カテゴリー「Zeppet Store」の7件の記事

2005年5月 1日 (日)

ZEPPET STORE、解散。

ZEPPET STORE、8月で解散(公式)

 何となく、そういう雰囲気は前からあったわけだけど、実際にそれを発表されるとなかなか受け入れ難いものがあるというか‥‥やっぱショックですよ。

 7月31日(日)の恵比寿リキッド公演を皮切りに、全国5ヵ所6公演をもって解散。ラストは同じ恵比寿リキッドで8月14日(日)‥‥初日がフジロックと被って、ラストはサマソニと被るのか‥‥最後、見届けたい気もするけど、最近怠けてライヴ行ってなかったからなぁ‥‥そんな奴にラストを観る資格があるのかどうか。

 いや、資格とかそんなのは関係ないけどさ。やっぱりずっと一生懸命追っかけてきた人に観て欲しいじゃない。そういう思いがあるから、興味本位のみでスーパーカーとかハスキンのラストには足を運ばなかったんだよね、うん‥‥

 これから仕事に出かけようって時に、なんてショックな知らせを目にしちまったんだ‥‥クソ‥‥通勤時の音楽が決まっちまったじゃないか‥‥



▼ZEPPET STORE「ZEPPET STORE BEST ALBUM “SINGLES and RARE 1994-2001”」(amazon

2003年8月 8日 (金)

ZEPPET STORE『Singles and Rare 1994-2001』(2002)

  ZEPPET STOREが'02年3月にリリースしたベストアルバム、「Singles and Rare 1994-2001」。タイトル通り、シングル曲を中心に、数曲のレアトラックをプラスした代物。何故この時期に!?と当時は思ったけど、要するに彼等が所属していたレーベル「LEMONed」が配給元・東芝EMIとの契約を終了→レーベル解体が原因らしいですね。つまり、ZEPPETはこのベストを最後に契約を失った、と(ま、その1年後に再び東芝/ヴァージンと再契約するわけですが)。これは一種の契約消化作と呼べるわけですが‥‥これがね、侮れないわけですよ。

  収録された17曲中、過去にリリースされた全13枚のシングルのタイトルトラックを全て、年代順に収録。更に4曲のレアトラックもほぼシングルの流れ(年代)に合わせた位置に収録されていて、正しく「ZEPPET STOREの歴史」を過去から現代へと順に追っていく形で構成されています。

  ベスト盤というと、そのバンドのことをよく知らない初心者が「とりあえず代表曲をてっとり早く知る」為に手を出す、所謂入門編としての役割が大きかったりするのですが、今回の場合も勿論その役割を果たしつつ、更にこれまで彼等を応援してきたファンに改めて「ZEPPET STOREの凄さ」を認識させる為の、素晴らしいテキストにもなっているわけです。

  アルバムは1994年6月にインディーレーベル「UNDER FLOWER RECORDS」からリリースされたアルバム「swing, slide, sandpit」収録の"lacerate your brain"からスタート。現在廃盤の為、入手不可能となっている1枚からの音源ということで、やはりこのアルバム一番の目玉となっているようです。インディーギターロックの王道といえるようなスタイルで、歌詞は勿論英語。この曲を聴いてかのhideが彼等を気に入ったというのも、頷ける話。そしてそのhide絡みでアメリカでリリースすることとなったアルバム「716」からの"FLAKE"で、バンドはかなり成長します。2年の歳月やメンバーチェンジも大きいでしょうけど、何よりもバンドとしてのアイデンティティが確立されたのがこのアルバムからだったのではないでしょうか? UKギターロック、特にシューゲイザー系やDINOSAUR JR.といった辺りからの影響が強いディストーションギターによる壁のような音像が特徴で、その完成型といえるのがメジャーデビュー曲となった"声"だったと俺は思っています。そう、メジャーデビューした途端にそれまでのスタイルが完成型に到達してしまった。バンドは新たな模索を始めるわけです。シングル"TO BE FREE"や"SUPERSTITION"、メジャーファーストアルバム「CUE」はとりわけそういった「その後」を模索する姿をそのまま作品に閉じこめた形になっています。しかし、ここで古くからバンドを支えてきたギターの五味が脱退。ZEPPET STOREの「新たなる自分探し」の旅は再び振り出しに戻るわけです。

  が、バンドは「CUE」で得たものを早くも続くシングル"DON'T ASK ME WHY"、"LOOP"の中で活かし始めます。と同時に、ギターには新たに赤羽根が加入したことで、バンドとしても更に強靱になっていきます。更にこの時期、初期から彼等を支えてきたhideの死にも直面します。そんな中生まれた名曲"ROSE"は、メジャーデビュー後のZEPPET STOREの新しいスタイルの「ひとつの答え」でした。ディストーションギターによる壁をぶち壊し、その根底にあるメロディを全面にさらけ出すことで、よりバンドとしての強みを感じさせる。本来なら危険ともいえる行為ですが、このバンドはスタートした時点から優れたメロディを持ったバンドだったわけで、前任のギタリストが抜けた時点でこういう方向に進んで行ったのはむしろ必然だったのかもしれません。

  そういったスタイルを更にもう一歩押し進めたのが、本来デビュー曲候補として制作された"もっと もっと"、初のドラマ主題歌となった"遠くまで"の2曲。メディアへの露出も増え、テレビの音楽番組への出演も果たします。こうして少しずつ、彼等の知名度は「hideのお気に入り」といった枕詞なしで高まっていきます。その決定打となったのが、アルバム「CLUTCH」。チャートのトップ10入りを果たした、メジャーデビュー後の集大成ともいえる内容になっています。

  ある程度の成功を得たことで、更なる前進を考えた彼等は"EMOTION"、"DISTANCE"、"PRESENCE"といったシングルで新たな実験を試みます。ブリットポップ以降のUKロック‥‥MANIC STREET PREACHERSやBLUR、SUEDE、RADIOHEADといったバンドに通ずるアプローチ、そして積極的にデジタルサウンドを取り入れたり等、非常に攻撃的なサウンドに力強い『歌』が乗るという、バンドとしての過去と未来との架け橋的スタイルを模索し始めます。アルバム「GOOSEFLESH」を経て、更にシングル"TIGHTROPE"と"SEEK OUT"でその路線は極まり、続くアルバム「DINO」でひとつの完成を見るのです‥‥

