再び作曲・トラック制作を手がけており、アルバムの不穏さを際立たせます。そこからアルバムを象徴するタイトルトラック「In The Court Of The Dragon」へとなだれ込むのですが、これがもう最高の一言。2ndアルバム『ASCENDANCY』(2005年)や4thアルバム『SHOGUN』(2008年)の頃を思わせるアグレッションとプログレッシヴさを兼ね備えた良作で、この時点でガッツポーズを取ってしまったリスナーは少なくないはずです。

その後もブラストビートを多用したブルータルな楽曲、王道ヘヴィメタルらしいメロディアスなナンバーなどが豊富に用意。アルバム中盤に置かれた“いかにも”なメタルバラード(と呼んでいいですよね?)「The Shadow of The Abattoir」のドラマチックさも文句なしですし、前のめりな楽曲で終わると思いきや、ラストはヘヴィ&メロディアスで後半にかけてドラマチックに展開するミドルチューン「The Phalanx」で豪快に締め括る。この少し余韻を残すエンディングもさすがの一言です。

全体を通してスクリームとクリーンボーカルのバランスも絶妙ですし、これはアグレッシヴなTRIVIUMが好きなリスナー、メロウなテイストのTRIVIUMが好きなリスナー両者を納得させる1枚ではないでしょうか。本作はコロナ禍がなければ生まれなかった作品かもしれませんが、10作目という節目に最高傑作と呼ぶにふさわしいアルバムを完成させたのですから、世の中悪いことばかりじゃないなと少しだけ思ってしまいました。

2021年という時代に「ヘヴィメタルとは?」と問われたら、真っ先に提示したいアルバムです。

 


▼TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』
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2021年8月13日 (金)

SEPULTURA『SEPULQUARTA』(2021)

2021年8月13日にリリースされたSEPULTURAの企画アルバム。

2020年2月発売のアルバム『QUADRA』に続く今作は、2020年4月からスタートしたストリーミング・ライブセッション“SepulQuarta”からのベストセレクション。これまでに発表された多数の名曲群を、毎回著名なゲストミュージシャンを迎えてセッションするという企画で、その選曲および参加アーティストの豪華さはベストアルバムを超えた1枚と言えるかもしれません。

収録曲および参加ゲストは下記のとおり([ ]内は参加ゲスト名)。

01. Territory [David Ellefson (B/ex. MEGADETH)]
02. Cut-Throat [Scott Ian (G/ANTHRAX)]
03. Sepulnation [Danko Jones (Vo)]
04. Inner Self [Phil Rind (B/SACRED REICH)]
05. Hatred Aside [Angélica Burns (Vo/HATEFULLMURDER)、Mayara Puertas (Vo/TORTURE SQUAD)、Fernanda Lira (Vo/CRYPTA)]
06. Mask [Devin Townsend (Vo, G)]
07. Fear, Pain, Chaos, Suffering [Emmily Barreto (Vo/FAR FROM ALASKA)]
08. Vandals Nest [Alex Skolnick (G/TESTAMENT)]
09. Slave New World [Matthew K. Heafy (Vo, G/TRIVIUM)]
10. Ratamahatta [Joao Barone (Dr)、Charles Gavin (Dr)]
11. Apes Of God [Rob Cavestany (G/DEATH ANGEL)]
12. Phantom Self [Mark Holcomb (G/PERIPHERY)]
13. Slaves Of Pain [Frédéric Leclercq (G/KREATOR、AMAHIRU)、Marcello Pompeu (Vo)]
14. Kaiowas [Rafael Bittencourt (G/ANGRA)]
15. Orgasmatron [Phil Campbell (G/ex. MOTÖRHEAD)]

M-4, 13 : from 3rd AL『BENEATH THE REMAINS』(1989年)
M-14 : from 4th AL『ARISE』(1991年) Japanese Bonus Track
M-1, 9, 14 : from 5th AL『CHAOS A.D.』(1993年)
M-2, 10 : from 6th AL『ROOTS』(1996年)
M-5 : from 7th AL『AGAINST』(1998年)
M-3 : from 8th AL『NATION』(2001年)
M-11 : from 9th AL『ROORBACK』(2003年)
M-6 : from 12th AL『KAIROS』(2011年)
M-8, 12 : from 14th AL『MACHINE MESSIAH』(2017年)
M-7 : from 15th AL『QUADRA』(2020年)

