KISS『CREATURES OF THE NIGHT: 40TH ANNIVERSARY EDITION』(2022)
2022年11月18日にリリースされた、KISSの10thアルバム『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)40周年記念エディション。
本作は最新リマスタリングが施された1CD/アナログ盤のほか、未発表テイクを豊富に納めたボーナスディスク付き2CDデラックス・エディション、5CD+1Blu-ray(Blu-rai Audio)で構成されたボックスセット(スーパー・デラックス・エディション)を用意。日本盤は1CDと2CDデラックス・エディションが用意され、スーパー・デラックス・エディションは輸入盤およびデジタルのみの販売となります。
『暗黒の神話』の邦題で知られる本作ですが、オリジナル盤発表から3年後の1985年に当時のメンバーであるブルース・キューリック(G)を含むノン・メイクアップの4人をアートワークに使用、一部楽曲にリミックスを施したバージョンも発売されています。僕が最初に聴いたのはこっちの新バージョンだったので、本作がメイクアップ時代最後のアルバムと言われてもあまり実感がなかったんですよ。それはサウンド的にも同様で、すでにこの時点で80年代半ばのヘアメタル風サウンドに近いハード&ヘヴィな作風に生まれ変わっていますしね。
さて、最新のリマスタリング効果ですが、やはり40年前の作品ということもあり、だいぶ印象も異なる気がします。もともとダイナミズムのある作品でしたが、今回の最新リマスタリングによりそのへんのメリハリがより付いたのではないでしょうか。これくらいダイナミックなHR/HMサウンドですから、メリハリは極端に付いていたほうが聴き応えもあるというもの。2022年の耳で楽しむという点においても合格点が与えられる仕上がりだと思います。
続いて、気になる特典ディスクの内容。ここではスーパー・デラックス・エディションの内容に沿って触れていきます。まずDISC 2&3には同タイミング(本作発売前)に制作されたコンピ盤『KILLERS』(1982年)に収められた新曲4曲や、当時の未発表デモ音源を多数収録。このデモには「Nowhere To Run」や「I'm A Legend Tonight」など『KILLERS』収録曲のほか、「Deadly Weapon」「Betrayed」などその後制作された楽曲と共通するタイトルの未発表曲も含まれています(タイトルこそほぼ同一ですが、のちに発表された楽曲とは別モノです)。未発表曲の多くはのちのスタジオアルバムに収録されたとしても不思議ではない内容で、ちゃんとレコーディングしていたらしっかりリリースできたものばかり。
DISC 4&5には1982〜83年にかけて実施された、『CREATURES OF THE NIGHT』を携えた全米ツアーからのライブ音源に加え、ツアーで使用されたサンドエフェクト6テイクも収録。当時日本公演が叶わなかった本ツアーの断片を、こういった音源の数々から追体験できるなんて、よい時代になったものです。ライブ音源はひとつの曲に対して収録地が異なる複数テイクが含まれているので、ライブアルバムという観点ではなく“記録”として触れるのがベストかと。ヴィニー・ヴィンセント(G)がプレイするKISSクラシックナンバーの数々を楽しめるという点では、希少価値の高い内容ではないでしょうか。
70年代の諸作品においてもデラックス盤を近年発表しているKISSですが、ここまで素材が多いのも80年代ならではといいますか。かつ、本作での再起に賭ける思いの強さが至るところから伝わってくる素材の数々を前に、時代背景を踏まえつつ「なぜ本作で本格的な再ブレイクが叶わなかったのか」を考察してみるのも面白いかもしれませんね。
『MONSTER』(2012年)を最後に新作スタジオアルバムに着手することを断念したKISS。最後の来日公演を終え、彼らはここからあと何年にわたり“過去の遺産”を掘り起こして小金を稼ぎ続けるのか。引き続き注目していきたいと思います。
▼KISS『CREATURES OF THE NIGHT: 40TH ANNIVERSARY EDITION』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤ボックスセット / 海外盤アナログ / MP3)