2017/11/18

WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2017)

1987年という年はHR/HMにとって象徴的な1年だったんだなと、あれから30年経った2017年に改めて感じさせられます。それは、今年に入って当時発表された名盤の30周年アニバーサリーエディションが次々とリリースされている事実からも伺えるはずです。MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS』DEF LEPPARD『HYSTERIA』……記念盤の発売こそなかったものの、GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』も1987年リリース。当ブログ右カラムのカテゴリから〈1987年の作品〉をクリックしてもらえば、ここで取り上げた名盤の数々を振り返ることができるので、ぜひ一度チェックしてみてください。

そんな1987年の名盤のひとつ、WHITESNAKE最大のヒット作である『WHITESNAKE』(ヨーロッパ圏では『1987』というタイトル)が先日、“30TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打って新規リマスタリング&未発表テイクを追加した2枚組仕様とCD4枚組+DVDからなるボックスセットで新規リリースされました。「あれ、このアルバムって昔も“○○TH ANNIVERSARY EDITION”発売されてなかったっけ?」とお気付きのあなた、正解。本作は2007年に“20TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打ったCD+DVDが発表済みで、その際にも音源のほうはリマスタリングされていました。

ところが今回、WHITESNAKEが新たにワーナーグループと契約したことで、その第1弾アイテムとしてこの30周年盤がリリースになったわけです。一体何枚買わせるんですか、同じアルバムを(苦笑)。

実は当ブログでも今年2月に本作および20周年盤について執筆しており、これまでに発表された曲順が異なるいくつものバージョン違いにも触れております。作品の素晴らしさについては、そちらを改めてご確認ください。

ちなみに気になる曲順ですが……各仕様ともCDのDISC 1は『WHITESNAKE』20周年盤から、スタジオていく部分のM-1〜M-11(「Still Of The Night」から「Don't Turn Away」まで)を収録。オリジナルのUS盤や日本盤の曲順が復活することなく、残念ながらあの違和感ありまくりの20周年盤と同じです。もうそこは諦めるしかないのかな。

ということで、今回のエントリでは2枚組CDおよびボックスセットで新たに聴ける音源について触れていきたいと思います。


【DISC 2(2枚組仕様およびボックスセット共通)】

「SNAKESKIN BOOTS [LIVE ON TOUR 1987-1988]」と題したこのディスクは、レーベルの説明によると「87年から88年にかけて行なわれたワールド・ツアーの未発表ライヴ音源を収録。デイヴィッド・カヴァデールに加え、エイドリアン・ヴァンデンバーグ、ヴィヴィアン・キャンベル、ルディ・サーゾ、トミー・アルドリッジ、ドン・エイリー(おそらく間違い)というラインナップでのパフォーマンスとなっている。全曲未発表音源」とのこと。当時のヘッドライナーツアーをほぼほぼまるっと音源化したものなんですが、すげえ聴き覚えがあるな……あれ、MCでデヴィッド・カヴァーデイルが「ウタッテ、トキオーッ!」って叫んでるよ……これ、1988年6月に実現したジャパンツアーの音源ですよね? 残念ながら僕、このツアーは生で観られなくて、後日TOKYO FMで深夜にオンエアされた代々木オリンピックプール(現在の国立代々木第一体育館)公演の音源をエアチェック(死語)して、カセットで聴きまくったんだよな。だからめっちゃ聴き覚えがあるわけですね。MCや音源と異なるアレンジやギターソロに違和感を覚えながらも、必死に追いつこうとした高2の夏……懐かしいですね。

この音源が当時オンエアされたものと同じかどうかは不明ですが、それにしては音が悪い……エアチェック音源のほうがもっとクリアで各パートの分離が良かった記憶があるんですが、それって時間が経ったことで美化されてるんですかね? なんにせよ、もっとクオリティの高いもの(音質や歌・演奏含め)は残されていなかったんでしょうか。こうやって当時の貴重な音源を今楽しめるのは嬉しいのですが、そこだけが残念でなりません。

ライブの最後に演奏されたZZ TOPのカバー「Tush」とかトミー・アルドリッジのドラムソロパートとかいろいろカットされているので完全盤ではないものの、まぁオマケとしては十分かなと。


【DISC 3(ボックスセットのみ)】

「87 EVOLUTIONS(DEMOS AND REHEARSALS)」と題されたこのディスクは、「『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』に収録されている楽曲のデモ音源やリハーサル音源など、それぞれの楽曲の原型とも言える貴重な音源ばかりを収録。全て未発表音源の貴重なテイクだ。こちらも全曲未発表音源」とのことで、デヴィッドとジョン・サイクス(G)がいかにしてあの名曲たちを完成させていったかが垣間見れる貴重な音源集。「Give Me All Your Love」が最初スローテンポのブルースロックだったり、「Is This Love」が今みたいなAORっぽくなかったり、「Straight For The Heart」もテンポがユルめでカッコ良かったり、「Don't Turn Away」が最初はもっとアップテンポだったりと、いろんな発見があるのは面白いですね。ただ、「Crying In The Rain」以外は歌とギターだけによるラフなものなので、過剰な期待は禁物ですが。


【ディスク4(ボックスセットのみ)】

「87 VERSIONS(2017 REMIX)」と銘打った本ディスクは、「今回の30周年記念作品の発売にあたり、新たにリミックスを行なったシングル曲4曲に加え、当時日本のみで発売されていたEP『87 VERSIONS』に収録されていた音源や、貴重なラジオ・ミックスなどを収録。2017リミックスは今回が初出の音源となる」ということで、ディスク1に未収録の“あの当時レコーディングされ公式リリースされた音源”を網羅したものとなっています。気になる最新リミックスですが、このアルバム特有のリバーブ感が取り除かれ、非常に生々しいミックスに生まれ変わっています。ただ、それによりドラムサウンドの厚みがなくなったり、ギターの音が細くなったりなどの弊害も。ボーカルも前に出すぎていて、メタルアルバムのミックスというよりは現代的なロック/ポップスのミックスという印象。あと、原曲にはなかった音やコーラスが追加されていたりと、印象もだいぶ異なるかな。「Still Of The Night」はあの仰々しさが薄れてしまったし、「Here I Go Again」もダイナミックさが激減したけど、逆に「Is This Love」は今回のバージョンのほうが気に入ったかな(フェードアウトせずに終わるのも、なお良し)。「Give Me All Your Love」は評価が分かれるところかもしれませんが、これはこれで好き。原曲とどっちが良いかと問われたら、原曲を選びますが(苦笑)。