知名度の高いアーティストばかりが参加しており、これも長きにわたりブラジルを代表するエクストリームメタルバンドとして活躍し続けるSEPULTURAならではと言えるでしょう。選曲的には「Arise」や「Dead Embryonic Cells」「Under Siege (Regnum Irae)」といった『ARISE』収録曲や「Roots」のような代表曲を外しているのが気になりますが(実際の“SepulQuarta”セッションでは、「Arise」などはゲスト抜きで演奏されています)、それでもベストアルバムとしても見劣りしない内容なのはさすがといったところでしょうか。

基本的にはリモートスタジオセッションアルバムなので、生々しさはスタジオ音源以上/ライブアルバム以下といった質感。しかし、これくらいの生々しさは彼らのようなバンドにはちょうどいいような気がします。そして、マックス・カヴァレラの跡を継いで加入したデリック・グリーンはすでに20年選手。マックス時代の楽曲でも原曲に負けない凄みが伝わる歌唱で、非常に好意的に受け取ることができます。

各ゲストに関してですが、この人ならでは!という音源はそう多くはないです。女性Vo3人が参加した「Hatred Aside」はかなり色が出ていて面白いし、デヴィン・タウンゼンド参加の「Mask」もそれとわかる仕上がり。マーク・ホルコムらしいエフェクティブなギターサウンドで原曲に彩りを加えた「Phantom Self」も非常にらしい完成度ですね。同じブラジル出身のラファエル・ビッテンコートとコラボした「Kaiowas」は、現在シングルギター編成のSEPULTURAには実現できないアンサンブルなので、これも聴きどころかもしれません。あとは、本家MOTÖRHEADのフィル・キャンベルをフィーチャーした「Orgasmatron」もかな。特別新鮮さはないですが、感慨深さという点で記しておこうかと思います。

この手の企画盤は「あの曲がない、この曲がない」と言い出したらキリがないので、深いこと考えず、素直に(かつ無心で)楽しむのが一番。特にSEPULTURAはオールタイムベストアルバムが1枚も存在しないので、(選曲が多少偏ってはいるものの)これを『ARISE』『CHAOS A.D.』『ROOTS』に次ぐ入門盤として捉えるのもアリかもしれませんね。

 


▼SEPULTURA『SEPULQUARTA』
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2021年6月 9日 (水)

ATREYU『BAPTIZE』(2021)

2021年6月4日にリリースされたATREYUの8thアルバム。日本盤未発売。

前作『IN OUR WAKE』(2018年)から2年8ヶ月ぶり、2014年の再始動後3作目のオリジナル作品。結成時からのフロントマンであるアレックス・ヴァルカッツァス(Vo)脱退を経て、ドラム&クリーンボーカル担当だったブランドン・サーラーが新たなフロントマンとして全ボーカルを担当した最初のアルバムでもあります。要するに、ATREYUにとっては新たに生まれ変わった、心機一転の1枚なわけです。

アレックスのスクリームによるカッコ良さが光っていた初期作と比べて、近年はスクリームの比重が低くなっており、特に前作はメロディアスに歌い上げる王道路線へとシフトしていたので、この新作を聴いても特に大きな変化は感じられないかもしれません。ブランドンの歌声もアレックスほどザラつきがなく、スルスルっと耳に入ってくる心地よいボーカル(ちょっと意地悪な言い方をすれば没個性かなと)。デジタルエフェクトを多用したこのモダンなメタルサウンドには十分合っていると感じました。また、スクリームはベースのマーク・マックナイトが担当しており、こちらも要所要所にアクセント程度で登場するのみ。バランスとしては悪くないのではないでしょうか。

