VOIVOD『ULTRAMAN』(2022)
2022年11月4日にリリースされたVOIVODの最新EP。デジタル&ストリーミングのほか、フィジカルではアナログのみ発売。
そのタイトルからもわかるように、本作は日本が世界に誇る特撮ヒーロー『ウルトラマン』の主題歌や挿入歌をカバーしたものを中心に構成。ピックアップされたのは1966〜67年に日本で放送された初代『ウルトラマン』のオープニングテーマを日本語、およびバンドの母国語であるフランス語でカバーした「ウルトラマンの歌」(「Ultraman - Opening Theme (Japanese & French)」、「進め!ウルトラマン」のインストバージョン「Ultraman - Victory Theme」、そして英語で歌唱する主題歌カバー「Ultraman - Closing Theme (English)」の3曲で、組曲のようなアレンジでまとめ上げらげられています。
イントロからテレビ放送版のオープニングをそのままコピーしており、そこから本編に突入すると軽快さを残しながらもVOIVODらしい不穏なコードワークを用いたアレンジで進行。1番は我々アラフィフ世代が慣れ親しんだ日本語詞で丁寧に歌われるのですが、なんだか微笑ましくて笑っちゃいます。実はメンバーのチューウィー(G)は日本語が堪能だそうで、彼のディレクションもあってここまでナチュラルな日本語歌唱が実現したんだとか。
そこから2番で突如フランス語に変わります。こっちはカナディアンの彼らにとっては母国語でもあるので、非常にナチュラル。フランス語に馴染みの薄い筆者にはこの引っ掛かりの強さは違和感を伴いますが、嫌いじゃないです。終盤に変身時の効果音がそのまま使用されています。
で、気持ち良いながれで「Ultraman - Victory Theme」へと移行。この曲も番組を一度でも目にしたことがある方なら「ああ!」とお気づきになるはず。こちらもエンデイングにカラータイマー点滅時の効果音が用いられており、思わずニヤリ。
さらに英語で歌唱されたオープニングテーマがクロージングテーマとしてカバーされ、組曲は大団円を迎えます。M-1が1分40秒、M-2が40秒、M-3が50秒とトータルで3分強。プログレッシヴな楽曲が多い彼らにしては牧歌的で、かつ尺も短い組曲ですが、『ウルトラマン』という作品への強い愛が伝わる良カバーではないでしょうか。
なお、アナログ盤には上記3トラックに加え、オール日本語歌唱の「Ultraman - Opening Theme」「Ultraman - Victory Theme」「Ultraman - Closing Theme」の組曲、オールインストの同組曲をA面に収録。この9トラックだけでも10分に満たないという事実に驚かされます。どこぞのハードコアパンクですか(笑)。
なお、本作にはボーナストラックとして2018年のライブから「Overreaction」「Voivod」も収録。こちらは前者が5分半、後者が6分強と本編の倍近くの尺。あと、最近のオリジナルアルバム2作(2018年の『THE WAKE』と2022年の『SYSCHRO ANARCHY』)にはともにライブ盤が付属していたり、かつ純粋なライブアルバム『LOST MACHINE - LIVE』(2020年)も立て続けに発表しているので、ライブ音源に関しては食傷気味かな……もちろん、悪いわけがないので聴いたら楽しんじゃいますけどね。
というわけで、今年頭に発表された待望のオリジナルアルバム『SYSCHRO ANARCHY』に続く新作音源が、こうも早く楽しめるとは(しかも、日本人には馴染みのある楽曲カバー)。ぜひ近々再来日を実現させてもらって、この曲を一緒に合唱したいものです。
▼VOIVOD『ULTRAMAN』
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