THE YELLOW MONKEYが活動休止に突入してから早くも2年もの月日が経ちました。2000年夏に8枚目のオリジナルアルバム「8」をリリースし、翌年1月の東京ドーム公演をもって活動休止期間に突入したわけですが、この2年の間に各メンバーの表だったソロ活動はというと‥‥吉井和哉が2001年10月のジョン・レノン・トリビュート・ライヴに出演と、今年に入ってベースの広瀬洋一がHEESEY WITH THE DUDESとしてシングルとアルバムをリリース、ライヴもやっと行った程度で、菊地兄弟に関しては何の音沙汰もなし(あ、兄の方は本出したか)。一体何をやっているんだよ、イエモンの面々よ! 俺はマジで悲しいよ。確かに「8」を聴いた時は「‥‥煮詰まってきてるのかなぁ‥‥」と感じたよ。実際そうだったのかもしれない。もしかしたら「SICKS」、「PUNCH DRUNKARD」の2枚、そしてそれらのアルバムに伴う長期ツアー(特に「PUNCH DRUNKARD」での100本以上に及ぶロングツアーは未だに記憶に残ってることと思います)でバンドとしてのひとつのピークを迎えてしまったのか、そしてそれを超えるような新しい道を模索するために、一旦バンド活動をリセットしたのか‥‥正直に言うと、俺はどんなにつまらない作品を連発しようが、それが実験的すぎてファンが離れようが、ミュージシャンとしてその軌跡を我々の胸に刻んで欲しかったな、と。凄く好きな、そしてリスペクトするバンドなだけにとても残念でなりません。
今回紹介するライヴ盤は、その100本以上もやったロングツアー(1998年4月~1999年3月)の中から、ベストテイクといえるようなライヴ録音を編集した作品。ライヴビデオが主流の昨今、何故彼等がこういったライヴ盤に拘ったのか、イエモンをよく知るファンなら何となく察しがつくんじゃないでしょうか。彼等の愛したKISSやAEROSMITHは、その活動の節目節目に素晴らしいライヴアルバムをリリースしてるんですね。そしてそういったライヴ盤の方がスタジオ作品よりも愛着があるって人も多い。実際、イエモンの4人もそうなんじゃないかな。じゃなきゃツアーファイナルを完全収録したビデオ出しながらも、こういったライヴ盤まで出さないよね普通。単純に自分で聴きたかった‥‥あるいは各地のライヴ会場に足を運んでくれたファンに対する感謝の気持ちなのか‥‥ロビンの煽りにやたらと地名が入ったテイクが多いのも、もしかしたらその表れなのかもね。
約70分、全12曲(シークレットトラックがあるので、実際には13曲)というのは、彼等のライヴからすれば恐らく半分程度の内容だと思うんですが、それでも要所要所のハイライトを抑えつつ‥‥というより、前半のノセる曲の連発な、アナログでいうA面‥‥"パンチドランカー"でスタートして、そのまま"ROCK STAR"へと流れていくライヴ頭の流れ。そしてヘヴィな"TVのシンガー"、ノリのいいストレートな"ゴージャス"、イエモンの定番リズムを持った"Tactics"。そのまま"見して 見して"へと続くかと思わせてフェードアウト‥‥の後、いきなりクライマックスが連発するんですよね‥‥静と動の対比が素晴らしい名曲"球根"から、情熱的な"BURN"へ、そのまま静かに、そして徐々に、徐々にと熱く燃え上がる"JAM"、ライヴ終盤の盛り上げ隊長"LOVE LOVE SHOW"、そして本編ラストを飾ることが多い"悲しきASIAN BOY"。どうよ、この怒濤の名曲オンパレードは!? 本当のライヴでこんな並びで連発された日にゃ、俺は間違いなく鼻血吹くね。そう、多分実際のライヴではあり得ない並びだからこそのライヴ盤なのかも。曲順に関しては実際の(当時の)ライヴとは違うんだろうけど、俺はこういうファンサービス、ありだと思う。しかもバンドが一番脂の乗った時期だっただけに、こういう音源を残せたってのは今となっては良かったのかもしれないね。
個人的には、所謂B面‥‥怒濤のヒットメドレーね‥‥の後に続く、アンコール的な"SO YOUNG"を聴くとマジ泣きしそうになるのね。この曲って歌詞を含めて、彼等が影響を受けたAEROSMITHでありLED ZEPPELINでありデヴィッド・ボウイといったアーティスト達からの影響がストレートに見え隠れして、そしてそれが全然嫌味じゃなく、ちゃんとイエモンの楽曲として成立してる。そう、ここで一旦完成しちゃったんだよね。到達しちゃったんだよな‥‥だからこそ、その続きが見たかったのに。それが我々が望むものであろうがなかろうが‥‥ショーを続けて欲しかったよマジで。
そして、ホントのボーナストラックといえるであろう"真珠色の革命時代(Pearl Light Of Revolution)"の、生ストリングスとの共演バージョンがまた泣かせる(恐らく年末の「メカラウロコ」武道館公演からだよね?)。バンドとしての集大成という印象。ここまで完成され尽くしたライヴを聴かせておきながら、最後の最後に‥‥シークレットトラックとして録音状態も悪い、正しくインディーズ時代に戻ったかのような"WELCOME TO MY DOG HOUSE"が登場するんだから。エアロの「LIVE BOOTLEG」における "Draw The Line" みたいだよね(エアロのライヴ盤では、この曲はホンモノのブートらしくクレジットされていないのに、とある曲の後にいきなり登場するという仕組み。ま、日本盤にはしっかりクレジットされちゃってるんですが)。こういうの、ホント好きね、この人達。
今30代以上の人達って、洋楽の教科書として今は亡き雑誌「ミュージックライフ」に頼ってませんでした? 勿論俺も。それとか「ロックショウ」とかね。まだまだロックが煌びやかなイメージを持っていた'70年代~'80年代の洋楽ロック。それを当の欧米人以上にリアルに且つ胡散臭く再現してくれたのが、自称「ジャパニーズ・ナンバーワン・ロックンロール・バンド」THE YELLOW MONKEY。活動期間中、結局どこにも属さずに独特な空気を醸しだしていた彼等が、今は恋しくて仕方ないです。「ソロは失敗でした」と素直に言ってくれてもいいし、ひねくれて「お前らが俺達を忘れた今、また悪夢を見せてやるよ」とか言ってくれてもいい。こんな時代だからこそ、彼等のロックンロールが必要なんです。バンドブームの嵐の中結成されたイエモンだからこそ、こんな今の日本の音楽シーンに風穴をブチ開けてくれるんじゃないかと‥‥みんなもそう思わないかい?

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