U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』(2020)
2020年7月17日にリリースされたU.D.O.の17thアルバム(でいいのかな?)。日本盤は同年7月22日に発売されています。
前作『STEELFACTORY』(2018年)からほぼ2年ぶりに発表された本作は、通常のオリジナルアルバムとは趣向の異なる内容。アルバム全編にわたりドイツ連邦軍軍楽隊(Das Musikkorps der Bundeswehr)とのコラボレーションが展開されており、曲作りとアレンジをバンドと軍楽隊のクリストフ・シャイブリング中佐が担当し、さらにACCEPT時代の盟友ピーター・バルテスと、ACCEPTのみならずU.D.O.でも活動をともにしたステファン・カウフマン、ドイツ軍の作曲家たちも作曲に参加した、企画色が強く豪華な作りなのです。
ミディアムテンポ中心の曲作りは従来のU.D.O.らしいものですが、そこに軍楽隊の演奏が加わることで、楽曲の持つドラマチックさがより強調され、さらにへヴィメタルの重厚感と管楽器やストリングスなどの生楽器の繊細さの融合から生まれる躍動感に胸を打たれる。オーケストラとメタルの融合というと、最近ではMETALLICAの『S&M2』(2020年)が思い出されますが、それとも違ったテイスト……オーケストラ曲としても成立する構造を持つ楽曲の数々に、新たな可能性を感じずにはいられません。
そのドラマチックさを強調するために、またU.D.O.らしい(いや、ある意味ACCEPTらしい?)シンガロングのパートにはバンドメンバーのみならず女性コーラスまで加えられている。さらには、「Blindfold (The Last Defender)」のように女性ボーカルがリードを取ることもあるし、「Neon Diamond」みたいにウド・ダークシュナイダー(Vo)とデュエットすることもある。こういう柔軟さ、繊細さが加わることで、ただ男臭さ一辺倒だった従来のスタイルに幅を持たせることにも成功しています。
楽曲の内容的には気候変動や環境汚染、さらには難民問題など近年のドイツ、さらには世界各国で直面している社会問題を扱ったものばかり。中には東西ドイツ統一から30年を祝う「Rebel Town」のような楽曲も用意されており、そういった面からもこのコラボレーションが意味することが伝わるし、さらに「伝えたいこと」をわかりやすい形、伝わりやすい形にすることでより幅広い層に届けようという強い意思も感じられます。
全15曲で約75分という、アナログ盤だったら2枚組確実の大作ですが、2組のコラボレーションからこれだけたくさんのメッセージ/曲が生まれたという点においては素晴らしさを感じずにはいられません。すべてが歌モノではなく、「Blackout」のようなドラマチックなインストナンバーも用意されているので、意外と最後まで楽しみながら聴けてしまうのではないでしょうか。1日に何度もリピートするような気軽さを持った作風ではありませんが、じっくり腰を据えて向き合いたい力作であり、ウド・ダークシュナイダーのACCEPT〜U.D.O.の集大成とだと力説したいと思います。
▼U.D.O. & Das Musikkorps der Bundeswehr『WE ARE ONE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤CD+Blu-ray / MP3)