2019年1月20日 (日)

VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』(2010)

2010年6月リリースの、ヴィンス・ニール通算3作目のソロアルバム。過去2枚のソロアルバム(1993年の1st『EXPOSED』、1995年の2nd『CARVED IN STONE』)はMOTLEY CRUE脱退中に発表されたものなので、本作『TATTOOS & TEQUILA』はバンド在籍中に唯一発表したソロアルバムということになります。

過去2枚には“良き時代のMOTLEY CRUEの模倣”(『EXPOSED』)、“HR/HM冬の時代にヒップホップなど流行へ迎合した”(『CARVED IN STONE』)といったテーマがありましたが(ヴィンスが公言したわけではなく、ファン側が勝手に解釈したもの)、本作はズバリ“自身のルーツナンバーをストレートにカバーする”というもの。全11曲(日本盤のみボーナストラックを含む12曲)中、オリジナル曲は2曲のみで、ほかはCHEAP TRICK、SWEET、AEROSMITHSEX PISTOLS、THE HOLLIES、SCORPIONS、CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)、エルヴィス・プレスリー、エルトン・ジョン、ZZ TOPの名曲の“カバーという名のコピー”となっています。

選曲は大半が70年代のもので、つまりヴィンスがMOTLEY CRUEを始める前まで聴きまくったナンバーばかりといったところでしょうか。実際にバンドでカバーしたものも少なくないと思います。CHEAP TRICKがデビューアルバムからの「He's A Whore」だったり、AEROSMITHが名盤『ROCKS』収録のヘヴィチューン「Nobody's Fault」というあたりには、ヴィンスなりのこだわりも感じられます。

また、モトリーでもカバーしたSEX PISTOLSを再びピックアップしていたり、かと思えばエルヴィス「Viva La Vegas」やエルトン「Bitch Is Back」を選曲するたりも、彼のポップセンスやフロントマンとしてのセンスみたいなものを感じたり。まあ、何の捻りもないんですけどね(笑)。

2曲のみ収録されたオリジナル曲のうち、タイトルトラックとなる「Tattoos & Tequila」はプロデューサーであるマーティ・フレデリクセン書き下ろしのミドルナンバー。もう1曲の「Another Bad Day」は盟友ニッキー・シックスとジェイムズ・マイケル、そしてトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)によるミディアムバラード。もともとはモトリー用(おそらくベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』かオリジナル作『SAINTS OF LOS ANGELES』向け)に書かれたそうですが、トミー・リーが気に入らなかったためお蔵となった1曲とのこと。まあ『SAINTS OF LOS ANGELES』には合わないポップな曲調なので、外れてよかったのかも。

全体を通して、ヴィンスが持つ陽のイメージがそのままパッケージされた、非常に聴きやすい1枚。『EXPOSED』ほどの派手さはないものの、あのアルバムとの共通項も多数見受けられるので、初期モトリーなどが好きな方なら素直に受け入れられる作品集だと思います。

なお、このアルバムでバックを務めるのは、ジェフ・ブランド(G)、ダナ・ストラム(B)、ゾルタン・チェイニー(Dr)という布陣。ご存知の方もいるかと思いますが、この3人はSLAUGHTERの現メンバーでもあるので、マーク・スローターとヴィンスを入れ替えただけなんですよね。LA界隈、狭いなあ。



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投稿: 2019 01 20 12:00 午前 [2010年の作品, Aerosmith, Cheap Trick, Motley Crue, Scorpions, Sex Pistols, Slaughter, Vince Neil, ZZ Top] | 固定リンク

2018年2月11日 (日)

VINCE NEIL『CARVED IN STONE』(1995)

1995年9月に発表された、ヴィンス・ニール通算2作目のソロアルバム。MOTLEY CRUEをクビになったあとにリリースした初ソロ作『EXPOSED』(1993年)は、モトリー時代の良質かつ“ファンが求める”部分を煮詰めたかのような、かなり優れたハードロックアルバムでした。スティーヴ・スティーヴンスという華のある凄腕ギタリストが参加したことも、成功の大きな要因だったでしょう。

