DAVID ELLEFSON『SLEEPING GIANTS』(2019)
MEGADETHのベーシスト、デヴィッド・“ジュニア”・エレフソンが2019年7月中旬に発表した初のソロアルバム。日本ではボーナストラックを多数追加して、2020年3月下旬に発売されました。
これまでもF5やMETAL ALLEGIANCEといったプロジェクトへの参加、ANTHRAXのフランク・ベロ(B)とのバンド・ALTITTUDES & ATTITUDEなどがありましたが、純粋なソロアルバムはMEGADETHとして『KILLING IS MY BUSINESS… AND BUSINESS IS GOOD!』(1985年)でデビューして以来初めてのこと。大佐(デイヴ・ムステイン)の咽頭がん発症などもあって、2019年は年初にALTITTUDES & ATTITUDEのアルバム『GET IT OUT』、夏にこのソロアルバムと活発な課外活動が続きました。
ですが、ジュニアのビジネス・パートナーであるトム・ハザートとの共同作業で完成した本作は、実は純粋なオリジナルアルバムというわけではありません。本作のために制作されたスタジオ録音新曲(リミックス含む)やそのデモ音源、そしてF5の未発表デモ音源から構成されたもので、完成度や音質の違いこそあれど、ジュニアのカラーが色濃く表れた、非常に聴き応えのある内容に仕上がっています。
ジュニアは本作のスタジオ音源では歌っておらず、ベースとソングライティングに専念。基本はトム・ハザートが歌っていますがが、曲ごとにさまざまなゲストボーカルもフィーチャーされており、例えば「Sleeping Giants」ではRUN D.M.C.のDMCが、「Hammer (Comes Down)」ではエリック・A.K.(FLOTSAM AND JETSAM)の歌声も聴くことができます。また、これらの楽曲ではアディショナル・ボーカルとしてロン・“バンブルフット”・サール(SONS OF APOLLO、ex. GUNS N' ROSES)やコリー・グローヴァー(LIVING COLOUR、ULTRAPHONIX)の名前も見つけることができます。
さらにデモ音源ではありますが、「If You Were God」ではジョン・ブッシュ(ARMORED SAINT、ex. ANTHRAX)がそのパワフルな歌声を響かせており、ALTITTUDES & ATTITUDEに続いてここでも“MEGADETH meets ANTHRAX”なコラボレーションを堪能できます。このほかにもデヴィッド・グレン・アイズレー(Vo/ex. GIUFFRIAなど)やマーク・トレモンティ(G/ALTER BRIDGE、CREED)、デイヴ・マクレイン(Dr/SACRED REICH、ex. MACHINE HEAD)、そしてMEGADETHの初代ギタリストでもあるクリス・ポーランドなどといった豪華な布陣との共演を楽しむことができるはずです。
ELLEFSON名義によるオリジナル曲は、どこか初期〜中期(90年代前半)のMEGADETHを彷彿とさせる曲調、スタイルで懐かしさと新鮮さを同時に楽しめるものばかり。ここ最近のMEGADETHにはない“何か”が確実にここには存在しており、その違いは何なのかといろいろ考えるきっかけにもなりそうです。と同時に、あのMEGADETHのスタイルは何も大佐だけのものではなく、ちゃんとジュニアの中にも脈々と受け継がれている(あるいは血として流れている)ということがはっきり確認できます。ぶっちゃけ、これらの曲を今のMEGADETHでやってくれてもいいのに……なんて思っちゃったりもしますが、けどそれも違うんでしょうね。
F5のデモ音源は音質的にまちまちですが、楽曲的には2000年代のモダン・ヘヴィネスの延長線上にあるものばかり。ぶっちゃけ、ソロ名義の楽曲と並んだときに違和感覚えるんじゃないかと不安でしたが、まったくそんなこともなく、むしろジュニアのソングライターとしての一貫性を再確認できるいい素材となりました。これ、ちゃんとスタジオレコーディングしてあげればよかったのにね。勿体ない。
日本盤のみ、初CD化となる「Vultures」「If You Were God」のライブテイクも収録。「If You Were God」ではトム・ハザートとジュニアのデュエット(笑)も楽しむことができる、貴重なテイクとなっておりますので、ぜひチェックしてみてください(全19曲と海外盤よりも4曲多いですし、「Vultures」のスタジオテイクはマックス・ノーマンMIXに差し替えられていますしね)。
でも、海外盤は海外盤で特別感のある2枚組仕様となっており、ジュニアが所属するレーベル・EMP / Combat RecordsのスペシャルサンプラーCD(全18曲入り)がDISC 2として付属。何気にこっちも聴き応えがあって、興味深い内容なのですよ(マーク・スローターのソロや、ジョー・ペリーがゲスト参加したCO-OPなど面白いテイク満載)。ジュニアの曲だけ聴きたいって人は少々お高い日本盤を、おまけが欲しいって人は輸入盤を購入してみてはいかがでしょう。
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