2003/06/15

WHEATUS『WHEATUS』(2000)

アメリカはニューヨーク出身の4人組バンド、WHEATUSが2000年秋に発表したファーストアルバム。一応メジャーのソニー系列からのリリースという、いきなり恵まれた環境から登場した新人なんですが‥‥殆ど話題になりませんでしたね、当時。この頃から音楽雑誌とか全く買わなくなったので、実際には小さいながらもインタビューとかあったのかもしれませんが‥‥勿体ない、というのが正直なところ。いやこれ、非常に優れたギターポップ/パワーポップ・アルバムですよ。

かくいう俺も、このアルバムを手にしたのはリリースされてから1年近く経った2001年の夏。当時自分が参加していたDJイベントで、他のDJがこのアルバムに収録されている"Teenage Dirtbag"と"Leroy"を回してたんですよ。前者はヒップホップ的要素を取り入れたバックトラックにアコギを取り入れた、WEEZERを更に情けなくしたようなミドルテンポのパワーソング、後者はハーモニカの音色が心地よいストレートなギターロックといった印象で、大音量で鳴らすと非常に気持ちいい楽曲だったんですね。で、フロアで踊ってた俺はすぐさまそのDJにアーティスト名を教えてもらってアルバムを探したという。それが俺とWHEATUSとの出会い。

アルバム全体を覆う脳天気さ、おバカさはさすがアメリカのバンドといった印象。ちょっとSUGAR RAYとかを彷彿させる瞬間もあるんだけど、基本的には全然別物なので彼等のファンが聴いても気に入るとは限りません。あしからず。そういう意味ではカリフォルニアのバンド程バカ度は高くないけど、かといってニューヨーカー的な知的さ・クールさも殆ど感じられないという、いかんともしがたいロックバンド。きっとカテゴライズの好きな日本のメディアは、このバンドに対して「どういう方向で売ればいいのか‥‥」と手を焼いたんじゃないですかね。その結果、殆どメディアでの露出もなく、リリースから3年も経ってしまったという‥‥ああ勿体ない。

先に挙げた"Teenage Dirtbag"はホントいい曲で、パワーポップやアメリカ的なギターポップが好きな人には絶対に受け入れられるはず。歌詞の中にIRON MAIDENなんていうバンド名まで登場しますが、基本的にはこのバンド、雑食という印象を受けます。このアルバムでも1曲カバーを収録してるんですが、それがよりによって'80年代後半~'90年代初頭に活躍したイギリスのエレポップユニット、ERASUREのヒット曲"A Little Respect"なんですから。これってアメリカでもヒットしたっけか? ここ5~6年の間にパンク/ラウドロック勢がこういった'80年代のヒット曲を独自の手法でカバーすることで「'80年代再評価」みたいな小ブームが起こりましたが、それに便乗するにもこの選択って‥‥この辺のセンスが信用できるというか。このセンスも俺が気に入ったポイントのひとつですね。

基本的にギター・ベース・ドラムのトリオ編成なんですが、もうひとりのメンバーはプロデューサー的役割で、ステージやレコーディングではパーカッションやキーボード、ハーモニカ、サンプリングやプログラム等を手掛けているマルチプレイヤーだそう。この辺も他のパワーポップ/ギターポップ・バンドとはちょっと違う色を感じさせますよね。そしてサウンド的にもアコースティックギターやパーカッションが多用されていて、パワーコード一発!っていう感じのギターロックとは一線を画する、ねじれ/ひねくれ具合を強く感じさせます。

このバンドの歌詞ってのが、初期のWEEZERにも匹敵するような女々しさというか、非常にマイノリティー的な色合いを感じさせるものでして。ま、ハッキリ言っちゃえば「オタク」なわけですよ。例えば「鉛筆みたいなお前の首が折れて お前の鳩胸が凹んだなら 僕は勝つ」("Truffles")とか「まるで銅像になったような気がする 今夜はプロムナイト(卒業パーティ)なのに僕は孤独」("Teenage Dirtbag")、「僕の近くにいる時は気を付けた方がいいよ/僕はギャングスターになりたい」("Wannabe Gangstar")等々‥‥ぶっちゃけ『ヲタの脳内妄想』をそのまま歌にしてしまったような、共感できそうでちょっとキモい、ギリギリなラインなんですね。英語圏ではない日本人の我々からすれば、サウンドだけ聴いてれば非常にカッコイイんですが‥‥実際は‥‥ま、このアンバランスさがこの手のバンドの「味」だったりするわけですが。個人的にはこういうダメダメっぷり、大好きです。

そういえば彼等、昨年頭にこのアルバムのラストナンバー(ボーナストラックを除く)である"Wannabe Gangstar"を再レコーディングしてシングルカットしてるんですね。で、そのリ・レコーディング・バージョンは、度々歌詞にも登場したIRON MAIDENのシンガー、ブルース・ディッキンソンとのデュエット(?)になっているという(しかもPVにまで登場してるとのこと)。これ、まだ未聴なんですが‥‥一体このアコースティック色の強い曲を、どのような感じでブルースと歌っているのか‥‥彼等と同じような10代を過ごした元メタルファンの俺としても、非常に気になるところです。



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投稿: 2003 06 15 09:02 午後 [2000年の作品, Wheatus] | 固定リンク