  というようなストーリーが、この75分に及ぶ1枚のアルバムから伺えるわけです。初めてこのベストで彼等に触れる初心者にとってはこういう背景も初耳でしょうけど、既に彼等のことをよく認識しているファンにとっては、如何にこのバンドが突き進んで来た道が多難に満ち溢れていたか、そして常にこのバンドはそういった困難に真っ向から立ち向かって勝ち続けてきたか、という事実を再確認させてくれるわけです。だからこそ、無視出来ない1枚なんですよ、単なるベストとして切り捨てるには勿体なさ過ぎる内容になってるんですよ。

  残念ながら、先日リリースされた移籍第1弾アルバム「SLICK」は、東芝/ヴァージンということでCCCDとしてのリリースでした。当然ながらこのサイトではアナログ盤でも出ない限りはこのアルバムを取り上げることはありません‥‥ZEPPET STOREが今、どんな「音」を鳴らしているのか、ライヴにも行けてない俺には知る術もありませんが、願わくばこのバンドには「守り」に入ることなく、常に前進していて欲しいと願ってます。勿論、その力強い「歌」は変わることなく‥‥



▼ZEPPET STORE『Singles and Rare 1994-2001』
(amazon:国内盤CD

2000年4月25日 (火)

ZEPPET STORE『DISTANCE』(2000)

  '99年に2枚のアルバム(英語詞アルバム「BRIDGE」と日本語詞オリジナルアルバム「CLUTCH」)をリリースしたゼペットが2000年最初に放つのは、何とマキシシングル2枚時間差発売。間に1週間置いて1ヶ月に2枚、しかも完全初回限定生産だそうだ。こんなことされると‥‥アルバムがもうじき発売ってことなのか?と勘ぐってしまう。(笑)去年の10月だろ、「CLUTCH」って? 6月から7月にかけて全国5ケ所各1回ずつのライヴを行うから、まぁ秋以降かもしれないな。今はレコーディング中の息抜きってとこだろうか?

  何はともあれ、今回はこの時間差リリースの2枚のシングル「EMOTION」「DISTANCE」を「時間差レビュー」しようと思う。(笑)つまり、現在これを書いてる時点では俺の手元には「EMOTION」しかないのでこれについてだけ書き、来週以降に手に入る「DISTANCE」を買ったらその時に続きを書くという形だ。だから1回このページを見て、はい終り、とはならない。つづきものだよ。(笑)

  まずまず、2枚に共通するデータだけ記しておきましょう。プロデュースは朝本氏ではなく、今回からゼペット自身。初のライヴ音源収録。アートワークにはミスチルやサザン等でお馴染みの、進藤三雄氏。しかもジャケット、デカすぎ(爆)。7インチのドーナツ盤よりは大きく、12インチのアルバムよりも小さい‥‥昔、10インチレコードってあったけど、あれくらいかねぇ?とにかく、それくらいデカい紙ジャケの中にCDが入ってるという‥‥こりゃ店頭で目立つわ。けど、収納に困るよ。(苦笑)‥‥こんなとこかね? 新たなミレニアムを迎えて、新しい試みを繰り広げようとしてる感じがする。

  そういえば、2曲共タイトルが英単語のワンワードっての、意識してやってるのかな? 昨年リリースした2枚のシングルが日本語タイトルだったから(「もっと もっと」「遠くまで」)対照的だよね?

●「DISTANCE」レビュー

M-1. DISTANCE
  連発シングル第2弾の1曲目は"EMOTION"以上に勢い重視の曲。このシングル買う前日に「HEY! HEY! HEY!」にて聴いていたので大体の感じは掴んでいた。それにしてもアグレッシヴ。ライヴを想定して作ったな?っていうのが第1印象。Baの中村と木村の共作(作曲のみ)だが、「CLUTCH」でも中村が書く曲ってこういうノリ重視のファストナンバーだったな、と気づく。
  イントロとかサビ前までの煮え切らない感じのメロディ運びや独特な湿り気がイギリスっぽさを感じさせるが、やっぱサビにくるとドカ~ン‥‥とまでは来なかった、今回。(苦笑)いろいろな実験的要素が目に(耳に)つくけど、肝心のサビが、う~ん、平均点。まぁ「ゼペットらしさ」は出てるよな? 一聴して彼等の曲って判る分だけのオリジナリティーはあるって事だし。

M-2. VEX
  このシングル、いや、今回発表された6曲の中で最も「異色作」といえるのがこの曲。これまた英語詞で(柳田が作詞)作曲はバンド名義。イントロのベースの入り方から、何となくSTONE ROSES "I Wanna Be Adored"を思い浮かべるが、こっちはもっとダークな感じ。こんなにへヴィ&ダークな曲、ゼペット史上初でしょう。上で「ファーストの頃とは違った意味でのへヴィさが今後どこまで比重を占めていくのかが興味深い」って書いたけど、これを聴くとその気持ちは更に増す。というか、こういう感じで英語詞アルバム、また作って欲しいなぁ‥‥ないだろうけど。(笑)
  ゼペットというとどうしても「UK色が強いバンド」というイメージがあるけど、この曲に関してはそれは皆無。むしろこれはSOUNDGARDEN辺りの、'90年代前半に多く存在したグランジ/ヘヴィロック系に強く影響を受けたのでは?という感じ。想像でしかないが、途中加入した赤羽根(Gt)の影響ではないだろうか? こういう音でアルバム1枚聴いてみたいという願望も持ちつつ、やはり「バラエティー豊かな」内容のアルバムが最も彼等らしいので、今後も頑張っていろんなタイプの曲に挑戦して欲しいものである。

M-3. EMOTION ram jam world remix
  ゼペットがリミックスものに挑戦するのも初めての事。今回の2連続シングルのコンセプトは確か「新しい挑戦」だったはず。セルフプロデュース、アートディレクターの変更、曲のバラエティー、2枚連続リリース、初のライヴ音源、リミックスもの‥‥うまくいったものもあれば失敗したものもある。けど、それが今後の彼等の指針になるはずだし、これはこれでいいと思う。第一、シングルって最近じゃみんなマキシになってるから最低3曲くらい入ってないと格好悪いし、だったら実験のひとつもしてもらわなくちゃ困る。(笑)
  でこのリミックス、ゼペットとはお馴染となる朝本氏率いるram jam worldによるもの。気心知れた人間が料理するわけだし、しかもそのリミキサーも本職だし。ただ、どうしてもゼペットの場合、『歌』がまず最初にあるから‥‥ねぇ?(苦笑)出来としてはいいと思うんだけど、個人的には‥‥あまりこの手のリミックスものはシングルに入れて欲しくない。だったら新曲入れてくれってマジで思う。まぁ作る方の苦労を考えればこれもありだが。

