YNGWIE J. MALMSTEEN『TRILOGY』(1986)
1986年11月4日にリリースされたイングヴェイ・マルムスティーンの3rdアルバム。日本盤は同年10月4日に先行発売。
RISING FORCE(YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE)名義で発表された前2枚とは異なり、本作は“YNGWEI J. MALMSTEEN”と個人名を打ち出してのアルバム。とはいえ、RISING FORCEであろうが何であろうが、どれもイングヴェイのワンマン体制のもと制作されたものなので、異なるのはジャケットに刻まれた名前だけ。あとはメンバーをすげ替えつつもやってることは一緒です。
前2作でボーカルを務めたジェフ・スコット・ソートが早くも離れ、新たにマーク・ボールズという隠れた才能の持ち主が参加。前作『MARCHING OUT』(1985年)ではマルセル・ヤコブ(B/TALISMAN、ex. EUROPEなど)が全面的に参加しましたが、今作では1stアルバム『RISING FORCE』(1984年)同様にイングヴェイがベースも兼務しています。なお、イエンス(Key)&アンダース(Dr)のヨハンソン兄弟は本作でも健在です。
全9曲中インストは2曲(「Crying」「Trilogy Suite Op:5」)のみ。それ以外はマークの圧倒的な歌唱力を活かしたメロディアスハードロックで占められており、どの曲も完成度が非常に高い。オープニングを飾る「You Don't Remember, I'll Never Forget」を筆頭に、「Liar」や「Queen In Love」など、70年代後半以降のクラシカルなハードロックをベースにしたネオクラシカル路線の楽曲群は耳馴染みの良いものばかりで、マークの歌唱スタイルなど含めてどこかロニー・ジェイムズ・ディオ時代のRAINBOWを彷彿とさせるものばかりなんですよね。ただ、ギターソロになるといきなり世界が一変し、モダンさに満ち溢れる。このバランス感こそ初期イングヴェイの真骨頂ではないでしょうか。
自身のギタープレイを前面に打ち出しまくったデビュー作、歌モノを強く意識し始めた2作目を経て、ついに初期のスタイルがここで完結(完成)した。イングヴェイ・マルムスティーンというアーティスト/ソングライターにとって最初に到達点が本作であり、それをよりわかりやすく噛み砕いたのが、当のRAINBOWメンバーだったジョー・リン・ターナー(Vo)を迎えた次作『ODYSSEY』(1988年)だったのかなと。改めて振り返ってみても、この中の流れは神がかっていますよね。
今のイングヴェイと比較してしまうのは少々酷ではありますが、あの時代だからこそ成し得ることができた奇跡の名盤。これが35年前の作品だと気づき愕然としていますが(苦笑)、時代を超越した傑作はいつ聴いても悪いわけがありません。
▼YNGWIE J. MALMSTEEN『TRILOGY』
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