そして、日本限定リリースだったミニアルバム『87 VERSIONS』の音源ですが、リマスタリングが施されているかは不明。つうか「Looking For Love」と「You're Gonna Break My Heart Again」に関してはディスク1とかぶり。そこは気を遣えよ、ちゃんと仕事しろよと力説したい。それ以外は、Geffen時代のベストアルバムで聴けた「Here I Go Again」ラジオミックスと、シングルのみで発表された「Give Me All Your Love」のリミックス(ヴィヴィアン・キャンベルのギターソロに差し替えられたバージョン)も収録されております。まあこのディスクの主役は最新リミックスの4曲ですね。どうせなら、アルバムまるまる1枚をこの音で聴いてみたいという気もしましたが(それはそれで、別モノとして楽しめるかもしれないので)。

というわけで、今回の最新バージョン。初めて本作に触れるビギナーは2枚組仕様で十分です。ボックスはマニア向け。とはいえ、そのマニアならいろいろ突っ込みたくなるんじゃないかと察しますが……。

以下、オマケ。今回の最新リマスタリング音源を使って、1987年発売当時の国内盤およびUS盤の曲順でプレイリストを作りました。「Crying In The Rain」から「Bad Boys」への曲間の違いはあるものの、やっぱりこのトラックリストに強い親しみがあるだけに、ぜひ現行のトラックリストと聴き比べてみることをオススメします。



▼WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
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投稿: 2017 11 18 12:00 午前 [1987年の作品, 2017年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2017/05/23

COVERDALE・PAGE『COVERDALE・PAGE』(1993)

1993年初春にリリースされた、元LED ZEPPELINのジミー・ペイジ、そして当時WHITESNAKEの活動を停止させていたデヴィッド・カヴァデールが結成したスーパーグループCOVERDALE・PAGEの、最初で最後のアルバム。大概のスーパーグループは大した成功を収めることもなく、短命で終わるわけですが、このバンドの場合もアルバム作ったはいいけどワールドツアーが行われることもなく、同年12月に日本でツアーが行われたのみというありさま。まぁそんなもんですよね。

大ヒット作『WHITESNAKE』(1987年)とそれをフォローアップする『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)で、それまでの中音域を軸とした歌い方からハイトーンでガナる歌唱法に変わり、喉を酷使しまくったカヴァデール。バンドメンバーともなんだかんだあり、結局1990年夏のツアー終了をもってWHITESNAKEの活動を一旦休止させます。

同じ頃、1988年に初の本格的ソロアルバム『OUTRIDER』のリリース、同年春に実施されたAtlantic Records 40周年コンサートでのジェイソン・ボーナム(ジョン・ボーナムの息子)を交えた編成でのLED ZEPPELIN復活な、そして1990年にZEPPELINのスタジオアルバムリマスタリング&ボックスセットのリリースなど、解散以降ようやくZEPPELINと本気で向き合い始めたペイジ。当初はロバート・プラントに再結成を持ちかけたようですが、過去を振り返るのが嫌いなプラントから拒否られ、「だったら、他に歌える奴と組むか」……と思ったかどうかは知りませんが、80年代後半に「ZEPクローン」のきっかけを作ったカヴァデールと組むことになるわけです。

「LED ZEPPELINとWHITESNAKEの邂逅」とも「LED ZEPPELINとDEEP PURPLE(だが3、4期)の邂逅」とも受け取れるこのCOVERDALE・PAGE。カヴァデールとペイジ、そして当時AEROSMITHなどで名を上げていたエンジニアのマイク・フレイザーが共同プロデュースを務め、レコーディングにはドラムにデニー・カーマッシ(元MONTROSE、HEART。この後、WHITESNAKEに加入)、ベースにヨルグ・カサス(80年代にグロリア・エステファンのMIAMI SOUND MACHINEにいた人みたいです)、キーボードにレスター・メンデス(サンタナはじめラテン系アーティストと関わりが深い、ソングライター兼キーボーディスト)が軸となって参加しています(一部楽曲で元THE BABYS、BAD ENGLISHのリッキー・フィリップスがベースを弾いていたり、MVで当時THUNDERに在籍していたマーク・スネイク・ラックハーストがベースを弾いていて、これを理由にバンドをクビになったなんて話もあります)。

さて、前置きが長くなりましたが……アルバム、長くないですか?(苦笑) 11曲で60分超え。当時はCD大全盛期突入期で、多くのロックバンドが60分超えの作品を続発していましたが(AEROSMITH『GET A GRIP』、BON JOVI『KEEP THE FAITH』など)、COVERDALE・PAGEの場合は1曲あたりのカロリーが高い! 3分台〜4分台前半の楽曲は2曲のみ、6分超えは4曲(ほぼ6分を含めて5曲)ですからね。これ、単にペイジの趣味なのか、カヴァデールがペイジと組めるからと頑張っちゃったのか。

ただ、それぞれの楽曲は「当時における現代的なハードロック」として考えればよくできていると思います。なにせペイジが本腰を入れてZEPPLEINの封印を解いて作った楽曲に、そこに当時バリバリハイトーン+加齢による枯れも加わり始めたカヴァデールの歌が乗るわけですから、悪いわけがない。

もちろん、それはフラットに見ればの話。これがLED ZEPPELIN、WHITESNAKEどちらか一方にでも偏ってしまったら、一気に駄作の烙印が押されてしまいそうな気がしますが。

基本的にはWHITESNAKEが『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』、『SLIP OF THE TONGUE』で試みた“ブルージーで仰々しいバンドサウンドにハイトーンボーカルが乗る”スタイルがベースにあり、そこにペイジならではのアイデアが加えられていくといった印象。だからZEPPELINファンからすれば不満が多そうですし、WHITESNAKEファンからすれば「直近2作と比べたらギターが……」と思うかもしれない。そう、だからどちらか一方に偏っちゃダメなんです。気を確かに。