2〜3分前後とコンパクトにまとめられた楽曲群はどれもわかりやすく耳馴染みの良いものばかりで、アグレッシヴな作風の中に「Dead Weight」のようなパワーバラードも用意されており、アレンジや音の質感こそ2010年代後半以降のそれですが、目指す方向性は意外と古き良きヘヴィメタル的なものなのかな、と受け取りました。だからこそ、我々のようなオッサンにも非常に受け入れやすいものがある。昨今のメタルコア事情に疎い同世代のリスナーにもオススメしやすい、入門編的1枚と断言させてください。

とはいえ、2000年代の彼らに魅せられた身としては、この正統派スタイルはちょっと寂しくも感じられ。そりゃあ20年近くにわたり初期のようなアグレッションを維持するのは難しいでしょうし、音楽家としても日々成長しているので、作品ごとにアップデートしたい気持ちも重々理解しています。そういう個人的感傷を切り離すのはなかなか難しいところですが、そこを抜きにすれば本作は平均点以上のヘヴィメタルアルバムだと言えるでしょう。

なお、本作にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス、TRIVIUMのマット・ヒーフィー、BLINK-182のトラヴィス・バーカーがゲスト参加。ATREYUの新たな船出に華を添えているので、これらの楽曲も必聴です。

 


▼ATREYU『BAPTIZE』
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2020年7月30日 (木)

BLEED FROM WITHIN『FRACTURE』(2020)

2020年5月末にリリースされたBLEED FROM WITHINの5thアルバム。日本盤未発売。

スコットランドはグラスゴー出身のデスコア/メタルコア・バンドであるBLEED FROM WITHINは、結成当初こそLAMB OF GODのコピーバンドからスタートしたものの、適度なメロディアスさとモダンかつテクニカルなアンサブルを武器に、すでに活動歴15年という中堅クラスにまで成長。2019年3月には初来日公演も実現し、今やUKメタル/ラウドシーンの次世代を担う存在として注目を集めています。

前作『ERA』(2018年)から2年ぶりの新作とはる今作は、バンドのセルフプロデュースにて制作。エンジニアリングやミックスには元PERIPHERYのアダム・ゲットグッドが携わっているほか、M-6「Night Crossing」にはギターソロでTRIVIUMのマシュー・キイチ・ヒーフィーがゲスト参加するなど、モダンメタルを愛好するリスナーには話題満載の1枚と言えるでしょう。

もはやデスコアの要素はほとんど感じられないものの、90年代のPANTERA、2000年代のLAMB OF GODなどに通ずるグルーヴメタル感、90年代末から2000年代前半にシーンを席巻したメロディック・デスメタルを通過したダイナミックなサウンドは、これぞ2010年代後半〜2020年代と呼べる現代的な新世代ヘヴィメタルと呼べるものに仕上がっています。ルーツの起点にLAMB OF GODの名があることから、彼らとの共通点も至るところに見受けられますが、要所要所で挿入されるメロウなボーカル/フレーズが独自性を強めることに成功しており、単なる二番煎じでは終わらない可能性がたっぷり伝わってきます。

また、これまでの彼ら“らしさ”をまったく失うことなく、全体的にメジャー感も強まっている。小規模のクラスで披露される音というよりは、その楽曲の完成度の高さ含めアリーナやスタジアムで高らかに(かつ最大級の爆音で)鳴らされることを前提に制作されたことは明らか。こういった前のめりな姿勢がバンドをネクストレベルへと引き上げることに成功しており、間違いなく本作は新規リスナーへの名刺代わりの1枚になることでしょう。うん、これはいいバンド見つけたなって思える、そんな良作。

ちなみに、先に挙げたマシュー参加の「Night Crossing」は、リモートにてMVも制作。彼らしい叙情的なギタープレイ&フレーズが存分に楽しめるだけでなく、ちょっとコミカルなMV含めて1粒で二度楽しめる作品ではないでしょうか。こういう時期だしなかなか来日は難しいですが、平和な世の中を再び取り戻した際にはぜひライブにも足を運んでみたいバンドのひとつです(そして、そう思わせてくれた最高の1枚です)。

 


▼BLEED FROM WITHIN『FRACTURE』
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2020年7月15日 (水)

TRIVIUM『VENGEANCE FALLS』(2013)

