2017/06/11

WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』(2017)

LAメタル末期にデビューしたWARRANTの、前作『ROCKAHOLIC』(2011年)から6年ぶりに発表された通算9枚目のオリジナルアルバム。前作からジェイニー・レイン(Vo/2011年死去)を除くオリジナルメンバーに、元LYNCH MOBのロバート・メイソン(Vo)を加えた編成で活動しており、今作が現編成2作目となります。

“よりデカく、より激しく、より速く”というタイトル通りの内容といったところでしょうか。純粋にハードロックアルバムとして優れた内容だと思いますし、歌も演奏も曲も申し分なし。例えば本作が1988年前後にリリースされていたら、きっと100万枚を超えるヒット作になっていたんだろうな、と思うのです。

とはいえ、本作はそこまで古臭さを感じさせないし、別に2017年という現代に鳴っていても特に大きな違和感はないかなと。いやウソです。やっぱり時代の流れは感じてしまいます。メロディの節々に“あの頃”のWARRANTをしっかり感じさせつつ、“我々の知るWARRANTではない何か”も存在する。でも、それは決して近代的なものではなく、古き良き時代のHR/HMそのものという……つまり、良くも悪くもどこかで“止まってしまっている”のです。

WARRANTというバンドもまた、90年代初頭のグランジの勢いに当てられ、当時は『DOG EAT DOG』(1992年)をはじめとしたダークな作品をいくつか発表しています。しかし、ここ最近の彼らはよりストレートなハードロックに回帰しており、そのへんの時代とうまく寄り添う行為は今は亡きジェイニーの画策だったんだろうなと思うわけです。

で、そのジェイニーを欠いたバンドがごく普通のハードロックを鳴らすというところに大きな意味があるんじゃないかと。きっと初期のパーティロック路線も策士ジェイニーによるアイデアだったかもしれないわけで、そう考えると他のプレイヤーたちは本来こういったド直球のハードロックをやりたかったんだろうな、と。丁寧だけど抑揚があまりないジェイニーとは異なる“歌える”シンガー(前任のジェイミー・セント・ジェイムズしかり、ロバートしかり)を迎えたのも、その思いを具現化するためだったんじゃないかと……まるでデヴィッド・リー・ロスからサミー・ヘイガーに移行したVAN HALENみたいですね。

結局、キャラの強い(もしくは賢く商才に長けた)フロントマンで成功したバンドが“音楽”に目覚めると、こういう方向に進みたくなるのは自然な流れなのかな。もちろんこれはこれで間違いじゃないし、実際完成したアルバムもなかなかの力作だと思いますが……残念ながら「我々が知るWARRANTのニューアルバム」ではないな、と。ただ、そういった枕詞を無視すれば、純粋にカッコ良いHRアルバムとして愛聴できそうです。抑揚がないとか散々貶してるジェイニーですが、なんだかんだで初期3作に対する思いが強いので、こういう評価になってしまいました。このバンドに対して「初期のほうが〜」という思い入れがない人なら、間違いなく満足できる1枚だと思います。



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投稿: 2017 06 11 12:00 午前 [2017年の作品, Warrant] | 固定リンク

2017/03/23

ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』(2016)

また随分と微妙な作品をぶっこんできたなぁ……というのが正直な感想。まぁそこも含めてENUFF Z'NUFFらしいっちゃあらしいんですが。

日本では2009年、海外では2010年に発表された前作『DISSONANCE』から実に7年ぶりに発表された本作『CLOWNS LOUNGE』は、1988〜89年頃に制作されたデモ音源をベースに、2004年に制作されつつも未発表だった楽曲、そして新たに2016年に録音された楽曲を含む、とても“ニュー”アルバムとは呼べない代物。もちろんZ'NUFFにはこれまでにも未発表音源をまとめたアルバムはいくつか発表されているので、これもその一環と考えれば全然受け入れられるんだけど……要は、現在バンドには往年のフロントマン、ドニー・ヴィ(Vo, G)が在籍していないのに、その彼が歌う楽曲が中心のアルバムを新作として発表するのはどうなの?という疑問が残るわけです。こればかりは、過去のケースとはまったく異なりますからね。

しかも、1988〜89年というと1989年のメジャーデビュー作『ENUFF Z'NUFF』発表前夜。メンバーもドニーのほか、現在もバンドに在籍するチップ・ズナフ(Vo, B)、2004年に亡くなったデレク・フリーゴ(G)、バンド脱退後にヴィンス・ニールのソロプロジェクトに加わるヴィッキー・フォックス(Dr)という懐かしい布陣で、演奏スタイルも中〜後期(1990年代後半以降)とは異なる“もろに”ハードロックスタイル。楽曲の質感もその系統ですが、メロディが持つポップさ、普遍性はのちの彼らにも通ずる……というか、この時点ですでに一貫していたんだなと気づかされます。そう、“あの頃のENUFF Z'NUFF”が好きな人にはうってつけの1枚なのですよ(ただし、あくまでデモ音源がベースなので、それなりの音質。そこにこだわる人はご注意を)。