サウンドやバンドアレンジ自体はペイジらしさも確かにあるし(特にアコースティックギターを多用したプレイやハーモニカを導入するところ)、ソロ作『OUTRIDER』がレイドバックしたブルースロックだったから正直ここまでモダンなことやるか!という驚きも多かった。けど、ペイジ自身はこれに近いことをプラントとやりたかったんだよね。中音域がセクシーなカヴァデールがさんざん「もうおなかいっぱい」と言ってたハイトーンを連発するのは、そのへんも大きく関係しているんじゃないかと思われます。

とはいえ、ちゃんと中音域を多用した楽曲も収められていて。バラードタイプの「Take Me For A Little While」や「Take A Look At Yourself」がまさにそれで、前者はZEPPELINタイプ、後者はWHITESNAKEタイプと受け取ることもできるかと(また比較しちゃった)。ペイジが得意とする中近東テキスト+フォーキーさが色濃く表れた(主に前半)「Easy Does It」もそっち寄りかと。もっと言えば「Shake My Tree」や「Pride And Joy」にもそういう要素がちゃんと含まれているよね。さすがに枯れすぎで最初聴いたときは度肝を抜かれたけど。

前半の「LEDクローン」的楽曲も決して悪くないんだけど、個人的には終盤の3曲……当時のカヴァデールがいかにもやりそうなヘヴィブルース(しかも本作最長の約8分)「Don't Leave Me This Way」、ライブのオープニングにふさわしくてひたすらカッコいい「Absolution Blues」、ZEPPELINやWHITESNAKEというよりCOVERDALE・PAGEとしての可能性を感じさせたラストトラック「Whisper A Prayer For The Dying」が良いんですよね。派手さ的には前半4曲(「Shake My Tree」「Waiting On You」「Take Me For A Little While」「Pride And Joy」)なんだろうけどね。

時代的にはグランジ全盛期、HR/HMはすでにオールドウェイブ的存在に追いやられていた中発表された本作は、全米5位、全英4位を記録。セールス的には全米50万枚止まりだったようです。WHITESNAKEの新作と考えればまずまずの成功と言えるし、LED ZEPPELIN関連作と捉えれば低調と言わざるをえない。この微妙な結果がプロジェクトの寿命をより縮めた、とも言えますが……ただ、この“実験”があったからこそ、ペイジは翌年以降にプラントと組んでアルバム作ったりライブをしたりできたわけで、カヴァデールもWHITESNAKE再編へと動きだすことができたわけです。そういう意味においては、スーパーグループではあったけどそれぞれにとって過渡期だった……と言ったら失礼でしょうか。



▼COVERDALE・PAGE『COVERDALE・PAGE』
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投稿: 2017 05 23 12:00 午前 [1993年の作品, Coverdale・Page, Jimmy Page, Led Zeppelin, Whitesnake] | 固定リンク

2017/03/30

WHITESNAKE『STARKERS IN TOKYO』(1997)

1997年に約8年ぶりとなるスタジオアルバム『RESTLESS HEART』をリリースしたWHITESNAKE。1990年の活動休止、1994年のライブ活動再開を経て、デヴィッド・カヴァーデイル(Vo)はエイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)と本腰を入れて新作制作に取り掛かるものの、当初はデヴィッドのソロアルバムとして発売されるはずだった『RESTLESS HEART』が、レコード会社の要請によりWHITESNAKE名義で発表されることに。それ以前の数作と比べれば非常に地味で、HR/HMというよりはリズム&ブルースやソウルの色合いが強い作風だったことで従来のファンからは酷評する声が上がったりもしました。

本作のプロモーションで来日したデヴィッドとエイドリアンは、日本のファンのために限定100名にも満たない少人数のファン&関係者を前に、過去に経験のないアンプラグドライブを実施します。それが、本作『STARKERS IN TOKYO』に収録されている音源です。

アルバムには10曲が収録されていますが、当日13曲を演奏。しかし即興で演奏した「Only My Soul」、観客からのリクエストで演奏した「Fool For Your Loving」と「Burning Heart」の3曲は完奏されていないことから、アルバム収録は見送られたようです。また、曲順も実際のセットリストとは異なり、『RESTLESS HEART』からの新曲と過去の代表曲がバランス良く散るように並び替えられています。

金切り声を張り上げて歌わないデヴィッド、アコースティックギター1本で自身の楽曲、過去の名曲をリアレンジして演奏するエイドリアン。2人にとってすべてが初めての経験かもしれませんが、これが非常に素晴らしい出来で感心してしまいます。いわゆる“アンプラグド”ブームからはかなり遅れてのトライとなりますが、1曲目の「Sailing Ships」からして「腕の不調で『SLIP OF THE TONGUE』のレコーディングに参加できなかった作曲者のエイドリアンが、本来こうしたかったというアレンジで表現したかのような」ブルージーさ漂うプレイと、デヴィッドの「どこか70年代のWHITESNAKEを思い出させるトーンで歌う」パフォーマンスは圧巻。落ち着いたトーンの「The Deeper The Love」も悪くないし、装飾を取り払ったことで“実は単なるブルースだった”ことが明白となった「Give Me All Your Love」、バンドアレンジではAOR色が強かったものの、こちらもシンプルなブルースに生れ変わった「Is This Love」など、過去の楽曲と新鮮な気持ちで接することができるのは本当に大きな収穫です。

もちろん、「Too Many Tears」「Can't Go On」「Don't Fade Away」といった『RESTLESS HEART』からの楽曲も、よりシンプルになったことで芯にあるメロディの良さを再確認することができたし、落ち着いたトーンで歌われた「Love Ain't No Stranger」も悪くないなと。そして、本作最大の収穫は、DEEP PURPLE時代の名曲「Soldier Of Fortune」を、大人になったデヴィッドの歌声で聴くことができたこと。歌詞の意味・内容を踏まえてから聴き返すと、改めてこの曲をこのタイミングに歌うことの重要さに気づかされるのではないでしょうか。ホント、泣けるよこのアレンジ。