2013年10月にリリースされたTRIVIUMの6thアルバム。日本盤は海外より1週間先行で発売されました。

前作『IN WAVES』(2011年)で初の本格的変化に挑んだTRIVIUM。そのモダン化した楽曲群には賛否両論ありましたが、個人的には好印象を受けましたし、なにより(タイミングもよかったとはいえ)全米13位という初のTOP20入り(現時点での最高位)を果たした事実がすべてを物語っていたように思います。

そんな新機軸を経て、彼らが2年ぶりに届けた新作。プロデュースを手掛けたのが、同業者でありモダンメタル界の先輩であるDISTURBEDのデヴィッド・ドレイマン(Vo)という事実に、まず驚かされるのではないでしょうか。エンジニアにはアンディ・スニープ、ミックスにはコリン・リチャードソンというメタル界の優秀なブレインを迎えて完成させたそのサウンドは、前作ほどの新機軸は感じられず、むしろ“守り”に走ったかな?という印象を最初に受けます。

楽器隊が一丸となるアンサンブルは『IN WAVES』でも見受けられましたが、ここで実践されているのはむしろDISTURBEDが得意とするそれに近いような気がしませんか? つまり、「前作でのモダンメタル路線を通過しつつも、楽曲自体はそれ以前のスタイル、かつそれらをDISTURBED風味で味付け」というような。それって穿った見方をしすぎでしょうか。

確かに、マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)が歌えばどれもTRIVIUMらしくなります。このアルバムだって、首尾一貫TRIVIUMらしさが貫かれていると思いますが、前作がトップギアを一気に入れて確変!みたいな印象だっただけに、今回はちょっと印象が薄く感じられてしまうのです。

あと、どの曲もクオリティは高いものの、突出した1曲(いわゆるキラーチューンやアンセム)が見当たらないというのも、本作の印象をぼかしてしまう一因になっているのかな。オープニングを飾る「Brave This Storm」やスラッシーな味付けをした「No Way To Heal」あたりはそれにもっとも近いと思うものの、最後まで聴き終えてもっとも印象に残ったのがMISFITSのカバー「Skulls... We Are 138」と、日本盤のみ収録のR.E.M.カバー「Losing My Religion」だという。後者に関しては決してベストカバーとは言い切れないものも、やはり楽曲の強さが優ってしまい、否が応でも耳に残ってしまう。う〜ん、勿体ない。

1枚のメタルアルバムとしては非常に高品質で、水準以上の完成度(一般的に90点以上)だと思いますが、TRIVIUMのアルバムとしては平均点的内容(辛口だけど70〜80点くらい)かな。前作からの勢いで全米15位という好記録を残していますが、本作は続く『SILENCE IN THE SNOW』(2015年)以降の、特に『THE SIN AND THE SENTENCE』(2017年)から始まる充実期への過渡期的1枚かもしれません。

 


▼TRIVIUM『VENGEANCE FALLS』
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2020年7月13日 (月)

TRIVIUM GLOBAL LIVESTREAM(2020年7月10日)

遅ればせながら、日本時間7月11日早朝5時(現地では10日夜かな)から配信された、TRIVIUMストリーミングライブ。本当は配信開始と同時に観ようと思っていたんですが、仕事のバタバタが続いて結局視聴できたのが日曜夜。チケット購入から48時間以内の視聴だったので、ギリギリ観ることができました。

新型コロナウイルスのあれこれで、世界中で観客を入れたライブが事実上不可能なこと。本来なら今頃、4月にリリースされたばかりのニューアルバム『WHAT THE DEAD MEN SAY』を携えたワールドツアーで世界中を駈けずり回っているはずだったこと。日本へはその新作1ヶ月前の3月下旬に『KNOTFEST JAPAN』で訪れ、おそらく新曲を先行披露していたであろうこと、などなど。いろいろ予定どおりに進まなかったことに、メンバーはイライライしていたと思います。しかし、マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)はそんな苦境を跳ね返すかのように、SNSなどを通じて個人配信を定期的に行い、ファンを喜ばせ続けてきました。

