2017年2月19日 (日)

W.A.S.P.『THE CRIMSON IDOL』(1992)

先日、W.A.S.P.の名盤『THE CRIMSON IDOL』が今年で発売25周年を迎えるにあたり、全曲再現ライブの実施と再レコーディングアルバム制作が発表されびっくりしました(詳細はこちら)。「あれ、こないだも全曲再現ライブやってなかったっけ?」と。あれってもう10年前のことで、発売15周年記念で行ったものだったんですね。時の流れの早さにただただ驚くばかりです。

というわけで、今日はW.A.S.P.が1992年に発表した通算5枚目のスタジオアルバム『THE CRIMSON IDOL』です。いわゆる王道HR/HMが好きな人なら、一度はこのアルバムに触れたこと、あるいはこのアルバムの名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。1992年という、今思えばHR/HMシーンが冬の時代に突入したタイミングに発表されたこのアルバム。当初はフロントマンのブラッキー・ローレス(Vo, G)が相次ぐメンバー脱退を受け、ソロアルバムとして制作されたアルバムだったそうです。しかし、レコード会社からの「W.A.S.P.名義で発表したほうがいいのでは?」というアドバイスを受け、最終的には『THE HEADLESS CHILDREN』(1989年)に続くオリジナル作品になったという経緯があります。

作風的には、いきなりシリアス路線になってファンを驚かせた前作『THE HEADLESS CHILDREN』の流れにあるもの。前作ではアレンジ面でどことなくアメリカンロック的な陽気さもそこはかとなく感じられましたが、この『THE CRIMSON IDOL』ではその空気も払拭され、よりシリアスな正統派ヘヴィメタルアルバムに仕上げられています。

また、本作はジョナサン・アーロン・スティールという架空のロックスターを中心に物語が進行するコンセプトアルバムとなっています。前作『THE HEADLESS CHILDREN』ではTHE WHOの「Real Me」(有名なロックオペラアルバム『QUADROPHENIA(四重人格)』収録曲)をカバーしていましたが、思えばあの時点で「THE WHOのコンセプトアルバムみたいな作品を作りたい」といった構想があったんでしょうね。事実、『THE HEADLESS CHILDREN』には少なからずロックオペラ的要素が散りばめられていましたし。

そういった「コンセプトアルバム」「ロックオペラ」という枕詞に躊躇してしまいがちなメタルファンも多いかと思いますが、心配は無用。1曲目「The Titanic Overture」からいきなりノックアウトされるはずです。そのまま「The Invisible Boy」「Arena Of Pleasure」と疾走感のある王道メタルチューンが続くと、4曲目で名曲中の名曲「Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue)」が登場。この曲、最初はタイトルだけ知ったときは「ああ、ブラッキーの股間にノコギリ付いてたし、そういうのね」と半笑いでした。もちろん、曲を聴いて土下座したい気持ちになったのは言うまでもありません。この起承転結しっかりした9分近い大作こそが、『THE CRIMSON IDOL』というアルバムで何をやろうとしているのかを一番わかりやすく表しているのではないか、だから約9分というリスキーさはありながらも最初のシングルにピックアップされたんでしょうね。

アルバムはその後も熱を帯びながら進行し、一大叙情詩「The Idol」でクライマックスに突入し、心安らぐバラード「Hold On To My Heart」を経て本作最長(約10分)の「The Great Misconceptions Of Me」で大団円を迎えます。特にこのラスト3曲の流れが持つドラマチックさは圧巻で、前半のピークを「Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue)」に置くとしたら、後半は間違いなくこのパートだと断言したいです。

実はこのアルバム、イギリスや日本では1992年初夏にリリースされたものの、本国アメリカでは1年後の1993年5月まで発表されなかったという曰く付きの1枚。それもあってか、米ビルボードではチャートインせず。イギリスでの21位を筆頭に、ノルウェー11位、スイス24位、オーストリア30位、スウェーデン31位、ドイツ35位とヨーロッパ圏で好意的に受け入れられました(もちろんここ日本は言うまでもなく)。アルバムを聴くとそれもなんとなく頷ける内容ですものね。

エゴやキャラの強いメンバーがバンドを離れ、ブラッキーひとりですべてをコントロールできる状況だったからこそ完成させることができたこのアルバム。もしあのままクリス・ホルムズ(G)やジョニー・ロッド(B)がバンドに残っていたらソロアルバムを作ろうなんてこと自体考えなかったでしょうし、仮に『THE HEADLESS CHILDREN』をもっと昇華させた作品を作ろうとしても、ここまでの完成度には至らなかったんじゃないでしょうか。と同時に、このアルバムを完成させることができたからこそ、W.A.S.P.というバンドが紆余曲折ありながらも2017年現在も存続できているんでしょうね。それだけ大きな意味と価値を持つ本作、まだ聴いたことがない人はぜひこの25周年というタイミングに手にしてみてください。

なお、現在はブラッキーのナレーションやライブテイク、本作からのシングルのみに収録されたカップリング曲などを追加収録した2枚組仕様もリリースされています。ライブテイクはリリース年夏に実施された野外フェス『MONSTERS OF ROCK』の音源で、新作からのナンバーに加え「I Wanna Be Somebody」「Wild Child」「Real Me」といった代表曲も楽しめます。



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投稿: 2017 02 19 12:00 午前 [1992年の作品, W.A.S.P.] | 固定リンク

2005年7月19日 (火)

W.A.S.P.『W.A.S.P.』(1984)

ブラッキー・ローレンス(Vo, B)率いるW.A.S.P.のデビューアルバム。本作の前に「Animal (Fuck Like A Beast)」という、あまりにもど直球なタイトルの楽曲を発表しましたが、アルバムには収録されず(のちの再発盤CDには1曲目に追加収録)。併せて、グラマラスかついかがわしいファッションもあって、当時はキワものバンドと見られがちでしたが、サウンド自体は実に正統派。僕自身も見た目のイメージ先行で、いざ聴いたらそのコテコテなメタルサウンドにびっくりした記憶があります。

モーニング娘。.真っ青な「L.O.V.E. Machine」なんてタイトルの楽曲もありますが、この曲も極めて王道メタル。「The Flame」みたいなアメリカンハードロックもあるし、「I Wanna be Somebody」もその流れにある1曲かもしれませんが、本作の真骨頂はアナログB面にあたる「Hellion」以降の流れ。パワーバラード的な「Sleeping (In The Fire)」やファストチューン「On Your Knees」、ヘヴィなミドルチューン「Tormentor」など、前述のイメージで接すると痛い目を見るかも。

なぜ彼らがその後『THE CRIMSON IDOL』.というアルバムに到達するのか、その一端が垣間見れる1枚。現在流通している再発盤にはオリジナル盤未収録の「Show No Mercy」や、ストーンズ.のカバー「Paint It Black」も収録(もちろん「Animal (Fuck Like A Beast)」も)。「Show No Mercy」はアルバムの流れを汲んだパワフルな1曲ですが、「Paint It Black」はオマケとして接してもらえれば。サビメロを変えていたりするものの、基本は原曲に忠実なカバーで、まあお遊びですよね。



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投稿: 2005 07 19 12:10 午前 [1984年の作品, W.A.S.P.] | 固定リンク