●総評

  ミニアルバムとして6曲まとめてリリースする事も出来たわけだし、何も初回限定にする必要もない。では、何故? やっぱり2枚連続ってのは話題作りだろうし、初回限定ってのもそうだろう。大体あのジャケットでは1枚作るのにどれだけ経費がかかることか。(苦笑)まぁファンサービスってとこだろう。じゃあ、ファンじゃない人にとっては‥‥これはもう、アルバムまでの繋ぎと考えるのが妥当だろう。近々、本当にリリースされるんじゃなかろうか? 7/7の東京までツアーが続くわけだが、まぁ数本夏のフェスやイベントに出演するとしても、今現在や夏をレコーディングに費やすはずだ。「CLUTCH」が成功したんだから、それに続く作品を早く出したいと思うし‥‥メンバーも、レコード会社も。

  俺の予想では、7~8月にシングルをもう1枚、そして初秋にアルバムというシナリオが出来ていると思う。今回のシングルの内容からは正直アルバムの内容を予想する事は出来ないが、また今度もバラエティー豊かな内容になる事だけは間違いない。

‥‥とかいって、出てみたら実は英語アルバムだったりして。(爆)



▼ZEPPET STORE『DISTANCE』
(amazon:国内盤CD

2000年4月21日 (金)

ZEPPET STORE『EMOTION』(2000)

  '99年に2枚のアルバム(英語詞アルバム「BRIDGE」と日本語詞オリジナルアルバム「CLUTCH」)をリリースしたゼペットが2000年最初に放つのは、何とマキシシングル2枚時間差発売。間に1週間置いて1ヶ月に2枚、しかも完全初回限定生産だそうだ。こんなことされると‥‥アルバムがもうじき発売ってことなのか?と勘ぐってしまう。(笑)去年の10月だろ、「CLUTCH」って? 6月から7月にかけて全国5ケ所各1回ずつのライヴを行うから、まぁ秋以降かもしれないな。今はレコーディング中の息抜きってとこだろうか?

  何はともあれ、今回はこの時間差リリースの2枚のシングル「EMOTION」「DISTANCE」を「時間差レビュー」しようと思う。(笑)つまり、現在これを書いてる時点では俺の手元には「EMOTION」しかないのでこれについてだけ書き、来週以降に手に入る「DISTANCE」を買ったらその時に続きを書くという形だ。だから1回このページを見て、はい終り、とはならない。つづきものだよ。(笑)

  まずまず、2枚に共通するデータだけ記しておきましょう。プロデュースは朝本氏ではなく、今回からゼペット自身。初のライヴ音源収録。アートワークにはミスチルやサザン等でお馴染みの、進藤三雄氏。しかもジャケット、デカすぎ(爆)。7インチのドーナツ盤よりは大きく、12インチのアルバムよりも小さい‥‥昔、10インチレコードってあったけど、あれくらいかねぇ?とにかく、それくらいデカい紙ジャケの中にCDが入ってるという‥‥こりゃ店頭で目立つわ。けど、収納に困るよ。(苦笑)‥‥こんなとこかね? 新たなミレニアムを迎えて、新しい試みを繰り広げようとしてる感じがする。

  そういえば、2曲共タイトルが英単語のワンワードっての、意識してやってるのかな? 昨年リリースした2枚のシングルが日本語タイトルだったから(「もっと もっと」「遠くまで」)対照的だよね?

●「EMOTION」レビュー

M-1. EMOTION
  イントロのリズム打ち込みが、どことなくマニックスの"You Stole The Sun From My Heart"を思わせる、パワーポップ。いや、もっとストレートなロック色が強いか? シングルとしては久し振りに力強いナンバーを持ってきたな、って気がする。相変わらず柳田のリズムが心地よい。そして木村の紡ぎ出すメロディー。これがまた印象深い。バックはかなりパワフルなのだけど、メロはかなりポップ。最近のUKバンド‥‥マニックスやOASIS、SUEDEあたりにも匹敵すると思う。
  歌詞に目をやると、タイトルが英単語のくせして、歌詞には英語が全く出てこない‥‥次の曲と対照的だな。やっぱこの曲はメロディーだわ、特にサビの。

M-2. SPIN AROUND
  久し振りの英語曲。「BRIDGE」で集大成的に英語曲をまとめた、暫くは日本語詞に拘りたいと言っていたが‥‥あれからまだ1年しか経っていない。(笑)それにしてもこの曲、作曲がバンド名義になってることから、スタジオでジャムってたら出来たのではないだろうか? そんな感じの曲だ。サイケな感じが新作でのOASIS、いや、その本家の(笑)ジョン・レノンが唄うビートルズナンバーってイメージを受ける。木村の歌い方もそれっぽいし。かなりへヴィ。作風としては新曲2曲はアルバム「CLUTCH」の延長線上って感じ。あのアルバムに入ってても違和感はないだろうし。まぁあのアルバム自体かなりバラエティーに富んだ内容だったから、何でもありなんだけどね? へヴィ&サイケ‥‥前作でも"INNOCENCE"っていう曲があったけど、ファーストの頃とは違った意味でのへヴィさが今後どこまで比重を占めていくのかが興味深い。

M-3. ロウソクの炎と青い空 (Live version)
  シングル「もっと もっと」に収録されたc/w曲のライヴバージョン。何と、去年俺が観に行った10/3@日比谷野音での音源。あの時はそれ程感じなかったけど、こうやって聴くとかなりへヴィだったんだな?と再確認。それにしてもいい曲。なんでアルバムに入らなかったのかが不思議でならない。個人的に好きな曲でもあるし、またファンの間でも人気の曲だそうだ。そういう事もあって今回、初のライヴ音源収録に踏み切ったのかもしれない。
  ライヴ音源ということで歓声もそのまま入ってるのだけど‥‥当日、女子供の「キャーッ!」って声しか聞こえなかったんだけど、こうやって改めて聴くと‥‥男の野太い声も入ってるし。(笑)まさか俺の声じゃねぇだろうな?(爆)もし将来、ベストアルバムとかライヴアルバムがリリースされるような事があれば、是非この曲は入れて欲しい‥‥特にゼペットはアルバム未収録のc/w曲が多く、その中には名曲も多く含まれているしね?アルバムで興味を持った人はシングルにも手を出してみるべし!