40分程度の、今となっては決して長くはないライブアルバムですが、リラックスしながら楽しむには十分な1枚かなと。2000年代に入ってからライブ盤は結構な数発表されてますが、どれも“HR/HMバンドWHITESNAKE”を表現したものなので、“ブルースバンドWHITESNAKE”をどっぷりと楽しめる本作は非常に貴重ではないでしょうか。

ちなみに本作、当初は1997年9月に日本限定でリリースされたのですが、翌1998年には一部の国でリリースされたようです。そうだよね、勿体ないものの、こんなにいい作品が日本だけで埋もれてしまうのは。



▼WHITESNAKE『STARKERS IN TOKYO』
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投稿: 2017 03 30 12:00 午前 [1997年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2017/03/02

WHITESNAKE『SLIDE IT IN』(1984)

WHITESNAKE通算6枚目のスタジオアルバム『SLIDE IT IN』。以前1987年発売の大ヒット作『WHITESNAKE』には曲順や収録内容が異なる仕様が複数存在すると紹介しましたが(こちら)、実はこの『SLIDE IT IN』にも複数の仕様があるのです。それもこれも、この時期にアメリカでGeffen Recordsと契約したがために、US向けにテコ入れをされてしまったのが原因なんですけどね。

さて、今回も多少長くなってしまうと思いますが、各仕様について説明していきます。

まず、この時期の編成について。デヴィッド・カヴァーデイル(Vo)は前作『SAINTS & SINNERS』(1982年)のレコーディングに参加したバーニー・マースデン(G)、ニール・マーレイ(B)、イアン・ペイス(Dr)を切り、新たにメル・ギャレー(G)、コリン・ホッジキンソン(B)、コージー・パウエル(Dr)を迎えます。ここに初期から参加するミッキー・ムーディ(G)、ジョン・ロード(Key)を加えた6人で『SLIDE IT IN』を制作。楽曲はメル・ギャレーが中心となり制作されたことから、前作までのルーズな作風から起承転結のしっかりしたドラマチックな作風へとシフトチェンジ。ドラムもイアン・ペイスからコージー・パウエルに変わったことで、よりタイトで締まったサウンドに進化しています。


①UK&JPバージョン

1984年初頭にリリースされた最初のバージョンがこちら。当時イギリスやヨーロッパではEMIから、ここ日本では新たにCBSソニーからリリースされています。これは今作からアメリカではGeffenからリリースされることに伴う移籍だったのかなと(当時Geffenでリリースされた作品は、ここ日本ではソニーから発表されました)。

収録内容はこちら。


01. Gambler
02. Slide It In
03. Standing In The Shadow
04. Give Me More Time
05. Love Ain't No Stranger
06. Slow An' Easy
07. Spit It Out
08. All Or Nothing
09. Hungry For Love
10. Guilty Of Love


今も昔もこの曲順が当たり前で、こちらに慣れ親しんだ日本のHR/HMリスナーは多いはずです。


②USバージョン

しかし、ヨーロッパや日本向けに制作した本作。アメリカのスタッフにはいまいちウケがよろしくなくて、あれこれ修正しろといちゃもんをつけられます。そして同じ頃、結成時からのメンバーであるミッキー・ムーディ、そしてコリン・ホッジキンソンが相次いで脱退。そこに新たに加わったのが、当時THIN LIZZYが解散したばかりのジョン・サイクス(G)でした。さらにベースにはニール・マーレイが出戻り。これにより、ジョンのギタープレイとニールによるベース差し替え、さらにUS向けにリミックス&再構築したのが、1984年4月に現地でリリースされたUSバージョンです。

USバージョンの曲順は以下のとおり。


01. Slide It In
02. Slow An' Easy
03. Love Ain't No Stranger
04. All Or Nothing
05. Gambler
06. Guilty Of Love
07. Hungry For Love
08. Give Me More Time
09. Spit It Out
10. Standing In The Shadow


これ、どうよ? 正直UKバージョンに慣れた耳でこの曲順のアルバムを聴くと、非常に違和感を感じるわけです。しかもジョン・サイクスによるピロピロしたギターソロは加わるわ、音も若干硬めにミックスし直されてるわ、キーボード類が後ろに引っ込んでリズムが前に出てるわで本当に違和感しかない。アメリカ人の耳はこんなにバカなのか……と当時本気で思ったものです。

まぁ「Slide It In」から始めるのはよしとしましょう。しかし、それに続くのが「Slow An' Easy」「Love Ain't No Stranger」とか、「Gambler」が5曲目とか、「Guilty Of Love」じゃなくて「Standing In The Shadow」で終わる構成とか、本当にありえない。USリミックス自体は否定しませんが、この曲順だけは『WHITESNAKE』のそれと比較しても、30年以上経った今でも馴染めません。


③『SLIDE IT IN (AMERICAN REMIX VERSION)』

ここ日本ではUSバージョンそのままがリリースされることはありませんでしたが、代わりに『SLIDE IT IN (AMERICAN REMIX VERSION)』と題したアナログ盤が(のちにCDも)リリースされます。

収録内容はこちら。


01. Slide It In
02. (Comment)
03. Love Ain't No Stranger
04. (Comment)
05. Guilty Of Love
06. Slow An' Easy
07. (Comment)
08. Gambler
09. (Comment)
10. Need Your Love So Bad


M-2、4、7、9はそのタイトルどおり、デヴィッドからのメッセージ。10トラック収録されているものの、実質6曲から構成されたミニアルバムです(そのぶん、収録時間も30分に満たない)。この6曲中5曲(M-1、3、5、6、8)はすべて②のUSバージョン。目玉となるのがM-10で、FLEETWOOD MACのカバーで知られるブルースナンバーです。この曲がとにかく最高に渋くてカッコいいったらありゃしない。すでにUS盤を持っていたにもかかわらず、この1曲のためだけに本作を購入したのを今でも覚えています。へっ、メッセージはどうだったかって? そんなのよく覚えてませんってば(いつも飛ばしてたし)。


④25TH ANNIVERSARY EDITION

『SLIDE IT IN』の発売25周年を記念して、2009年6月にEMIからヨーロッパ向けにリリースされたのが本作。CDとDVDの2枚組仕様で、こちらの内容も非常に厄介なもの。各ディスクの収録内容は下記のとおり。


