2016/12/27

GEORGE MICHAEL『FAITH』(1987)

WHAM!の解散が1986年6月で、ソロシングル「I Want Your Sex」リリースが翌1987年6月。WHAM!在籍中に「Careless Whisper」(1984年)、「A Different Corner」(1986年)の2曲をソロ名義で発表していたり、それらの楽曲がWHAM!のオリジナルアルバム(前者が2nd『MAKE IT BIG』、後者が『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』)にも収録と、WHAM!解散後のソロ活動は当然の流れなわけで。

そりゃ「I Want Your Sex」を最初に聴いたときの衝撃は、相当なものでした。直接的なタイトルもそうですし、いわゆるポップミュージックのフィールドのど真ん中で戦ってきたWHAM!からよりアダルトな路線へと移行したそのサウンドにも、ただただビックリしたものです。

1987年秋、ついにリリースされた1stソロアルバム『FAITH』は、「I Want Your Sex」から想像できたアダルト路線をより突き詰めたものでしたが、予想よりも聴きやすい1枚でまた驚かされたのも、まるで昨日のことのように覚えています。当時高校1年生だった自分に“大人すぎず、子供すぎず”な絶妙なバランス感の上に成り立っていたこのアルバムは、当然のように全米&全英1位。アルバムからシングルカットされた5曲(「Faith」「Father Figure」「One More Try」「Monkey」「Kissing A Fool」)中、「Kissing A Fool」以外の4曲が全米1位を獲得し、アルバム自体もアメリカで当時700万枚、現在までに1000万枚超を売り上げるメガヒット作となりました。これは同年に発表されたマイケル・ジャクソンのアルバム『BAD』からの全米No.1シングル5曲に次ぐ大記録。そう考えると、1987年って本当に面白い年だったなぁ……。ちなみに、このアルバムは1988年のビルボード年間ランキングで1位、シングル「Faith」も1988年の年間チャートで1位という快挙を成し遂げています。WHAM!というスーパーグループはたった数年の活動で終了したものの、それ以上の成功をソロになっていきなり達成してしまったわけです。

事実、本作はそのセールスや記録に負けないだけの内容だと思います。賛美歌のようなオープニングに続いて、ボ・ディドリー調のリズムと意外なほどに音が薄いタイトルトラック「Faith」の意外性。アジアテイストのイントロ&ゴスペル調コーラスと同じくらい、一緒になれない男女(もしくは男同士)の別れをつづった歌詞が意味深な「Father Figure」から、ストレートな「I Want Your Sex」への流れ。ジョージの真骨頂といえるバラード「One More Try」、どこかプリンスにも通ずるダーク&コールドなファンク「Hard Day」、アメリカンドリームを否定する冷ややかな「Hand To Mouth」、ジャム&ルイスがリミックスしたシングルバージョンもなかなかなファンクチューン「Monkey」で緩急をつけて、ラストはジャジーな「Kissing A Fool」で締めくくるという完璧な構成。アルバム全体はもちろんのこと、1曲1曲を取り上げても、リリースから29年経った今聴いてもまったく古さを感じさせないのだから、本当にすごいアルバムだなと思います。

にしても、アルバム全9曲(「I Want Your Sex」がパート1&2のメドレーなので、実質10曲ですが)6曲がシングル曲っていう強みもすごいし、WHAM!からこういったアダルト路線に見事シフトチェンジできた事実もすごい。CDだとボーナストラックとして、ラストに「A Last Request (I Want Your Sex Part III)」が収録されているのですが、この組曲的にアルバムに位置する「I Want Your Sex」という曲が、結局はジョージ・マイケルのソロキャリア開始における支柱だったのかなと。その後の彼のアレコレを考えると、いろいろ感慨深いものがありますね。



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投稿: 2016 12 27 12:00 午前 [1987年の作品, George Michael, Wham!, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2004/09/06

とみぃ洋楽100番勝負(18)

●第18回:「Freedom」 WHAM!('84)

 言わずと知れたジョージ・マイケル率いるWHAM!。つーか俺等世代にとっての青春ですよね。中学時代、本当によく聴いたし、そのあっけない解散にはガッカリさせられたものです。来日公演も1回きりだっけ? 畜生、本当に観たかったよ。

 初めて聴いた曲となると、ファースト収録の "Bad Boys" だけど、思い入れなら完全にセカンド「MAKE IT BIG」。で、B面1曲目(という言い方の方が思い入れ強し)のこの曲がね。マクセルのCMソングだっけ? とにかくあのイントロのブラスの強烈さと、サビメロの甘さ。これが全てですよ。ジョージの若々しい歌声も素晴らしいし、殆ど意味がないようであるようなアンドリューの存在もグレイト。

 WHAM!はね。たった3枚のオリジナルアルバム(といっても3枚目は半ば編集盤だけど)とベスト盤の計4枚で活動を終了しちゃったけど(それもたった4年くらいの間でね)、その後のジョージの活動を思えば‥‥「FAITH」は俺の中では「MAKE IT BIG」に匹敵する程の名盤なんですけどね(内容は真逆と言っても過言じゃないけど)。17年でオリジナルアルバム4枚、カバー集1枚、ベスト盤1枚の計6枚‥‥はぁ‥‥そういやぁ俺、ジョージのソロライヴも観た事なかったなぁ。ドームだったっけ、セカンド出た後って。違ったっけ? あー、タイミング悪かったよなぁ‥‥