▼ZEPPET STORE『EMOTION』
(amazon:国内盤CD

2000年3月 6日 (月)

「MY BEST OF 1999」

いやいや、遅くなってすんまそん‥‥実はこれ、大阪出張に行く直前まで手掛けていたのだけど、その後戻ってからもバタバタしてしまって、ちょっと忘れてたところでした。年も明けてもう3月だよ‥‥早いもんだね? 仕事はこのままどんどん忙しくなる一方だし、更新はままならんし‥‥って事で、ちと無理をしてでもここは仕上げねば!?と思い立った訳ですよ、ハイ。

いろいろ書きたい事はあるんだけど、まずはこれをやっちまいますか? みんなが知りたい?だろう、俺の去年の「10枚」を発表します♪ 例年通りで進めると「この曲」とか「このライヴ」ってのも書くんだろうけど、今回はパス。(苦笑)リクエストがあがれば書くって事で。(って結局、流されて忘れられるんだろうな?)

改めて今、この原稿を書いてる最中にも何枚か入れ代わったのだけど、もうこれで決定! あ、いつもの事ながら、順位とかそういうのはなく、順番も作為的なものはありません。単に選んでったらこうなりました。


椎名林檎『無罪モラトリアム』

文句なしの1枚。これだけの存在感と説得力、そして独自のオリジナリティー。どれを取っても去年聴いたものの中ではダントツ。きっと多くの人がこのアルバムを「1999年の1枚」として選ぶ事でしょうね?去年最も聴いた1枚。

ATARI TEENAGE RIOT『60 SECOND WIPE OUT』

甘く見てたっていうか。(苦笑)フジロックの後でこのアルバムを買ったのだけど‥‥ライヴを見れなかった事を後悔。テクノともダンスとも呼べない、もうこれはヘヴィロックのひとつの発展型ではないでしょうか?しかし、最初そんなに好きでもなかったのに、アルバム通して聴いて好きになるってのは珍しいなぁ?Kで聴いてもピンとこなかったってのに。

THE FLAMING LIPS『THE SOFT BULLETIN』

転職後、つまり昨年後半はこれと下のTRAVISに救われた気がするな。ヘヴィ/ゴリ押し系ばかりの中で一服の清涼剤となる清清しさと、ハマると抜けられなくなるサイケさを持ち合わせた、正にドラッグ・アルバム。ジンジャーがイチ押ししてるのも納得。(いや、最初知った時は笑ったけど)

KULA SHAKER『PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS』

最後はこの1枚‥‥解散がなくても絶対に選んでたね!もうこれはUKとかブリットポップとか、そういうのを抜きにして語りたい‥‥世紀末が生んだ「奇形的作品」。音がヘヴィという訳ではないのだけど、その作り全体と醸し出す雰囲気がヘヴィだという意味では、レイジに匹敵するヘヴィさだと俺は思う。もしかしたらこのアルバム、理解されるにはまだ早すぎるのかもしれない。何年も先をいっていた名作として後々語られるのかもしれない。

LIMP BIZKIT『SIGNIFICANT OTHER』

日本が林檎姫なら、海の向こうではリンプ♪こいつらがいたからフジロックに行ったって人、多いのでは?ヘヴィロックというよりは、ヘヴィヒップホップだと思う。とにかく聴いてて気持ちいいリズムと覚え易いリフレイン。1999年のアメリカを代表するのはBACKSTREET BOYSではなく、こいつらでしょう!(笑)

THE MAD CAPSULE MARKETS『OSC-DIS』

NINにするかこれにするかで最後まで悩んだんだけど、こっちのが俺らしいんじゃねぇか?と思って結局マッドに。上の3枚とは一線を画する‥‥どちらかと言えば下の2枚に共通する「聴くだけで器物破損な」(笑)アルバム。いい意味で常に変化していくバンドだよね、彼等は。是非ライヴを1度見たいバンド‥‥と思ってたら、フジロック再びの噂が‥‥

Mr.Children『Discovery』

やっぱりこれは外せない。(笑)とにかく「日本語ロック」が新たなステージに到達した事を伝える1枚。贔屓目抜きにしてもこれは名作と呼べるのではないでしょうか?ヘヴィ路線と、今年に入って発表された「口笛」のようなソフト路線とを繋ぐ橋渡し的作品。力作だよ、マジで。

RAGE AGAINST THE MACHINE『THE BATTLE OF LOS ANGELES』

やっと出た。(爆)いや、こんなに待たされるとは思いもしなかった‥‥そして待った甲斐あったわ♪上でリンプべた褒めしてるけど、これ最初に聴いた時はリンプすら霞んだもん。(苦笑)こんなブッとい音出すバンド、ZEP以来じゃなかろうか?人を狂暴化させるのに十分な音してます。

TRAVIS『THE MAN WHO』

10枚中、UKものはたったの2枚になってしまった。俺のUK離れは更に進行してるのかねぇ?(苦笑)それはともかく、これは地味ながらも傑作。今年に入って聴いたという事で残念ながら選外としたバーニーの「FRIENDS AND LOVERS」と同じ位、聴いてると歌に包まれてく‥‥そんなアルバム。ファーストのイメージが強かっただけに結構意外でした、内容が。今でも忘れた頃に引っ張り出すアルバム。

ZEPPET STORE『CLUTCH』

昨秋リリースにも関わらず、めちゃくちゃ聴いたな。とにかくこれを含めた上記3枚とDragon Ash。日本語ロックのあり方を改めて問われたような気がしたな。1曲1曲が粒ぞろいで、何度聴いても飽きがこない。UKロックファンなら1度聴いたら病み付きになるフレーバーが含まれてます。日本語が気になるなら、昨2月にリリースされた全英語詞「BRIDGE」がオススメ。