<CD>
01. Gambler (US Mix)
02. Slide It In (US Mix)
03. Slow An' Easy (US Mix)
04. Love Ain't No Stranger (US Mix)
05. Give Me More Time (US Mix)
06. Standing In The Shadow (US Mix)
07. Hungry For Love (US Mix)
08. All Or Nothing (US Mix)
09. Spit It Out (US Mix)
10. Guilty Of Love (US Mix)
11. Need Your Love So Bad
12. Gambler (UK Mix)
13. Slide It In (UK Mix)
14. Standing In The Shadow (UK Mix)
15. Give Me More Time (UK Mix)
16. Slow An' Easy (UK Mix)
17. Spit It Out (UK Mix)
18. All Or Nothing (UK Mix)
19. Guilty Of Love (UK Mix)
20. Love Ain't No Stranger (Live from『STARKERS IN TOKYO』)
<DVD>
01. Guilty Of Love (Music Video)
02. Slow An' Easy (Music Video)
03. Love Ain't No Stranger (Music Video)
04. Guilty Of Love (Live at Donington 1983)
05. Love Ain't No Stranger (Live from『STARKERS IN TOKYO』)
06. Give Me More Time (BBC TV's Top Of The Pops 19/1/84)
07. Love Ain't No Stranger (Live from『LIVE… IN THE STILL OF THE NIGHT』)


もうここまでくると、訳がわかりません。単なる寄せ集めですよね。UKバージョンとUSバージョンを比較しようにも、UKバージョンが不完全。これは無理やりCD1枚に収めようとしたことが敗因。それなら、アナログでしか手に入らない「Guilty Of Love」と「Gambler」のシングルバージョン(アルバムを手がけたマーティン・バーチではなく、エディ・クレイマーがプロデュースしたバージョン)も入れてほしかったなぁ(前者はDVD収録のMVにてその音を耳にすることができます)。本作に関してはMVや現在入手困難な『STARKERS IN TOKYO』の映像、さらには『TOP OF THE POPS』での映像が観られるという意味で、非常に資料価値の高い作品と言えます。まぁ音源に関しては……一応リマスタリングされてるようですが、そのへんの聴き比べはマニアの皆さんにお任せします。


なお、ジョン・サイクス&ニール・マーレイ加入後のラインナップですが、結局メル・ギャレーもバンドを脱退し、しばらくはデヴィッド・カヴァーデイル、ジョン・サイクス、ニール・マーレイ、コージー・パウエル、ジョン・ロードのシングルギター体制で活動。さらにDEEP PURPLE再結成にあわせてジョン・ロードまで脱退し、以降はサポートキーボーディストを迎えてライブを続けることになります。で、その後はご存知のとおり、コージーもバンドを脱退。デヴィッドはジョン・サイクスとともにバンドの立て直し、およびアメリカで天下を獲るためのアルバム作りに取りかかるのでした(以降の流れは『WHITESNAKE』レビューをご確認を)。



▼WHITESNAKE『SLIDE IT IN』
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投稿: 2017 03 02 12:00 午前 [1984年の作品, Cozy Powell, Whitesnake] | 固定リンク

2017/02/26

WHITESNAKE『THE PURPLE ALBUM』(2015)

2008年に『GOOD TO BE BAD』、2011年に『FOREVERMORE』というオリジナルアルバムを発表し、それぞれ英米で(80年代には及ばないものの)まずまずの成績を残してきたWHITESNAKE。4年ぶりの新作として発表されたのが、デヴィッド・カヴァーデイル(Vo)がDEEP PURPLE在籍時に制作した3枚のアルバム、『BURN』(1974年)、『STORMBRINGER』(1974年)、『COME TASTE THE BAND』(1975年)からセレクトされた楽曲をセルフカバーした通算12枚目のスタジオアルバム『THE PURPLE ALBUM』です。

思えばWHITESNAKEは90年代にも「Soldier Of Fortune」(『STORMBRINGER』収録)をカバーしていましたし、もっとさかのぼれば70年代に「Mistreated」(『BURN』収録)もピックアップしていましたしね。ただ、前者に関しては非常にレアな機会に歌われていただけだし、後者は持ち曲が少ない時期にライブで披露していたという理由があったわけで、そこに変な意味合いはなかったはず。ところが、2000年代に入ってからの再結成では「Burn」からライブを始めたり、その「Burn」と「Stormbringer」をメドレー形式で演奏したりと急にパープル曲が増え始めた。当時はラッキーと思いつつ、「なぜ今パープルよ?」という複雑な心境になったものでした。

そんなですから、このアルバムを制作すると決まったときは、やはりモヤモヤした気持ちに。最近ライブでカヴァーデイルが声出なくなってきてるからチューニング下げまくりなところに、一番若々しかった時代の曲をセルフカバーって……はい、不安しかありませんでした。しかも、本作制作前には2000年代のWHITESNAKEにとって重要な存在だったダグ・アルドリッジ(G)が脱退。替わりに加入したのがNIGHT RANGERのジョエル・ホークストラだっていうんだから……ジョエルにブルースのブの字も感じたいことないし、どちらかというともう1人のギタリスト、レブ・ビーチと同系統だと思っていたので、不安以外のなにものでもありませんでしたよ。

いざ完成した『THE PURPLE ALBUM』は、予想通りチューニング下げまくり。ただ、「Stormbringer」や「Love Child」「The Gypsy」みたいなヘヴィで引きずるようなミドルチューンにはローチューニングは合ってるかな。とはいえ、「Burn」はやっぱり原曲のキーあってこそだという思いが強いし、「Sail Away」のアレンジも凡庸。名曲中の名曲「Soldier Of Fortune」もわざわざチューニング下げなくても歌えたんじゃないかと思うんですが……原曲への思いが強いだけに、ちょっと残念でなりません。

曲によっては新たな解釈が加えられており、“あくまでWHITESNAKEのアルバムですよ”との主張が感じられる。もちろんそれは正しいんだけど、だったらそのテイストの新曲を作れなかったのかなと。オリジナル曲半分、お遊びで新解釈のカバー半分みたいな作品作りもできたはずなのに、ただ曲数が多くて長いアルバムで終わっちゃってる気がします。そして、やっぱりデヴィッドの衰えだけが目立ってしまうという……だからこそ新曲で勝負してほしかったな。