しかし、そこに現体制……チップがボーカルを務める楽曲も含まれていて、それがしらじらしくアルバムのオープニングを飾るんだから、なんとも言えない気持ち悪さを冒頭から感じてしまうんです。過去の遺産(と、世の中的には言えないレベルかもしれないけど)を食い潰す、あるいは過去の名声に便乗する……ドニー時代を愛する自分からしたら、そう見えてしまうアルバムなんです。

そんな中、アルバム中盤に突如登場する「The Devil Of Shakespeare」。この曲のみ2004年の録音なんですが、ボーカルを担当するのが元WARRANTのジェイニー・レイン。彼も2011年にお亡くなりになってますし、そんなことを考えながら聴くとよりいたたまれない気持ちになってしまうのです(ちなみにリードギターはSTYXのジェイムズ・ヤングがプレイ)。

彼らも5月に開催されるL.A.メタル系フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』で久々に来日。「あれ、L.A.関係あったっけ?」という疑問も残りますが、“ドニーがいないZ'NUFF”を観て現実を受け入れるしかないのでしょうか。いい曲がそれなりに多い本作を聴くたびに、モヤモヤした気持ちになってしまうのです。



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投稿: 2017 03 23 12:00 午前 [2016年の作品, Enuff Z' Nuff, Warrant] | 固定リンク

2017/03/15

WARRANT『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』(1989)

80年代のHR/HMブーム末期にLAから登場したのが、今回紹介するWARRANT。結成は1984年と比較的早いほうですが、メジャーデビューは1989年とそこから5年の歳月を要しています。

本国では1989年1月にリリースされた彼らのデビュー作『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』。そのアルバムタイトルと、“銭ゲバ”をそのまま具現化したかのようなイラストのジャケットから、WARRANTのことを知らない人は「きっと攻撃的なスラッシュメタルはハードコアでもやってるのかな」なんて想像するかもしれませんが、その中身は……グラムメタルとまでは言わないものの、適度なハードさが兼ね備わったポップなHRといったところでしょうか。

彼らのことを最初に知ったのは、たぶんMTVかTBS『PURE ROCK』で観たMV「Down Boys」だったと記憶しています。僕はてっきりPOISONの亜流みたいなものを想像していたら、音はもっとまともでまずそこに驚かされた。しかし、パフォーマンスがRATTやSCORPIONSがやってるようなフォーメーション(フロントメンバーがアクションを揃えるやつ)をもっと過剰にしたもので、そこに若干退いたんです。正直、アルバムを買ってまで聴こうとは思えなくて。

その後も「Big Talk」のMVをテレビで目にはしてましたが、そこまで心を動かされることもなく。パワーバラード「Heaven」が全米2位を記録する大ヒット曲になっても、「ああ、そう」くらいな感じでスルーしていたのでした。

で、1990年に上京後、2ndアルバム『CHERRY PIE』リリース時に「ちゃんと聴いてみようか」と思い、同作と一緒に1stも購入。こうしてようやくアルバムをフルで聴くことができたのでした。本国でのリリースから1年半以上経ってからのことです。

正直、バンドに対するイメージはそこまで大きくは変わりませんでした。よく作り込まれた楽曲群、適度にテクニカルでそつのない演奏、クセもそこまで強くなくて耳馴染みの良いボーカル……そう、非常に優等生すぎるんですよ、デビューアルバムのくせに。

確かにデビューアルバムってそれまでの活動の集大成的内容になるとは思うんです。でも、これはいろんな意味で過剰すぎないかと。下積みが長かったせいもあるのかもしれないし、ブーム末期にデビューしたことも大きく影響してるのかもしれないけど、ちょっとリスナー側に歩み寄りすぎなんじゃないかな。冷静に聴いて、そういう印象を持ちました。

しかし、本作リリースからすでに28年経過した2017年に聴いてみると……不思議と印象が変わらない。そう、当時からそうであったように、古くもないし新しくもない。こんな普遍性の強いアルバムだとは当時考えてもみなかったな。バンドは現在も活動していますが、ボーカルのジェイニー・レインは2011年に亡くなっています。この歌声を新作で再び耳にすることはできませんが、本作や『CHERRY PIE』などといった作品は世の評価ほど悪くないよということだけは声を大にして伝えておきたいと思います。



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投稿: 2017 03 15 12:00 午前 [1989年の作品, Warrant] | 固定リンク