2019年2月 2日 (土)

WITHIN TEMPTATION『RESIST』(2019)

オランダのシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2019年2月に発表した通算7枚目のスタジオアルバム。本国で1位、アメリカでも16位まで上昇した出世作『HYDRA』(2014年)からまる5年ぶりの新作となり、Nuclear Blast Recordsから新たにメジャーのVertigo Records(Universal Music傘下)へ移籍して最初の作品となります。

本来は昨年12月中旬にリリース予定だった本作ですが、制作上の問題から直前になって翌年2月まで延期。実は僕、今作の日本盤ライナーノーツを執筆する都合上、11月の時点でこのアルバムを聴き込んでいたため、個人的にも「ようやく」といいますか「待望の」という言葉がぴったりな1枚となりました。

で、発売までにこれだけ聴き込んだら、作品によっては若干の飽きがきてもおかしくないんですが、本作に関してはその内容のディープさも手伝ってか、最初に聴いてから3ヶ月経った今も新鮮な気持ちで接することができるのですから不思議です。

ライナーノーツや音楽誌でのインタビューで語られているとおり、前作を伴うワールドツアー終了後、シャロン・デン・アデル(Vo)は今作の制作と向き合い始めるのですが、その途中で自身が燃え尽き症候群的な状態に陥っていることに気づきます。これには個人的な不幸なども影響していたそうですが、そういった事情からレコーディングは一時中断。これと代わるように、シャロンは自身の癒しを求めソロプロジェクト・MY INDIGOを始動させます。ここでフォーキーでシンプルなサウンドを追求した彼女は、再び音楽に対する情熱を取り戻し、改めてWITHIIN TEMPTATIONへと向かっていくのです。こうして過去最長となる5年というインターバルを置いて、この『RESIST』というアルバムは完成しました。

聴いてもらえばわかるように、本作で鳴らされている音はエレクトロの色合いを強めた、非常にモダンなものばかり。シンフォニックの要素は残されているものの、過去作と比べたら少しだけ薄まっているように感じるかもしれません。しかし、それこそがこのバンドが新たに試みた挑戦であり、このアルバムのテーマのひとつでもあるわけです。情報社会となった現代に対する“抵抗”が綴られた歌詞と、それらを「今日のポップニュージックに欠けている反抗的なエッジ」の部分を「よりヘヴィでダーティーで、さらに未来的に」表現したサウンド。そう聞くとなるほど、どの曲もヒットチャートを席巻するモダンなヒット曲と並んでも違和感なく聴けるのではないでしょうか。

初期〜中期の楽曲群を好むリスナーにこの挑戦がどう受け取られるのかも気になるところですが、それ以上に新しいファン層を獲得できるかもしれない、そんな淡い期待もこのアルバムを聴いたら捨て切れません。「The Reckoning」にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス(Vo)、「Raise Your Banner」はIN FLAMESのアンダース・フリーデン(Vo)がゲスト参加。さらに「Endless War」では、シャロンはベルギーのロックバンドARIDのシンガー、ジャスパー・ステヴァーリンクと艶やかなデュエットを聴かせてくれます。前作でも元NIGHTWISHのターヤ、KILLSWITCH ENGAGEの元シンガーであるハワード・ジョーンズ、SOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーとかなりバラエティに富んだ面々を迎えていますが、今作はそれ以上に統一感が感じられるものになっている印象を受けます。

いろいろな意味で“攻め”の姿勢が感じられる本作。このトライが吉と出るか凶と出るかは現時点ではわかりませんが、僕は好意的に受け入れたいと思います。こういう作品、売れてほしいなあ。



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投稿: 2019 02 02 12:00 午前 [2019年の作品, In Flames, Papa Roach, Within Temptation] | 固定リンク

2018年11月 2日 (金)

WITHIN TEMPTATION『HYDRA』(2014)

オランダ出身のシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2014年2月に発表した6thアルバム。前2作(2007年の『THE HEART OF EVERYTHING』、2011年の『THE UNFORGIVING』)をRoadrunner Recordsからリリースした彼らでしたが、このアルバムでNuclear Blast Recordsへ移籍。ここ日本でもワーナーからビクターへとリリース元を変更しております。

そういった環境の変化が音楽性にも変化を及ぼした……のかどうかは不明ですが、本作では新たな試みがいくつか用意されています。

まず、従来のゴシックなシンフォニックメタル路線からもう少し真ん中寄りの、ストレートなヘヴィロック(ただし美しいメロディを備えている)へと接近したこと。もちろん以前の作品にもそういった要素はところどころから感じられましたが、本作では少しだけそのテイストに変化が生じ、これによりバンドの雰囲気も若干変わったように感じられます。

そして、過去にもアルバムに1曲くらいは存在した他シンガーとの共演曲が4曲に急増していること。しかも、その人選もいかにも彼ららしいターヤ(元NIGHTWISH)から、ゼロ年代モダンヘヴィネスの代表格であるKILLSWITCH ENGAGEの元シンガー、ハワード・ジョーンズ、アメリカのラッパーであるイグジビット、さらにはUSオルタナティヴロックバンドSOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーまで、かなりバラエティに富んだ布陣が揃っています。

僕自身は前作からこのバンドに入ったので、『THE UNFORGIVING』の路線はとても気に入っていたのですが、だからといって本作で展開される世界観がダメということはまったくなく、むしろこのバンドが本来持っているであろう色がより濃くなったことにより、焦点がよりぴったり合ったのではないかと感じました(過去作を大して聴いてないくせして言う意見ではないですが)。そんな中でも、より美しさを追求したターヤとのコラボ曲「Paradise (What About Us?)」はそれこそターヤ在籍時のNIGHTWISHを彷彿とさせ、ラップを導入した「And We Run」も特別風変わりなことをやっているようには感じられない。むしろアクセントとして良い方向に作用しているように思いました。

ファストチューンこそないものの、それに匹敵する攻撃的な「Silver Moonlight」や「Dangerous」は存在する。けれど、本作の醍醐味はやはり紅一点のシャロン・デン・アデル(Vo)の色香が濃厚なバラード、「Edge Of The World」や「Dog Days」、「Whole World Is Watching」にこそあるのではないか。そう感じています。

間もなく約5年ぶりの新作『RESIST』がリリース予定ですが、こちらでもさらなる変化を遂げているようですので、この『HYDRA』がその変化の第一歩だった……そう捉えることもできるでしょう。後から振り返ると、本作がバンドにとっての大きなターニングポイントだった……そう評価されるまでには、もうちょっと時間がかかるのかもしれませんね。



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投稿: 2018 11 02 12:00 午前 [2014年の作品, Killswitch Engage, Soul Asylum, Within Temptation] | 固定リンク