かなりネガティブなことばかり書いてしまいましたが、すべてがすべて悪いというわけではないですよ。上に挙げたようなミドルヘヴィナンバーは原曲に匹敵するカッコよさが感じられたし、なにより個人的には久しぶりに聴いた『COME TASTE THE BAND』からの楽曲がこんなに良かったっけ?という新たな発見もありましたし。このアルバム、20代前半に聴いたっきりだったので、これを機に改めて聴き直そうと思ったくらいですから。そこに気づかせてくれたという点においては、僕にとっても意味のあるアルバムだったのかもしれません。聴く頻度は非常に低いですけどね(苦笑)。

最後に。本作は2012年に亡くなったDEEP PURPLE、WHITESNAKEのキーボーディスト、ジョン・ロードに捧げられた作品とのこと。本当にそうだとしたら、なおさらオリジナル曲を届けてほしかったな……シンガーとしての寿命も(普通に考えたら)この先決して長くはないだけに……という、好きすぎるからこその苦言でした。



▼WHITESNAKE『THE PURPLE ALBUM』
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投稿: 2017 02 26 12:00 午前 [2015年の作品, Deep Purple, Whitesnake] | 固定リンク

2017/02/04

BLUE MURDER『BLUE MURDER』(1989)

さて、昨日の続きを。ジョン・サイクス(G)はWHITESNAKEにて初めて曲作りおよびレコーディングで貢献したアルバム『WHITESNAKE』を1987年に完成させますが、レコーディング中からたびたびデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)と衝突していたこともあり、アルバム発売前にバンドを脱退。ライブでこれらの楽曲を弾くことが一度もなかったわけです。その『WHITESNAKE』はアメリカのみで800万枚ものセールスを記録。印税は懐に入ったものの、表向きはバンドの成功を味わうことなく、ひたすらデヴィッドに対する憎悪の思いのみが加速していったのでした(これ、憶測ですよ。誤解なきよう)。

そんなジョン・サイクスは“打倒WHITESNAKE”のもとにコージー・パウエル(Dr)やフィル・スーザン(B)、レイ・ギラン(Vo)などとBLUE MURDERと命名したバンドを結成。しかし二転三転して、最終的にカーマイン・アピス(Dr)、トニー・フランクリン(B)、そしてジョンがボーカルも兼任するトリオ編成となり、本作『BLUE MURDER』を完成させます。

プロデューサーはAEROSMITH『PERMANENT VACATION』、BON JOVI『NEW JERSEY』などで名を馳せたボブ・ロック。あの鋭いギターサウンドとドラムのビッグサウンドがここでも堪能できるだけでなく、トニー・フランクリンという名うてのフレットレスベースプレイヤーが加わったことによる不思議なグルーヴ感を楽しむことができます。

楽曲自体は『WHITESNAKE』アルバムの延長線上にあると言っていいでしょう。ただ、デヴィッドのブルーステイストが加わらないことで非常にモダンなテイストが前面に打ち出されており、単なる姉妹作で終わらないオリジナリティも確立されています。それは1曲目「Riot」から明白で、「Still Of The Night」のアレンジが下地にある「Sex Child」、WHITESNAKEでは表現しきれなかったドラマチックさを追求した「Valley Of The Kings」、アコースティックを基調としたアーシーなテイストから壮大なアレンジへと変化していく「Jelly Roll」など、序盤から聴きどころ満載。もちろん「Out Of Love」や「Black-Hearted Woman」など、『WHITESNAKE』をバージョンアップされた楽曲も含まれています。

カーマイン・アピス&トニー・フランクリンという鉄壁のリズム隊とのアンサンブルも最高で、かつジョンのギターもこれでもかとフィーチャーされている。けれど単なるギター・オリエンテッド・アルバムでは終わっておらず、メロディのポピュラリティもしっかり維持しつつ、ジョンのボーカルもしっかり主張している。これがデビューアルバムか!?と驚きが隠せない完成度持つ、ギタリスト必聴の1枚です。

にしても、この妙にセクシーさを前面に打ち出したMVもWHITESNAKEをなぞっていて、バチバチ感が見え隠れします。WHITESNAKEと同じGeffen Recordsからのリリースというのも大きいんですけどね。

残念ながら本作は全米69位と大成功には程遠い結果しか残せず、この編成は短命に終わります。また、こんなに『WHITESNAKE』の継承的アルバムを作っておきながら、本作は1986年に亡くなったフィル・ライノット(THIN LIZZY)に捧げられています。そのあたりにもジョンの歪んだ対抗心みたいなものが感じられて、意地らしいなと思ってしまいます。



▼BLUE MURDER『BLUE MURDER』
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投稿: 2017 02 04 12:00 午前 [1989年の作品, Blue Murder, Whitesnake] | 固定リンク

2017/02/03

WHITESNAKE『WHITESNAKE (or“1987”)』(1987)

まず最初に。今回、かなり長いです。それだけ語ることが多い作品であり、しっかり語らなくてはならない1枚だと思っているので、ぜひ時間があるときに読んでいただきたいと思います。


1987年春にリリースされたWHITESNAKEの通算7枚目のスタジオフルアルバムにして、同年を代表するHR/HMの1枚。レコーディングメンバーはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)、ジョン・サイクス(G)、ニール・マーレイ(B)、エインズレー・ダンバー(Dr)の4人。「Here I Go Again」のみギターソロでエイドリアン・ヴァンデンバーグが参加しています。ちなみに本作を携えたワールドツアーではデヴィッド以外のメンバーを総入れ替えし、エイドリアン、DIOを脱退したヴィヴィアン・キャンベル(G)、オジー・オズボーンのリズム隊でおなじみのルディ・サーゾ(B)&トミー・アルドリッジ(Dr)の5人編成でライブが行われました。

本作は全米2位という最高位を獲得し、1987年の年間アルバムチャートで16位、翌1988年の年間チャートでも19位にランクインし、現在までにアメリカのみで800万枚以上ものセールスを記録。本作からのシングルも「Here I Go Again」が全米1位、「Is This Love」が全米2位、「Give Me All Your Love」が全米48位、「Still Of The Night」が全米79位、特に「Here I Go Again」は1987年のビルボード年間チャートで7位に輝く大ヒット作となりました。1987年がいかにHR/HMの年だったかが伺える事象かと思います。

