2018年12月20日 (木)

VIXEN『VIXEN』(1988)

80年代後半に活躍したアメリカの女性4人組バンド、VIXENが1988年に発表したデビューアルバム。「Edge Of A Broken Heart」(全米26位)、「Cryin'」(同22位)のシングルヒットも手伝い、アルバム自体も全米41位まで上昇しました。

当時は空前のHR/HMブームで、レーベルもメディアも「第二のBON JOVIMOTLEY CRUEは誰だ?」「次世代のDEF LEPPARDWHITESNAKEを探せ」と躍起になっていた頃。そんな状況でしたが、女性HR/HMバンド/アーティストに日の目が当たる機会はかなり少なく、HEARTは別格として、それ以外ではドイツのWARLOCK、イギリス生まれながらもアメリカで活躍した元THE RUNAWAYSのリタ・フォードが目立ったヒットを飛ばした程度でした。

そんな中、VIXENが契約したのはManhattan Recordsという、当時EMI(現Universal Records)傘下の新興レーベル。すでにGLASS TIGERやロビー・ネヴィル、リチャード・マークスといったロック/ポップス系アーティストがヒットを飛ばしていましたが、本格的にHR/HM系アーティストを手がけるのはドイツのZENO以来。ここでハズすわけにはいきません。

そこで投入されたのが、当時すでに“時の人”となりつつあったリチャード・マークス。リードトラック「Edge Of A Broken Heart」では彼が楽曲制作を担当したほか、プロデューサーとしても名を連ねています。さらに、そのリチャード・マークスやボブ・シーガーなどのアメリカンロックを担当してきたデヴィッド・コール、QUIET RIOTW.A.S.P.、KING KOBRAなどを手がけたスペンサー・プロファーも参加し、曲のテイストごとにプロデューサーを替えています。

このほか、M-5「Desperate」には当時WHITESNAKEでブイブイ言わせていたヴィヴィアン・キャンベル(現DEF LEPPARD)がギターソロでゲスト参加。デビュー作にこれだけ力を入れてるあたりからも、彼女たちに社運を賭けてるるんじゃ?と思えるほどの気合いが感じられます。

実際、どの楽曲も本当によく作り込まれたものばかりで、BON JOVIやHEARTあたりを気に入っているライト層を引き込むには十分魅力的な内容と言えるでしょう。おそらくハードめの曲はスペンサー・プロファーあたりが、ポップめのソフトナンバーはデヴィッド・コールが手がけているんでしょうね。そのへんの色分けもわかりやすいし、HR/HMという色眼鏡なしでも存分に楽しめるロックアルバムだと思います。だって、当時も今も、これくらいハードでもHR/HMの範疇に含まれないアルバム、たくさんありますものね。これもあの時代故。

とにかくシングル2曲のクオリティが飛び抜けているところが、特筆すべきポイント。もちろん他の曲がダメというわけではなく、平均的に良質なロックチューンの中に2曲だけ職業作家による上品で高品質な楽曲が混ざっちゃったもんだから、必要以上に輝いているといいますか。なんとなくですが、レーベルはこの2曲をシングルで切ったあとのこと、あんまり考えてなかったような気もするんだけどな(「Love Made Me」あたりはその予備軍っぽいけど、やっぱり“差”を感じるわけですよ)。

まあ、そんことを書きながらも、安心して楽しめる良質なメロディアス産業ハードロックアルバムなのは間違いない事実。HEARTほど圧倒的なボーカルが楽しめるわけではないけど、あの路線が好きな方はぜひ一度お試しください。



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投稿: 2018 12 20 12:00 午前 [1988年の作品, Vixen] | 固定リンク