‥‥てな感じですが、どうですか? 結局、邦楽が4枚も入った1999年。確かに日本のロックにこだわった1年だった気がするな。ハイスタ、ブラフマンといったバンドもよく聴いた。グレイプバインとかスネイル・ランプとか‥‥そういう傾向は年が明けた今年、更に強まってる気がするな。

ヘヴィ系が4枚も入ってるけど‥‥俺にとって去年が正に「戦いの年」だったからでしょう。(苦笑)年明けからいろいろあって、夏にはフジロック~転職~仙台K~そのまま本陣Kへ、という「お前、アホか!?」ってなスケジュールで老体に鞭を打ち(爆)‥‥新しい仕事も常に勉強の日々。現実から逃れるかのごとく、ヘヴィロックに身を委ねるとみぃ‥‥何となく理解できるな、自分の事ながら。(苦笑)

イギリスものは‥‥いや、結構ちゃんと聴いてるのよ。けど‥‥う~ん‥‥実は最後まで悩んだのが、BLURの「13」。よい意味でも悪い意味でも、俺の1999年を象徴するBLURというバンド‥‥その忌わしさを忘れたいから選外になったんじゃないよ? 結局‥‥フジ以降、あんまりCDやMDを引っ張り出して聴く事、なかったな‥‥実験をしたその心意気は買うけど、いざアルバム単位で考えると‥‥もっといい作品はいっぱいあったし、何よりも‥‥自分自身を重ね合わせて聴く事が出来なかった。

今回選ばれた10枚にはやっぱりそれぞれに理由があるわけだけど、やっぱり共感できるか?とか、自分自身と重ね合わせて聴く事が出来るか?ってのが重要になってくるわけよ、俺の場合。そうすると、自然と聴く頻度も増えるし‥‥知っての通り、この10枚を選ぶ基準のひとつに「最もよく聴いた10枚」というのがあるからね?

あ、もうひとつ。選ぶ基準が少しずつ変わってきてるのも確か。それは俺がKに行くようになったからでしょう。林檎やミスチル、ゼペットを除けば、みんなKでよくかかる/Kで知ったアーティストばかり。新しい出合いは何も人間だけじゃないんだよ? 新しい音楽との出逢い‥‥それまで熱心に聴く事もなかったアタリとかエイジアン・ダブ~なんかもそう。ただ、ファットボーイ・スリムだけは何時まで経っても好きにはなれんかったが(苦笑)‥‥なのに何故かCDだけは持ってる俺‥‥あざといというか‥‥(笑)


こんなとこです。まぁこれらのアルバムの大半は、本家とみ宮でもレビューとかやってたので、復活の際には購入時の参考にでもしてみて下さい。

今年も、もっと沢山の素晴らしい音楽に出逢えますように‥‥

1999年10月20日 (水)

ZEPPET STORE@日比谷野外大音楽堂(1999年10月3日)

  今年は邦楽ライヴ率が非常に高い。ミスチル、スーパーカー、フジでの多くの日本人アーティスト、来月にはオブリも行く。そして今回のゼペット。本格的に好きになったのは、昨年の「ROSE」を聴いてからだ。名曲中の名曲。これをライヴで聴いたら俺、どうなっちゃうんだろう‥‥なんてドキドキしたりして。そんな胸の高鳴りを抑えて、約10年振りに野音に出向いた。

  10年振り‥‥前回はJUN SKY WALKER(S)だったかな?(爆)バンドブーム全盛の頃は、武道館よりもこの野音でやることの方がステイタスだったように思うけど‥‥違うか? みんなやってたもんな、ここで。野音っていうと、やっぱ屋根がない分不便なのだけど、その分印象に残るライヴが多い気がする。RCサクセションだったりTHE MODSだったり、尾崎豊だったり‥‥Xもやったな。そういえば、NHKの公開録画でも来たな? RED WARRIORS, UP-BEAT, PRIVATESだのが出たやつ。そういう意味では非常に印象深い、まさに日本人アーティストの『聖域』のような会場ではないだろうか?

  さてさて、今回のゼペット。初体験である。今回のツアーは1週間後にリリースされた新作「CLUTCH」でもなく、今年初めにリリースされた英語アルバム「BRIDGE」でもない、微妙な時期でのツアーだったりする。実は夏にリリースされたシングル「遠くまで」の為のツアーだったりするのだが、この野音は追加公演として発表されたものなのだ。時期的にはかなりずれているけど(8月に1回終ってるからね、ツアー)、アルバムをプロモーションする意味でも、面白い時期じゃないだろうか? だってまだ見ぬ新作の曲も演奏されるだろうからな?

  どんな感じでスタートするのか判らなかった。1曲目は「もっともっと」。彼等の再出発となった曲だ。もっとロック然とした曲でスタートするのかと思ってたけど、これはこれでかっこいい。それにしてもメンバーが‥‥特にVo.&Gt.の木村が‥‥デカくて感じる。それとも野音ってこんなにステージが小さかったっけ? 俺が成長してそう感じるだけなのか? メンバーのアクションはそれ程ないのだけど、やけにデカく感じるのは、やっぱり彼等の存在感のなせる技なのだろうか?

  とにかくリズム隊がカッコいい。気持ちいいよ、聴いてて。安心してリズムに身を委ねられる。バンドとしてはかなりレベルが高い方だと思う。hideが何故、ここのドラムの柳田をアルバムに起用したのか、よく解った。確かにZIGGYのJOEとは違うタイプだ。どっちも上手いドラマーだけど、JOEの方はもっとラウドな、ジョン・ボーナム(LED ZEPPELIN)みたいなタイプで、柳田はJOEと同じグルーヴィーさを感じるのだけど、もっとテクニカルな‥‥ジェフ・ポーカロ(TOTO)みたいなタイプだと思った。

  ゼペットって、'90年代以降のUKロックからの影響を色濃く感じる事が出来るバンドで、御存知の通り、初期は英語で活動してたわけ。初期の作品なんてモロに「あぁ、こんなB級バンド、イギリスに腐る程いるよね?」ってイメージ。(苦笑)よく言えばお洒落、悪く言えば煮え切らない感じか。けど、メジャーデビューして‥‥特に現在のメンバーになってからの楽曲以降は、アレンジにUK色を感じさせながら、メロディーはしっかり日本的な、そう、ミスチル辺りにも共通する「きらびやかさ」が見え隠れするようになってきた。これは大変嬉しい事である。hideの影響なのだろうか、「メジャー臭」を敢えて全面に打ち出す事によって得た『何か』‥‥その『何か』を強く感じさせる、頼もしいステージだった。(そして後日リリースされた「CLUTCH」は更に決定だとなった)