とはいえこのアルバム、当時は古くからのWHITESNAKEファンにとってはある種の踏み絵というか、なんとも受け入れがたいアルバムだったと記憶しています。だって前作『SLIDE IT IN』(1984年)までギリギリ保っていたブルースベースのブリティッシュハードロック色が払拭され、完全にアメリカナイズされたサウンドと曲調になっているんですから。本作に続く1989年の8thアルバム『SLIP OF THE TONGUE』なんて、さらにもってのほかだと思いますよ。

さて。実は本作には大まかに3つのバージョンが存在していることはご存知でしょうか。そもそも1987年のリリース時点で2つのバージョンが存在し、2000年代に入って新たにもう1バージョン増えるという、名盤のくせに異色の存在なのです。

まず、よく知られた日本盤およびアメリカ盤の収録内容。


01. Crying In The Rain
02. Bad Boys
03. Still Of The Night
04. Here I Go Again [ここまでがアナログA面]
05. Give Me All Your Love
06. Is This Love
07. Children Of The Night
08. Straight For The Heart
09. Don't Turn Away


この曲順に慣れ親しんだという現在40代以上のメタルファン、多いんじゃないでしょうか。ちなみに『サーペンス・アルバス(白蛇の紋章)』の邦題でおなじみの本作、日本盤は長きにわたり廃盤状態。初盤は当時CBSソニーからリリースされていましたが、本作のUS盤リリース元のGeffen Recordsの配給が現在のユニバーサルミュージックに移ったあたりから、中古市場でしか見かけない状況です。2000年代半ばに限定仕様の紙ジャケ盤が一、二度再発されましたが、通常のプラケース盤は再発なし。非常に残念でなりません。

で、本作のイギリスやヨーロッパでのリリース元は、それ以前の作品同様EMI Records。ヨーロッパでは過去にデヴィッドのソロ名義で『WHITESNAKE』というタイトルのアルバムが出ていることから、『1987』という別名で発売されました。


01. Still Of The Night
02. Bad Boys
03. Give Me All Your Love
04. Looking For Love [ここまでがアナログA面]
05. Crying In The Rain
06. Is This Love
07. Straight For The Heart
08. Don't Turn Away
09. Children Of The Night
10. Here I Go Again [CDのみ収録]
11. You're Gonna Break My Heart Again [CDのみ収録]


日本盤およびUS盤と曲順が全然違いますよね。正直曲の流れはヨーロッパ盤のほうがいいと思いますが、ヘヴィブルースに生まれ変わった「Crying In The Rain」から始まり「Don't Turn Away」で感動的に終わる流れに慣れてしまった耳には最初は違和感があったのも正直なところ。うん、双方捨てがたい。

「Crying In The Rain」と「Here I Go Again」はヨーロッパでは既発曲(2曲とも1982年のアルバム『SAINTS & SINNERS』収録)だけどUSで未発表だったのでリメイクされたという経緯があり、特に「Here I Go Again」はイギリスでシングルカット済みということもあってアナログ盤には未収録。代わりにヘヴィバラード「Looking For Love」が収められています。さらにCDのみに収録の「You're Gonna Break My Heart Again」、これがめちゃくちゃカッコいい。正直「Looking For Love」と「You're Gonna Break My Heart Again」のためだけにヨーロッパ盤を手に入れるのもアリだと思います(ちなみにこの2曲、日本では企画盤『1987 VERSION』に収録。ダン・ハフがギターソロを弾くアレンジが微妙な「Here I Go Again」なども入っているので、中古盤で見かけたら手にしてみるのもいいかと)。

そして最後が、2007年に発売された「20th Anniversary Edition」。こちらはヨーロッパ盤CDを基準に、曲順が再考されています。


01. Still Of The Night
02. Give Me All Your Love
03. Bad Boys
04. Is This Love
05. Here I Go Again
06. Straight For The Heart
07. Looking For Love
08. Children Of The Night
09. You're Gonna Break My Heart Again
10. Crying In The Rain
11. Don't Turn Away
12. Give Me All Your Love (Live)
13. Is This Love (Live)
14. Here I Go Again (Live)
15. Still Of The Night (Live)


M-12〜15は2006年発売のライブアルバム『LIVE: IN THE SHADOW OF THE BLUES』のテイク。本作のDVD付き仕様のみに収められていて、CD単品仕様にはこのライブテイクは未収録のようです。

日本盤、ヨーロッパ盤それぞれの曲順に耳が慣れた後にこのバージョンを聴くと、微妙な気持ちになります。なぜこの曲順に直したんでしょうね、理解に苦しみます。どこかライブの流れに近いものを感じるので、そういう意味合いもあるのかしら……。


あ、肝心の中身についても触れておかないと。

THIN LIZZY末期にギタリストとして知名度を上げ、1984年の『SLIDE IT IN』リリース後にWHITESNAKEに加入したジョン・サイクス。彼は『SLIDE IT IN』をUSリリースする際にギターソロを追加録音していますが、ソングライティングから本格的なレコーディングまで含めると、この『WHITESNAKE』が初の全面参加作品なわけです。しかもほとんどの曲をデヴィッドとジョンが書いていること、いや、おそらくメインはジョンが書いているんでしょう(脱退後にそう力説してましたし、自身のライブでもこのアルバムの曲をセルフカバーしてましたしね)。それが『SLIDE IT IN』以前との大きな違いであり、この変化の原因(古くからのファンには元凶なのかな)であるわけです。

実際、HR/HMとしては非常に魅力的な楽曲ばかりですし、ギターリフ、ギターソロどれを取っても素晴らしい。それに応えるデヴィッドのボーカルも非常に艶やかでアグレッシヴ。「Still Of The Night」や「Crying In The Rain」でのロバート・プラントばりのシャウト、「Is This Love」や「Don't Turn Away」で魅せる渋みと哀愁、どれも素敵としか言いようがないわけです。隙がないアルバムとはまさにこのこと。この春でリリースから30年経ちますが、今聴いてもまったく色褪せない、本当に最高のHR/HMアルバムだと思います。

