2017/06/12

WINGER『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990)

1990年夏に発表された、WINGERの2ndアルバム。デビュー作『WINGER』(1988年)が100万枚を超えるヒット作となったこともあり、本作でも引き続きボー・ヒルをプロデューサーに迎え、前作の延長線上にあるアルバムを制作しようとしました。

実際、完成した『IN THE HEART OF THE YOUNG』は前作をよりソリッドにしたサウンドで、楽曲も各メンバーのテクニカルなプレイをフィーチャーした玄人好みの内容でした。しかし、これを良しとしなかったのがプロデューサーのボー・ヒル。当初収録予定だったヘヴィな2曲(「All I Ever Wanted」「Never」)をカットし、バンドに対して新曲を書くことを提案します。“ヘヴィすぎる”という声に対してバンドが下した答えが、のちにシングルカットされヒット曲となる「Can't Get Enuff」「Easy Come Easy Go」でした。

シーケンスを導入した、どこか機械的な印象を与えるこの2曲は、確かにそれ以前に書かれたアルバム曲と比べると異色ですが、その「Can't Get Enuff」がアルバムのオープニングを飾ったことで本作はまた別の印象を与えることになります。

DEF LEPPARD的な「Can't Get Enuff」「Easy Come Easy Go」、そしてソフトバラード「Miles Away」がアルバム前半に配置されたことで、以前よりも“軽く”なった……当時、そう感じたリスナーは少なくなかったはずです。しかも、本作からシングルカットされたのがこの3曲であり、特に「Miles Away」は全米12位という過去最大のヒット曲になってしまうのですから……成功は素直に嬉しかったと思うけど、この方向性自体に彼らは疑問を感じていたのではないでしょうか。続く3rdアルバム『PULL』(1993年)がヘヴィな作風だったことを考えれば、なんとなく頷ける話かと思います。

とはいえ、世に発表されたアルバムは決して悪い作品ではありません。確かに「Can't Get Enuff」や「Easy Come Easy Go」を最初に聴いたときは驚きましたが、「Rainbow In The Rose」「In The Day We'll Never See」みたいなプログレッシヴ路線の楽曲、前作の流れにあるバラードタイプの「Under One Condition」、ドラマチックな「In The Heart Of The Young」、グルーヴィーな「Loosen Up」「Little Dirty Blonde」「Baptized By Fire」(この曲冒頭のギターソロはもともと「Never」のオープニングに入っていたもの)、豪快なハードロック「You Are The Saint, I Am The Sinner」と聴き応えのある楽曲ばかり。シングル曲の印象で本作と接すると痛い目を見るかもしれません。

確かに追加の2曲がなかったら、本作は地味な作品になっていたでしょう。そういう意味ではプロデューサーの采配は正しかったし、実際非常にバラエティに富んだ作品に仕上がったと思います。よく「2ndアルバムは鬼門。真価が問われる」(1枚目はデビュー前の集大成で、2枚目からが本当の勝負)と言いますが、本当にそのとおりだなと納得されられたのは僕ら以上にバンドだったのではないでしょうか(まぁその結果、いろいろ苦悩することになるのですが)。



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投稿: 2017 06 12 12:00 午前 [1990年の作品, Winger] | 固定リンク

2017/01/12

WINGER『WINGER』(1988)

そもそもWINGERってバンド名がズルい。カナ表記すれば「ウインガー」ですよ。「ウイング(=羽)」に「ガー」ですから。メタルばかり聴いてるボンクラ高校生からしたら「ヤベエ奴らが出てきたぞ!」とまず思うわけですよ。そこにきて、あの半裸に近いビジュアル(「Madalaine」や「Seventeen」のMVにて確認)とBON JOVIをやたらとムサくしたようなルックス。RATTっぽさがありつつも、あそこまでとっつきにくくない。そりゃ売れるわけですよ。

というわけで、1988年(またかよ……)という時代の恩恵をもっとも受けたバンド、WINGERのデビュー作です。アリス・クーパーのバンドに在籍したキップ・ウィンガー(Vo, B)とポール・テイラー(Key, G)、のちにDOKKENやWHITESNAKEでも活躍するレブ・ビーチ(G)、そしてDIXIE DREGSなどに在籍したロッド・モーゲンスタイン(Dr)という凄腕4人が繰り出すバンドサウンドはとにかくテクニカルなもので、「Hungry」や「Headed For A Heartbreak」などで聴けるアンサンブルは一瞬「プログレかよ!」と突っ込みたくなるようなもの。かと思えばRATT的な「Seventeen」や「Hangin' On」もあり(とはいえ、前者のバンドアンサンブルも非常にテクニカル)、楽器好きリスナーにも存分にアピールする内容ではないでしょうか。