 新作出たけど、全然盛り上がってないよね。やっぱり‥‥あの「事件」を境に‥‥

 一時期、ジョージがフレディ・マーキュリー亡き後のQUEENに、ボーカルとして参加して、QUEENのラストアルバムを作る、なんて噂があったけど‥‥それは違うよね、いくらなんでも。両者共好きだけどさ‥‥食い合わせ悪過ぎ。それだったらアンドリューに仕事あげてくださいよマジで。



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投稿: 2004 09 06 12:00 午前 [1984年の作品, Wham!, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/12/05

WHAM!『MAKE IT BIG』(1984)

よく自分よりもちょっと上の世代の音楽ファンから『'80年代は何も生まなかった』とか『暗黒の時代』だとか言われる機会が昔から多かったわけですよ。そういう人達の大半が'70年代のど真ん中や末期をリアルタイムで通過してる人達で、まぁ所謂『BEATLESに間に合わなかった世代』なわけですね。けど彼等にはパンクという特別なものがある。そういう『リアルなロック』と世間一般で呼ばれるものを通過してしまった世代からすれば、'80年代に入って登場したニューウェーブもニューロマンティックもMTVもLAメタルもNWOBHMもテクノもユーロビートも、全部ダメダメなわけですよ。糞なわけ。

けどさ、そんな『糞』を『黄金』だと思って育ったわけよ、俺ら'70年代生まれは。まだビデオデッキが今みたいに普及してなかった時代、眠い目をこすって深夜のMTVや「ベストヒットUSA」を心待ちにして、毎月「ミュージックライフ」や「ロックショウ」「IN ROCK」のグラビアを切り抜きして下敷きに挟んだりしてたわけ。そういう時代をリアルタイムで通過したんだもん、そういった上の世代よりも許容範囲は広いんだろうね。彼等が理解できないような音楽も嬉々として楽しんでたし‥‥

多分今回紹介するジョージ・マイケルが在籍したWHAM!も、そういう誤解を思いっきり受けたグループのひとつなんだと思う。その甘いルックスやMTVを意識したビジュアルのせいで、完全にアイドルだと思われてたわけだけど、そういう評価を完全に覆したのがこのセカンドアルバム、「MAKE IT BIG」。全8曲、40分を欠ける短さなんだけど、完全無欠のポップ・アルバムに仕上がってるわけです。

全8曲中7曲がオリジナル曲で、6曲がジョージ・マイケルの作詞作曲(1曲のみ相棒、アンドリュー・リッジリーとの連名)によるオリジナル曲。ファーストアルバムも殆どがジョージの手によるものだったわけだけど、その時点で「ゴーストライターが書いてるんじゃないの?」とか囁かれる程、完成度が高かったわけですよ。で、このアルバム。完成度は更に高まり、高純度のポップソングに留まらず、ホワイト・ソウルというか、完全にR&Bと呼んでも違和感ない程なんですね。ま、ファーストの時点で既に片鱗は伺えたんですが、ここでひとつの完成型を見たというか、兎に角素晴らしすぎるんですね。

ふと収録曲に目をやると、半分の4曲がシングルとして大ヒットしてるんですわ。多分誰もが知ってるであろう "Careless Whisper"(西城秀樹が "抱きしめてジルバ" としてカバーした、あの名バラードですね)を筆頭に、当時は某カセットテープのCMソングに抜擢された "Freedom"、地味ながらもアメリカでは1位を記録した "Everything She Wants"、そして懐メロ・コンピ盤に必ずといっていい程入ってるナンバーワンヒット "Wake Me Up Before You Go-Go"("ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ" と書いた方がいいかしら?)、どれもがあの当時、必ずMTVやラジオから聞こえてきた曲ばかり。勿論それ以外のアルバム曲もポップでソウルフルな楽曲ばかり。多分このアルバムの中で一番輝いているであろう永遠のポップソング "Heartbeat"、セクシーでアダルトな雰囲気が後のジョージのソロを彷彿させる "Like A Baby"、かのTHE ISLEY BROTHERSのカバーである "If You Were There"、ゴージャスなポップソング "Credit Card Baby" ‥‥本当に捨て曲一切なし。

当時、白人ポップグループがR&Bやソウルといった黒人音楽に接近する傾向が、特にイギリスでは多かったように感じます。かのボーイ・ジョージ率いるCULTURE CLUBがレゲエやソウルを取り入れたのもそうだし、DURAN DURANも『SEX PISTOLS(パンク)とCHIC(ソウル)の融合』を試みたし、ポール・ウェラーもTHE STYLE COUNSILでホワイト・ソウルをモノにしようとしたし。パンク後、そういった方向に流れていったのは恐らく必然だったのかもしれませんね。

にしてもさ‥‥R&Bとかソウルとか抜きにしても、このアルバムのポップ度、完成度はどうよ? むしろさ、この時代に生まれたであろう10代~20代前半の子達にこのアルバムを聴いて欲しいんだよね。そう願って今回取り上げたわけ。間違いなくジョージ・マイケルのソングライターとしての才能は天才的だし、シンガーとしての力量も俺内ではフレディ・マーキュリーに匹敵する程だと信じているし(いろんな意味で似てるしね?)、何よりもこのアルバムは歴史に残る名盤だし。ロックだのパンクだのソウルだのって、そんなくだらないカテゴリーに拘る前に、このアルバムをまず聴けってぇの!



▼WHAM!『MAKE IT BIG』
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投稿: 2003 12 05 05:59 午後 [1984年の作品, Wham!] | 固定リンク