VAIN『NO RESPECT』(1989)
デイヴィ・ヴェイン(Vo)率いるサンフランシスコ出身の5人組バンド、VAINが1989年夏頃にリリースしたメジャーデビューアルバム。爬虫類的な佇まい&アクションで見る者の目を惹くデイヴィ・ヴェインですが、その声も非常に個性的で、本作の聴きどころのひとつもそんなフロントマンのカリスマ性であることは間違いありません。
本作のプロデュースを手がけたのはポール・ノースフィールド(RUSH、ASIA、QUEENSRYCHE、STEELHEARTなど)で、全米154位の小ヒットを記録しています。実はデイヴィ自身もベイエリアではそこそこ名の知れたレコーディングプロデューサーで、かのDEATH ANGELのデビュー前のデモレコーディングなども手がけています。
そんな彼ですから、本作にもコ・プロデューサーとして名を連ねています。なんというか、カリスマ性もありながら、職人的な作業も得意とする。いわば、全部自分が関わっておきたい、自分が作るものには全部自分が目を通しておきたい、そんなワンマン主義なところがある人なのかもしれません。
そんなデビューアルバムですが、意外にも直線的で適度にヘヴィなハードロックが満載。あれ、作る作品自体は結構まともなものなんですね。
オープニングを飾る「Secrets」やMVも制作された「Beat The Bullet」など、どの曲も適度なキャッチーさと、適度なヘヴィさ&軽やかさが共存しており、スラスラと聴き進めてしまう。ある意味ではAC/DC的と言えるかもしれませんが、あそこまでクセも強くないのが弱点かもしれません。
あと、12曲あるうち似たタイプの楽曲が少なくないことも、デビュー作にしては弱点かもしれません。冒頭数曲の強さは申し分ないのですが、後半に進むに連れて印象に残る曲があまり見受けられないのは、50数分もあるアルバムをすべて聴くにはちょっと厳しいかも。
そんなだから、終盤にバラードタイプの「Without You」があったり、最後の最後に軽快な疾走ロックンロール「Ready」が飛び込んでくると、ちょっとホッとするのですが。なんとなく、最初と最後に救われる。そんなアルバムです。
そういえば当時、TBS『PURE ROCK』で「Beat The Bullet」のMVをよく目にしたなあ。個人的にはこの1曲のインパクトだけでも十分でしたけどね。
そんなVAIN、90年代前半に解散してしまうものの、すぐに再結成して現在も活動中。昨年2017年には新作『ROLLING WITH THE PUNCHES』も発表しております。機会があったらこのへんもしっかり聴いてみたいと思います。