  内容的には現時点までのグレイテスト・ヒッツと呼べる内容で、インディー盤から「CLUTCH」までの楽曲をランダムに演奏していった。初期の彼等にはRIDE辺りからの影響ともいえる「轟音ギターの壁」的サウンドという売りがあったが、例えばこの日演奏されたデビュー曲「声」からは、初期のその色は感じられなかった。轟音はごく控えめに、そのタイトルの通りに「声」を前に打ち出したアレンジに変わっていた。あの色というのは前任ギターの五味のものだったのだろうか? もっとも、今の彼等にはあのサウンドは必要ないと思う。もっと楽曲としての完成度を高めた曲を続々とリリースし続けて欲しいし、2年も待たせずに(笑)毎年アルバムをリリースして欲しいものである。そういう意味では、先に挙げた「ROSE」はひとつの完成型だったのではないだろうか?

  その「ROSE」はアンコールの、本当の最後の最後に演奏された。本人達にとってもそれだけ大切な曲だというのが、ひしひしと伝わってきた。そしてこの曲では、ゲストキーボーディストとして、プロデューサーの朝本氏が加わり、切なく、それでいて暖かい気持ちでいっぱいになった。この日の天気は悪く、開演直前まで雨がちらつき、常に雨雲に覆われていた。風は強いし、この時期にしては肌寒すぎる。けど、それを感じさせない白熱したステージだったし、心も体も暖かく包んでくれる素晴らしい楽曲のオンパレードだった。

  シングル曲を別として、新曲が3曲程プレイされたが、どれも新境地を伝える曲ばかりで、更に今後の活躍が期待出来そうだ。実際、後日聴いた新作にはいろいろなタイプの曲がぎっしり詰まっていて、決して聴き飽きる事はないだろう。セールス的にも大健闘したし、そろそろ大きなヒット‥‥ドラマの主題歌ながら、「遠くまで」が果たせなかったオリコン・トップ10入り‥‥が欲しいところだ。それはファンも望んでる事だと思うし、あっちでhideも楽しみにしてることだろう。こうやって成長したゼペットを見て、やっぱりhideの見る目ってすごかったんだな、と思う今日この頃である。


SETLIST
01. もっと もっと
02. LOOP
03. BLUE
04. SWAY
05. 遠くまで
06. FLAKE
07. ロウソクの炎と青い空
08. 声
09. INNOCENCE
10. DON'T ASK ME WHY
11. SPIRAL
12. THE GAME
13. NANCY
14. TO BE FREE
15. FLY HIGH
[encore]
16. ANOTHER STORY
17. BELIEF
18. ROSE (featuring Hirofumi Asamoto)



▼ZEPPET STORE『CLUTCH』
(amazon:国内盤CD

1999年5月 2日 (日)

『hide TRIBUTE : SPIRITS』(1999)

  1998年5月2日。まだ1年しか経っていないのか‥‥hideがこの世を去ってから。たった1年。もう1年。人によっていろいろ違うのだろう。hideの不在がもたらしたものって一体なんだったのだろう、とこのトリビュート・アルバムを聴きながら考えてみた。答えはまだ見つからない。みんなはもう見つかったかい?
  このトリビュート・アルバムには、hideの身近にいた人間、hideに影響を受けた人間、hideとは接点がなかった人間と、いろいろ参加している。それぞれがそれぞれの解釈でhideの楽曲をカヴァーしている。今回は久し振りの「全曲解説」を通して、それぞれのアーティストの解釈についていろいろ感想を述べてみたいと思う。最後までお付き合い願いたい。

M-1. 布袋寅泰「ROCKET DIVE」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  「HOTEI」ではなく、「布袋寅泰」として発表したこの曲。ハマリ過ぎ。(爆)布袋の為に作られたような名曲だな、これ。最初に布袋がこの「ROCKET DIVE」を選んだことを知った時、爆笑した。「自分の事がよく判ってるじゃん♪」って。ただ、実際に出来上がったアレンジは、ちょっと考え過ぎの部分もあるかな?と思ったのも事実。が、あえて打ち込み中心の「布袋流テクノ・ロック」に仕上げたのには‥‥やっぱり(笑)
  布袋自身はhideとは交流がなかったようだが、自分とhideとの共通項をうまいこと見つけたな、というのが正直な感想。バンド出身、解散後ソロアーティスト、ギタリスト兼ボーカリスト、時代に敏感、よき兄貴分‥‥等々共通点はいくらでもある。だけど布袋は布袋、hideはhide。全く違うアーティストだ。なのに‥‥不思議だ。これこそ「名カヴァー」と言えるのではないだろうか?

M-2. 清春・SHOJI「Beauty & Stupid」(from ALBUM「PSYENCE」)
  元「黒夢」のボーカル、清春の解散後初の仕事がこれ。清春自身もhideとは交流はなかったそうだ。聴く限りでは原曲に忠実な出来。リズムは打ち込みなんだね? あくまで「ロックンロール」にこだわる(?)清春らしからぬアレンジかな?と最初は思ったのだけど‥‥まぁアリ、かな? でも、「カヴァー」というよりは「コピー」に近いような‥‥原曲ではhideの癖の強い唄い方が特徴だったこの曲も清春が唄う事によって、幾分「黒夢」っぽいイメージを与えてくれる。何故彼がこの曲を選んだのか(あるいは与えられたのかもしれない)、彼がこの曲を通して何を伝えたいか?が全く伝わってこない。トリビュートは故人のよいところを新たな解釈で伝えるのがひとつの目的なわけで、これではただ「僕、ソロになったんで、手始めに他人の曲から始めてみました」と取られる可能性もあるわけだ。実際はどうだか知らないが‥‥

