TYGERS OF PAN TANG『RITUAL』(2019)
2019年11月リリースの、TYGERS OF PAN TANG通算13作目のオリジナルアルバム。
バンド名を冠した前作『TYGERS OF PAN TANG』(2016年)がその年の年間ベスト候補に入ってもおかしくないくらいの良作で、1年遅れで聴いた僕は「もっと早くに聴いていれば……」と肩を落としたくらい。今聴いても本当に優れた、良質のブリティッシュ・ハードロックアルバムだと思うんですね。
で、前作から3年を経て届けられた本作。バンドメンバーは2013年から変わっていないようですが、ギタリストの表記が「ミッキー・クリスタル」から「マイケル・マクリスタル(Michael McCrystal)」に変わっています。おそらくメンバーチェンジではなく、同じ方のはず。そういう安定感もあってか、本作も前作に劣らぬ完成度の1枚となっています。
オープニングトラック「Worlds Apart」のリフからして鬼気迫るものがあり、そのまま勢いで押すのかと思いきや、実はミディアムとアップの中間くらいの程よいテンポ感。この適度な疾走感が気持ち良いったらありゃしない。ヤコボ・メイレ(Vo)の歌声も適度な湿り気とねっとり感があり、こういった泣メロの楽曲にピッタリ。その後も「Destiny」「Rescue Me」とミディアムテンポのマイナーチューンが続き、いい感じの流れとなっています(後者のリフは完全に過去の焼き直しですが。笑)。
全体的にはミドルテンポ中心の作風ですが、中には古き良き時代のファストナンバー「Raise Some Hell」、後半のパワフルなアレンジが好印象なメタルバラード「Words Cut The Knives」、ヘヴィなリズムが気持ち良いアップチューン「Damn You!」のような変化球も用意されており、バランス的にも良好じゃないでしょうか。
ミディアムナンバーにしても、すべてが似たり寄ったりというわけでもなく、「Love Will Find A Way」のような“これこれ!”と膝を叩きたくなるような王道ナンバーも、「Art Of Noise」みたいにグルーヴィーなリズムを持つ楽曲も含まれているので、決して飽きることはないかなと。
しかも、アルバムラストを飾るのが7分半におよぶ大作バラード「Sail On」。この曲がまた良いんですよね。ブルースベースのハードロックとは異なる、NWOBHM通過組だからこそ生み出せる唯一無二のHR/HM感。新鮮さは皆無ですが、だからといって無視できない存在感はさすがの一言だと思います。前作が気に入った方なら間違いなく、本作もお気に入りの1枚になるはずです。全11曲で50分強(日本盤ボーナストラック除く)というトータルランニングもベストですしね。
▼TYGERS OF PAN TANG『RITUAL』
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