THE YO-YO'S『UPPERS AND DOWNERS』(2000)
2000年夏にリリースされた、イギリスのポップパンクバンドTHE YO-YO'Sの1stアルバム。ダニー・マコーミック(Vo, G / 元THE WiLDHEATS)がTHE WiLDHEARTS解散後にトム・スペンサー(Vo, G / 元SUGARSNATCH、THE LURKERS)と結成したこのバンドは、BACKYARD BABIESなどとツアーを重ねながら自主制作EPを2枚発表。その結果、名門Sub Pop Rocordingsと契約することとなり、ワールドワイドデビューを飾ることとなりました。
当時の編成はダニー、トムに加えてニール・フィリップス(Vo, G / B-MOVIES HEROES)、ブラッズ(Dr / 元SUGARSNATCH)という“あの界隈”の面々。サウンド的にはTHE WiLDHEARTSのポップさやパンキッシュな部分をそのまま残しつつ、メタリックな要素を排除したもので、イギリスというよりもアメリカのバンドに近い作風と言えます。ちょうどGREEN DAYやTHE OFFSPRINGなどのポップパンク全盛後期だったこともあり、うまくその流れに乗れたのではないかという気もします。
プロデュースはBAD COMPANY『DANGEROUS AGE』(1988年)、『HOLY WATER』(1990年)、FOREIGNER『UNUSUAL HEAT』(1991年)などを手がけてきたテリー・トーマスが担当しています。THE YO-YO'Sのスタイルとはおよそ結びつかない人選ですが、テリー・トーマス自身がミュージシャンでもあり、BAD COMPANYの諸作品ではギタリストやキーボーディストとしても参加していることから、ミュージシャン視点でアルバム作りに加わったのではないでしょうか。
その成果もあってか、アルバム自体は本当によくできた、しっかり作り込まれた楽曲がずらりと並んでおり、インディーズから発表した「Rumble(d)」や「Out Of My Mind」といった楽曲も再録音で収録。オープニングの「1000 Miles From Me」なんてYARDBIRDSやAEROSMITHでおなじみの「Train Kept A Rolln'」を彷彿とさせるリフとパンキッシュな疾走感をあわせ持つサウンドですが、そこに乗るメロディやハーモニーはTHE BEACH BOYSばりに甘ったるいもの。シングルカットされた「Time Of Your Life」や「Sunshine Girl」なんて、これがヒットしなかったら何を売れというの?ってくらいの名曲ですしね。そういう意味では、ダニーがTHE WiLDHEATSで学んだ経験を、自身が中心となって発揮させた最良の形=アルバムではないでしょうか。
残念ながら、2001年にTHE WiLDHEATSが再結成されることになってTHE YO-YO'Sは自然消滅。その後、ダニーがTHE WiLDHEATSを離れたあとに不定期ながらもTHE YO-YO'Sはライブを行っていたようで、2005年にはダニー&トムに新メンバーを加えた編成でEP『GIVEN UP GIVING UP』をリリース。こちらは現在でも入手可能です。
▼THE YO-YO'S『UPPERS AND DOWNERS』
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