VEIL OF MAYA『FALSE IDOL』(2017)
アメリカ・シカゴ出身のプログレッシヴメタル/ジェントバンド、VEIL OF MAYAの通算6枚目となるスタジオアルバム。僕自身が彼らを聴き始めたのが前作『MATRIARCH』(2015年)からで、ちょうど現シンガーのルーカス・マグヤーに交代したタイミングでした。
ギターリフの作り込みや低音7弦を使ったリフの刻み方はジェント系そのものですが、楽曲の展開や歌メロの持っていき方はプログレメタル、プログレッシヴデスメタルのそれに近いのかなと。演奏自体も非常にテクニカルですし、サウンドも7弦特有の音の歪みとシンセなど同期を用いたシンフォニックなテイストの融合が非常に気持ちよく、そこにデス声とクリーントーンを巧みに使い分けたルーカスのボーカルが乗ることで、聴きやすさが強まっているように思います。
こういった低音が効いていて音数の多いバンドの場合、雑で生々しい録音よりも、実は本作みたいに透き通るほどにクリアな音像のほうが細かな音の粒まで楽しめて、合っていると思うんですよね。
ただ、このバンドの場合難点もありまして。1曲1曲が短いあまりに、せっかく派手でテクニカルなプレイを随所にフィーチャーしていたり、面白いアレンジを聴かせてくれたりしても、お腹いっぱいになる前に終わってしまう。腹7分目までいかず5分目くらい。プログレッシヴと名がつく以上(いや自らは言ってないのかな)もっと1曲が長くても全然不思議じゃないのに。確かに、最近の傾向としてより短い方向に行きがちなのはわかるんだけど、ちょっと物足りないというか……短いなりに1曲の中に要点を凝縮しているのならいいけど、それすらぼやけてしまうケースも見受けられて、そこが本当に勿体ないと思うのです(刹那的な爆発を求めるライブハウスでのパフォーマンスにはぴったりなんでしょうけどね)。
だったら、もっと盛大に……それこそ今の3曲分を1曲に凝縮させた長尺曲を5〜6曲作ってアルバム1枚にまとめ込んだほうが、このバンドの場合は個性が際立つんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょう? なんか、“物わかりの良すぎるPERIPHERY”って感じで、このままではさらに一歩抜きん出るのが難しいような気がするんですよね。せっかく良い曲書いて良い演奏ができて良い歌が歌えるんだから、そこを最大限に使いこなさないと……ねえ?
この手のバンドの中ではかなり個性があるほうだと思っているので、この先の突然変異に期待したいと思います。