しかし、同作を携えたツアー終了後にスティーヴは脱退。新たにブレント・ウッズを迎えて再度ツアーに出るも、今度はもうひとりのギタリストであるデイヴ・マーシャルも脱退してしまいます。そういった苦境の中、制作されたのが本作『CURVED IN STONE』です。

本作ではプロデューサーにTHE DUST BROTHERS(BEASTIE BOYSベックのプロデュースでおなじみの2人組ユニット)を迎えて制作。HR/HM畑以外の人と組むことがファンに不安要素となりましたが、その不安は見事的中。ポジティブな空気に満ち溢れていた前作とは相反し、ダークなテイストで統一された異色作に仕上げられています。

ヒップホップを得意とするプロデュースチームだけに、サンプリングを駆使した「Breakin' In The Gun」からスタートする本作に、きっとHR/HMファンなら誰もが動揺するはず。そこから“グランジ以降”のダークかつグルーヴィーな「The Crawl」や「Black Promises」「Writing On The Wall」のような曲が続くのですから、モトリーの『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)『DR. FEELGOOD』(1989年)路線を求めるリスナーは拒絶反応を起こすのも仕方ありません。

本家モトリーが『MOTLEY CRUE』(1994年)というダークな作品で業業的に失敗したにも関わらず、ヴィンスも同じ過ちを犯す……いや、ヴィンス的には「時代の最先端に乗れてる? 俺、イケてる?」と思ってのことだったのかもしれません。とはいえ、BLACK SABBATHのヴィンス流解釈と受け取れる「Make U Feel」、“テクニカルなグランジ”と受け取れば納得のいく「One Less Mouth To Feed」、泣きのヘヴィバラード「The Rift」など、意外と良い曲が多いのも本作の特徴。『EXPOSED』と比較してしまうからダメなのであって、1枚の「ダークなハードロックアルバム」として受け取ればそこまで悪くはないんですけどね。あ、そうなると序盤に含まれているヒップホップテイストの「Breakin' In The Gun」や「One Way」、陽気なイギー・ポップのカバー「Lust For Life」は邪魔になりますが(苦笑)。

ちなみに本作、日本盤と海外盤とでは収録曲順が一部異なるようです。日本盤初出時にアルバム中盤に「Lust For Life」、ラストにCHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が含まれており、「The Rift」の次に当時ガンに侵されていた(のちに逝去)愛娘スカイラーに捧げた美しいバラード「Skylar's Song」が収録されていました(このへんの事情も本作のダークな作風に少なからず影響を与えているのでしょうか)。しかし、のちの海外盤では「Skylar's Song」が5曲目に入っていたり、中盤の曲順が一部異なっていたりして、日本盤に慣れた耳で聴くとちょっとチグハグな印象を受けます。SpotifyやAppleMusicなどは海外盤と同じ曲順なので、初めて聴く人は特にそのへん意識しなくても大丈夫かと(笑)。

あ、最後に。CHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が非常に素晴らしい出来なので、ぜひこのへんのボーナストラックを何らかの形で正式再発してもらいたいところです。



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投稿: 2018 02 11 12:00 午前 [1995年の作品, Motley Crue, Vince Neil] | 固定リンク

2017年3月24日 (金)

VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)

MOTLEY CRUEのシンガー、ヴィンス・ニールがバンドから解雇されたのが1992年2月のこと。忘れもしません、当時僕はイギリスに留学中で、ホームステイ先で観ていたMTV内のニュースでこの情報を知ったのですから……半年くらい前に初のベスト盤(正確にはコンピレーションアルバム)『DECADE OF DECADENCE』がリリースされ、滞在先でもよくカセットをリピートしていたぐらい大好きなバンドの突然の情報に、そりゃあ動揺しまくりですよ。今みたいにインターネットもない時代、しかも海外滞在中にそんな情報を得たところで続報を調べようもないし。

