WHITE LION『BIG GAME』(1989)
1989年8月に発表されたWHITE LIONの3rdアルバム。海外ではAtlantic Recordsからのリリースでしたが、ここ日本ではビクターと独自契約しており、日本盤も海外より1ヶ月早い7月上旬に発売されたようです。
前作『PRIDE』(1987年)からシングルカットした「Wait」(全米8位)を機に、「Tell Me」(同58位)、「When The Children Cry」(同3位)と次々ヒット曲が生まれ、アルバム自体も最高11位まで上昇、アメリカだけでも200万枚以上を売り上げ、一躍人気バンドの仲間入りを果たしたWHITE LION。続く本作はその出世作の延長線上にある作品作りを目指します。
プロデューサーには引き続きマイケル・ワグナー(ACCEPT、DOKKEN、SKID ROWなど)を迎え、キャッチーでポップなわかりやすいアメリカンハードロックとラジオでかかりやすいパワーバラード、さらにはひと昔前のヒット曲のカバーといった当時の“お約束”を凝縮した、良くも悪くも“売れ線”な1枚を完成させました。
シングルヒットした「Little Fighter」(全米52位)は完全に「Wait」や「Tell Me」の延長線上にあるポップメタルですし、アコギを軸にしたバラード「Broken Home」も明らかに「When The Children Cry」を意識したもの。それ以外にも豪快なアメリカンロック「Goin' Home Tonight」や適度なヘヴィさを持つミドルチューン「Dirty Woman」など、当時のWHITE LIONの魅力をベストな状態で曲に詰め込むことに成功しています。
かと思えば、VAN HALEN直系のハードブギー「Let's Get Crazy」みたいな攻めの1曲もあるし、その流れを汲むGOLDEN EARRINGの良カバー「Rader Love」(全米59位)もある。不思議なメロディ運びの「If My Mind Is Evil」にもバンドとしてのこだわりが感じられるし、今思えば次作への布石だった6分超えのプログレッシヴな大作「Cry For Freedom」など、実は“お約束”だけでは終わらせないという気概もしっかり備わっていたのです。当時はそこまで意識してなかったけど(苦笑)。
でも本作、『PRIDE』ほどのヒットにつながりませんでした。先に記したとおり、シングルカットされた楽曲もBillboardの上位入りを果たせず、アルバムも前作の11位には及ばない全米19位止まり(売り上げは50万枚程度)。
時代的にはまだHR/HMブームの最中でした。が、いわゆる「ポップでキャッチー」なものから「オーガニックな本格派」へと流行が移り始めていたのも要因だったのかな。BON JOVIがアコースティックギターを軸にアンプラグド的な手法を武器にし、GUNS N' ROSESのようなギミックなしで戦うバンドにファンの目が向き始め、そのガンズやSKID ROWのようにカリスマ性の強いフロントマンを擁するバンドがもてはやされる。確かにヴィト・ブラッタ(G)のテクニカルなプレイは圧倒的でしたが、いくらキャッチーな楽曲でもそれを歌うマイク・トランプ(Vo)の表現力が乏しければ……ねえ。
1曲1曲の完成度は高いものの、1枚通して聴くとあまり印象に残らない、そんな不思議なアルバム。これは続く意欲作『MANE ATTRACTION』(1991年)にも言えることなんですよね、残念ながら。
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