さっきからやたらと「RATTっぽさ」「RATT的な」と書いてますが、それも納得、プロデューサーがRATTの諸作を手掛けてきたボー・ヒルですから。いわゆる「ボー・ヒル・サウンド」なるものがあるのかと問われると少々疑問ですが、でも彼がプロデュースしたRATTのアルバムやWINGERの本作、そしてWARRANTの2ndアルバム『CHERRY PIE』には少なからず共通点があるのは確か。各バンドともタイプは異なりますが、サウンドの質感やアレンジにその共通点は見つけられるはずです。

そんな「RATTサウンド」ならぬ「ボー・ヒル・サウンド」の恩恵を受け、なおかつ各メンバーの持つ地力や裏方生活で養った作曲&自己プロデュース能力のすべてを費やしたのが、このデビューアルバムだったのではないでしょうか。1988年という時代やプロモーションの力もあったと思いますが、本作は全米21位まで上昇し、100万枚以上のセールスを記録。シングルカットされた「Seventeen」が全米26位、「Headed For A Heartbreak」が全米19位、「Hungry」が全米85位と好成績を残しています。とはいえ、シングルカットされていない「Without The Night」や「State Of Emergency」「Time To Surrender」といった楽曲の完成度も侮れず、結局全曲捨て曲なしと言える1枚です(唯一のカバー曲、ジミヘンの「Purple Haze」は多少蛇足感が否めませんが)。

ということで、やっぱり今口にしてみても、WINGERってバンド名の響きはズルいと思います。



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投稿: 2017 01 12 12:00 午前 [1988年の作品, Winger] | 固定リンク

2005/07/08

寝る前にこれ聴け!(1)

 新コーナー。昔懐かしい(といっても、'80年代半ば〜'90年代前半を中心とした)HM/HRのアルバムを毎回3枚取り上げるというコーナー。単純に、俺が寝る前にこの3枚をCD棚から引っ張り出して聴くだけ、という話。何の役にも立たないかと思いますが‥‥

まず1枚目。


・SKID ROW「SLAVE TO THE GRIND」('91)
 久し振りに引っ張り出して聴いてみたら、スゲーかっこ良かった。全米初登場1位とか、当時GUNS N'ROSESやMETALLICAといったバンドのオープニングアクトをやってたとか、前座にFAITH NO MOREやSOUNDGARDEN、PANTERA等を使ってたとか、そういった情報はどうでもよく、とにかくひたすらカッコいい。そして泣ける曲多し。


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・WINGER「IN THE HEART OF THE YOUNG」('90)
 RATTのプロデューサー(ボー・ヒル)が手掛けてることから、RATTフォロワー的に思われてたデビュー当時。何となくサウンドと声がそれっぽかったからね。けど、メンバーは全員スタジオミュージシャンなり誰かのバックなりで鍛え上げられた名手ばかり。テクニカルHRの極み。
 けどこのアルバムではDEF LEPPARD的な楽曲指向を強めてるんだよね。曲によっては打ち込みベースを使ってたり、あるいはプログレ並みのテクニカル路線だったり。バランス的に一番好き。中途半端っていう人もいるみたいだけどね。


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・SADS「THE ROSE GOD GAVE ME」('01)
 唯一色の違う、しかも邦楽、そして2001年の作品。けどこれがメチャメチャ良い。
 ほぼ全編英語(日本語曲は数曲のみ)、MOTLEY CRUEやMARILYN MANSONなんかを彷彿させるヘヴィロック路線。SADSは「BABYLON」までしか聴いてなくて、その後の清春ソロは聴いてたんだけど、良いねこのアルバム。普通にハードロック/ヘヴィロックじゃんか。ギターとドラムが現在THE DUST'N'BONEZにいるせいか、空気感が似てるよね。ま、プレイとかはまんまだけど。
 ボーカルのせいで好き嫌いハッキリするだろうけど、意外と洋楽HRファンにもアピールするんじゃねーの? 俺は肯定派。


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投稿: 2005 07 08 01:30 午前 [1990年の作品, 1991年の作品, 2001年の作品, Sads, Skid Row, Winger] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック