2017/03/24

VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)

MOTLEY CRUEのシンガー、ヴィンス・ニールがバンドから解雇されたのが1992年2月のこと。忘れもしません、当時僕はイギリスに留学中で、ホームステイ先で観ていたMTV内のニュースでこの情報を知ったのですから……半年くらい前に初のベスト盤(正確にはコンピレーションアルバム)『DECADE OF DECADENCE』がリリースされ、滞在先でもよくカセットをリピートしていたぐらい大好きなバンドの突然の情報に、そりゃあ動揺しまくりですよ。今みたいにインターネットもない時代、しかも海外滞在中にそんな情報を得たところで続報を調べようもないし。

ところがそこから数ヶ月後、ヴィンスは映画『ENCINO MAN』(邦題:原始のマン)のサウンドトラックに初のソロナンバー「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」を提供します。この曲は当時DAMN YANKEESのメンバーだったジャック・ブレイズ&トミー・ショウとともに制作されたもの。まだソロバンドのメンバーも確定していなかったものの、キャッチーなHRナンバーで歌うヴィンスからは“MOTLEY CRUEそのもの”といった印象を受けました。さらにその頃、マイケル・モンローと新バンドJERUSALEM SLIMを組んだはずのスティーヴ・スティーヴンス(G)がヴィンスのバンドに加わったという噂が広まります。その噂は真実となり、JERUSALEM SLIMは空中分解。スティーヴはヴィンスと一緒にアルバム制作に突入するのでした。

MOTLEY CRUE解雇から1年ちょっと経った1993年4月、ついにヴィンスの初ソロアルバム『EXPOSED』発売。MOTLEY CRUEほどのメガヒット作にはならなかったものの、全米13位という好成績を残しました。ここ日本でも同年秋に日本武道館公演を含むジャパンツアーを行い、大成功を収めました。

ソロバンドのメンバーはヴィンス、スティーヴのほかデイヴ・マーシャル(G / FIONA、SLAUGHTERなど)、ロビー・クレイン(B / RATT、BLACK STAR RIDERSなど)、ヴィッキー・フォックス(Dr / ENUFF Z'NUFFなど)という編成。レコーディングにはデイヴは参加しておらず、すべてのギターパートと一部のベースはスティーヴが弾いています。

さてさて、肝心の音ですが……「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」で感じた“MOTLEY CRUEらしさ”が全編に感じられるものの、実は楽曲自体はモロにMOTLEYを意識したものって数曲なんですよね。例えばオープニングを飾る「Look In Her Eyes」がMOTLEYらしいかと問われると、意外とそんなでもない。だけど、ヴィンスの声が乗ると不思議とMOTLEYっぽく聞こえる。いかに彼の歌声が唯一無二の武器かが、これだけでも嫌というほど理解できると思います……その観点で語ると、「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」だってMOTLEYというよりはNIGHT RANGERですもんね(笑)。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』〜『DR. FEELGOOD』期のMOTLEYを意識した「Sister Of Pain」や「Can't Have Your Cake」みたいな曲もあるにはあるけど、アルバムの中でのクライマックスとなるのは、先の「Look In Her Eyes」や、アルバム中盤の山となる「The Edge」のようにヴィンスの歌とスティーヴのギターがぶつかり合う楽曲。特に後者はフラメンコギターがフィーチャーされており、スティーヴの個性出まくりの1曲。シリアス調の「Living Is A Luxury」あたりもこの組み合わせだからこそ作り出すことができたナンバーだと思います。

と同時に、ヴィンスからイメージする“ヤンチャなアメリカンHR”まんまな楽曲も同じくらい存在。先の「Can't Have Your Cake」もそうだし、「Fine, Fine, Fine」「Gettin' Hard」なんかもその路線でしよう。そこにアメリカンHRバンドならではのバラード「Can't Change Me」「Forever」が加わり、おまけにL.A.メタルバンドお約束のカバーとしてSWEETの名曲「Set Me Free」まで取り上げている。“これぞ全部乗せ!”と言わんばかりの、サービス精神旺盛な(それでいて音楽性もしっかり伴った)1枚に仕上がっているんですから、さすがとしか言いようがありません。

ちなみに、日本盤のみボーナストラックとして、ロッド・スチュワート「Blondes (Have More Fun)」とRAMONES「I Wanna Be Sedated」という、ヴィンスのパブリックイメージに合ったカバー2曲が追加されています。購入するならぜひ、この2曲が入っている日本盤をオススメします。

ここまで完璧に“MOTLEY CRUEをイメージさせつつも、そこを超えた”作品をヴィンスがリリースしたことで、これに続く本家MOTLEY CRUEに対するハードルはさらに高くなったと思います。しかし、その本家が1年後に発表したのが、あの『MOTLEY CRUE』だったことで多くのファン(自分を除く)が落胆したのを、今でも昨日のことのように覚えています。そりゃあこの『EXPOSED』みたいな路線を期待したくなるよね。



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投稿: 2017 03 24 12:00 午前 [1993年の作品, Motley Crue, Steve Stevens, Vince Neil] | 固定リンク