2017/03/23

ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』(2016)

また随分と微妙な作品をぶっこんできたなぁ……というのが正直な感想。まぁそこも含めてENUFF Z'NUFFらしいっちゃあらしいんですが。

日本では2009年、海外では2010年に発表された前作『DISSONANCE』から実に7年ぶりに発表された本作『CLOWNS LOUNGE』は、1988〜89年頃に制作されたデモ音源をベースに、2004年に制作されつつも未発表だった楽曲、そして新たに2016年に録音された楽曲を含む、とても“ニュー”アルバムとは呼べない代物。もちろんZ'NUFFにはこれまでにも未発表音源をまとめたアルバムはいくつか発表されているので、これもその一環と考えれば全然受け入れられるんだけど……要は、現在バンドには往年のフロントマン、ドニー・ヴィ(Vo, G)が在籍していないのに、その彼が歌う楽曲が中心のアルバムを新作として発表するのはどうなの?という疑問が残るわけです。こればかりは、過去のケースとはまったく異なりますからね。

しかも、1988〜89年というと1989年のメジャーデビュー作『ENUFF Z'NUFF』発表前夜。メンバーもドニーのほか、現在もバンドに在籍するチップ・ズナフ(Vo, B)、2004年に亡くなったデレク・フリーゴ(G)、バンド脱退後にヴィンス・ニールのソロプロジェクトに加わるヴィッキー・フォックス(Dr)という懐かしい布陣で、演奏スタイルも中〜後期(1990年代後半以降)とは異なる“もろに”ハードロックスタイル。楽曲の質感もその系統ですが、メロディが持つポップさ、普遍性はのちの彼らにも通ずる……というか、この時点ですでに一貫していたんだなと気づかされます。そう、“あの頃のENUFF Z'NUFF”が好きな人にはうってつけの1枚なのですよ(ただし、あくまでデモ音源がベースなので、それなりの音質。そこにこだわる人はご注意を)。

しかし、そこに現体制……チップがボーカルを務める楽曲も含まれていて、それがしらじらしくアルバムのオープニングを飾るんだから、なんとも言えない気持ち悪さを冒頭から感じてしまうんです。過去の遺産(と、世の中的には言えないレベルかもしれないけど)を食い潰す、あるいは過去の名声に便乗する……ドニー時代を愛する自分からしたら、そう見えてしまうアルバムなんです。

そんな中、アルバム中盤に突如登場する「The Devil Of Shakespeare」。この曲のみ2004年の録音なんですが、ボーカルを担当するのが元WARRANTのジェイニー・レイン。彼も2011年にお亡くなりになってますし、そんなことを考えながら聴くとよりいたたまれない気持ちになってしまうのです(ちなみにリードギターはSTYXのジェイムズ・ヤングがプレイ)。

彼らも5月に開催されるL.A.メタル系フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』で久々に来日。「あれ、L.A.関係あったっけ?」という疑問も残りますが、“ドニーがいないZ'NUFF”を観て現実を受け入れるしかないのでしょうか。いい曲がそれなりに多い本作を聴くたびに、モヤモヤした気持ちになってしまうのです。



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投稿: 2017 03 23 12:00 午前 [2016年の作品, Enuff Z' Nuff, Warrant] | 固定リンク

2017/03/15

WARRANT『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』(1989)

80年代のHR/HMブーム末期にLAから登場したのが、今回紹介するWARRANT。結成は1984年と比較的早いほうですが、メジャーデビューは1989年とそこから5年の歳月を要しています。

本国では1989年1月にリリースされた彼らのデビュー作『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』。そのアルバムタイトルと、“銭ゲバ”をそのまま具現化したかのようなイラストのジャケットから、WARRANTのことを知らない人は「きっと攻撃的なスラッシュメタルはハードコアでもやってるのかな」なんて想像するかもしれませんが、その中身は……グラムメタルとまでは言わないものの、適度なハードさが兼ね備わったポップなHRといったところでしょうか。

彼らのことを最初に知ったのは、たぶんMTVかTBS『PURE ROCK』で観たMV「Down Boys」だったと記憶しています。僕はてっきりPOISONの亜流みたいなものを想像していたら、音はもっとまともでまずそこに驚かされた。しかし、パフォーマンスがRATTやSCORPIONSがやってるようなフォーメーション(フロントメンバーがアクションを揃えるやつ)をもっと過剰にしたもので、そこに若干退いたんです。正直、アルバムを買ってまで聴こうとは思えなくて。

その後も「Big Talk」のMVをテレビで目にはしてましたが、そこまで心を動かされることもなく。パワーバラード「Heaven」が全米2位を記録する大ヒット曲になっても、「ああ、そう」くらいな感じでスルーしていたのでした。

で、1990年に上京後、2ndアルバム『CHERRY PIE』リリース時に「ちゃんと聴いてみようか」と思い、同作と一緒に1stも購入。こうしてようやくアルバムをフルで聴くことができたのでした。本国でのリリースから1年半以上経ってからのことです。

正直、バンドに対するイメージはそこまで大きくは変わりませんでした。よく作り込まれた楽曲群、適度にテクニカルでそつのない演奏、クセもそこまで強くなくて耳馴染みの良いボーカル……そう、非常に優等生すぎるんですよ、デビューアルバムのくせに。

確かにデビューアルバムってそれまでの活動の集大成的内容になるとは思うんです。でも、これはいろんな意味で過剰すぎないかと。下積みが長かったせいもあるのかもしれないし、ブーム末期にデビューしたことも大きく影響してるのかもしれないけど、ちょっとリスナー側に歩み寄りすぎなんじゃないかな。冷静に聴いて、そういう印象を持ちました。

しかし、本作リリースからすでに28年経過した2017年に聴いてみると……不思議と印象が変わらない。そう、当時からそうであったように、古くもないし新しくもない。こんな普遍性の強いアルバムだとは当時考えてもみなかったな。バンドは現在も活動していますが、ボーカルのジェイニー・レインは2011年に亡くなっています。この歌声を新作で再び耳にすることはできませんが、本作や『CHERRY PIE』などといった作品は世の評価ほど悪くないよということだけは声を大にして伝えておきたいと思います。



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投稿: 2017 03 15 12:00 午前 [1989年の作品, Warrant] | 固定リンク