M-3. kyo & TETSU「TELL ME」(from ALBUM 「HIDE YOUR FACE」)
  hideとはSABER TIGER時代一緒だったkyoがボーカルを取るこの曲、イントロの走りぎみなTETSUのドラムが印象的。これも基本的には「コピー」だが、kyoが一音一句をとても丁寧に、心を込めて唄っているのが伝わってくる好演だと思う。こういう「元メンバー」といった身内の人間がカヴァーする場合、感傷的になってポシャって終わる事も考えられるのだけど、やはり昨年末のSpread Beaverとの共演が先にあったからよかったのかもしれない。(ちなみにその時、kyoは「Beauty & Stupid」を唄っている)

M-4. SIAM SHADE「ピンクスパイダー」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  彼等はhideというより、LUNA SEA側の人間なわけで、やはりhideとの直接交流はなかったようだ。それにしても‥‥ファンには悪いが、このアルバム中最悪のケースだと思う。最も悪い「カヴァー/トリビュート参加」のケース。まず、この録音の悪さはどうにかならなかったのだろうか? スタジオ・デモ並である。この程度の録音、現在ならアマチュアでも可能だ。それからロックらしからぬミックス。ボーカルが前に出てリズムが引っ込んでるパターン。歌謡曲じゃないんだから。
  録音技術の事ばかりではない。完全に「コピー」だ、これでは。唯一、ギターが好き放題暴れているといった程度。今回の各曲のクレジットを見て思った事は、今までプロデューサーを立てて作品を作ってきたバンド(GLAY, SIAM SHADEなど)がセルフ・プロデュースを行っている事‥‥つまり、「たった1曲に金かけて(プロデューサーに払う金)らんないでしょ?君らでどうにかしなさい♪」とでもレコード会社から言われたのか? にしても‥‥これは最悪。自分らの曲より酷いよ。ボーカルも自身の曲だと生き生きしてるのに、ここじゃ‥‥と俺は感じたのです。

M-5. shame「LEMONed I Scream」(from ALBUM「PSYENCE」)
  このバンドに関して僕はそれ程知識がないが、hideが主催するレーベル「LEMONed」のバンドだそうだ。ということは、hideが見つけてきたって事? アルバム内のアーティストのコメントを見る限りでは、そう取れるのだけど‥‥いいんじゃない? このアルバムからは唯一の英語曲だけど、気負ってなくていい仕上がりだと思おう。原曲にあった浮遊感・アップテンポ感を、ネオアコっぽい始まり~徐々に盛り上がる持ってき方へとアレンジしたのは正解かも。おそらくこれがこのバンドの色なのだろう。ちょっとオリジナルアルバムの方も聴いてみたくなった。本来カヴァーソングってそういう効力を持ったものなのでは?

M-6. CORNELIUS「ピンクスパイダー」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  この組み合わせが一番難解かつ厄介だった。(爆)hideと小山田くんとの接点が‥‥まぁ面白い仕事するとは思ってたけど、ここまでやってしまうとは‥‥小山田が参加すると知った時点で、俺は2通りのパターンを考えた。ひとつは「バンドで演奏して、滅茶苦茶に解体するカヴァー」、もうひとつが最近依頼の多い「解体かつリミックス」作業‥‥前者なら、「69/96」アルバムで見せたハードロックへのアプローチが再び見れたのかもしれない。でも、そこは小山田。結局は後者を取ったわけだ。(笑)彼らしい手段だと思う。
  で、これがまた傑作。このアルバム中、確かに異色の出来だが、本来ここまでやらなくてはならないのでは? hideに対する敬意を込めつつ、自分の色を出す‥‥hideの癖の強い楽曲を前にこれすら忘れてしまうアーティストも多いのでは? しかし布袋といい小山田といい‥‥ソロアーティストの方が動きやすいのかもしれない。自身のイメージもひとつというわけではないしね。(バンドだとそうもいかない場合もあるしね)敢えて唄わなかったのも正解かも。しかし‥‥小山田に「ピンクスパイダー」って言葉、合ってない?(笑)

M-7. ZEPPET STORE「FLAME」(from ALBUM「PSYENCE」)
  hide自身が生前「この曲はZEPPET STOREに影響されて書いた曲だ」と言っていたのが印象的なナンバーを、当の御本家ZEPPET STOREがカヴァーすることになるとは。しかもこういう形で‥‥原曲はZEPPET STOREっぽいリズミカルでヘヴィーで繊細な曲を、彼等は違った解釈でカヴァーした。原曲のまま再現してもZEPPET STOREらしい曲には仕上がっただろうが、「それじゃhideが許してくれないだろう」と感じたのか、今現在のZEPPET STOREらしいアレンジで挑んできた。アコースティックギターを軸にして、大陸的な大きなノリ‥‥このまま彼等のオリジナルアルバムに入っていても何ら違和感がない出来だ。原曲に助けられてる部分も多少あるが、それでもここまで説得力があるのは、やはり彼等ZEPPET STOREの底力ではないだろうか? 個人的には、昨年末のSpread Beaverで聴かせてくれたあのピアノアレンジをもう一度聴きたいなぁ‥‥

M-8. LUNA SEA「SCANNER」(from ALBUM 「HIDE YOUR FACE」)
  hideとLUNA SEA(いや、JとSUGIZOと言った方がいいか?)との関係は今さらここで語ることもないだろう。よき兄貴分、よきライバルとして彼等をお互いを意識していたようだ。そして彼等は「無言で」このアルバムに挑んだ(彼等のみ、ライナーノーツにはコメントを載せていない)‥‥「Let the music do the talking」って事だろうか‥‥
  やはりLUNA SEAのカヴァーを聴いても感じる事だが、実力・オリジナリティーを既に持ち合わせたアーティストというのは、誰の曲をカヴァーしても「自分達の曲」にねじ曲げてしまう力量を持っているな、という事。長く活動してればいい、って訳じゃない。結局はいかに「myself」でいられるか‥‥このアレンジなんて、LUNA SEAのオリジナルと言われても信じてしまうんじゃないだろうか? 近年の彼等らしい曲調だし(歌詞はともかく;笑)‥‥が、後半のアップテンポになる展開‥‥久し振りにこんなに激しいLUNA SEAを聴いた気がする。改めてLUNA SEAに惚れ直した。(笑)