ところがそこから数ヶ月後、ヴィンスは映画『ENCINO MAN』(邦題:原始のマン)のサウンドトラックに初のソロナンバー「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」を提供します。この曲は当時DAMN YANKEESのメンバーだったジャック・ブレイズ&トミー・ショウとともに制作されたもの。まだソロバンドのメンバーも確定していなかったものの、キャッチーなHRナンバーで歌うヴィンスからは“MOTLEY CRUEそのもの”といった印象を受けました。さらにその頃、マイケル・モンローと新バンドJERUSALEM SLIMを組んだはずのスティーヴ・スティーヴンス(G)がヴィンスのバンドに加わったという噂が広まります。その噂は真実となり、JERUSALEM SLIMは空中分解。スティーヴはヴィンスと一緒にアルバム制作に突入するのでした。

MOTLEY CRUE解雇から1年ちょっと経った1993年4月、ついにヴィンスの初ソロアルバム『EXPOSED』発売。MOTLEY CRUEほどのメガヒット作にはならなかったものの、全米13位という好成績を残しました。ここ日本でも同年秋に日本武道館公演を含むジャパンツアーを行い、大成功を収めました。

ソロバンドのメンバーはヴィンス、スティーヴのほかデイヴ・マーシャル(G / FIONA、SLAUGHTERなど)、ロビー・クレイン(B / RATT、BLACK STAR RIDERSなど)、ヴィッキー・フォックス(Dr / ENUFF Z'NUFFなど)という編成。レコーディングにはデイヴは参加しておらず、すべてのギターパートと一部のベースはスティーヴが弾いています。

さてさて、肝心の音ですが……「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」で感じた“MOTLEY CRUEらしさ”が全編に感じられるものの、実は楽曲自体はモロにMOTLEYを意識したものって数曲なんですよね。例えばオープニングを飾る「Look In Her Eyes」がMOTLEYらしいかと問われると、意外とそんなでもない。だけど、ヴィンスの声が乗ると不思議とMOTLEYっぽく聞こえる。いかに彼の歌声が唯一無二の武器かが、これだけでも嫌というほど理解できると思います……その観点で語ると、「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」だってMOTLEYというよりはNIGHT RANGERですもんね(笑)。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』〜『DR. FEELGOOD』期のMOTLEYを意識した「Sister Of Pain」や「Can't Have Your Cake」みたいな曲もあるにはあるけど、アルバムの中でのクライマックスとなるのは、先の「Look In Her Eyes」や、アルバム中盤の山となる「The Edge」のようにヴィンスの歌とスティーヴのギターがぶつかり合う楽曲。特に後者はフラメンコギターがフィーチャーされており、スティーヴの個性出まくりの1曲。シリアス調の「Living Is A Luxury」あたりもこの組み合わせだからこそ作り出すことができたナンバーだと思います。

と同時に、ヴィンスからイメージする“ヤンチャなアメリカンHR”まんまな楽曲も同じくらい存在。先の「Can't Have Your Cake」もそうだし、「Fine, Fine, Fine」「Gettin' Hard」なんかもその路線でしよう。そこにアメリカンHRバンドならではのバラード「Can't Change Me」「Forever」が加わり、おまけにL.A.メタルバンドお約束のカバーとしてSWEETの名曲「Set Me Free」まで取り上げている。“これぞ全部乗せ!”と言わんばかりの、サービス精神旺盛な(それでいて音楽性もしっかり伴った)1枚に仕上がっているんですから、さすがとしか言いようがありません。

ちなみに、日本盤のみボーナストラックとして、ロッド・スチュワート「Blondes (Have More Fun)」とRAMONES「I Wanna Be Sedated」という、ヴィンスのパブリックイメージに合ったカバー2曲が追加されています。購入するならぜひ、この2曲が入っている日本盤をオススメします。

ここまで完璧に“MOTLEY CRUEをイメージさせつつも、そこを超えた”作品をヴィンスがリリースしたことで、これに続く本家MOTLEY CRUEに対するハードルはさらに高くなったと思います。しかし、その本家が1年後に発表したのが、あの『MOTLEY CRUE』だったことで多くのファン(自分を除く)が落胆したのを、今でも昨日のことのように覚えています。そりゃあこの『EXPOSED』みたいな路線を期待したくなるよね。



▼VINCE NEIL『EXPOSED』
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投稿: 2017 03 24 12:00 午前 [1993年の作品, Motley Crue, Steve Stevens, Vince Neil] | 固定リンク