この有料ストリーミングライブも、ある種その延長線上にあるものだったのかもしれません。しかし、今回は有料で、世界中のファンがネット環境を通じて楽しむことができる、100分前後におよぶフルスケールのワンマンライブ。「本当は今、これが見せたかったんだよ!」と言わんばかりの喜びと、久しぶりのライブに対する気迫とが画面越しに伝わってくる、非常に素晴らしい内容でした。

ライブは新作『WHAT THE DEAD MEN SAY』の冒頭同様、インスト「IX」からタイトルトラック「What The Dead Men Say」へと続く構成でスタート。初めて生で聴く「What The Dead Men Say」は音源同様の高クオリティで表現されつつ、ライブならではのダイナミックさが加わった非常にカッコいいメタルチューンへと進化していました。PCのモニター越しではあるものの、ここで一気に体内の血液が逆流して吹き出しそうに。

そこから「Down From The Sky」(4thアルバム『SHOGUN』収録)へと続く構成も素晴らしいし、以降『WHAT THE DEAD MEN SAY』と前作『THE SIN AND THE SENTENCE』(2017年)からの楽曲を軸にしつつ、1st『ENBER TO INFERNO』と3rd『THE CRUSADE』を除く過去のアルバムから満遍なく(それぞれ1〜2曲程度)披露するセットリストも完璧な構成だと思いました。近作2枚から計10曲(インタールード含む)とセトリの過半数以上を占めるのも、今のバンドの方向性を考えれば非常に納得がいくものですし、何より序盤7〜8曲をMCなしで突っ走る流れも彼らのストイックさが如実に表れる結果となり、王道感がハンパなく表現できていたのではないでしょうか。

新作は今年の上半期ベスト10枚から泣く泣く外したものの、このライブを観たあとだったら確実に選んでいたよなあ……と思わせるほど、このライブを通じて新作の魅力がさらに深く理解できた気がします。いやあ、観てよかった。

と言いながらも、個人的ピークは「Rain」や「Pull Harder On The Strings On Your Martyr」、「Forsake Not The Dream」や「In Waves」といった初期楽曲だったりするんですが(笑)。中でもアレックス・ベント(Dr)がSE「The End Of Everything」から「Rain」に入る前にドラムの何かを壊してしまい、スムーズに曲に入れないというトラブルが生じた流れは思わず笑ってしまいました。ライブ会場でこれが起こったら、きっと観客が冷やかし入れたりしてそれなりに盛り上がるでしょうけど、ストリーミングライブだと無観客ですから、どう誤魔化すかが一苦労。ところが、マシューが笑顔(苦笑?)で状況説明して笑いを取ることで難を逃れた。本当だったらテンションが落ちるところだけど、そんなことなくほんわかした気持ちから「Rain」へと自然に入っていけたのは、きっとこのライブでそこまでに積み上げてきたものの大きさがすべてを解消してくれたのかもしれませんね。

いやあ、本当にグレイテスト・ヒッツ的なこのステージ、早く生で体験したいです。こんなの生で観せられたら、終始脳天から血が吹き出しっぱなしですよ。今のところ順当にいけば、次に生で観られる機会は年明けの『KNOTFEST JAPAN』。まだ半年以上先ですし、そもそもその頃に情勢がどう変化しているのか、誰にも予想できません。だけど……もし叶うのならば、そのタイミングにスペシャル企画として新木場STUDIO COASTあたりで一夜限りのワンマンライブが実現しないかしら。このストリーミングライブで目にしたものを、そのままCOASTくらいのキャパで体験したいなあ。それくらい今のTRIVIUM、ベスト状態だと思うので。ご検討のほどよろしくお願いいたします!

<セットリスト>
01. IX 〜 What The Dead Men Say
02. Down From The Sky
03. Catastrophist
04. The Heart From Your Hate
05. Forsake Not The Dream
06. The Defiant
07. Pull Harder On The Strings On Your Martyr
08. Until The World Goes Cold
09. Beyond Oblivion
10. The End Of Everything 〜 Rain
11. Amongst The Shadows & The Stones
12. Sickness Unto You
13. Strife
14. Bleed Into Me
15. Throes Of Perdition
16. The Sin And The Sentence
17. Capsizing The Sea 〜 In Waves

 

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