M-9. BUCK-TICK「DOUBT '99」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  hideとBUCK-TICK‥‥繋がりそうで繋がらない。まぁXとBUCK-TICK、と考えればなんとなく繋がるが。布袋同様、まさにハマりまくった選曲・名カヴァーではないか? BUCK-TICKは最近の所謂「ヴィジュアル系」ファンにはそれ程好かれてはいないようだが、LUNA SEA同様ゴス(ゴシック系バンド。BAUHAUSや初期のTHE CURE, JAPANなどがこう呼ばれた。最近ではMARILYN MANSONなども再びこう呼ばれているようだが)に影響を受けたバンドとして、彼等こそが真の意味での「ヴィジュアル系」であり「オルタナ」ではないだろうか? しかしなぁ‥‥「人間ドラムンベース」(笑)‥‥どこまでこの路線を続けるのかが興味深い。

M-10. TRANSTIC NERVE「ever free」(from ALBUM 「Ja,Zoo」)
  確かhideが生前、最後に関わったのがこのバンドだと聞いている。hideとは会った事がなかったようだが‥‥新手のヴィジュアル系、というわけでもなさそうだ。オリジナル作ではラルクを手掛ける岡野ハジメ氏をプロデューサーに迎えているようだが、このカヴァーは自分達で手掛けている。このアルバムに参加してるアーティストの中では最もキャリアが短いだけに、一体どういう解釈で挑んでくるのかが気になったが‥‥これから、といったとこだろうか? 原曲のストレートさをそのままに、音数を多くし、一部16ビートを持ち込んでいる、という至極そつないアレンジだ。新人という事を差し引いて‥‥今後に期待、というところだろうか? だが、改めて「影響を受けたフォロワー」としてのカヴァーが聴きたかった。(本人達はそのつもりかもしれないが、俺にはそれは伝わらなかった。ハードルが高すぎたのか?)

M-11. OBLIVION DUST「限界破裂」(from ALBUM「PSYENCE」)
  Spread Beaverにも参加したギタリストKAZが所属するバンド。元がかなりオルタナ色の強いバンドなだけに、どういう選曲でどういうアレンジになるのかが気になるところだった。選んだのは「限界破裂」。原曲はアップテンポのhideらしい曲だが、オブリのアレンジが‥‥これ、傑作だ! このアルバムの中でも1、2を争う出色の解体振りだと思う。ゴシック調に始まり、サビにくるとドカーンと爆発するグランジ調アレンジ。自分自身を常に持っているバンドのアレンジはこうも違うのだろうか? 原曲にあった「切なさ」が、このアレンジで聴くと「ストーカー的圧迫感」(笑)を感じる。この力技、半端じゃないと思う。OBLIVION DUST、やはり侮れないバンドだ。

M-12. GLAY「MISERY」(from ALBUM「PSYENCE」)
  GLAY、レコード会社移籍第1弾の仕事がこれ。彼等もこの曲には自らがプロデュースに当っている。それにしても‥‥好き放題やってるなぁ、というのが第1印象。こんなにテンポアップにして、原曲のメロディアスさを殺してないか?と思ったのだが‥‥スタッフは誰も何も言わなかったのだろうか?(笑)GLAYにとってもhideという存在は特別だったようだ。それにしても‥‥このパンキッシュなアレンジに、ファン以外の人間はGLAYらしさを感じる事が出来るのだろうか? かなり疑問が残るアレンジだ。中盤のアコースティックによる「和み」の部分に「GLAYらしさ」を垣間見る事は出来るのだけど‥‥

M-13. I.N.A.・Pata・heath「CELEBRATION featuring hide」(from ALBUM「BLUE BLOOD」)
  最後の2曲は完全な「身内」の参加作品。hideがソロ活動の際には常に活動を共にしてきたI.N.A.、X JAPANのメンバーPataとheathが参加したこの曲は‥‥なんとX時代の名曲のリアレンジ曲。しかもボーカルトラックにhideの未発表音源を使用している。ということは‥‥いずれこの曲をX時代とは別のアレンジで発表する計画があったという事か? となると「JOKER」や「SCARS」なんかのデモ音源も残っているのでは?‥‥なんて考えてしまった。それにしてもこれは‥‥もう反則です!(笑)冷静に判断を下せ、という方が難しい。hideが参加してるんだぜ!? これ以上何を言えばいいっていうんだ? 「Ja,Zoo」に入っていてもおかしくないアレンジだし、やはりこれは「hide以上」でも「hide以下」でもない、正真正銘のhideの作品だ、と言いたい。彼がアレンジに関わっていなくても、これはhide以外の何ものでもない。これは嬉しいボーナスだった。

M-14. YOSHIKI「GOOD-BYE」(from ALBUM「PSYENCE」)
  最後まで参加があやふやだったYOSHIKIが選んだのが、この曲‥‥何も言う事はないと思う。僕自身の感情とは別に‥‥あのイントロダクションのピアノソロも彼によるものだろう。あのイントロに、このアウトロ‥‥感傷的になってしまうが、ひとつの作品という意味ではこれで正解かも。


  こうやって通して聴いてみて改めて思った事‥‥hideという「ソングライター/表現者」の非凡さ。こんなにポップで判りやすく、それでいてロック然としている。いろいろなジャンル/新しい表現に常に興味を持ち、それを自己流の消化をしてみんなの前に提示する。何度も言うが、日本のヒットチャートに「ピンクスパイダー」のような楽曲を送り続けた彼は、やはり偉大すぎる。
  hideの不在‥‥それは、こういうイノベィティングなソングライター/表現者を失ったという事。こういうジャンルでこういう事をやるアーティスト。しかもヒットチャートの上位に君臨する「ポップスター」としても機能する存在‥‥確かにLUNA SEAやラルクといった後輩達がそれに追いつけ追いこせと頑張っているが‥‥今世紀、という意味では彼が最後なのかもしれない。今後、「最も影響を受けたアーティストはhideです」という若手が多く出現するだろう。そして、その度に思い出して欲しい。hideが如何に素晴らしいアーティストだったかという事を。忘れないで欲しい。本来、「アーティスト」とはこういう人の事を言うのだという事を‥‥ありきたりの言葉しか言えないが、1年前に言えなかった事を今、言いたい。

‥‥‥‥‥Thank you, and.....I love you.



▼『hide TRIBUTE : SPIRITS』
(amazon:国内盤CD

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