残念なのは、ジョンがこのアルバムの完成後にバンドを脱退したため、WHITESNAKEではこれらの楽曲をライブで弾いていないこと。ヴィヴィアンやエイドリアンのギターも悪くないですが、やはり絶頂期を迎えたジョン・サイクスという才能をWHITESNAKEとして観たかったものです。

ジョンの脱退後に発表されたこのアルバムが記録的大ヒット作となったことで、彼はデヴィッドへの復讐に執念を燃やすがごとく、のちに『WHITESNAKE』アルバムの義兄弟的バンド・BLUE MURDERを結成することになるのですが、それについてはまた明日。



▼WHITESNAKE『WHITESNAKE (or“1987”)』
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投稿: 2017 02 03 12:00 午前 [1987年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2006/05/09

WHITESNAKE『LIVE : IN THE STILL OF THE NIGHT』(2006)

 間もなく来日を果たすWHITESNAKEの、2004年10月にロンドンで行われたライヴの模様を収録したDVD。海外では今年の2月にリリースされていましたが、日本では5月の来日公演に合わせて4月末の発売に。もともと昨年から出る出ると言われていたDVDなだけに、やっと出た!という印象が強いかも。

 このDVD、俺はUS盤を2月に入手していち早く楽しませてもらっていたんですが(但しリージョン1なのでご注意を)、そもそもWHITESNAKE自体約10数年振りに観たもので、いろんな意味でショックを受けましたね。いや、いい意味でだよ? 声が出なくなって来てるのは、すでに10数年前の時点で判っていたので今更驚かないし、逆に「ああ、このくらいは出るんだ」と安心したりもしたのね、今回のDVDを観て。

 ダグやレブといったレコーディングには参加してないギタリストのプレイも、ちゃんとオリジナルの良さを抑えつつ、それでいて自分らしさをしっかり表現してるあたりは流石というか。けど、古いファンからは評価が分かれそうだよね。「ギターのF1グランプリ」云々な表現で速弾きギタリストを拒絶した男が、またこんなギタリストを迎え入れてるんだから。でも、今後新作を出すとして、それにダグやレブといった曲も書けるギタリストが参加するんだったら、それはそれで楽しみだなーと。素直にそう思えます。

 選曲は'80年代の、所謂アメリカでのブレイク時の曲を中心に、懐かしい初期のヒット曲(イギリス向け)や、DEEP PURPLE時代の "Burn" や "Stormbringer" まで飛び出すサービスぶり。恐らく今度の来日公演もこれに近い選曲になるんだろうね。"Take Me With You" みたいな1stアルバムの曲までやってるんだもん、ちょっと観ておきたいよね。ま、その前にこのDVDだけどね。

 あ、あとこれを観ちゃうと、マルコ・メンドーザ脱退はちょっと惜しいなぁって気が。"Burn" でのグレン・ヒューズのパートを彼が歌ってたんだけど、新しいベーシストはそれをこなせるんでしょうか。不安です。

 ちなみに。日本初回盤にはこのDVD収録曲から10曲が収録されたCDが付いてきます。US盤にも付いてたけど、何やら世界中でトータル50万枚にしか付かないそうなので、お早めに。



▼WHITESNAKE「LIVE : IN THE STILL OF THE NIGHT」DVD(amazon:US盤日本初回盤日本盤

投稿: 2006 05 09 12:10 午前 [2006年の作品, Whitesnake] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/09/25

とみぃ洋楽100番勝負(37)

●第37回:「Still Of The Night」  WHITESNAKE ('87)

 その時代その時代で好きなギタリストは沢山いるわけですよ。けど、オールタイム‥‥ガキの頃から現在に至るまでずっと好きなギタリストとなると‥‥

 エディ・ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・ヴァイ、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、ゲイリー・ムーア、ロニー・ウッド、ブラッド・ウィットフォード(AEROSMITH)、アンディ・マッコイ(HANOI ROCKS)、イジー・ストラドリン(元GUNS N'ROSES)、マルコム・ヤング(AC/DC)‥‥

 多かった。もっと少ないと思ったんだけど。

 で、今回紹介するWHITESNAKEに一時期参加していたジョン・サイクスもそのひとり。いや、彼の場合は正直‥‥最近の動向を全く知らないので‥‥こないだBLUE MURDER名義で来日してたけど、あれはなぁ‥‥

 この「WHITESNAKE」という'87年のアルバムが大成功した裏側には、勿論デヴィッド・カヴァーデイルのボーカルの凄みとか、似非ZEP的なアレンジが流行だったとか、そりゃHM/HRがブームだったからでしょ、とかいろいろ理由が考えられるんだけど、やはり一番最初にくるのはそのものズバリ、曲の良さだと。過去のリアレンジ・バージョンである "Crying In The Rain" や "Here I Go Again" はもとより、それ以外の楽曲を手掛けたジョン・サイクスの才能たるや‥‥

 ただの "Black Dog"(ZEPの名曲)のパクリに終わってないのは、ジョン&デヴィッドのソングライティングの賜物であるのと同時に、奇跡的なメンバー‥‥エインズレー・ダンバー、ニール・マーレイ、ドン・エイリーといった凄腕達によって制作され、時代にフィットしたモダンなアレンジ、適度にソフトな要素も要している。つまり成功しないわけない、と。

 この7分近くあるヘヴィナンバーはシングルヒットにまでは到らなかったけど、これをファーストシングル/最初のPVに選んだのは大正解だったと思うよ。エディットバージョン作らないで、ちゃんとフルコーラス流れるPVといい、ビデオ用の豪華メンバー(ヴィヴィアン・キャンペル、エイドリアン・ヴァンデンヴァーグ、ルディ・サーゾ、トミー・アルドリッヂというHM/HRファンがヨダレをダラダラ流しそうなメンツ。結局これがツアーメンバーに)といい‥‥インパクト絶大よ。

 もし俺が「名盤100選」みたいなのをやったら、絶対に選ぶねこれ。ま、実際ここでも選んでるわけですが。



▼WHITESNAKE「WHITESNAKE (1987)」(amazon

投稿: 2004 09 25 12:00 午前 [1987年の作品, Whitesnake, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック